表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
ぺイル・ライダー覚醒編
75/77

アイーシャ・和泉艦長の爆弾発言




カオル達に対しての、朝霧少佐の判断。「素人に毛が生えた程度」

そしてそれを純然たる理由として、作戦行動には参加させないと言う判断を、

朝霧少佐は堂々とメリルに言い放つ。

だが、メリルはそれに動じる事無く、笑顔をたたえて会話を続ける。




メリル中佐「朝霧少佐の判断、尊重致します」




朝霧少佐「その余裕のおっしゃり様。私の異議など、さして影響は無いと言われてる様に見受けられますが」




メリル中佐「いえいえ、こう見えても保護者のはしくれ。叶うならば、普通の少年少女として、人生を謳歌して欲しいと願っています」




(白々しい…)




口にこそ出さないものの、朝霧少佐の瞳は、モニター画面に反射するメリル中佐の顔を、冷ややかに見詰めている。




朝霧少佐「しかし、解せませんね」




メリル中佐「何が解せないのです?」




朝霧少佐「彼らの生還率を上げたいなら、何故最新鋭に搭乗させようとしないのです?

あなたの権限を行使すれば、あんなプロトタイプなど、容易に新型に換えられるはずだ」




メリル中佐「あの4機は必ず彼らの命を守る、私はそう考えているだけです」




朝霧少佐の挑発…情報を引き出そうとする、ひっかけの質問に踊らされる事無く、

メリルは深く答えないまま、それでいて誤魔化しようの無い真実を述べる。




朝霧少佐「何を根拠にすれば、そんな答えが出てくるのですか?」




(…まるで宗教じゃないか)と、眉間にシワを寄せる。

メリル中佐との、真意の見えない問答にイラつき始めた朝霧少佐。

いよいよもって、怪訝な顔付きで振り返り、メリル中佐と目を合わせるのだが、

アイパッチで片目を隠し、一つしかないメリル中佐の瞳は、全く濁っておらず、

底知れず澄みきったまま、穏やかに朝霧少佐を見据えている。




メリル中佐「いずれは、全てお話しします。それまでは、朝霧少佐は朝霧少佐の流儀で、彼らの生存確率を上げて頂きたい。そういう事です」




二人の視線が交差する。


CICに詰めている職員達は、その光景を見詰めながら、ハラハラしている。

その中には、ジョーカー1訓練小隊付けのCICオペレーター、伊達庸子とエレノア・シグニスの姿もある。

彼女たちももちろんの事、沈黙を保ちながら、二人の動向に「それとなく」注視していた。




朝霧少佐「私の流儀でと言う事は、未熟な兵士は絶対に戦場に出さない…。

もし如何なる命令が下達されても、それを私が全力で阻止する事も含めての【私の流儀】で宜しいですか?」




メリル中佐「そうはならないと思います」




朝霧少佐「そうはならないとは…!」




メリル中佐の言葉を侮辱と捉えたのか、いよいよ朝霧少佐の鼻息が荒くなって来た。




朝霧少佐「あなたは…っ!私が、あんな年端もいかないガキどもを、喜んで戦場へ送り出すとでも思っているのか!」




朝霧少佐の怒声が、静まり返ったCICに響く。

言われた方のメリル中佐は、一瞬たりとも動揺せず、表情すら変える事はない。




メリル中佐「誤解なさらないでください、少佐。いずれお話しすると、私は言いました。

それを理解して頂ければ、私は少佐の名誉を傷つけてはいない事が、理解して頂けると思います」




朝霧少佐「つまり、私がその話を聞けば、少年少女に向かって戦場で死んで来いと、命令するのですね?」




メリル中佐「あなたの資質を問うているのではありません。あくまでも、あの4人に関して、お話ししているのです」




堂々めぐり


何を言った所で、メリル中佐のスタンスは変わらない。

朝霧少佐の激しい怒りに、無力感が混ざり始めた時、

いきなりCICの扉が開き、軍服をパリッと着た将官が入室して来た。




朝霧少佐「艦長!」




現れたのはリスキー・ビスキー2艦長、アイーシャ・和泉いずみ大佐 。




元、亜宇宙戦術空母ヤマトタケルの副艦長で、今は統合宇宙軍の最年少大佐。

燃える様な真っ赤な髪とソバカスが印象的な、見る者によっては実年齢よりも若く見られる細身の美女である。




和泉艦長「あらら、何か空気が冷えてますね(笑)」




CICに詰めている職員は、口を開こうとしない。


張り詰めた空気の原因である、朝霧少佐とメリル中佐を見詰めつつ、

この若い艦長に、事態の収集を空気で訴えるのが精一杯。

その、二つの台風の目が、艦長入室に気付き、敬礼をした。




和泉艦長「伊達少尉、シグニス准尉。着艦プログラムの更新データよ、インストールして♪」




周囲の視線、朝霧少佐とメリル中佐の視線などお構いなしに、

和泉艦長は微笑みながら、淡々と事務処理をCIC要員に指示する。

そして、ふわふわと無重力に身を任せながら、朝霧少佐とメリル中佐の前へと進んで来た。




和泉艦長「朝霧少佐、次の訓練飛行予定は?」




朝霧少佐「あっ、はい。次の予定は13時間後の早朝0430、スクランブル即応訓練を計画しております」




和泉艦長「なるほど、了解しました♪2時間以内に訓練計画書の提出を願います」




朝霧少佐「はっ!」




明らかに歳下の和泉艦長に向かい、ビシッと敬礼を決める朝霧少佐。


「では」


と、言いつつ、朝霧少佐がCICを退出しようとした時、和泉艦長が手のひらを上げて退出を制止する。

不審に彩られた表情で和泉艦長を見詰めた、朝霧少佐には何も言わず、

和泉艦長はメリル中佐に振り向き、笑顔のままメリル中佐に切り出し始めた。




和泉艦長「メリル特務中佐、リスキー・ビスキー2所属のAPE2個小隊は、

作戦総司令部が他艦や旗艦に創設されない限り、CICの作戦・管理責任は艦長の私に帰するものです。

朝霧少佐の訓練計画に異論があるならば、それを承認した私に言って頂かないと」




和泉艦長はまるで含む所を見せず、あくまでも笑顔。

朝霧少佐とメリル中佐が何を口論していたかは把握しないまま、ズバリと本質を切り出した。




メリル中佐「訓練計画に異論はありません。もちろん、差し出がましい事を言う積もりもありません。

全ては見解の相違。ボタンの掛け違いであり、言葉遊びの部類に属するものです」




超然と構えていたメリル中佐は、口元にわずかではあるが、

挑戦的な笑みをたたえ、双方の誤解であると謝罪した。




和泉艦長「よろしい、この場はこれにて終了。朝霧少佐とメリル特務中佐には、この後の夕食について私から提案があります」




朝霧少佐「艦…長?」




メリル中佐「?」




和泉艦長「朝霧少佐とメリル特務中佐は、1800時に艦長室に出頭。艦長と共に夕食をとる事を命じます」




悪戯っぽい、少女の様な笑みを浮かべながら、和泉艦長は高らかに宣言した。

呆気に取られるメリル中佐と朝霧少佐。




和泉艦長「宣言した以上は、従って頂きますからね♪それではお二方とも、ディスミスト(退出せよ)」




何をどう反応して良いのか、釈然としないまま、CICを退出しようとした二人。

その片方、メリル中佐の背中に向かい、和泉艦長は声をかけ呼び止める。




和泉艦長「あ、メリル特務中佐」




メリル中佐「は、何でしょうか?」




あくまでも超然とし、表立って感情を見せないメリル中佐に、和泉艦長は微笑みながら、爆弾の様な言葉を投げかける。




和泉艦長「私と食事なんて、憂鬱かも知れませんが、安心してください。【プロジェクト・フォー・ホースマン(Four Horsemen)】について、

内容を質そうなどとは、思っていませんから♪」




【プロジェクト・フォー・ホースマン(Four Horsemen)】

この言葉が、和泉艦長の口から出た瞬間、今まで超然としていたメリル中佐の表情がガラリと変わる。

アイパッチに隠された左目、そして右目からは苛烈な射る様な視線。

周囲のCIC職員も易々と気付く程の、殺意を含んだ激しい憎悪の表情に変化したのだ。




メリル中佐「それは何よりの事、私も食事は楽しみにしておきます♪では」




ガラリと表情を変えたのも、ほんの一瞬。メリル中佐は再び自己のコントロールに成功し、笑顔でCICを退出して行く。




伊達「プロジェクト・フォー・ホースマン…?」




エレノア「聞いた事の無い計画ね」




朝霧少佐とメリル中佐が退出した後、ざわつくCIC。


エレノアと伊達も、互いに顔を近付け、ひそひそ声で会話している。

すると、「ぱん、ぱん」と和泉艦長は手を叩きながら、




和泉艦長「は~い、お喋りの時間おしまい。各小隊の訓練結果を、報告にまとめなさい」




和泉艦長は笑顔のまま、職員達に作業再開を命令する。


慌てて端末に触り作業を始めるエレノア。


だが、作業を進めながらも、エレノアの脳裏では、和泉艦長とメリル中佐のやり取りを考察し、

彼女なりの結論を導き出していた。【和泉艦長は爆弾発言をしたのではないか?】と言う結論に。


空想の、でっち上げの作戦なら、メリル特務中佐が表情を変えるはずが無い。

つまり、プロジェクト何とかと言うのは、確かに存在する。


そして、和泉艦長自身も名前は知っていても、内容は知らされておらず、

メリル特務中佐の所属する情報保全部が、その全貌を知っている。


さらに…メリル特務中佐がこのリスキー・ビスキー2に乗り込んだ理由は、

カオル達の保護と、プロトタイプAPEの情報調整。




エレノア(カオルの周囲に、機密作戦が進行してる?)




急に不安になるエレノアだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ