願いは一つ「ムナカタ・カオルの復活」
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夕方、日本国コロニーNo.3【中京】の商店街。
天然素材のみを使用する、庶民ではなかなかに利用する事の出来ない、セレブエリア。
その一角にある、老舗の和食店、どんぶり処「富士山」。
店員の「ありがとうございました」と言う、朗らかで優しい見送りの声を背に受け、
カオル達一行が通路へと出て来る。
ミカ「親子丼…最高だった♪」
ショーン「メリルさん、ご馳走様でした。本当に美味かったです♪」
カスミ「ご馳走様でした♪」
次々にメリルに頭を下げ、礼を述べるカオルの友人達。
そう、グラビティ・ブーストで汗を流した後、メリルの提案でみんなは夕飯を一緒にしたのだ。
もちろん、メリルのご馳走で。
カオル「メリルさん、ありがとうございます」
深々とメリルに頭を下げるカオル、するとエレノアが、
エレノア「いつまでも、よそよそしい事言ってちゃダメでしょ!」
意外にも、カオルをたしなめるエレノア。
たじたじのカオルと、メリルの心情を察したエレノアに、メリルは、
メリル「良いのよエレノア、私わかったの。レイコの物まねは出来ない、そして、
カオルとレイコの思い出や絆を壊す事も出来ない。私は、レイコの姉だと思って彼女を支えて来た私は、
私なりのやり方で、全力でカオルを守る」
メリルの表情は、まるで憑き物が取れたかの様に晴れ晴れとしていた。
すると、今度はカオルが
カオル「母に言えなかった最後の言葉…僕の本心。そして、怒りにまかせてやってしまった、やり直す事の出来ない過ち…」
ミカ「カオル…」
カオル「多分、いつまでも僕が背負っていかなきゃならないものなんだ。いい加減な気持ちで忘れちゃいけない事なんだ」
ヒロノブ「そうですね、残酷な言い方ですが、過去を変える事は出来ない」
ヒロノブに振り返り、うなづくカオル。
カオル「今すぐ、自分の身の回りの環境が変わったからって、笑い顔になる事は出来ないけど、
だからといって、…腐っちゃいけないんだ」
ショーン「そうだな」
カオル「僕を懸命に守ってくれた人達の為にも、足を止めちゃいけないんだ。
悩んでる暇あったら、ちょっとでも前に進む…進まなきゃ。メリルさん、みんな!ごめん、そしてありがとう」
改めて、深々と頭を下げるカオル。
仰々しいと言えば仰々しいのだが、不器用な少年の精一杯の気持ち…。
その気持ちの現れに、とやかく言う者は、ここにはいない。
この場にいる者達が願う事はただ一つ「ムナカタ・カオルの復活」。
それだけを願い、その為の行動を起こして来た者達にとって、
カオルがひとまず前へと、一歩踏み出そうとしている事は、
非常に喜ばしい事であるのだ。
ショーン「固いこたあ、言いっこなしだ。この先、逆に俺達がお前に助けられるかも知れない」
ヒロノブ「そうです、お互い様ですよ」
カオル「ショーン、ヒロノブ」
ミカ「新学期、楽しみね♪」
エレノア「楽しみだけど、もしかしたら学校でも話題になるかも」
ショーン「うん?何が?」
エレノア「…グラビティ・ブースト出場」
恭香「ええっ!?」
カスミ「それは有り得ないんじゃ…」
エレノア「あれだけの観客がいたんだから、うちの生徒が来てたっておかしくはないわよ」
カオル「あああ…」
カスミ「やだ…本当にお嫁に行けない」
恭香「わ、私も…」
カオル「僕も…」
一瞬、時間が止まる。
黙ったまま、顔を見合わせる仲間達。
そして、誰が笑い出したのか定かではないが、一同は腹をかかえて爆笑を始める。
もちろん、カオルも、そしてメリルまでも。
余計な事を考えず、汗びっしょりになって身体を動かし、そして、腹の底から笑い合う。
離れていた居場所、心の拠り所が一つになる…
何かそんな、春の様な清々しさを感じた一同であった。
ショーン「【TEAM・GALAXY】のサインも貰ったし♪」
ヒロノブ「良い思い出になりましたね」
ミカ「カオル、学校で待ってるから」
エレノア「新学期、学校来て」
カオル「うん」
メリル「じゃあみんな、カオルの事、学校でよろしくね」
仲間達は結束を新たにし、笑顔で帰路につくのであった。




