「負けて当然なんだから、全力で【TEAM・GALAXY】に食らいつこう!」
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【TEAM・GALAXY】の司令塔、リッキー・ローゼスがカオル達の背中に声を掛ける。
リッキー・ローゼス「軍上がりのブースターを何人か見て来たが、軍で無重力遊泳を学んだ奴らってのは、独創性のかけらも無かった。
君らは、俺に面白いブーストを見せてくれるのか?」
リッキー・ローゼスの言葉に反応する時間も無く、ハンディで先行スタートするカオル達に、
電子音の号砲と共に赤ランプが青ランプに変わる。
司会者『グラビティ・ブースト、Go!!!』
オオオオオッ!!
大歓声に後押しされ、カオル達「チーム・なかよし」が、先行スタートする。
カオル「作戦はそのまま!恭香、行けえっ!僕がカスミとヒロノブを押し上げる!」
恭香「うん!」
カオル「カスミ、ヒロノブ、あまりポイントは考えるな!ポイントで【TEAM・GALAXY】に勝てる訳が無い。
とにかく、慣性飛行の軸線に、僕がいる事を意識して、先へ先へ進むんだ!」
カスミ「わかりましたわ」
ヒロノブ「了解」
司会者『おお!早くもチーム・なかよしが、第1コーナーを回り始めました。
そして、いよいよ【TEAM・GALAXY】カウントダウン!』
5秒前!
4!
3!
2!
…1!!
司会者『【TEAM・GALAXY】スタート!Go!Go!Go!!』
カオル達の後方約100m、弓から解き放たれた矢の様に、
ものすごい勢いでカオル達に向かい始めた【TEAM・GALAXY】。
カオル「来るぞ、連中が来る!チャージングされない様に、僕の回りに固まれ!恭香が追い付くまでの我慢だ」
カオルの指示の元、カオルにぴったりとくっつくカスミとヒロノブ。
カオルに抱き抱えられる様な体制で、カオルの背中に手を回す。
リッキー・ローゼス「うん、良い判断だ。どう噛み付いて来るか、次の周回を楽しみにしてるよ」
【TEAM・GALAXY】のメンバー4人は、カオル達など目もくれずに、
接触プレイ…チャージングもせずに、さっさと追い越して行く。
カオル「恭香が来るまでの我慢だ、このまま【TEAM・GALAXY】に食らいついて行こう!」
カオル達の視界の中で、どんどんと姿が小さくなる【TEAM・GALAXY】。
カオル達はカオル達で、恭香の周回移動を待ちながら、【TEAM・GALAXY】を必死に追いかける。
我慢、我慢の時間帯だ。
司会者『【TEAM・GALAXY】、ポイントCゲット!相手チームに5秒加算されます!』
司会者『【TEAM・GALAXY】、ポイントAゲット!相手チームに10秒加算されます!!』
着々とポイントゲットを重ね、カオル達「チーム・なかよし」に、
ペナルティタイムを加算させていく【TEAM・GALAXY】。
カオル達はポイントゲットを完全に諦め、
とにかく【TEAM・GALAXY】に突き放されない様に食らいついている。
ショーン「みんな、頑張れ!」
ミカ「恭香、あとちょっとよ!」
エレノア「…カオル!」
メリル「カオル!カオル!カオル!カオル!」
次第に観客の声援もヒートアップ。
会場は、第1回戦にも関わらず、熱気に包まれている。
恭香「お、おまたせぇ!!!」
ヒロノブ「恭香さん、来た!」
カオル「よし、次はカスミ!君が先行するんだ、僕の肩に乗れ!」
カスミ「はい!」
ヒロノブはカオルから離れ、距離を置き、
カスミはカオルの両手を掴みながら、カオルの肩に乗る。
先ほどのタイムアタックで失敗した、三段ロケットを仕掛ける積もりなのだ。
カオル「恭香、その勢いで来い!」
恭香「うん!」
良く見れば、【TEAM・GALAXY】の4人の姿は既にコースの3分の2を進み終え、恭香の遥か後方に迫りつつある。
カオル「ヒロノブ、カスミを打ち上げたら、全員で【TEAM・GALAXY】を妨害しよう!その間にカスミを周回させるんだ」
ヒロノブ「了解です」
恭香「いっ、いっ!いっくよ~!!」
両手を前に、ぐんぐんとカオル達との距離を縮める恭香。
肩にカスミを乗せたカオルも足を縮め、三段ロケットの体制に入った。
カオル「来い!」
カオルが両手で足を掴み、カオルの肩で固定されているカスミは、
前回ほど身体がぶれず、その時を今か今かと待っている。
恭香「カオル君!」
カオル「よっしゃあ!!」
カスミ「オッケー!!」
勢いと質量のある恭香の無重力遊泳が、絶大な慣性を生み出し、
今、恭香の手からカオルの足に、カオルの肩からカスミの足に、恭香の慣性が力強く届く。
カオル「ジャンプだ!」
カスミ「おおお!!」
恭香の持って来た慣性と、カオルの屈指力、そしてカスミの屈指力。
三者の爆発力が見事に噛み合い、カスミは物凄い速度で前方へと飛んで行く。
観客も目を見張る速さだ。
ヒロノブ「来ましたよ!【TEAM・GALAXY】が来ました!」
慌てたヒロノブの声。
それもそのはず、カオル達の「誰かに先行させておいて、後続は妨害に徹する」邪道の作戦とは違い、
【TEAM・GALAXY】はあくまでも、挑戦者の様々な作戦を微塵に粉砕し、
尚且つ「王者のブースト」を観客に見せつけているのだ。
いくら店の開店イベントだとしても、必要以上に観客や素人挑戦者に媚びたりしない。
連続年間王者は、そのプライドにふさわしい、堂々としたブーストを魅せていた。
その結果が、【チーム・なかよし】後方への、猛烈なチャージだったのだ。
恭香「は、早いね…あの人たち!」
ヒロノブ「そりゃあ、プロですからね」
カオル「次…カスミが来たら、四段ロケットやろう!」
恭香「ええっ!?」
ヒロノブ「そりゃまた、無茶な(笑)」
そうこうしてる内に、【TEAM・GALAXY】のメンバーは、涼しげな顔で、余裕をかましながら、
カオル達の脇を通過して行く。
リッキー・ローゼス「さあ、後が無いぞ、少年達。どうする?どう楽しませてくれる?」
去り際のリッキーの言葉が、カオルの闘争心に火を付ける。
「王者の行進」に呑まれたワケでは無かったが、結局のところ、悠々と進む【TEAM・GALAXY】に対しカオル達は、
妨害する隙さえ与えられなかった
カオル「四段…四段ロケットだ!僕とヒロノブが飛ぶ。そして、ヒロノブが周回して来る間、
僕と恭香でチャージングを仕掛けるんだ!」
恭香「ううう…はい!」
怖がりながらも、カオルに同調する恭香。
ヒロノブ「いよいよ、面白くなって来ましたね」
カオルの指示にワクワクし始めたのか、快諾するヒロノブ。
ヒロノブ「姉さんが追い付いた時、良い条件でジャンプ出来る様に、僕らも【TEAM・GALAXY】に食らいついていましょう!」
恭香「うん、そうしよう!」
カオル「よし、負けて当然なんだから、ポイントは完全無視!全力で【TEAM・GALAXY】に食らいつこう!」
三人で固まり、脇目もふらずに【TEAM・GALAXY】を追跡し始める。
リッキー・ローゼス「おや、何か始める気かな?」
リコ・エルアラメイン「何か始めてもらわないと、こっちも面白くないからねえ」
"ダッジ"ジョンソン「何を仕掛けて来ようが、私は全力でそれを阻止する!」
先行する【TEAM・GALAXY】。何とか離されない様に食らいつくカオル、ヒロノブ、恭香。
そして先行して周回したカスミ。
汗びっしょりのカスミが、カオル達との距離を確実に詰めて来ている。
恭香「来た!カスミさん…来た!」
カオル「よし、やるぞ四段ロケット!みんな力を溜めて、一斉に解き放つんだ!」
カオルの号令で、ヒロノブはカオルの肩へ、恭香はカオルの足を掴み、自分の肩へ。
後は、カスミが到着するのを待つだけの体制に。
リッキー・ローゼス「へえ、あんなプロでもやらない大技をね。面白い事を考える子達だ♪」
冷静にカオル達を見詰めるも、何か心に来るものがあるのか、
リッキー・ローゼスは口元に、緩やかではあるが笑みを浮かべた。
カスミ「みんな、お待たせえ!!」
コーナーの壁をガツンと蹴り、みるみる内に、カスミの姿が大きくなって来る。
ヒロノブ「1番オーケー!」
カオル「2番オーケー!」
恭香「さ、3番オーケー!」
身体を縮め、三つの団子の様な形になるカオル達、
そこへいよいよ、カスミが両手を伸ばして突進して来た。
カスミ「リフトアップ!!!!!!!」
カスミの両手が、恭香の足を掴む。
カスミ自身の慣性を、ダイレクトに恭香に伝えたその時!
予期せぬ出来事と言うか、素人には当たり前の出来事が起きてしまう。
ヒロノブの重心の中心軸、カオルの重心の中心軸、恭香の重心の中心軸、
それに対しカスミがみんなにもたらした慣性が、
誤差の無い、綺麗な一本線として揃わなかったのだ。
ヒロノブ「まずい、揺れる!」
カオル「おおっ!?」
恭香「カオル君、ダメ!…ぶれる!」
カスミ「がふっ!」
巨大な慣性は生きたまま、カスミは手を滑らせ恭香の股間ド真ん中に顔面を激突。
恭香「いやあ!」
恭香はその勢いをそのまま、カオルの股間に再び顔面をぶつける。
カオル「ごぶっ!」
悶絶してうずくまるカオル、勢いそのままに、折りたたむ様にヒロノブの身体が天地逆となり、
ヒロノブの股間がカオルの顔面に、カオルの股間にヒロノブの顔面が、「ビターン」と音を立てて衝突した。
ショーン「あああ…」
『インジャリー・タイム!』




