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オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
統合宇宙軍誕生編
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多目的輸送艦リスキー・ビスキー2




真っ暗で、上下左右などと言う、人間の概念が通用しない世界。

人間が生きて行くには、よほどの覚悟と科学技術が必要とされる世界、宇宙空間。

今、星々の輝きに紛れ、小さな光点が、徐々に、徐々に、大きくなって来た。


その光点とは、太陽光を反射させる船。


円筒形をコンセプトにした宇宙船とは大きく異なり、

まるで、海中にいる獲物を狙い、高空から海中に飛び込んだ、

水鳥の様な流線型のシルエットをしており、

この船が、宇宙空間以外でも活動の場を持っている事が想像出来た。




船の名前は【ヤマトタケル】

国連軌道宇宙軍、亜宇宙戦術空母群の2番艦。


船体には大きく

【UNOSF】

【STC-2】

…Stratosphere Tactics Carrier-02(ストラトスフィア・タクティクス・キャリアー)と、表示されている。




ヤマトタケルも、やっと今…南極大陸攻略戦後の任務を解かれ、

寄港地である、イギリスコロニー【ロンドン】の国連軌道宇宙軍所有ドックに、到着しようとしていた。




ヤマトタケルのブリッジ、「空母」と名のつく割には、手狭な空間。

艦長のシートに、操舵士、航宙士、通信士、観測員。

たった5つの席で窮屈さを感じるこの空間が、この巨大な宇宙空母を動かす中枢である。




副艦長「キャプテン・オン・ザ・ブリッジ!(艦長がブリッジ入室)操艦は艦長に!」




静かに扉が開き、ブリッジ内に艦長が入室して来る。

艦長不在の間、操艦業務を行っていた副艦長が、艦長への交代を高らかに宣言した。




艦長「状況は?」




指揮卓のシートに自分を固定し、艦長は副艦長に不在時の状況報告を求める。




副艦長「航行は問題ありません、ロンドンドックまで後4時間20分。あと、艦長宛てのデータリンク通信が1件届いています」




艦長「発信者は?」




副艦長「亜宇宙戦術空母群総司令部発、発信者は総司令官の、ハンス・ヘンリクセン准将です」




艦長「オヤジからか」




副艦長「はい、艦長がブリッジに来たらで良いから、連絡を寄越せと」




艦長は自分の指揮卓に備えつけられている端末を操作する。

すると、ヘンリクセン准将からの受信履歴が。




艦長「おいおい、秘匿通信じゃなくて、平通信じゃないか(笑)」




副艦長「オヤジさんも豪胆ですね(笑)」




ヤマトタケルの艦長、副艦長から「オヤジ」と呼ばれる、ヘンリクセン准将。

もちろん、血縁関係にある訳では無い。

亜宇宙戦術空母群、総司令官の、ハンス・ヘンリクセン准将は元々、

総司令官に任命される遥か昔から兵士に人気があり、

古くから「オヤジ」と呼ばれ、愛されていた。

もちろん、本人の前でそれを言う勇者は、一人としていないが。




艦長「IDNo.6004215、STC-02艦長、フレデリック・ヤンセン大佐」




端末がヤンセン艦長の音声認識を完了させ、

モニターには「接続中」の表示が。


モニター画面が切り替わり、画面の中には、「見慣れた」老人の姿…ハンス・ヘンリクセン准将の姿が。

ヤンセン艦長は背筋を伸ばし敬礼、画面の中の老人も返礼し、会話が始まった。




ヤンセン艦長「せっかくご連絡を頂いたのに、不在で申し訳ありませんでした、准将」




ヘンリクセン准将『なあに、貴官達には色々と辛い目にあわせて来た。

居留守を使ったとしても、怒りはせんよ(笑)』




ヤンセン艦長「笑えない冗談ですよ、准将(笑)」




ヘンリクセン准将『うわはははっ!』




ブリッジに響き渡る程に、豪快に笑うヘンリクセン准将。

それだけ、言葉を飾り、腹の内を隠さなければならない様な、関係ではないと言う事が、うかがえる。




ヤンセン艦長「ところで准将、平通信はどこで誰が聞いているかわかりませんよ」




ヘンリクセン准将『構わん構わん、秘匿通信にしたって盗み聞きしている連中はいる。

そんなつまらん事をいちいち気にするくらいなら、そんな軍なんぞ辞めてやるわい』




ヤンセン艦長「自分の教え子達を残したまま、准将が去るとも思えませんがね(笑)

それで、今日はどの様なご用で?」




ヘンリクセン准将『うむ、今日は貴官に承諾を貰おうとな』




ヤンセン艦長「私の…承諾ですか?」




ヘンリクセン准将『うむ。軍組織再編成の会議で、和泉副艦長の人事をいじろうて思ってな』




和泉副艦長「私…ですか?」




ヤンセン艦長の背後から、端末を覗き込む和泉副艦長。




ヘンリクセン准将『おお、おお、いたいた♪相変わらず君は美しいな、自分の孫の様に感じていつも想っておるぞ』




和泉副艦長「…セクハラ発言なんだかパワハラなんだか、判断に困る事を言わないでください」




(さっき、艦長いるか?って通信入れて来て、さんざん私と話していたくせに)

とは言わず、苦笑する和泉副艦長。再び豪快に笑うヘンリクセン准将。

和泉副艦長は、ヤンセン艦長宛ての通信である事もあり、一旦引き下る。




ヤンセン艦長「いよいよ、人事が決まり始めましたか」




ヘンリクセン准将『うむ、現状私の話せる範囲では、ヤマトタケルは第3軍所属になる』




ヤンセン艦長「しかし、内容は聞かされていませんが、亜宇宙戦術空母は長期改修に入ります。

事実上の凍結の様なものでは?」




「事実上の凍結」ヤンセン艦長がそう思うのも無理は無い。

何故なら、地球環境資源の番人であった、警察行動を主たる任務として来た、亜宇宙戦術空母群。


人類の存亡を賭けて始まった戦争が、「成層圏」と言う亜宇宙で決するものではなく、

地上で、海抜うんメートルの世界が主戦場になる。


いくら、大量のAPEを搭載していたとしても、【遠い】のだ。




ヘンリクセン准将『心配するな、凍結ではない。亜宇宙戦術空母は必ず生まれ変わる。

多少の時間はかかるがな』




ヤンセン艦長「准将の言葉、信じましょう。私もいささか、この船には愛着があるもので」




ヘンリクセン准将『そこで、和泉副艦長の話だ。貴官はヤマトタケル改修業務で残る。

だが、和泉副艦長は先に様子を見て来て欲しいんだ』




ヤンセン艦長「なるほど、彼女に強行偵察をさせますか(笑)」




ここで、豪快破顔だったヘンリクセン准将の表情が変わる。


「ちょっと、真面目に話すぞ」


准将の表情から、それがどれだけ深刻な問題なのか、

ヤンセン艦長には、手に取る様に理解出来た。




ヘンリクセン准将『貴官らが配属される第3軍は、…曽ヶ端少将が総司令官だ。

あの、オカルトマニアで胡散臭い男が、

一体何を考えて、何をしでかすか心配で心配で』




ヤンセン艦長「私も聞いた事があります。誰が呼んだか通称【曽ヶ端機関】と言う研究チームを持って、

物体E対抗策を日々模索しているとか」




ヘンリクセン准将『それだけならまだ可愛いがな。とりあえず、この場でこの内容はマズい。

和泉君の話を進めるぞ』




アイーシャ・和泉いずみ 28歳

亜宇宙戦術空母群所属の最年少少佐で、ヤマトタケルの副艦長。


国連軌道宇宙軍奨学生と士官コースを併用し、首席で卒業後、亜宇宙戦術空母群に所属して出世した才女。

燃える様な真っ赤な髪とソバカスが印象的な、見る者によっては実年齢よりも若く見られる細身の美女である。




ヘンリクセン准将『第3軍から打診があった。最新鋭の多目的輸送艦、この艦長候補を人選して貰えないかと、な』




ヤンセン艦長「それを、和泉君に?」




ヘンリクセン准将『うむ。どうも…怪しいんだ、』




ヤンセン艦長「怪しい…ですか?」




ヘンリクセン准将『最新鋭の多目的輸送艦。そんな話が製造ラインに乗っていた話は、聞いた事が無い。

それに、多目的輸送艦自体が何を目的としているのか、さっぱり読めん』




ヤンセン艦長「良いのですか?そんな怪しい船の人選に、和泉君を推して(笑)」




ヘンリクセン准将『優秀で人望もあって、今後暇になる予定。相手をイチコロにして情報を収集する、お色気能力』




ヤンセン艦長「半分以上冗談で言ってますね(笑)」




ヘンリクセン准将『結構…真面目だぞ(笑)』




ヤンセン艦長「まあ、どのみち暇になるのは確かです。後は、本人の意志次第ですね」




と、ヤンセン艦長は振り向き、

和泉副艦長にモニターに顔を出せと指示する。

和泉副艦長はヘンリクセン准将と顔を合わせる。




ヘンリクセン准将『どうかね、和泉君?』




和泉副艦長「階級は…大丈夫なのですか?」




ヘンリクセン准将『どうせ近日中に中佐に昇進だ。小さな…多目的輸送艦の艦長なら妥当だろう』




和泉副艦長「そうであるならば、是非とも私にその任を」




ヘンリクセン准将『そうか、やってくれるか。多目的輸送艦リスキー・ビスキー2艦長。和泉君、頼むぞ』




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