つまり、【詰み】
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『護衛艦隊旗艦コアトリクエ被弾!』
『護衛艦セクメト爆沈!』
『アーシラト被弾!』
徐々に、徐々に、不利になって行く人類側。
ここ、護衛艦リスキー・ビスキーの格納庫でも、通信モニター越しに、
次々に不安を煽る様な情報が飛び込んで来る。
格納庫作業員の詰め所。
APEのカタパルト発進の際の、作業員待避所であり、通常業務の際の休憩室でもある詰め所。
その作業員詰め所で、船内リンク通信に聞き入る、カオルとショーン、赤磐の3人。
もう既に、人類側の劣勢を肌で感じているのか、その表情に笑みは無い。
そこへ…、
カオル達だけではなく、人類側全てが驚愕する情報が飛び込んで来る。
【地上部隊の最前線で、物体Eが突撃開始。APE部隊と衝突】
いよいよ、地上戦も始まってしまったのだ。
ショーン「…なんか…ヤバくないか?」
赤磐「バカたれ、ここで怖じ気づいてどうする!」
カオル「僕に、僕らに出来る事…何か無いのか?」
整備長「もうこうなった以上は、どうしようも無い。
還装でジュリエット2小隊が帰って来るまでは、俺達がやれる事なんて無いさ」
ショーン「帰って…来れればですよね?」
カオル「帰って来る!ジュリエット2は必ず帰って来る!」
本当に信じているのか、それとも不安な自分自身を鼓舞する為に、信じようとしているのか、
カオルがまるで宣言の様に、大きな声を張り上げた時、
ガチャリではなく、「バタァン!」と勢い良く、作業員詰め所の扉が開く。
カオル「か、母さん?」
現れたのは、カオルの母レイコ。
冗談すら通じない程に真剣な顔で、ギクシャクしているカオルとの関係も完全に無視し、
現れるなりいきなり、カオル向かって叫ぶ。
レイコ「カオル、【蒼騎】に乗りなさい!」
カオル「えっ?えっ?」
レイコ「ショーン、赤磐君!あなた達は他の3体をカーゴから出して!」
ショーン「は、はいっ?」
赤磐「ど、どうしましたっ?」
レイコ「ここから逃げるの!」
カオル「ちょっ…逃げるって?」
レイコ「この作戦はダメ、我々に勝ち目は無い!だから逃げるの、早く準備しなさい!」
レイコが血相を変えて、撤退の指示をカオル達に出している頃、
護衛艦リスキー・ビスキーの艦橋・ブリッジでも、メリルの闘いが始まる。
エレノア「護衛艦隊旗艦コアトリクエ轟沈!
カーリー大破、カーリー航行不能、落下します!落下します!」
伊達「アーシラトから救難要請!救難ポッドが射出され始めました」
キンゼイ艦長「地上部隊は!輸送艦隊と工兵部隊からは連絡は無いか?」
エレノア「駄目です、アーシラトが機能不全に陥ってて、撤退か応戦か、まるで機能してません!」
キンゼイ艦長「アーシラトは何をやっている!これじゃあ、助かる者も助からんぞ!」
何とか、最小限の被害で抑えている護衛艦リスキー・ビスキー。
しかし、護衛艦隊は壊滅し、アーシラトの船体からは、「もうもう」と煙が吹き出している。
更に、地上部隊や後方部隊から入って来る連絡は、
「助けてくれ!」「増援を!」「撤退しても良いのか!?」と、
誰が見ても、もう完全に、この戦線は崩壊している。
アーシラトが爆沈すれば、地上部隊の大半を占めていた、APE部隊の帰る場所を失う。
アーシラトを諦め、地上部隊を援護したとしても、
輸送艦隊が地上部隊を完全に収容して、安全な宇宙空間へ輸送するとしても、
地上と宇宙空間を、何往復も行き来せねばならず、その膨大な時間を、戦線維持せねばならない。
つまり、【詰み】
人類は、初戦で敗北したのだ。
いや、敗北と言う結果が待つ近い未来へ向け、まっしぐらに突き進んでいるのだ。
もちろん、他に人類が選択出来る選択肢など無い。
メリル少佐「艦長!」
レイコと内密に打ち合わせを終えたメリル少佐、食堂で美田園恭香とレイモンド姉弟に格納庫へ行けと指示を出し、
その足で、先ほどからブリッジに戻って来ている。
カオル達をAPEを輸送艇に乗せ、宇宙空間へ緊急脱出させる事、
その許可を得る為に、キンゼイ艦長と交渉していたメリル少佐。
キンゼイ艦長の重い口が、ようやく開く。
キンゼイ艦長「…条件がある」
メリル少佐「条件…ですか?」
キンゼイ艦長「うむ、四日市東高等学校の生徒を、全員連れて行ってくれ。
もちろん、一人も傷つけずにだ」
氷室「艦長?」
エレノア「キンゼイ艦長!」
メリル少佐「わかりました、お約束します」




