【神格型】強襲!
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『こちらフィン・マックールCDC、
ユニフォーム6、ユニフォーム7、ユニフォーム8の各小隊に通達!』
『こちらヤマトタケルCDC、オスカー1、2、3及び、ロメオ1、2、3小隊に緊急通達!』
『護衛艦リスキー・ビスキーCICより、ジュリエット2小隊へ!』
いきなり、各APE小隊の無線に一斉に飛び込んで来る、オペレーター達の慌てた声。
『アーシラトと随艦が【物体E】の存在を確認した。APE防御線から東南へ14km地点!
全部隊は応戦準備、全部隊は応戦準備!防御線を死守せよ!』
朝霧大尉「来たかっ!」
全部隊に回った【敵、接近中!】の通達。
肩透かしをくらって、呆気に取られた兵士達の身体に、電気が走る。
朝霧大尉「小隊各機へ、エンジンアイドリングから出力20%上げ!
武器管制をホットにしろ、電磁投射ライフル…ロックンロールだ!」
キュイイイン!
電気的な高い音域の駆動音を上げ、APEは手にした電磁投射ライフルを、内陸側に狙いを定め始める。
APE部隊だけではない。
外延を守るAPEの内側、湾から5km地点では、機械化装甲歩兵A大隊が兵員輸送車から降車し、
地上戦を想定した部隊展開を始めたのだ。
楠木中佐「分隊(約10名程度の最小部隊編成)ごとにまとまって、扇状に展開!
窪地を見つけて姿を射線から隠せ!相原中尉は自分の中隊を連れて、東南角へ、絶対に奴らを湾に通すな!」
デッカー大尉「中佐、兵員輸送車部隊が待避指示を求めて来てます」
困惑した表情で問い掛けて来た副官のデッカー大尉に、楠木中佐の雷が落ちる。
楠木中佐「バカヤロウ!!銃1丁、ミサイル1発装備してる部隊は前線部隊だ、そんなものは拒否しろ!」
デッカー大尉「い、いやしかし…それが…部隊長のレダ少佐が」
歯切れの悪いデッカー大尉。
どうやら、相手の方が交渉上手なのか、デッカー大尉が言いくるめられそうな状態だったのだ。
それを悟った楠木中佐。鼻息の荒いまま、兵員輸送車部隊に無線チャンネルを合わせる。
楠木中佐「こちら楠木だ!兵員輸送車部隊は後方200mで待機!
機械化装甲歩兵の援護射撃を行え!湾内への待避は絶対に許さん!!!」
ドクン…
朝霧大尉 (…来るか…)
ドクン…
楠木中佐「…来るか?」
ドクン…
カリー中佐 (…始まるか…)
ドクン…
カオル (…静か過ぎる…息が詰まる)
自分の心臓の鼓動が,
それどころか、他人の心臓の鼓動さえも聞こえてしまいそうな静寂。
ドクン…
キンゼイ艦長 (…何かがおかしい、何が私をザワつかせる…?)
全ての人が、全ての兵士達が、この静寂に耐えかねていた時、
【それは起こった】
それも、全く予想だに出来なかった方向から。
空中要塞アーシラト、船体の表面にぽつりと出っ張っている、小さな透明のドーム。
そこで、双眼鏡で目視警戒を行っていた観測員が、双眼鏡の先に「何かを」見つけて、腰を抜かす。
後ずさりしながら、慌てて壁を探り、通話器を手に。
『こちらCDC、どうした?』
通話器から聞こえて来る声…アーシラトのCDC要員に向かい、
観測員は自分の驚愕、恐慌、恐怖の全てを、自分の声に乗せて大きく叫んだ。
観測員「【物体E】だ!!!…前方11時方向に【物体E】!
距離推定2千メートル…神格型と推定、神格型だあっ!!!!」
アーシラトCDC。
天井のやけに低い、それでいてやけに広い空間。学校のプール程の大きさのCDCにごった返す要員達。
その要員達が、観測員からの連絡で、一斉に驚愕する。
「C8観測所が【物体E】発見!」
「何故だ?【物体E】は空を飛べないはずだぞ!」
「相対距離2千メートル!」
「何でセンサー類に反応しない!?」
「メインスクリーンに画像寄越せ!」
アーシラトCDCの壁面にある、無数のモニターの中で、
ひときわ大きなモニターに、外の景色が投影される。
真っ青な空、グラデーションの様に青から黒に変わって行く高空。
そして雲海の下に覗く、青い海と緑の南極大陸。
そして、目の前に小さくまばたく白金の光点…。
レイド少将「これじゃわからん、映像を拡大しろ!」
モニター画面の光点が、どんどんと拡大される。
その光点が一体何なのか、みるみるうちに拡大され、その正体が判明する。
レイド少将「…神格型…」
まったく原理のわからない、まったく慣性速度を感じさせない姿で、
人類側から、物体Eの【神格型】と呼ばれる存在が、
空中要塞アーシラトに向かって、徐々に徐々に近付いて来る。
レイド少将「バカモン!何を呆けてる!?警戒警報出せ、ブリッジに回避運動を進言しろ!」
南極大陸攻略作戦の、作戦最高司令官、レイド少将の怒声がCDCに響き渡る。
それをきっかけに、驚愕の映像を見て、完全にフリーズしていたCDC内が、
あっという間に怒号に包まれ、熱気を帯びる。
「応戦準備!応戦準備!電磁投射砲は即時発砲開始」
「ハンティング・ホーク、全機の発進急がせろ!」
「護衛艦隊、護衛艦隊!こちらアーシラト!【物体E】1体…神格型が接近している。援護要請!援護要請!」
騒然となるCDCの中、レイド少将がデータリンク通信を使い、
各艦艇のCDC、CICに通達する。
レイド少将『こちらアーシラトCDC、只今【物体E】の神格型とエンゲージ(接敵)これより応戦・回避行動に入る。
各セクションは、別命あるまでその場で状況続行されたし!』
このレイド少将の通信は、国連軌道宇宙軍、国連月宇宙軍の全ての将兵を驚愕させる。
名実ともに、この作戦の柱であるアーシラトがいきなり、物体Eの攻撃を受けてしまった事。
それも、名前だけは周知されていた【神格型】が早速現れた事。
地球上に存在する各大陸に、1体存在するかしないかの確率と言われていた神格型が。
そして、何より人類側を思考停止までに追い込んだのが、空を飛ばないとされていた物体E。
神格型に限定はされるが対流圏を突破し、成層圏にまで上昇して来た事だ。
レイド少将はデータリンク通信で各位に「状況続行」…その場で戦えと、指示を出した。
しかし、未だに最前線は、電磁投射ライフルの弾丸一発すら発射されていない状態の中、
作戦総司令部で、各部隊の【母艦】の目の前に、神格型の物体Eが現れたのである。
兵士達が、浮き足立たない訳が無かった。




