フィン・マックール、前進を進言する。強行偵察部隊を出すべきだ
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そして場所は変わり、いよいよ南極大陸のインディペンデント湾。
もちろん、インディペンデント湾と言うのは、南極大陸上陸作戦の便宜上、付けられたら名前であり、
赤道直下に移動後、氷が全て溶け、むき出しになった南極大陸に、元々の地名や山の名前、平原や湾の名前など無い。
風に乗った種が飛来し、今では南国特有の樹木に囲まれてしまった南極大陸に…インディペンデント湾に、
いよいよ、楠木中佐率いる機械化装甲歩兵A大隊が、強襲揚陸艇によって着陸したのだ。
楠木中佐「大隊、まだ降車するな!まだだ、まだ!!その場で待機、待機していろ!」
煙りがくすぶる、インディペンデント湾から望む平野。
徹底的な艦砲射撃で、緑豊かな森林は、あっという間に焼け野原に様変わりしたのだが、何かがおかしい。
楠木中佐「…静か過ぎる」
デッカー大尉「そうですね、散発的であっても、何かしら敵の反撃があっておかしく無いのですが」
副官のデッカー大尉は、強襲揚陸艦隊旗艦、輸送艦ディアーナとデータリンク中のモニターを確認。
デッカー大尉「APE部隊のほとんども、目標地点へ降下が完了してます。
敵の反撃を受けたと言う情報は、上がって来てないです」
楠木中佐「…罠臭いな。だが、だからと言って、この場に立ちすくんでる訳にもいかん」
混乱する機械化装甲歩兵A大隊、嫌な予感に苛まれ始めた楠木中佐。
だがそれは、大隊の責任でも、中佐の責任でも無い。
何故かと言えば、大隊に限らず、あらゆる地上降下部隊の兵士達が、
同じたぐいの違和感に襲われていたからだ。
朝霧大尉「こちらユニフォーム6、フィン・マックール応答せよ!」
インディペンデント湾から内陸に10km、作戦通りにAPE部隊は南極に降り立った。
空中要塞アーシラトから降下したAPE部隊、護衛艦隊から降下したAPE部隊。
そして、亜宇宙戦術空母群から降下したAPE部隊。
約300機近い、…人類が用意出来るほとんどのAPEが、この南極大陸に降り立ち、
そして、オペレーション・リップルの名前の通り、
インディペンデント湾を起点として、波紋の様に、内陸部へと展開した。
インディペンデント湾には強襲揚陸艇が停泊、そのまま長距離砲台としての役目を果たし、
内陸部5km地点には、楠木中佐率いる機械化装甲歩兵A大隊が。
更に、内陸部10kmに大APE部隊が、円形陣で散開したのだが…
『こちら亜宇宙戦術空母フィン・マックール。ユニフォーム6どうぞ』
朝霧大尉「目標ポイントに到達した、…次の指示を乞う!」
呆けた様な、空気の抜けた朝霧大尉の声。
それもそのはず
あっという間に、何の障害も無く、サクサクと、地球奪還作戦の第一歩、南極大陸攻略の為の進攻作戦、
【プロジェクト・リップル】は、その作戦の大半を終えてしまったのだ。
後は、工兵部隊が降下し、簡易設備の基地を、インディペンデント湾内の海岸に設営するだけ。
【物体E】との血みどろの闘いを想定していた人類は、完全に肩透かしを食らってしまったのだ。
『こちらフィン・マックール。ユニフォーム6は、別命あるまでその場で待機せよ』
朝霧大尉「その場で待機って…」
静か過ぎる、南極の大地。
上陸前の艦砲射撃で、【物体E】は全滅してしまったのか?
そうだとしても、その形跡すら無いと言うのは、一体、何を意味しているのか…?
朝霧大尉「…ユニフォーム6からフィン・マックール、前進を進言する。
APE部隊の防御線はそのままにして、強行偵察部隊を出すべきだ」
湾から内陸に波紋状に…扇状に展開した各部隊の中から、
偵察部隊を出して、内陸部の更に奥を索敵する。
朝霧大尉はそう進言したのだが、フィン・マックールから来た返事は、
朝霧大尉の予想を遥かに超える、驚愕の命令だった。




