オペレーション・リップル
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『こちら…亜宇宙戦術空母群旗艦、キング・アーサーCDC!アーシラト聞こえるか?』
『こちら、アーシラトCDC!大気圏突入成功、電波障害も収まって来た。
キング・アーサー、データリンク可能か?』
『こちらキング・アーサー、ちょっと待ってくれ!
…来た、来たぞアーシラト、データリンク完了した!』
『了解、こちらアーシラトCDC。只今より当艦CDCに南極大陸進攻作戦、総司令部を開設する!』
『キング・アーサーCDC、了解した』
青い…どこまで青い空。
上を見れば暗黒の宇宙空間、そして下を見れば巨大な緑の大陸。
200年前、人類が地球を追われた際、【物体E】の大攻勢に並び、世界中で起こった数々の天変地異。
その中で、ひときわ人々に衝撃を与えたのは、地球が横に「ひっくり返る」ポールシフト。
地軸が傾き、今、極寒の地であった南極大陸は、赤道直下の熱帯地方に分類されている。
その、南極大陸のはるか直上。
今まさに、人類が地球の所有権を声高に主張する為、
遥か宇宙空間から、南極大陸を目指し、大部隊で降下を始めていたのだ。
『こちらアーシラトCDC、ケンウッド・レイド少将。
只今よりオペレーション・リップル(波紋)のカウントダウンを開始する。
各セクションはデータリンク完了報告を』
『こちら亜宇宙戦術空母群旗艦キング・アーサー。
2番艦ヤマトタケル、3番艦イリヤー・ムーロメツ、4番艦フィン・マックール、5番艦スキールニール、
全艦、アーシラトにデータリンク完了!』
『こちら揚空護衛艦隊旗艦コアトリクエ!以下、セクメト、カーリー、リスキー・ビスキー。
データリンク完了しました!』
『こちら強襲揚陸艦隊旗艦、輸送艦ディアーナ!全艦データリンク完了、カウントダウン行けます!』
レイド少将「こちらアーシラトCDC、全艦データリンクを確認した。
これより、オペレーション・リップル開始カウントダウン!2時間45分後に各自状況開始せよ!」
いよいよ、降下作戦【オペレーション・リップル】開始の秒読みが始まる。
宇宙に追われた人類、その生き残りが、その生き残りの子孫達が、
今現在の地球の支配者に向かって、「居住権」を主張し、実力行使に出たのだ。
赤磐「駆動系油圧量チェック」
カオル『駆動系油圧チェック…OK』
赤磐「電装系電圧チェック」
カオル『電装系電圧チェック…OK』
赤磐「推進剤、ジェット用ケロシン、残量チェック」
カオル『推進剤、ケロシン、チェック…OK』
場所は変わり、リスキー・ビスキーの格納庫。
南極大陸進攻作戦【プロジェクト・リップル】のカウントダウンが始まった中、
ここ、揚空護衛艦隊に属するリスキー・ビスキーの搭乗員達も、自然と表情が引き締まり、
誰一人冗談すら言う事無く、ひたすら準備に次ぐ準備…。
慌ただしく身体を動かす事で、自分自身の緊張や畏れと闘っていた。
赤磐「よし、操作系はチェックOK!次ショーン!武装系頼むぞ」
ショーン「了解、よしカオル!武器管制パネルをONにしろ!」
カオル『えっと…。武器管制システムON、ショーンいいぞ、チェックよろしく』
ショーン「よし、先ずは両肩…ERM (エボルド・ラピッド・ミサイル ※空対地ミサイル)ポッド、
1番から6番までホットにしてみろ!」
カオル『ERM1番から6番までホット!どう?ポッド開いたかい?』
ショーン「OK、開いた!次は7番から12番をホットだ!」
赤磐や、ショーンの問い掛けに、無線で答えるカオル。
カオルは今、コクピットにいる。
それはもちろん、高高度戦術戦闘機ハンティングホークのコクピットでも、
14式APE【銀嶺】のスペックアップ版、15式APE【閃華】のコクピットでも無い。
カーゴから解き放たれた、99式APE【蒼騎】のコクピットにいたのだ。
カメラやセンサー類を束ねた、APE銀嶺や閃華のそれとは違い、明らかに顔には、目や口が形作られ、
深い青色のボディは、ゴテゴテと装備がくっついた、パワードスーツを巨大化させた様なAPEとは違い、
まるで人間を模したかの様な「自然な」シルエット。
強化外骨格、…船外活動作業の先に誕生したAPEとはまるでコンセプトの違う、
荘厳で、しかも恐怖すら感じる程に厳しく、冷たい。
それが、カオルが与えられた乗機。プロトタイプ、99式APE【蒼騎】であった。




