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オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
黙示録の4騎士編
43/77

ムナカタさんは、太陽だと思う

04-08 20:47




キンゼイ艦長から許しを得た、メリル少佐とレイコ。

艦長に深々と礼を述べて、格納庫を退出する。


浮遊しながら、狭い通路を出口に向かうメリル少佐とレイコ。




メリル少佐「キンゼイ艦長が了承してくれた。良かった、本当に良かった…」




レイコ「ああ、だからこそ私達は結果を出さないと」




メリル少佐「そうね。カオル君の為に…何が何でも、ね」




レイコ「うん。…あんな真面目に怒ったカオル初めて見た。それも、私の事すごい心配してくれてた」




レイコの頬はほんのりと紅潮する。

カオルが怒って医務室を飛び出し行った際の、カオルの口から飛び出した言葉を思い出し、

感動に再び身を震わせているのだ。




メリル少佐「自慢の息子にそれだけ愛されてるんだ、うらやましいよ。

【ハデス・システム】、早く見つけよう」




レイコ「ええ、急ぎましょう」




無重力遊泳で出口扉に向かう二人、日本時間の夜は更けて行った。




時を同じくして、コロニー3【中京】の下層にある、国連軌道宇宙軍、幼年寄宿舎。


寄宿舎と言っても、ドーナツ型コロニーの構造上、ただ単にエリアを区切って、

寄宿舎区域を設定しただけの、通路の両側に個室が並ぶ居住区。

国連月宇宙軍奨学生で、交歓留学生の美田園恭香も、この宿舎で寝泊まりしている。


その宿舎の、とある部屋。

表札に「K・レイモンド」と描かれた部屋の室内に、


ピンポーン♪


来訪者を告げる、チャイムが鳴り響く。


「は~い」

透き通った軽やかな声で室内から返事をしたのは、カスミ・レイモンド。


これから入浴しようとしていたのか、無造作に脱いだ服を散らかしたまま。

身に付けているのは上下の下着のみ。

風呂場の扉は開いたままに、湯気がほのかに室内に流れて来る。


来訪者の姿が確認出来る、セキュリティ・モニターすら確認せずに、カスミは扉を無造作に開ける。


「宿題やっといたよ」

そう言いながら、カスミの部屋に入って来たのは、双子の弟ヒロノブ。


姉の下着姿に動じる事も無く、そのままヒロノブは表情一つ変えずに、居間のソファに腰掛ける。


そして、弟に自分の下着姿を見られてもまるで動じないカスミは、「ありがとう」と言いながら、

弟の目の前で下着を脱ぎ捨て、風呂場に入って行った。


それから、しばらくの後


「あつい…あつい…」と呟きながら、

タオルすら身体に巻かず、カスミは全裸で風呂場から出て来る。




ヒロノブ「姉さんのノートにも、宿題の答え、書き写しておいたから」




カスミ「ありがとう♪明日は私がやっておくから」




そのまま、全裸のまま、カスミはキッチンに据え付けられた冷蔵庫の元へ。

中から水を取り出しグイグイと飲み干す。




ヒロノブ「…ねえ」




カスミ「ん、なあに?」




ヒロノブ「最近姉さん、元気無いね。と言うか…元気なのを装ってるね」




カスミ「ふっ、ヒロノブに隠し事は出来ないか。ええ、そうね、その通りよ」




ヒロノブ「やっぱり。ムナカタさんの事でしょ?」




まるで、言葉が無くても意志の疎通が出来ているかの様に、

この双子の兄弟は自分を偽りもせずに、淡々と内面をさらけ出しながら会話を続ける。




カスミ「ねえ、私そんなに魅力無いかしら?」




キッチンから居間へと移動したカスミ、風呂上がりの「火照り」を冷ましたいのか、相変わらず全裸のまま。

そして、血の繋がりはあっても、あくまで男である弟のヒロノブの目の前に、堂々と全裸で立ち尽くす。




カスミ「私、エレノア・シグニスや美田園恭香に…負けてる?」




ヒロノブ「自己性愛になりそうだから、あまりでかい事言いたくないけど、

見た目なら姉さんが一番綺麗だと思う。誰にも負けてないよ」




カスミ「見た目なら…ねえ(笑)」




正直なところ、幼さと知的な印象を相手に与える、エレノア・シグニスよりも、

身体は大きくても、その小動物的振る舞いで、相手に守ってあげたいと思わせる美田園恭香より、

容姿に関してだけ言えば、カスミ・レイモンドは完璧に近い。


すらりと伸びた長い足、透き通る様な白い肌。

細めの身体の要所要所が膨らみ、そして締まっている。

サラサラの白金に近い髪は肩の上まで垂れ、風呂上がりの濡れた髪は妖艶ささえ醸し出している。




ヒロノブ「ムナカタさんへの接し方が、イマイチなんじゃないの?」




カスミ「私、あの人達みたいに、自分をさらけ出してぶつかって行くのは…苦手」




ヒロノブ「まあ、問題はそこだろうね(笑)」




カスミ「近くにいれば、カオルさんが言い寄って来る。そんな、傲慢な幻想を抱いているのも確かだけど…」




ヒロノブ「動機が不純なのかもね。はっきりと自分の中で答えを出しながら、

ムナカタさんと接してる彼女達に、姉さんが勝てるとは思えない」




カスミ「動機が不純って!」




この言葉に異様に反応するカスミ、

どうやら、カオルに持つ感情は、恋愛感情だけでは無さそうだ。




ヒロノブ「死んだ母さんの一件がある。今でも姉さんは思っているはずだよ、【ムナカタ・カオルを超える】って」




カスミ「…でも、カオルさんに罪は無い」




物憂げな瞳でうつむくカスミ。


ヒロノブはソファから立ち上がり、クローゼットを勝手に開けながら、

カスミの下着や着替えを取り出す。




ヒロノブ「さあ、風邪をひくから、いい加減服を着て(笑)」




カスミは無言のまま、ヒロノブは恥じらいもしないカスミに、遠慮する事も無く、

下着や寝間着を着せて行く。




ヒロノブ「ムナカタさんは、太陽だと思う」




カスミ「ん、太陽?」




ヒロノブ「だって、彼に照らされた人達は、良い笑顔で、活き活きしてるよ」




カスミ「…」




ヒロノブ「それを感じたから、姉さんは好きになってしまったんでしょ?

だったら、太陽になれなかった姉さんは、余計な事は考えずに、綺麗な月になって光を反射しなきゃ」




カスミ「…そうかもね。私達の勝手な遺恨だけど、わだかまりはある。

でも、それはあの人には関係無い」




ヒロノブ「うん、だから後は、姉さん次第なんじゃないかな?」




そう言いながら、ヒロノブはカスミを軽く抱きしめる。

女性と男性の体型差さえ無ければ、まるで鏡に映した様な二人だ。




ヒロノブ「さて、僕は寝るよ。姉さんとムナカタさんとの事を考えながら、

嫉妬にさいなまれながら…ね(笑)」




カスミ「おやすみ、ヒロノブ」




ヒロノブは笑顔で部屋を出て行く。


季節はいよいよ冬、護衛艦リスキー・ビスキー出航まであとわずか。

それはつまり、地球奪還作戦がいよいよもって始まると言う事。


今はまるで、嵐の前の静寂の様に、


人々はこの後にやって来る、嵐の凄まじささえ想像出来ずに、

安らかに、温かいベッドで各々の夢を楽しんでいた。





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