表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
プロローグ
3/77

プロローグ・作戦成功




『こちらハンティング・ホーク、エコー中隊、爆撃コースに乗った。ポイント指示を請う』




副官「こちら作戦指揮車、座標015から進入し、247で投下せよ!」




『ハンティング・ホーク了解した!』




『こちらヘッジホッグ爆撃機隊、ポイント到着まで後30秒!』




ハミルトン中佐「ハンティング・ホークの爆撃を確認後、同コースから進入し、座標247で投下せよ!」




『ヘッジホッグ了解、ハンティング・ホークのけつにつく!』




『…戦略爆撃機T-REXです、高度6000メートルで待機中。

只今上空より無人戦闘機レイブン6機が当機を通過、そちらに向かいました』




副官「T-REX、情報を感謝する」




ハミルトン中佐「T-REXが何を搭載しているか確認しろ!」




副官と爆撃機パイロットの無線通信に割って入り、ハミルトン中佐は副官に、爆撃機搭載爆弾の種類を確認させる。




副官「こちら作戦指揮車!T-REX、搭載している弾種は何か?」




『こちらT-REX、気化爆弾ライジング・サンを2機搭載しています』




一瞬、沈黙したまま見合わせる副官とハミルトン中佐。


(島一つ吹っ飛ぶんじゃないか…?)


もう…


爆撃に次ぐ爆撃で、勝っているのか負けているのか、敵を駆逐しているのか、駆逐されているのか、

押しているのか押されているのかも解らない中、

底知れぬ破壊力を持つ爆弾を投下したらどうなるか。

そんな躊躇の色が、顔から表情としてにじみ出ていた両者であったのだが…、


ナパーム弾で、メラメラと燃え上がる森を捉えたモニター。

その森の奥から現れた存在を確認した、ハミルトン中佐と副官は、

高性能爆弾を投入する躊躇など軽々と粉砕し、爆弾投下をT-REXに命じる。




副官「…中佐…あれが…?」




ハミルトン中佐「戦指揮車からT-REX!レイブンの後に続け、攻撃座標253だ!!」




副官「中佐、座標253だと我々に近過ぎますっ!!!」




ハミルトン中佐「構うものか!!機械化歩兵と戦車隊全車両へ、全軍後退!海岸線まで退け、全軍全速で後退だっ!!」




通常の炸薬弾、ナパーム弾が数限りなくバラまかれ、森があっという間に崩壊して行く。

油っ気を大量に含んだ真っ黒な煙が辺り一面に舞い上がり、空さえも黒煙で遮り始める。

あちこちに発生する火球と、壁の様な火柱は、とどまる事を知らず、

地獄絵図はいよいよもって、壮絶さを増している。


その中


海岸線に向かって、ただひたすら全速力で後退を続ける、国連軌道宇宙軍の地上展開部隊。

ハミルトン中佐を指揮官とする、戦車隊と機械化歩兵部隊の生き残りは、

ハミルトン中佐の命令の下で、計画的…戦略的な後退をしているのではなかった。


無数の爆炎・爆煙の中を「何事も無かった」かの様に、国連の地上降下部隊を追跡・追い討ちをかけて来た、

【物体E】の人型タイプを超える、たった一体の【神格型】タイプから、

とにかく…、

とにかく距離を置く様にと、逃走していたのだ。


「壊走」、それまさに壊走と表現すべき出来事であった。


作戦指揮車の指揮ブース、モニターに怪しく映る神格型の【物体E】。

徐々に徐々に、部隊との距離を縮めて来ているのか、モニター画面でも段々と大きく映し出されて行くその姿。




ビルの4階まであろうかとおぼしき、巨大な体。


巨大な割りには、細い腕と細い足、そして細い胴体。

計り知れない巨躯…体重を支えているとも思えない、あまりにも細身で貧弱な身体つき。

それはまるで、地球の重力の枠から逸脱した、別次元の存在のようにも思える。


そして、何よりも見る者を驚愕させ、恐れ、怯えさせるのが、その【神格型】の様相。


髪の毛と言わず、全身の体毛が全く見て取れず、かと言って体毛が無い事で、皮膚の表面がツルツルしている訳でも無い。


ぼんやり…全てがぼんやりと見えるだけの存在。

苛烈な爆撃を受け、燃えさかる炎の揺らめきで大気が弄ばれ、そう見えてしまうのとは全く違う。


ぼんやりと、しかし確実に、そこにいて、そして音も立てずに迫って来ているのだ。




【背中の6枚の羽】を、ゆったりと羽ばたかせながら




そして【神格型】の表情。

それが憤怒の形相なのか、悲哀に満ちた表情なのか、

ハミルトン中佐や機械化歩兵部隊、爆撃部隊全ての兵士達は、うかがい知る事が出来ない。


何故なら、表情どころか、目も、鼻も、口も無く、ただ「のっぺり」とそこに立ち、

全身を青白くぼんやりと輝かせるだけなのだから。




ハミルトン中佐「や…やつはバケモノか…!?」




額から垂れる油汗を拭いもせず、「当たり前」の事をつぶやくハミルトン中佐。


これだけの爆撃を受けても尚、傷一つ負う事無く、地上降下部隊を追跡して来る【神格型】。


そののっぺりとした顔からは、原理の全く理解出来ない「レーザー」が照射され、

退避中の機械化歩兵部隊や戦車隊が、次々に爆発…炎上していく。


インカムやスピーカーからは、機械化歩兵達や戦車隊の乗員達の悲鳴が絶える事が無い。

地上降下部隊員のリスト表示画面に、「K・I・A」キル・イン・アクション(戦死)マークが、ずらずらと、確実に増えている中、

事態は既に、戦略爆撃機T-REXが気化爆弾ライジング・サンを投下するのみ。


【物体E】の神格型に攻撃されて死ぬか、はたまた、

【物体E】との距離を縮められ、爆撃に巻き込まれて死ぬのか、

いずれも答えは「死」あるのみ。


笑っているのか、怒っているのか、血走った目を「ひんむいて」、

横に目一杯広げた口から、真っ白な上下の歯が覗くハミルトン中佐。

ひたすらモニターとにらめっこしながら、自分の人生の終着点が、どんな状況で幕を引くのか見詰めている様だ。


無人戦闘機レイブンが爆撃を終え、戦略爆撃機T-REXが爆撃コースにいよいよ突入した時、

戦闘指揮車のオープンチャンネルに、雑音混じりの弱々しい無線が入る。


その無線の声は、作戦が始まってからは全く聞かなかった声。

中佐が最も待ちわびた、この作戦のキーマンからの無線。


兵士達を見殺しにしてまでも、求めていた成果が、このキーマンからもたらされる。


戦闘指揮車のモニターには、もう画面いっぱいに【物体E】の神格型が近付いて来ている。

どんどんと迫って来る「死」に目を反らし、ハミルトン中佐は心落ち着かせ、無線の内容に耳をすませる。




『…ザッ…ザッ…』




『…こちら回収部隊の曽ヶ端中佐だ、作戦指揮車ハミルトン中佐聞こえるか?』




ハミルトン中佐「こちら作戦指揮車、聞こえるぞ曽ヶ端!」




『…遺物の回収に成功した!』




回収部隊、曽ヶそがはた中佐を名乗る男性からもたらされた情報に、

握り拳に力を入れるハミルトン中佐と副官。




(作戦は成功した!)




ハミルトン中佐率いる陽動部隊の死戦が、報われた瞬間であったのだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ