ルナリアン・美田園恭香
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国連軌道宇宙軍、奨学コースの教育実習。
カオル達4人は着実にカリキュラムをこなし、そしてメキメキとその才能を個々に伸ばして来ている。
そして季節は秋
国民投票で「四季」を採択した日本国コロニーの一つ、コロニー3【中京】では、
ドーナツ型コロニーの限界なのか、いささか簡単過ぎる季節変化ではあったのだが、
気温が下がり、天井のスカイモニターや、公共施設の「壁紙」が、紅葉を始めていた。
そして、文化祭の準備を始めようとしている、市立四日市東高等学校の一年一組に、
この時期としては珍しく転校生がやって来た。
時期的にも珍しかったのだが、やって来た「彼女」のスケールも、また珍しく、
『月から来た女の子』
『国連月宇宙軍の交歓留学生』
学校内では学年に関係無く、彼女の話題で持ちきりとなっていた。
そんなある日の昼休み、転校生がやって来て一週間。
隣のクラスである一年二組に、勢い良く扉を開けて、「例の男」が現れた。
ガラガラッ!
赤磐「ムナカタ!ムナカタはいるか!」
そう、やって来たのは赤磐雷太。
カオルの一年先輩であり、カオルと同じ、国連軌道宇宙軍の奨学コースの先輩でもある人物。
勢い良く扉を開けた赤磐ではあったが、
ムワッ…!
教室内から溢れ出て来た、スパイシーな匂いにたまらずのけぞり、
涙目になりながら、再びカオルの名前を呼ぶ。
赤磐「ムナカタ、ムナカタいるなら返事せい!」
すると、
カオル「あ、赤磐先輩ですね?ムナカタここにいます♪」
と、カオルの返事が。
赤磐「…ったく」
カオル「すいません、すぐ食べ終わりますから」
教室に入る赤磐、カオルはちょうど昼食中。
他の生徒達は学食に行ったのか、教室はカオルの貸し切り状態。
そして、くしゃみが出そうな「赤系」のスパイス臭が充満する中、カオルの机に視線を合わせる赤磐。
赤磐「麻婆豆腐あっためてたのかよ(笑)」
カオル「白いご飯にめちゃくちゃ合いますよね♪」
(*´ω`*)タマンネー♪
赤磐「しょうがねえな(笑)とりあえず早く食え、食べ終わったら隣の一組に行くぞ」
カオル「…?…?」
赤磐に言われるがままに、後について行くカオル。
しかし、赤磐の言う目的地は隣のクラス。
考える間もなく、カオルは到着する。
すると、赤磐はまるで配慮の欠片も無い程に、力まかせで
ガラガラッ!
フルパワーで一年一組の扉を開ける。
「…!!!!!」
和やかに歓談していた、一年一組の生徒達が、驚き、その場で凍り付く。
赤磐「おらぁ!!!美田園恭香は誰だ!!!」
開口一番、赤磐はお目当ての人物の名を叫ぶ。
カオル「!」カオルは赤磐が叫んだ名前に「ピン」と来る。
そう、美田園恭香とは転校生。国連軌道宇宙軍と、国連月宇宙軍との交歓留学生で、
生粋のルナリアン、月面育ちの人間として、話題になっていた人物だ。
何がどう、話題になっていたのかは…
赤磐「あ、お前だな!」
カオル「やや、いましたね」
学食に行かず、仲良し同士で机を合わせ、昼食を取る者達がちらほらと見受けられる中、
1人だけぽつーんと、「ぼっち」で弁当に箸をつつく女生徒が。
それも、周りにいる生徒などを超える、遥かに高い上半身。
座っているのに、立っているカオルと同じ目線と言う、恐ろしく【背の高い】女生徒がそこにいたのだ。
赤磐「おい、お前美田園恭香だな」
恭香「うっ…うっ…」
栗色でサラサラの髪質、そして青い目のショートカットの少女。
何故か、赤磐とカオルが迫って来るのを見て、
顔をくしゃくしゃにしながら、次第に涙目になって来たのだ。
赤磐「なあにビビッてんだよ(笑)俺はお前に美田園恭香かどうか聞いてんだよ」
とうとう美田園恭香の目の前まで来た赤磐とカオル。
【どうやら、赤磐の姿に恐怖しているのでは?】
そう感じたカオルは、赤磐より前に出て、笑顔で訪ねる。
カオル「美田園恭香さんですね?」
すると、恭香は涙目のまま、頭を何度か縦に揺らし、自分は美田園恭香だと肯定する。
カオル「あは、僕は一年二組のムナカタ・カオル。後ろの方は二年の赤磐先輩です♪」
赤磐「そっか、よし!美田園恭香、俺に付いて来い!」
恭香「ひっ!」
カオルに続き、恭香がお辞儀をしようとした時。
せっかくの雪解けを、赤磐のだみ声が台無しにしたのであった(笑)
(ちょっと胸が小さいけど、スタイル抜群)
(おまけに足がやたら長くて八頭身)
(身長も185cmくらいあるのかな?赤磐先輩よりも全然背が高いや)
昼休みの生徒会室、赤磐に連れられて、カオルと交歓留学生の美田園恭香は、生徒会長の伊達庸子と面会していた。
美田園恭香と並ぶカオル、正直、恭香のアゴのラインにすら、身長は達していないのだが、
カオルはそれを卑屈に感じる事無く、美田園恭香の姿を感心しながら横目で眺めていた。
地球やコロニーでの「1G」環境で育った人類と違い、
重力が【6分の1】で育った月面環境の人類…「ルナリアン」は、骨格形成の段階から旧人類と差が出て来る。
1G重力の影響を受けない分、「伸びる」のだ。
伊達「わざわざご足労願って悪かったね、私が生徒会長の伊達庸子です♪」
恭香「あ…あの、私は…」
赤磐「おいおい(笑)別に難癖つけてる訳じゃねえんだから、シャキッとしろい」
恭香「ひっ…!」
カオル「…あの~」
カオルは右手をもぞもぞと上げ、発言の意志を表明する。
伊達「ムナカタ君、どうした?」
カオル「もしかしたら、美田園さんは人見知りの照れ屋さんじゃないですか?」
恭香「!」
カオル「月からたった1人で、はるばる来てくれたんだから、
礼儀も大切ですが、先ずは暖かく迎えてあげるのも…」
クスッ
伊達が鼻で笑う。
それは、カオルを見下したり、軽蔑・侮蔑の意味を込めた笑いでは無い。
形式に凝り固まった風習を、いとも簡単にカオルがブチ壊した事。
そして、彼女の本質を誰よりも早く見抜き、彼女と生徒会側との橋渡し役に、
無意識でカオルが担っている事への、伊達なりの感嘆の表れだった。
【良い時に良い事を言って、場を和ませる男】
伊達なりの素直な評価であった。
伊達「そうだな、ムナカタ君の言う通りだ♪美田園さん、そこの椅子にかけてくれたまえ。今コーヒーを出そう」
赤磐「おっと会長、それは俺の役目ですぜ」
慌て食器棚に向かう赤磐。
カオル「ね♪赤磐さんって勢いはすごいけど、優しい人でしょ(笑)」
カオルが見上げる先、美田園恭香は微かに頬を赤く染め、カオルの言葉に笑顔でうなづいていた。
恭香「…最初は、珍しがって…、みんな話し掛けて来ました…」
伊達「だけど、奥手な性格と、奨学生って事で、あまり相手にされなくなった…と?」
ゆっくり、悲しく頷く恭香。
赤磐「イジメはあるのか!?イジメられてんか!」
鼻息荒く、義憤にかられて顔を真っ赤にする赤磐を、苦笑しながらたしなめる伊達。
伊達「赤磐(笑)気持ちは分かるが、あまり大きな声を出すな」
赤磐「…うす」
かなり赤面して、赤磐は背中を丸める。
赤磐の入れたインスタントコーヒーで、歓談を始めて10分。
徐々に、徐々に打ち解けて来たのか、か細い声であるが、
美田園恭香も率先して会話に参加する様になって来た。
何より、身長は誰よりも高い彼女ではあったが、
小さな顔の、奥ゆかしい笑顔がとても印象的な、嘘偽りの無い、
言葉も飾らない透明感のある少女。
伊達は非常に好感を持って、彼女と接していた。
カオル「あ!美田園さんはお昼、お弁当持ちですか?」
恭香「はい、…寮母さんが作ってくれます」
カオル「ならば、明日からは二組でお昼食べましょう♪二組はみんな学食行くから、僕しかいないよ」
カオルの提案を聞いていた伊達は、苦笑しながら心の中で突っ込む。
伊達 (出会ったばかりの人見知りさんが、男と二人きりでお昼とか、無理無理でしょうが)
恭香「…うん…♪」
節目がちに、恭香は頬を真っ赤に染めながら頷く。
伊達 (早いなおい!)
まるで空気を感じないカオル、そしてカオル以上に空気を感じない男、赤磐雷太が、
豪快に会話の間を切り裂いて主導権を握る。
赤磐「この生徒会室だって使って良いんだぜ!奨学生ならいつでも利用可だ!」
恭香「…で、でも私…、月宇宙軍の…奨学生」
伊達「関係無いさ♪志が同じなら、君はここを気持ち良く利用する権利がある」
赤磐「だいたい、奨学生ってのは嫌われるんだ。将来の就職先は決まってるし、奨学生特典もあるしな」
カオル「安心して、僕が守るから」
恭香「!」
伊達「そうか、詳しい紹介がまだだったな。彼、ムナカタ・カオル君は、未来の撃墜王だ♪」




