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オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
国連軌道宇宙軍編
25/77

ペイル・ライダー




場所は変わり、コロニー3【中京】。

とある研究施設の一角にある、薄暗い研究室。


中年の研究員らしき男性が、机の上の端末を操作し、

その背後からは、国連軌道宇宙軍のメリル特務少佐と、

カオルの母である、レイコ・F・ムナカタの姿があった。




研究員「…やはり、遺伝子異常は起こしてないですね」




「ホッ…」

胸をなでおろすレイコ。緊張が一気に解放され、穏やかな表情に戻る。




メリル少佐「良かったな、レイコ」




レイコ「ああ…、良かった」




メリル少佐も安心したのか、普段通りの表情に戻る。




研究員「しかしこれで、新たな疑問が噴出しましたね」




メリル少佐「新たな疑問だと?」




研究員は椅子ごと振り返り、端末からメリル少佐達に視線を移す。

レイコは既に、新たな疑問に感づいている様だ。




研究員「遺伝子異常や欠損は確認出来ず、身体的な病気の発症も無し」




レイコ「健康そのものなのに、何故倒れたか…だな」




研究員「その通りです」




メリル少佐「ふむ…分野がまるで違う、私にはわからん」




諦め顔でため息をつくメリル少佐。




メリル少佐「疑問は疑問として、現実に【彼】は倒れたんだ。

症状に対する予測と、対処法くらいは道筋を立てておかないと」




研究員「そうですね」




レイコ「…多分、原因はフラッシュバックだ」




メリル少佐「フラッシュバック?」




レイコ「あの、地球環境館の体験ブース。視覚や嗅覚、脳などにダイレクトにデータを送り、

映像を再現するシステム」




メリル少佐「それが何か…?」




レイコ「あくまでも仮説だが、遺伝子の持つ記憶情報が刺激され、

記憶領域が、オーバーフローを起こしたとは考えられないか?」




メリル少佐「遺伝子の持つ記憶だと?」




メリル少佐には心当たりがある。

遺伝子の持つ記憶、それが一体何を意味しているのか。

そしてその意味する事が、どれほどの影響を彼にもたらすのか。




レイコ「ああ。遺伝子が持つオリジナルの人格が、フラッシュバックを起こし、

そこにカオルの人格が重なって、破綻を起こし始めた可能性が…」




メリル少佐の顔が、みるみるうちに青ざめる。




メリル少佐「いや、あり得るかも知れない。だが同時に、それは絶対にあってはならない事だ!」




レイコ「そうだな、あってはならない事だ」




苦悩の表情を浮かべるレイコ。




メリル少佐「彼の人格が、オリジナルに乗っ取られる可能性…、現状では否定出来ないと言う事か」




研究員「薬物投与でペイル・ライダーの人格自体を弛緩させては?」




この時、研究員のその何気ない言葉に、レイコの表情はみるみるうちに変わる。

苦悩していた表情が、殺意丸出しの瞳と攻撃的な表情に変わったのだ。




研究員「!?」




レイコは研究員を刺す様に見詰める、まばたきすら忘れる程に。




レイコ「私の子供を【ベイル・ライダー】と呼ぶな。…殺すぞ」




恐ろしさのあまり、研究員は無言のまま何度も頭を縦に振り、

そのまま力無くうつむいてしまった。




レイコ「それに、人格自体を弛緩させるだと?貴様は私の息子を、廃人にする積もりか!」




メリル少佐「悪気は無いんだ、その辺にしといてやれ、レイコ。

それよりもだ…カオル君の今後を考えないと」




レイコの見た事の無い程のエキサイトぶりに、苦笑するメリル少佐。




レイコ「そうだな、そうだな…」




メリル少佐は冷静に、淡々と、研究員に指示を出す。




メリル少佐「この件は情報保全部が預かる」




研究員「は、はい」




メリル少佐は腕時計を確認しながら




メリル少佐「19時23分、優先事項1を宣言する。

これでこの件は、国連軌道宇宙軍扱いの最重要機密に指定された。

同僚にたった一言漏らしただけでも、命の保証は無い」




研究員「しょ…承知しました」




淡々とした表情で、事務的に話を進めるだけのメリル少佐に、

逆に恐怖を感じたのか、完全に飲まれる研究員。




メリル少佐「今後のカオル君への対策や防諜等は全て、情報保全部から追って指示する。

独断専行はするな、研究は指示に従って行え」




研究員「…はい」




「さて、」


レイコに振り返るメリル少佐。

研究員に向けていた冷静な顔付きとは打って変わり、笑顔溢れる「友人」の顔が。




メリル少佐「帰宅しても今日は1人だろ(笑)たまには一杯付き合え。

焼き魚と日本酒の美味い店を見つけたんだ」




レイコ「しょうがない、ここは【いつも】1人ぼっちの先輩の言う事を聞いて、ご馳走になるか♪」




メリル少佐に突っ込まれながら、二人は研究室を出て行った。





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