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オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
国連軌道宇宙軍編
18/77

奨学生友の会




カオル「あ、はじめまして。僕は…」




伊達「ムナカタ・カオル君だろ?」




カオル「ふぇ?」




ふふふ…


いやらしさを微塵も感じさせない、優雅な微笑みを浮かべながら、

生徒会長は更に言葉を続ける。




伊達「左にいるのは、ショーン・カザマ君。後ろの女生徒は、ミカ・カートライトさんに、エレノア・シグニスさん」




ミカ「よ、よろしくお願いします」




ショーン「それで…何で俺達…」




伊達「撃墜王と、その仲間に用があってね♪」




エレノア「!」


ミカ「あ、」


ショーン「!?」


カオル「?」




生徒会長の伊達庸子。

そう、彼女は、カオル達が教育実習船リスキー・ビスキーで体験した事を知っていたのだ。




ミカ「…どうして、それを?」




伊達「おどかす積もりは無かったんだ、すまない。ただ、どんな人物達なのか知りたくてね」




ショーン「生徒会長」




伊達「うん?何だ」




ショーン「…誰から、聞いたんすか?」




いつもは陽気で、おちゃらけているショーン。しかし、この時は違った。

カオルやミカ、エレノアや自分自身…、一般市民であり、市立四日市東高等学校の生徒と言う身分【以外の】、

国連軌道宇宙軍奨学生としての、活動内容が漏洩している。


奨学生として軍事技術教育を受ける契約をした以上、内部の情報には取り扱いに慎重になるべきで、

国連軌道宇宙軍奨学生としての立場で知り得た情報は、情報の軽重に関わらず、外部へ漏らしてはならないのである。


それを踏まえて、ショーンは肌で察知する。カオルの「撃墜王」のエピソードが、外部へと漏れた。

リスキー・ビスキーの関係者でなければ、知り得る事の出来ない情報であり、

「撃墜王」のエピソードが漏れていると言う事は、

【当然、リスキー・ビスキーの関係者を通じて、高機密情報すらも、漏洩している可能性がある】

そう言う危険な状態に今、置かれていると言う事を。




ショーン「もう一度聞きます、誰から聞きました?その話」




エレノアも違和感を感じていたのか、ショーンの言葉の後に続く。




エレノア「ふふふ、情報の断片をちらつかせて、我々を狼狽させるのが趣味なのかしら?」




バアァンッ!!!




赤磐「おおいっ!!いくら何でも、生徒会長に失礼じゃないのか!」




赤磐が机を叩き、怒声でショーンやエレノアの声を封殺しようとする。

生徒会長の伊達は、ニコニコと笑顔のまま。

ショーンやミカ、エレノアは不信感丸出しで、身構え始める。

そんな時、カオルが「すっ」っと前に出る。




ミカ「カオル?」




カオルはそのまま前に、生徒会長の目の前まで歩み進めて来た。

あくまでも表情は穏やかなまま、殺気や警戒感など微塵も持たずに。




伊達「?」




伊達は首を軽く傾げ、カオルのアクションを待つ。

それはまた、カオルの次の反応、次の表情を予想し、楽しんでいる様でもある。




カオル「赤磐さん、生徒会長。…多分、この場にいる皆さん、僕達の先輩ですね」




ショーン「!」




伊達「鋭いな、君は♪」




カオル「だって、赤磐さん…怖そうだったけど、優しかったですよ♪

何か…共通点があるのかなって」




赤磐「ば、バカヤロウ!俺は優しくなんか無えやい!」




クスクスと、室内に漏れる笑い声。赤磐は顔を真っ赤に染めて否定している。




伊達「カオル君、試したみたいになってごめんね。

ここにいるのはみんな、国連軌道宇宙軍の奨学生なんだよ♪」




ミカ「わあお」




ショーン「やっぱりな(笑)何かおかしいと思ったんだ」




赤磐「まあ…よ、お前らと同じで、みんなリスキー・ビスキーに乗ってんだわ」




カオル「リスキー・ビスキーに」




伊達「ああ、名実ともに、我々は君達の先輩だ」




学校の先輩であり、リスキー・ビスキーの先輩でもある人々が目の前に。

これは、4人しかいない、今年度一年生の奨学生・教育実習生のカオル達にとって、非常に心強く感じる事である。


確かに、当たり前の話ではあるが、毎年毎年、義務教育を終えた段階…高等学校での教育開始と並列して、

国連軌道宇宙軍の奨学生制度がスタートするのだ。カオル達の「先輩」が学校にいない方が、おかしな話である。




エレノア「それで…」




伊達「うん?」




未だに釈然としないのか、それとも別の疑問が湧いているのか、

怪訝な表情のままのエレノアが、穏やかかつ冷静な口調で、伊達に問う。




エレノア「撃墜王の情報…漏洩先は、キンゼイ艦長かしら?」




伊達「それはあまり、重要な話ではないな」




エレノア「いいえ、もし情報漏洩先がキンゼイ艦長であるなら、

艦長の情報保全に対する意識を、問題視せざるを得ません」




赤磐「おいおい、細けー事は言いっこ無しだぜ!」




カオル「…エレノア」




この場を収めようと、カオルはエレノアに腕を伸ばし、発言を控える様に促す。

しかし、エレノアはまばたき一つしない様な、酷く冷静な表情のままで、

カオルの腕をやんわりと払いのける。




エレノア「それに、撃墜王の話をどう捉えているのかは解りかねますが、

もし、ムナカタ・カオルの夢を笑っているなら…」




伊達「笑っているなら?」




エレノア「ムナカタ・カオルの名誉の為に、あなた方をボコボコにする必要がありますね」




ガタッ!!


勢い良く椅子から飛び上がる赤磐、エレノアの思いがけない言葉を挑発と受け止め、

身体が自然に反応したのだ。




赤磐「…お嬢ちゃん、言って良い事と悪い事の区別、親から教わらなかったのか?」




エレノアに詰め寄りはしないものの、赤磐は身体全身から殺気を放つ様に、

好戦的な顔付きでエレノアを見据える。


不思議と…


どちらが言い出した訳でも無いのだが、ショーンとミカの二人が、

赤磐とエレノアの直線上に躍り出て、エレノアをかばおうとする。


そしてカオルは、


机を挟み、優雅に椅子に座っている生徒会長の伊達庸子と、1対1で対峙している。

もちろん、好戦的で挑戦的な視線など、伊達に向かって微塵も含まず。


カオルの瞳はまるで、 (あなたが立ち上がらないと、この場は収拾がつきませんよ)と、語っている様だ。


それを感じたのか、それとも、そもそもが「そうする」積もりだったのか、

生徒会長の伊達庸子は、微笑みを浮かべながら立ち上がる。


すると、


すっ…


何とも優雅な空気を漂わせながら、しっかりと、ゆっくりと頭を下げ、カオル達に向かって謝罪したではないか。




伊達「君達に会いたかっただけなんだ、他意は無い。

不愉快な思いをさせてすまなかったね、この通り。申し訳ない」




赤磐「か、会長おぉ!?」




伊達「情報はもちろん、キンゼイ艦長発じゃない、リスキー・ビスキーの乗組員からだ。

ただ、犯人探しは勘弁してもらいたい」




エレノア「先方の名誉にも関わる事ですからね、それは承知しました」




伊達「あの、【鬼のキンゼイ艦長】が、まるで仏様の様に穏やかだったと言うじゃないか。

だから、君達がどんな人物なのか知りたかった。鬼のキンゼイを、

笑顔にさせる人物に会いたい…ただそれだけだったんだよ」




カオル「鬼の…キンゼイ艦長?キンゼイ艦長って、おっかないんですか?」




赤磐「おうよ(笑)敬礼の手の角度が違うだけでも、殺気を放って来る怖さだ」




ミカ「私達と…全然違うね」




ショーン「そうだな、逆に信じられないよ」




幾分、生徒会室の空気が緊張を解きほぐされたのか、

次第に相手の言葉の真意を探り合う様な、心理戦は影を潜める。




伊達「私達だって信じられんよ。あの、鬼のキンゼイ艦長がな…(笑)」




カオル「なるほど」




伊達「ムナカタ君、本当にすまなかった。決して君の夢を笑った訳じゃない」




「うんうん」と、両手を組み、頷く赤磐。




カオル「気にしないでください、会長。分かり合えば、それで良いじゃないですか」




ようやく雪解け…


生徒会室の緊張感はようやく霧散し、上級生と下級生、最低限の礼儀を残して、雑談に突入する。




赤磐「まあ、お前達も座れよ。インスタントで悪いが、コーヒー入れてやる」




ミカ「あ、あの…良いんですか?」




赤磐「遠慮すんな(笑)この部屋はな、奨学生であれば自由に出入りしてくつろげるのよ」




伊達「赤磐の言った通りだ。何せ、創業時からの学校のルールでな、

国連軌道宇宙軍の奨学生でなければ、生徒会に参加は出来ない。

つまり、この生徒会室とは、奨学生友の会も兼ねると言う事だ♪」




カオル「わあ、コーヒー飲み放題だ♪」




ショーン「幸せそうだな、カオル(笑)」




エレノア「大した緊張も無く、カオルは大物ね(笑)」




カオル「エレノアの方が大物だと思うぞ(笑)だから…、ありがとう。僕の名誉を気にしてくれて」




エレノア「!!」




ミカ「エレノア、顔が赤い(笑)」




ショーン「春ですなあ」




エレノア「バカね、もう夏時間よ!」





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