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11

どこまでもどこまでも続く、果てしない暗闇の中をカズヤは無言で黙々と歩いていた。


例え、前後左右に加えて上下の感覚が無くなっていたために、前に向かって進んでいるのかそれとも後ろに向かって進んでいるのか、登っているのか下っているのか、右に曲がっているのか左に曲がっているのか、そんな当たり前の事すら分かっていなかったとしても。


何かに突き動かされるように歩みを止めることだけは決してしなかった。


希望も何もかも塗り潰してしまいそうな漆黒の冥い世界をカズヤはただ無心で歩き続けた。


そして、漆黒の世界を引き裂くように小さな、本当に小さな光を視界に捉えた時、カズヤは安堵の息を漏らし一時的に歩みを止めた。


「あら、ようやくお目覚めかしら?」


「ッ」


再び歩き出し光に向かってラストスパートをかけようとしたカズヤだが、行く手に立ち塞がり光を閉ざす者がいた。


それはニコニコと愉しそうな笑みを顔に張り付け、ゴスロリ風のドレスを纏う少女。


とてつもない長い年月を生きて殺戮を趣味としておきながらも人畜無害な、か弱き乙女にしか見えない容姿のマリー・メイデンであった。


「でも……もう少しここに居ましょうよ?ね?だって私と貴方はまだ何も語り合っていないのだし」


「邪魔だ、そこを退け。お前と話す事はない」


永遠のように長い間、漆黒の世界をさ迷い光を探し求めていたカズヤは目の前にいる相手に剣呑な声で命じる。


それでなくとも目の前にいるのはイリスを殺しかけた女。


敵意が言葉に込められているのは当然と言えた。


「い・や・よ。――……それにしても謎だわ。血を吸った時に貴方は私の眷属になっているはずなのに……もっと言えば魂には隷属魔法を刻み込んだはずなのに、そのどちらも不完全な状態になっているだなんて、どういうことかしら?まぁ、不完全ながらもパスが繋がっているおかげでこうして貴方の中で会って話が出来ているのだけれど。あ、そうそう。貴方が眠っている間、結構大変だったのよ?貴方の部下には酷い目にあわせられるし……」


「もう一度言う、そこを退け」


「全く……眷属化と隷属魔法が有効ならば、主に対してそんな口の聞き方も出来ないはずなのだけれどね。まぁいいわ。こういった事は障害があればより一層燃え上がるものと聞くし。手間暇かけて貴方を私色に染め上げるのもまた一興だわ」


こちらの話を聞いているのか、いないのか。そのどちらなのかは分からないがこれ以上の問答は無駄なものだと判断したカズヤはマリーを強制的に排除することにした。


「いいから黙って、そこを退け」


マリーの目の前まで進んだカズヤはマリーの小柄な体に手を伸ばし強引に押し退けにかかる。


しかし、押し退けようとするそのカズヤの手を他ならぬマリーが掴み止めた。


「1つだけ忠告しておくわ。この先は辛苦を塗り固めたような修羅の道。それでもなお行くというのであれば気をしっかり持った方がいいわよ?」


「……」


そう言ってド派手なピンク色の長髪をたなびかせながら道を譲ったマリーの言葉を無視しつつカズヤは歩き出す。


「っ!?」


だが、その直後カズヤは足を止めざるを得なかった。


「もう……だから言ったでしょ?気をしっかり持ちなさいと」


「……」


やれやれと言わんばかりのマリーの言葉も聞こえていないのか、カズヤはただ無言で前を見ていた。


眼前に広がるのは、これまでの戦闘で戦死した部下達の骸や激戦の末に破壊され無惨な姿に成り果てた兵器の残骸。


更に言えば戦争の負の面をギュッと固めた縮図のような地獄絵図がカズヤの求める光の前に広がり行く手を遮っていた。


「ほら、目覚めるのはいつでも出来るわ。貴方の覚悟が決まるまで私と話でもしていましょう?なんなら気持ちいい事でも――って、もう!!何でこの私が追いかける側なのかしらっ!!」


歯を食い縛り口をギュッと横一文字に結び一歩一歩、踏みしめるように重い足取りで地獄絵図の真っ只中に歩み出したカズヤに気が付いたマリーは慌ててカズヤの後を追う。


「……よいしっ……とッ!!」


「呆れた……全部“背負って”いくつもり?まぁ、私としては魂の格が上がるから歓迎すべきことなのだけれど……貴方はその重さに耐えきれるのかしら?」


人間の血と兵器の血であるオイルが混ざりあった赤黒い水溜まりに足を取られながらも転がっていた部下の骸を次々と担ぎ上げ、背中に乗らない分は手で掴んで引き摺り始めたカズヤを見てマリーが呆れとも感心ともつかないような声を漏らす。


「うるせぇ……俺が背負わないで誰が背負う。俺が殺した兵士達だ」


氷のように冷たくずっしりと重い骸を何体も担ぎ、背に乗らない分は両手で掴めるだけ掴んで前に進むカズヤ。


それでもまだ背負いきれぬ、拾いきれぬ無数の骸が辺りに転がっている。


多すぎる骸の数にカズヤの口からは後悔に満ち懺悔をするような、そんな声が漏れた。


「ふぅーん。けれど所詮は神とかいう存在に与えられた能力で呼び出した人形達でしょ?人の姿形をしていようと厳密に言えば人ではない者達にそこまでするの?それに背負い過ぎるのは考えものよ、カズヤ」


「……確かに。一部を除いて俺の周りに居るのは皆、能力で召喚した奴等ばかりだ。つまり、みんなどこか違う世界にいるオリジナルのコピーだろうさ。けどな、それがどうした?人だろうが人形だろうが化物だろうが関係ない。皆こんな俺に忠義を尽くしてくれている、俺には過ぎた仲間だ。それと背負い過ぎる?ふざけるな。これは俺が背負うべき、いや背負わなくてはいけないものだ。俺の責務であり義務であり、何より意地なんだよ」


「そう……じゃあ……彼女達は背負わなくてもいいの?」


あと一歩で求めていた光に手が届くというところでマリーが発した言葉にカズヤはピタリと立ち止まり、ゆっくりと後ろを振り返る。


「お待ち下さい……ご主人……様、私達と……どうか、どうかご一緒に……」


「さぁ、こちらに……こちらにいらして下さい、ご主人様」


背後に立っていたのはシェイルとキュロットの2人。かつて失ったメイド達だった。


2人は死亡した時と全く同じ姿で――ラミアであるシェイルは蛇の体から夥しい量の血を流し、狐人族であるキュロットは首があらぬ方向にネジ曲がった状態でカズヤの事を呼んでいた。


「……」


「どうしたの?カズヤ。貴方が大切にしていた者が呼んでいるわよ?行かないの?」


マリーは口元に小さな嗤いを浮かばせながら無言で黙り込んでいるカズヤの反応を伺う。


「失せろ、紛い物」


しかし、カズヤが発したのは拒絶の言葉だった。


「一年に満たない短い間の付き合いだったが、2人は絶対にそんな事を言わない事だけは分かる。だからさっさと消え失せろ、紛い物ッ!!」


カズヤが吼えると同時にシェイルとキュロットの姿をしていたモノは砂上の楼閣のようにサラサラと崩れ灰へと還った。


「あら残念。彼女達を使えばここに留まってくれるかと思ったのだけれど」


「フンッ、見くびるなよ?あんな出来の悪い紛い物に――クソッ!!」


マリーの言葉に嘲笑で返してから前に向き直り、最後の一歩を踏み出そうとしたカズヤだったが足に踏ん張りが効かず片膝を付いてしまう。


足が動かないッ!!


いくら立ち上がろうと試みても足は震えるばかりで、言うことを聞くことはなかった。


「フフッ、限界がきたみたいね。さぁ、こっちに来て私と――チッ!!」


立ち上がろうともがくカズヤを闇の世界に連れ戻すために手を伸ばしたマリーは、突然鋭い痛みが走った手を反射的に引っ込め後退る。


「……?……ッ!!」


自分から遠ざかったマリーの気配を疑問に思ったのも束の間、見知った暖かな温もりに両脇を支えられカズヤは最後の一歩を歩み出す。


「はぁ……今回はここまでのようね。また会いましょう、カズヤ」


引っ掻き傷と青アザが出来た手を擦りながら口惜しそうな表情を浮かべて姿を消したマリー。


しかし、当のカズヤはマリーの事など気にする余裕はなく、光りに呑まれる直前に微笑みながら小さく手を振り見送ってくれていたシェイルとキュロットの姿を目に焼き付ける事で手一杯であった。



 

 

 







 




 

 

 


――――――――――――




「……んっ、んんっ……ぁ…………知らない天井――……じゃないな」


長い眠りの中で何か大切なものと出会っていたような感覚を味わいながらも、ようやく目を覚ましたカズヤはお決まりのセリフを言う前に、自分がどこに居るのかを悟り口をつぐむ。


清潔感溢れる白い壁に白い天井。


そこは以前乗っていたヘリが撃墜された時に負った怪我を癒す為、使用した病室であった。


「……あぁ、クソ、体が……鉛みたいに重い……前の時より……酷いな、こりゃ……」


まさか同じ病室に2度も入る事になろうとは思ってもみなかったカズヤは複雑な心境で天井を眺めながらブツブツと独り言を漏らしていた。


「お……兄さん?」


そんなカズヤの独り言が切っ掛けになったのか、広い病室の中にひしめく寝袋の内の1つがもぞもぞと蠢き中に入っていた少女が、まるでサナギから羽化する蝶々のように這い出てきた。


しかし、サナギから這い出しその場に立ち尽くす蝶々の姿は控えめに言っても酷かった。


生気が消え失せた顔は重病人のようにやつれて青白く、宝石のような緑と碧眼のオッドアイは絶望の輝きだけを光らせ、目元には真っ黒な隈。


ウェーブが軽くかかった長い金髪だったはずの毛髪は、色素が抜け落ち真っ白な白髪に成り果て。


唇はカサカサに乾きひび割れ、健康時の潤いに満ちた面影もなくその可愛らしい容姿を損ねていた。


「イリス……か?どうした、その顔!?」


怪我を負いベッドに横たわっている自分よりも安静にして寝ていないといけないような――変わり果てたイリスの姿を目の当たりにして、カズヤは何かの見間違いではないのかと瞬きを繰り返し目をゴシゴシと擦る。


しかし、いくら目を擦った所で事実が変わることは無かった。


「……」


「一体……何があったんだ、イリス?」


「……う」


「う?」


「うっ、うっ、っ、うわぁああああああああんッ!!」


目を覚ましたカズヤの顔を凝視し立ち尽くしていたイリスは肩を震わせ声や息を何度も激しく吸い上げるようにしてしゃくりを上げ始める。


そして遂には着ているドレスのスカート部分を握り締めながら突然大号泣し始めた。


「な、何!?」


「なんだいッ!?敵襲!?」


止めどなく大粒の涙をボロボロと流し、喉が張り裂けんばかりに泣きじゃくるイリスの泣き声に驚き次々と寝袋が開かれる。


そこから出てきたのはイリスと同様に色濃く浮かぶ疲労でその美貌を陰らせている妻達であり、メイド達であった。


その後、5分もしない内にカズヤの居る病室は大勢の人で溢れることになる。


駆け付けた医師や看護師に始まり元から居た妻やメイド達で病室は埋まり、入室が叶わなかった側近の者達は入り口から遠巻きにカズヤの事を眺めていた。


「ヒック……ヒック……」


「全く……あまり心配させないで頂戴」


「カレンの言う通りさね。アンタがもう目を覚まさないんじゃないかと気が気では無かったんだからね、あたしらは」


「よかった……本当によかった……」


「もぉ……お姉ちゃんとイリスは泣きすぎだよ?せっかくカズヤが目を覚ましたんだから笑顔で……ッ……答えて……ヒック……あげ……ッ、うええぇぇぇぇん!!よ゛がっだよ゛ぉおおーー!!めがざめでぇえええーー!!」


「お目覚めになられるのを一日千秋の思いでお待ちしておりました。総統閣下」


「おはようございます、マスター」


ベッドの最前列に陣取った妻達は思い思いの言葉をカズヤに掛ける。


最もまともに声を掛ける事が出来たのはカレンやアミラ、伊吹、千代田だけでイリスは未だに嗚咽を漏らしており、フィーネも安堵からかポロポロと涙を流していた。


加えて気丈に振る舞いイリスとフィーネが泣いているのを笑い飛ばそうとしたリーネは2人の涙に感化されたのか、イリスに遅れて大号泣を始めてしまっていた。


「心配をかけたな……ほら、イリス。俺はもう大丈夫だから泣くな」


「ヒック、でもッ、でも私のせいでお兄さんがっ!!」


「イリスが気にする事じゃないよ」


マリーが事の元凶とはいえ、間接的に自分がカズヤを殺しかけたと責任を感じて泣いてばかりいるイリスを泣き止ませるために、カズヤは手を伸ばしイリスの頭を撫でようとした。


自分から見て“左側”に居るイリスの頭を。


「……あれ?」


だが、いくら“左手”を伸ばそうともイリスの頭を撫でる事は出来なかった。


「……ぁ」


カズヤが左手を動かそうとしている事に気が付いたイリスは元々青白くなっていた顔を更に青ざめさせる。


「……ごめんなさい……ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!私が居なければお兄さんは!!私が居たからお兄さんが!!私なんか――」


しまった!?と思った時には時既に遅し。


記憶の混乱で左腕を失っていた事を忘れていたカズヤの失敗でより一層責任を感じてしまったイリスは謝罪の言葉を延々と口にし再度泣き始め、更には悪い方へと思考が巡り最悪の言葉を吐き出そうとしてしまう。


「ダメ!!」


しかし、寸前の所で側にいたメイド――ダークエルフのルミナスの魔法によって強制的に眠らさせられた。


「ストレッチャー!!ストレッチャーを早く!!」


「は、はい!!」


眠りに落ちたイリスを抱き止めたルミナスが看護師達に叫ぶ。


「「「「……」」」」


ルミナスの機転で事なきを得たものの病室の空気は一転して重苦しいモノへと変化していた。


「……貴方が眠っていた間も、ずっとあんな風だったのよ。寝ても覚めても悪夢を見ているように苦しんでいたわ。よほど貴方に怪我を負わせてしまったことを気に病んでいたのね」


「……そうか」


小声でそう教えてくれたカレンの言葉にカズヤは短く返事を返し、ストレッチャーに乗せられたイリスのやつれた顔を眺めていた。


「……皆様。閣下はお目覚めになられたばかりで体力もまだ戻っておりませんしこれから精密検査もございます。また、皆様もかなりの疲労が溜まっておられるかと思いますのでお話は次の機会に」


用意されたストレッチャーに乗せられイリスが病室から運び出されると同時にカズヤの主治医が遠回しに病室からの退室を命じた。


「そうね……色々と話したい事はあるけれど……また次の機会にしましょうか」


「……そうだね。ほらフィーネ、リーネ、行くよ」


「はい」


「ヒッグ……ヒッグ……う゛ん」


とにもかくにもカズヤが目を覚ました事で一応の安心を得たカレン達は後ろ髪を引かれながらも大人しく病室を後にした。


「……千代田、俺はどのくらい眠っていた?」


立場上報告せねばならない事がある千代田と伊吹を除いたカレン達4人が去っていくのを笑顔で見送った後、瞑目し何かを考えていたカズヤが唐突に口を開く。


「1ヵ月と4日、それに11時間36分12秒です。マスター」


「1ヵ月もか……――それで聞いてもいいか?千歳はどこだ?」


カズヤは目を覚ましてからずっと気になっていた事を問い質した。


「それが……姉様はマスターに会わせる顔がないと言って」


「どういうことだ?千歳に何があった?」


「それは……その……なんと言いましょうか……」


「私からご説明致します」


珍しく口ごもる千代田に代わって伊吹がカズヤに事の成り行きを説明し始めた。


「千歳が……右目を失っただと!?」


伊吹の説明を聞き終えたカズヤは、あまりにも受け入れがたいその説明に思わず聞き返していた。


「はい。閣下が昏睡状態に陥ってから1週間後。本土襲撃を行った敵部隊の居場所を霧島遥斗中尉の献身的行為により特定。その後、千歳副総統は部隊を率いて出撃し敵部隊と交戦。グルファレス魔法聖騎士団は千代田総統補佐官が殲滅し、監獄島を襲撃したローウェン教教会騎士団はセリシア・フィットロークとアデル・ザクセンの両名が共同殲滅。なおローウェン教教会騎士団に同行していた7聖女全員をセリシアが生け捕りにしております。そして総統閣下のお命を狙った暗殺者集団ブラッディーファングのボス、マリー・メイデンと千歳副総統が交戦。結果的に相討ちという形になりましたが、その際、額から右目の上を通って頬に抜ける大怪我を負い右目を失明、加えて全身に無数の刃傷を受けていたため、つい先日まで千歳副総統も入院しておられました。詳細はこちらのタブレット端末の中に」


「……分かった、後で目を通しておく。千代田、千歳を呼んできてくれ。あとセリシアとアデルもな」


「ハッ、承知致しました」


カズヤの命令に返事と敬礼をして病室から千代田が出ていった後、カズヤは伊吹に幾つかの質問を投げ掛けた。


「伊吹、幾つか聞いてもいいか?」


「ハッ、なんでしょう?」


「まず……まず、そうだな。遥斗の献身的行為というのは何だ?“中尉”と呼んでいることと関係あるのか?」


軍籍を剥奪された筈の男に対し階級を付けて名を呼んだ事に疑問を抱いていたカズヤが問う。


「ハッ、霧島遥斗中尉の献身的行為というのはローウェン教教会騎士団が監獄島を襲撃した際に、連れ出された捕虜達の中に紛れ込み、敵の居場所を自身の発信器でこちらに知らせた事です。ですが途中で身元がバレた中尉は拷問を受けていたらしく千歳副総統達が駆け付けた時には両目を潰され、膝から下が無くなっている状態で……最期は中尉自身が持っていた自決用の毒薬をメイデンに無理やり飲まされ死亡――戦死いたしました。その功績を評価し千歳副総統が中尉の軍籍を復活させ軍人としての死亡扱いにするという事でしたので中尉扱いをしております」


「……そうか……ん?……持っていた自決用の毒薬で戦死?伊吹、それは確かなのか?」


「はい、千歳副総統や千代田総統補佐官、その他グルカ兵の特殊部隊も確認している事ですので間違いはありません」


「中尉の遺体はどうした?」


「遺体は取り敢えずの応急処置を施した後、本土に持ち帰ってから受取人を申し出て来た古鷹五十鈴中佐と涼宮明里小尉に引き渡しました。引き渡したその日の内に葬式を行い、遺骨は海に散骨したと聞いています。それが何か?」


「……いや、何でもない」


伊吹の言葉に小さく笑いながら首を横に振るカズヤ。


「上手くやったか……」


晴れ晴れとした顔で、ついポロリと漏らした言葉は誰の耳にも届くことなく空に溶けていった。

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