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グルファレス魔法聖騎士団の殲滅を妹である千代田に任せ、単身で騎士団の半包囲を斬り抜けた千歳は暗殺者集団ブラッディーファングを、その統率者であるマリー・メイデンの姿を目にした瞬間、自らの心の中で渦巻いていたドス黒い大火が、より強さを増し何もかも焼き尽くしてしまいそうな業火と成り果てたのを確かに感じ取っていた。


「ようやくだ……ようやく、会えた」


カズヤの暗殺未遂事件に端を発した報復攻撃を行う一方で、ろくな休息も取らずに血眼になって探しに探した怨敵を目の前にした千歳は瘴気のような黒く澱んだオーラを放ちつつ、ネットリと粘りつくような粘着性のある黒い笑みを浮かべ口元を三日月型に吊り上げる。


その瞳に爛々と輝くのは殺意に満ちた赤黒い光。


すなわち怨念と憎悪で形作られた眼光であった。


「あら、やっぱり貴女が来たのね」


常人であれば、正気を失い錯乱してしまうような威圧感をまともに浴びていながらもマリーは飄々とした態度で千歳と対面する。


「……でも残念だわ。ちょっと前までなら貴女みたいな強く美しい女と殺り合うのは大好物だったのだけれど……今の私には大事な大事な男がいるから治るとはいえ無駄に体を傷付けたり力を消費したくないの。そこで提案があるのだけれど。私も貴女を見逃してあげるから貴女も私を見逃し――ムゴッ!!」


困ったような笑みを浮かべて、お互いに見てみぬフリをしてこの場を収めようという提案をしていたマリーの口に突然、刃渡り30センチ程の投擲用の直刀が突き刺さる。


「オゴッ、ゴッ……ぺっ……これが返事という事でいいのかしら?」


喉奥からうなじにかけて突き抜けた直刀を引き抜き放り捨てたマリーは眉をひくつかせながら肉体を再生させ、直刀を投げた張本人である千歳にそう問い掛ける。


「ご主人様を傷付けた貴様をワザと見逃す?ふざけるな。何があろうと貴様はここで死ぬ。私が――殺すッッッ!!」


悪鬼羅刹の如き面相に断固たる意思を秘め、千歳が吼える。


「そう。だったらしょうがないわね。ボルマー、貴方達は後ろに下がって手出ししないように」


「……言われなくても、あんなおっかない女の前に立とうなんて思いませんよ。姉御」


手出し無用と言われたボルマー以下の暗殺者達は震えが止まらない体を隠そうともせずに後ろに下がり、千歳とマリーの戦いを傍観する事になった。


「フフッ、それもそうね。――さて、愉しく死合いましょう」


逃げるように素早く後ろに下がったボルマー達を見送ったマリーは千歳に向き直ると満面の笑みで戦いの始まりを告げる。


その言葉を合図に激情に身を任せた千歳は予備の日本刀を抜き放ち両手に日本刀を握り締めるとマリーに向かって突貫する。


対するマリーも大鎌の得物を構え千歳に向かって駆け出す。


「オオオオオオオオオオオッ!!」


「ハアアアアアアアアアアッ!!」


双方が一瞬の間に得物を激しく打ち合わせ瞬時に擦れ違う。


「チィッ!!」


「クッ、流石にやるわ――ねッ!!」


左肩の肩口を薄く斬り裂かれた千歳は悪態を吐きながら反転。


右腕を付け根の辺りからバッサリと斬り飛ばされたマリーは、右腕を再生させる一瞬だけ千歳より遅れて反転する。


その一瞬の差が、コンマ数秒が戦いの流れを左右した。


「クタバレェエエエエエエッ!!」


「ッ、クッ、ッツ、ッ!!」


一瞬の差を利用してマリーよりも早く攻撃体勢に入り日本刀を振るった千歳はマリーに攻撃の暇を与えず、苛烈なまでの斬撃を繰り出していく。


その猛攻を凌ぐハメになったマリーは大鎌の刃や柄で日本刀をいなしながら致命傷を防ぐものの、徐々に受ける傷の大きさや数が目立ち始める。


最初は掠った程度の小さな刃傷だったものが次第に大きく深いものへと代わり、その身に纏う装飾過多なゴスロリ風ドレスもボロボロに成り果て、しかも傷の再生前に流れ出た多量の血を吸ってドレスが重くなってしまう。


そうしたこともあり、劣勢に陥ったマリーの身体からは白刃が煌めく度に血飛沫が噴き、切断された肉片が飛んでいく。死んだ回数も10や20を軽く越えた。


「こンのッ、いい加減にしなさいッ!!」


猛攻を耐え死に続ける事に苛立ち鬱憤を溜め始めたマリーは、ダメージを受ける事を覚悟で大鎌を横凪ぎに振るい、千歳に距離を取らせることに成功する。


「ハァ、ハァ……マッタく……まるで獣ね、貴女」


結果、対価として顔半分を持っていかれ一度“死んだ”ものの不死であるマリーからしてみれば何の問題も無く平然とした様子で顔を再生させながら喋っていた。


「――副長、このままだとさすがの姉御も不味いんじゃ……」


長時間一方的に攻め続ける千歳と戦うマリーの体から噴き出る血飛沫や、空を舞う肉体の一部を見ていたブラッディーファングのメンバーが副長であるボルマーに声を掛ける。


「バカ。姉御が負ける訳がないだろ。不死なんだぞ?如何にあの女が恐ろしく強かったとしても……ほら、よく見てみろ。そろそろ形勢が逆転してくる頃だ」


しかし、マリーの真価が発揮されるのが今からだと知っているボルマーは余裕の表情で事の成り行きを見守っていた。


そして、ボルマーの言葉が事実である事を証明するように戦いに変化が現れた。


「はぁ、はぁ……」


「フフッ、流石の貴女も疲れてきたみたいね」


不死であるが故に、いくら体に刃が突き立てられようとも関係なく、また体力や膂力も人間の数十倍を誇る吸魂鬼マリーに対し息つく暇もない怒濤の猛攻を仕掛けていた千歳は青息吐息の状態だった。


「ッ、黙れ」


種族を隔てる圧倒的力の差を気力で埋め合わるのも限界に達していた千歳だが悲鳴をあげる体に鞭打ってマリーと戦い続ける。


「その強がりがいつまで持つか見物ね。フフッ、それじゃあ、続きの前に――ちょっとここでお話でもしましょうか」


「なに?」


額から汗を流し荒い息を吐いていた千歳は唐突なマリーの言葉に眉をひそめる。


「なんのつもりだ」


「なんのつもり……と言われてもね。疲労困憊の貴女を嬲り殺しても愉しくないからよ。それに貴女には聞きたい事が沢山あるの。カズヤの寵愛を一身に受けて、誰よりも信用され心からの信頼を得ている貴女に……ね?」


「……」


目を細めて意味深なセリフを吐くマリーに千歳は警戒心を露にする。


だが、千歳の警戒心もなんとやらマリーは勝手に語り始めた。


「ウフフッ、そんな風に睨まないで頂戴。別にバカにしたりしている訳じゃないのよ?ただ、聞いてみたかったの――カズヤが望郷の念を抱いていることを知っているのかどうかを」


マリーの口から飛び出て来た言葉は千歳に取って完全に予想外のモノだった。


「何……を言っている、貴様」


「あら?知らなかったの?カズヤは常日頃から、ふとした瞬間に望郷の念に駆られているのよ。まぁ、無理もないわね。いきなり“こっちの世界に送られた”のだから」


「……」


マリーの言葉を信じた訳ではないが、以前少しだけそんな素振りがカズヤに見受けられただけに一笑に付す事が出来ず、千歳は無言を貫く。


「あとは……そうね、カズヤの家族構成は知っているかしら?」


「ッ!!」


そういうことかっ!!


自身に取って有利な状況に傾き出してきた場面に水を差してまで話をしようとなどと言ってきたマリーの思惑に気が付いた千歳は悔しさのあまり唇を噛み締める。


「誕生日や出身地、好きな食べ物、好きな色、好きな服装、趣味、特技、初恋の相手、告白して玉砕した回数、精通した年齢――カズヤに一番近い貴女なら全部とは言わずとも、もちろん知っているわよねぇ?」


しかし、マリーは千歳に構うことなく不可視の楔を次々と容赦なく打ち込んでいく。


「……黙れ」


「あら?あらあらあら?黙れということは……もしかして全部知らないの?アハハハッ、笑っちゃうわね。カズヤの忠臣を気取っている貴女がカズヤの事を何も知らないなんて。あ、ちなみに聞いておいて何なんだけれど私はカズヤの血を吸った時に全部知る事が出来たから。そう、カズヤの全部、何もかもを」


「……黙れ……黙れ」


「カズヤも可哀想ね。何も知ろうとせず理解もしようとしない、こんな女が一番身近に居るだなんて。――そうだ、カズヤが私の手元に来たら、うんと可愛がってあげましょう貴女みたいな存在を忘れ去るまで♪」


「……黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ――だまれええええええええッ!!」


「フフフッ、いい具合に魂が輝き出したわね。それにその怒りと屈辱に満ちた顔、その顔がどんな風に絶望に染まるのか楽しみでゾクゾクしちゃう――さぁ、休憩も終わり。ここからは私が攻める番よ。せいぜい楽しませて頂戴ッ!!」


「グゥ!?」


精神的な揺さぶりをかけられた上に疲弊した体で果敢にも勝負を挑んだ千歳だったが、やはりと言うべきか先程までの優勢は見る影もなく形勢は逆転していた。


そして一度守勢に回った千歳の旗色は芳しくなかった。


「ほらほら、どうしたのッ!?逃げたり避けたりしてばかりじゃ私を殺すことなんて出来ないわよ!!」


命を刈り取ろうとする大鎌を日本刀ではね退けかわす千歳の体に痛々しい生傷が増えていく。


「このッ!!」


必死の抵抗を続ける千歳だが先程の意趣返しとでもいうかのように、カズヤの寵愛を少しでも受けようと磨きをかけていた珠のような肌に次々と醜い刃傷が刻まれ、黒い軍服には血が滲んでいく。


それでもなお、千歳は歯を食い縛って痛みを堪えつつ執念で日本刀を振い続けた。


「ほらほら、右が甘いわよッ!!」


「ッ、クソッ!!」


しかし、疲労からくる集中力の欠如により千歳は失態を犯してしまう。


「しまった!?」


日本刀を交差させた状態で振り下ろされたマリーの大鎌を受け止めたのだが、その際に力を流しきれず日本刀をへし折られてしまったのだ。


「隙ありッ!!まずは、その左腕を斬り落としてあげるッ!!」


武器を失い、丸腰となった千歳に大鎌が迫る。


しかし、大鎌が千歳の左腕を斬り落とすことは無かった。


「ッ、まだまだぁあああああッ!!」


得物を破壊され疲労と傷の痛みに顔を歪ませて尚、闘志を失っていなかった千歳はマリーの一撃をヒラリと避け、反撃の狼煙となる一撃を叩き込む。


「ガギュッ!?」


2発の銃声が轟き、マリーの頭がザクロのように弾ける。


「アガ、アガ、ァ、……い、一体何が?」


首より上が完全に消失したマリーの肉体は糸が切れたマリオネットのように一度崩れ落ちたが、頭が再生するとすぐにヨロヨロと立ち上がった。


「ふん、流石の貴様も頭を潰されれば動きが止まるか」


銃口から硝煙を立ち上らせるS&W M500を両手に千歳はニヤリと笑う。


「チッ、ずいぶんと無粋な物を使うのね」


「無粋?ほざけ、貴様を殺す道具に無粋も粋もあるか。貴様はただ私の手で死ねばいい」


そう言いつつ銃口をマリーに定めた千歳は躊躇い無く、連続で引き金を引いた。


マズルフラッシュを瞬かせ、銃口から飛び出した計8発の500S&Wマグナム弾は再びマリーの身体を穿たんと飛翔する。


「こんなモノ!!効かないのよ!!」


だが、弾丸の弾道を見切ったマリーは500S&Wマグナム弾を紙一重でかわし千歳に肉薄すると大鎌を振り下ろした。


「――なら、これでも喰らってろ!!」


「もがっ!?――ッッ!!」


振り下ろされた大鎌に軍服を薄く切り裂かれながらもマリーの懐に潜り込んだ千歳は安全ピンが抜かれ、点火レバーが無くなっている起爆直前のTH3焼夷手榴弾をマリーの口に無理やり捩じ込み、そして下顎に上段蹴りを見舞いし蹴り飛ばす。


「―――ッ!!」


その直後、TH3焼夷手榴弾がマリーの口内で炸裂。声無き絶叫が辺りに響くと同時に肉の焼ける臭いが辺りに漂う。


「アギ、グガ、ガガッ……ガッ――フッ、フフフッ、今のは痛かったわ……もう遊びは終わり……苦しみの中で嬲り殺してあげるわっ!!」


僅か2〜3秒の燃焼時間とはいえ摂氏2000度を越える熱で生きた松明にされ、ぶちギレたマリーは先程よりもキレと鋭さを増した鎌使いで千歳の身体を傷付けていく。


「それはこっちのセリフだッ!!貴様がくたばるまで何度でも何十何百何千何万だろうが殺して殺して殺し尽くしてやるッ!!」


しかし、千歳も負けてはいない。腰のベルトに差していた大型のククリナイフで応戦しマリーの肉や骨、更には命を断つ。


2人の凄惨を極める戦いは果てしなく続き、辺りが互いの血で真っ赤に染まるまで続いた。


そして、戦いに終わりが見えた時、まだ戦う力を残していたのはやはり――マリーであった。


「アハハハッ、いくら強くても、どんな小細工を使ったとしても所詮、貴女はただの人間。吸魂鬼であり不死である私を殺すなんて不可能。それにカズヤの事を誰よりも知り想う私に勝とうだなんて千年早いのよ!!」


「ハァ……ハァ……」


血塗れで満身創痍、立っているのがやっとの千歳とは対照的に傷ひとつない身体で勝利宣言を口にしたマリーが戦いに決着をつけるべく、千歳の首を刈ろうと大鎌を振りかぶった時だった。


「――……そうだな。確かにこのままではお前を殺す事は出来ないようだ。だがお前を“倒し勝つ”方法ならいくらでもあるッ!!それと――貴様がご主人様の事を語るなッ!!」


振るわれた大鎌を掬い上げるようにククリナイフで弾き飛ばした千歳は、役目を終え刃が砕け散ったククリナイフを放り投げるとマリーの懐に飛び込んだ。


「なッ!?」


最早虫の息であったはずの千歳から、想定外の反撃を受けたマリーは一瞬慌てたが所詮は無駄な足掻きと考え、千歳の反撃を受けた後で確実に首を刎ねればいいと楽観的な考えを抱く。


だが、不死の体を持つが故の油断がマリーに取って致命的なものとなる。


「――えっ?」


スロモーションのように時間がゆっくりと流れていく中で、懐に飛び込んできた千歳が何をするのだろうかと、少しだけ興味を抱いていたマリーは千歳が自身の体に注射器の針を突き立て、容器の中に入っていた薬液を注入するに至って己の油断を悔いることになった。


「グッ!!アアアアアアアアアッ!!何を、私に何をしたああああああああっ!!」


長きに渡る生涯の中で今まで感じた事のない感覚――無理矢理体を作り替えられるような想像を絶する苦痛にマリーは余裕も何もかもを捨て去り鬼のような形相で声をあげ、ヨロヨロと覚束無い足取りで後退る。


「いい様だ。貴様にはお似合いだな」


「アアアアアアアアアッ!!熱い、体が、熱い!!」


もがき苦しむマリーの姿を愉悦に歪んだ顔で眺める千歳は、とある実験の副産物として開発された薬品に思いを馳せる。


それはマリーと同じ様に不死であるヒュドラを実験する過程で、不死の生物の特徴にして最大の強みでもある肉体再生を阻む一番簡単な方法として細胞分裂を阻害すればいい事が分かったため、不死の敵が現れた場合に備えて準備されていた薬品であった。


物は試しと持ってきていたが、科学者達の予想通り不死に対してはある程度有効なようだな。


「決着を……つけるぞ」


破壊された時に半ばから刀身が折れてしまっている日本刀を突き刺さっていた地面から引き抜いた千歳はマリーに最後の戦いを挑む。


「くぅううっ!!はぁはぁ、何をされようと私は死なないッ!!勝つのは私よ!!」


悪寒や震えが止まらない身体を押してマリーは大鎌を拾い構える。


「オオオオオオオオオオオッ!!」


「ハアアアアアアアアアアッ!!」


戦いが始まった時のように一瞬で交差した2人。


しかし、交差した後はどちらも得物を振り抜いた体勢で固まっていた。


「「「「……」」」」


息が詰まるような重苦しい沈黙が辺りを満たし、2人の戦いを見守っていた者達は固唾を飲んで、その時を待つ。


「クソ……手応えが軽い……届かなかったか……」


状況が動いたのは10秒程経ってからだった。


額から右目の上を通って頬に抜ける傷から流れ出した血がツーッ、と顎先を伝わって滴り落ち、ポタポタと地面に赤い斑点を作る。


「姉様ッ!!」


「ッ、私の獲物だとか大見得を切っていた癖に世話が焼ける人ですね、もう!!」


顔の傷から血を流し、前のめりにゆっくりと倒れ出した千歳の身体を、騎士団を殲滅しこの場に到着したばかりの千代田とセリシアが慌てて受け止める。


「アハッ、アハハハハハハッ!!ほら見なさい!!私が勝った―――ゴプッ!?あ、あぁ、ああああああああああッ!!」


千歳が倒れ千代田とセリシアに受け止められてから動き出したマリーが勝利を確信した直後、左腕がボトリと音をたてて地面に落ち更には腹部が裂ける。


そしてマリーは食道を駆け上がってきた大量の血を何度も何度も口から吐き出し始めた。


「か、体が……再生……しない!?痛い……痛いッ!!」


肉体再生が出来なくなっていることをようやく知ったマリーは生まれて初めて癒えない傷の痛みを知り、のたうちまわる。


「姉御ッ!!大丈夫ですか!?」


相討ちという予想外の決着に慌てて駆け寄るボルマー達。


「ふ、ふふっ、ざまあみさらせ……一矢……報いたぞ」


「この、よくもッ!!よくもぉおおおおっっ!!殺してやる!!殺してやるぅううううっっ!!」


互いに仲間の介抱を受けながら激しく視線をぶつけ合う千歳とマリー。


千歳はしてやったりとばかりに笑みを溢しマリーは鬼の形相を浮かべ荒ぶる。


「ちょ、動かないで下さい、姉御!!内臓が飛び出しますから!!」


「黙れ!!あの女を殺す、殺すぅううううっ!!」


「あ〜もう!!てめぇら、ずらかるぞ!!道を切り開け!!なんとしてもここから姉御を逃がす!!」


「「「「応ッ!!」」」」


怒りに囚われ暴れるマリーを抱き上げたボルマーは部下に指示を出して、この窮地からの脱出を図る。


「全部隊、逃がすなッ!!必ず仕留めろ!!」


「姉様!!動かないで下さい!!」


「あっ、もう!!わざわざなけなしの魔力を使っているのですから、大人しくしていて下さい」


しかし、そう簡単に千歳がマリーの逃亡を許す筈もなく、包囲網を敷いていたグルカ兵に攻撃を命じる。


「お前達も奴を追え、何としても奴を殺すんだ!!今なら殺せる!!」


グルカ兵とブラッディーファングのメンバーが激しい攻防を繰り広げているのを見て、千歳は自身の傷の手当てに追われる千代田とセリシアにマリーの追撃に加わるよう声を上げる。


「駄目です。今は姉様の事が最優先です。――衛生兵!!早く来い!!」


「私の事などどうだっていい!!今は奴を――」


「お黙りなさい!!あの化物を殺してやりたいのは山々ですが……貴女を失えばカズヤ様が悲しみます。ですから今は貴女を助けます。繰り返しますが、これはカズヤ様を悲しませぬ為の治療、分かったら黙って治療を受けていなさい」


血を流し過ぎて失血死寸前の千歳を一喝して黙らせたのは意外にもセリシアであった。


「……」


カズヤのためと言われてしまえば黙るしかない千歳は不服そうな表情を浮かべていたが、大人しく治療受け始めたのだった。


その後、結局マリーを含む2名を討ち漏らしたとの報告を受けた千歳達は作戦失敗の苦々しい味を噛み締めながら本土に帰投する事になった。

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