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アレクシアの制止を無視しティルダと2人で打って出たキセルは自身の攻撃によりモウモウと舞い上がった土埃の中へセリシアを追い込む事に成功すると具現化した6つの籠手を消し構えを解き、やれやれといわんばかりに首を振り独り言を漏らしていた。


「全くもってバカだねぇ、元が序列第7位。それも召喚魔法で呼び出した低級の魔物を複数使役出来る事だけが取り柄で身体能力も高くないアンタが私らとの直接対決で勝てる訳が無いんだよ……」


どこか悲しそうな顔で、そう独り言を漏らしながらキセルはセリシアを仕留めに行ったティルダの帰りを待っていた。


「――キセル!!毎度毎度、勝手な行動をするな!!ティルダもだが何かあったらどうするんだ!!少しは私の指示に従ってくれ!!」


「ん?あぁ、悪い悪い。ついね」


「ついね。ってちゃんと私の話を聞いているのか、お前は!!そもそもだな――」


「……」


あーあ、また始まっちまったよ。アレクシアのお小言が……。


ティルダ、頼むから早く帰って来ておくれよ……。


「――であるからしてだな。今回の戦いは敵国に乗り込み囚われた信徒達を救い出す事で帝国内に蔓延る厭戦ムードを払拭し、落ちきった士気を高揚することにあるのだ。他にも副次的な目的としてローウェン教の素晴らしさと教会の権威を世に知らしめる事。加えて大局的見地から言えば此度の戦の流れを変え最終的な帰趨でさえ決定付けるかも知れない重要な戦いなのだ。それをだな――」


まただ、とばかりに苦笑しているゾーラとジルを従えたアレクシアのお小言を右から左へと聞き流しながらティルダの帰りを待つキセルだったが、いつまで経ってもティルダが姿を現さない。


……しっかしティルダの奴、遅いねぇ。何やってんだか。


帰って来るのが、やけに遅い事を訝しんだキセルがティルダの名を呼ぼうかと悩んだその時。一陣の強い風が吹き、宙に舞っていた土埃を全て吹き飛ばす。


突風の風下にいたキセル達は目を瞑り、飛んできた土埃が目に入らないように耐える。


そして土埃が晴れた先を見ようと4人が瞼を開き、次いで瞼を限界まで見開く。


「そんな……まさか……ッ!?」


「おいおい……」


「あ、あり得ないわ……」


「……ティルダがセリシアに……負けたってのかい?」


驚くキセル達が見た光景、それは植物タイプの魔物――ヒトクイウツボカズラを背に従えつつ悠然と佇み不敵に微笑むセリシアの姿であった。


「フフフッ、何故?どうして?という顔をしていますが……貴女達も思っていたより賢くないようですね」


「……それは一体どういう意味だい?」


全員の意思を代弁するようにキセルが声を上げる。


「分からないのですか?私は一度死に生まれ変わっているのですよ。他ならぬカズヤ様の手によって。まぁ、正確には以前の私が死んだという意味ですが――」


手で口元を隠しながらクスクスと上品な含み笑いを挟みつつセリシアは言葉を続ける。


「――そんな私が以前のような弱き者だとでも?冗談ではありません。というか貴女達の筋肉しか詰まっていない“おつむ”でも少し考えれば分かるはずです。ちょっと召喚魔法が上手く使える程度の小娘が、あの至高の存在であらせられるカズヤ様のお側に居られる訳がないでしょう。あの方に仕え側に侍る権利があるのは全てを完璧にこなせる者。容姿が優れているのは勿論、閨の中から戦場まで付き従う事が出来なければ話になりません。故に――私を以前のような弱き者だと思い舐めない事です」


「「「「ゴクッ」」」」


話の終わりと同時にセリシアから放たれた凄まじい威圧感。以前のセリシアには無かったそれに晒されキセル達は自然と喉を鳴らし唾を飲み込んでいた。


「そして、それは信徒達にも言えることです」


不意に辺りを見渡したセリシアの視線に導かれるようにキセル達が今まで気にしていなかった周囲へ目を向ける。


「なんという……」


「……冗談だろ」


「そんなっ!?うそ……」


「悪い夢でも、見てんのかい私は……」


すると、そこではローウェン教教会の誇る騎士達が生娘で戦いのたの字も知らぬはずの修道女達にボコボコにされ劣勢に陥っていた。


「情けない!!異教徒の女相手に何を手こずっているのですか!!さっさと片付けなさい!!」


戦況の悪化を見るに見かねた大司教レベルクが声を張り上げ騎士達に発破をかけるが、戦況は一向に好転しない。


「フフッ、今騎士達と戦っているのは私が選りすぐり鍛え上げた精鋭達。ゆくゆくはカズヤ様の側に侍る者達。そう簡単に倒せるとは思わぬ事です」


騎士を圧倒する修道女達に加え、看守やセリシアが召喚したゴブリン、そしてアデルといった面々が完全に鉄火場を支配していた。


「元味方を斬るのは心苦しいが、容赦はしない!!」


「皆、アデル様に続くのです!!」


「「「「「はいっ!!」」」」」


セリシアやキセル達が見ている間にも戦いは進み陣形を整え巻き返しを図る騎士達に、聖剣を携え風の鎧を纏ったアデルが斬り込み穴を穿つ。


「き、来たぞッ!!迎え撃――グハッ!!」


「クッ、クッソォォ!!何なんだよコイツらは!!強すぎる!!」


「陣形を崩すな!!我らにはローウェン様のご加護が――ウギャア!!」


「陣形を保てない!!」


アデルが切り開いた陣形の穴を修道女達が拡大するとタイミングを見計らっていた看守とゴブリンが雪崩を打って陣形の内に突入、騎士達が築いた陣形を破壊しつつ、数的優位を生かせる乱戦に再び持ち込み袋叩きにして行く。


「フフフッ、さぁ、もっともっと蹂躙なさい、カズヤ様に逆らう愚か者達を徹底的に」


「……時間を掛ける余裕はないか。ティルダの仇を――待て。セリシア、ティルダの姿がないがティルダはどうした?」


セリシアが予想以上に上手くいっている戦況に酔いしれ笑みを溢していると険しい表情でアレクシアが口を開いた。


「ティルダですか?あぁ、別に殺してはいませんよ。ただ、この中で気持ちよく夢を見てもらっているだけです」


セリシアがヒトクイウツボカズラの捕人器を指し示す。


「ッ、そうか……生きているのか。良かった。ならば返してもら――」


「ティルダを返せぇぇーー!!」


「キセルッ!?待て1人で突っ込むな!!」


劣勢に陥っている味方の姿に時間的猶予が無いことを悟ったアレクシアが早々にセリシアを仕留め、また生きていると分かったティルダを救出し味方の援護に回ろうと考えバスターブレードを構えた瞬間。


キセルが脇目も振らずセリシアに突っ込んでしまう。


「クソッ!!ゾーラ、ジル!!キセルを援護す――クッ、新手の魔物だと!?邪魔を、邪魔をするな!!」


先走ったキセルを援護しようとするアレクシア達だが、セリシアが新たに呼び出した魔物に行く手を阻まれ援護が出来ない。


「はぁ……はぁ……ッ」


ポーンクラスに加えてルーク、ビショップ、ナイトクラスの魔物の集中運用。


少々キツイですが、これで足止めは完璧。


後は自分から孤立したバカなイノシシを仕留める!!


セリシアは召喚した魔物の使役と維持に多大な労力を払いつつも真正面から愚直に突っ込んで来るキセルを見据え迎撃態勢を整える。


「くたばりなッ!!」


具現化した6つの籠手による波状攻撃をウィッパーワンドで全て弾き凌いだセリシアにキセルの怪力が込められた大本命の一撃――必殺の右ストレートが迫る。


「私を舐めるな、そう言ったはず!!」


しかし、キセルの右ストレートがセリシアの体を捉える直前。


セリシアは右足を一歩分後ろに下げキセルの拳を半身になってかわすと握っていたウィッパーワンドから手を離し、目の前で空を切ったキセルの右腕を掴み取り、そのままの勢いで見事な一本背負いを決める。


「ガハッ!!――ギャアアアァァァ!!」


体術という想定外の反撃を喰らい受け身も取れず地面に叩き付けられたキセルにセリシアは呻く暇さえ与えず、掴んだままだった右腕に間接技を掛け右腕の肘をへし折る。


そして、キセルの反撃を警戒し距離を取ったセリシアは手首に取り付け純白のローブの袖で隠していたコルトM1908ベスト・ポケットという25口径の自動拳銃を取り出し25ACP弾を1発ずつキセルの両足と左腕に撃ち込む。


「アゥッ!?グゥ……ァ、アアァ……」


右腕を折られ、更に両足と左腕に銃弾を浴びたキセルは戦闘不能に陥る。


「これで……2人目」


キセルを無力化したセリシアは口元をニヤリと三日月形に歪めると背後にいるヒトクイウツボカヅラに指示を出す。


すると、ヒトクイウツボカヅラの触手が蠢き、形は違えどティルダと同じ様に四肢を破壊され戦闘不能に陥ったキセルの体に絡み付く。


「は、離せぇ……ッ!!」


四肢の自由を失い痛みに呻く事しか出来ないキセルは、その肉感的な体を触手に雁字搦めにされたまま捕人器の所まで運搬され中に投入される。


「ぶぇっ!?な、なんだいこりゃ!!ゲホッ、ちょっと飲んじまったよ!!ヌルヌルして気持ち悪……気持ち……気持ち……いい……」


ティルダが捕獲されている捕人器の隣、ニョキニョキと新たに生成された2つ目の捕人器に投入されたキセルはティルダと同様に特別な溶液を飲み込むと途端に大人しくなり溶液に沈んで行った。


「邪魔だアアァ!!ッ!?クソッ、キセルまで殺られたのか!!ゾーラ、突っ込むぞ!!ジルは援護を!!」


「了解!!」


「分かったわ!!」


キセルがセリシアの手に落ちたのと時を同じくして召喚されたコカトリスとバジリスクを斬り伏せたアレクシアが開けた視界から一瞬で状況を読み取るとバスターブレードを振るい血路を開き、ジルの援護を受けつつゾーラと共に突貫をかける。


「来ますか……ですが、無駄な事。貴方の剣は私に届かないっ!!」


アレクシア達の突貫を察知したセリシアは足止めの役目を果たせなかった魔物達を消すと、新たに魔物を召喚しアレクシア達の迎撃を行う。


「7聖女の名に懸けて!!」


「お前を討つ!!」


だが、迎撃に出た魔物達はジルのミーティアボウから放たれた矢に射抜かれ、ゾーラのペネトレイトスピアーによって凪ぎ払われてしまう。


「これで――終わりだ!!セリシア!!」


仲間の献身的な援護と露払いのお陰で分厚い魔物の壁を抜ける事に成功し、セリシアの目の前に躍り出たアレクシアは戦いに終止符を打つべくバスターブレードを上段に構え振り下ろす。


「なっ!?――なんてね。フフッ、貴女が終わりなんですよ」


バスターブレードの刃が目前に迫り恐怖に顔を歪めたセリシアだが、刃が当たる寸前、表情を一変させ深淵の底を写したようなドス黒い笑みを浮かべた。


「ッ!?」


マズイッ!!


その笑みを見て背筋が一瞬で凍ったアレクシアは本能的に攻撃を中断しセリシアから距離を取ろうとしたが遅かった。


「グハッ!?」


目の前で佇むセリシアからではなく、全く予期していない方向――何もない場所から繰り出された強烈な打撃を喰らい体をくの字に折って吹き飛び、捕虜収用施設を囲む分厚いコンクリート製の壁にめり込む。


く、くそっ……。


薄れ行く意識の中でアレクシアが最後に見たのは、先程まで向かい合っていたセリシアが幻のように掻き消え、代わりに何もない空間から姿を現し魔物を引き連れ近付いてくる“セリシア”の姿とそれを阻もうと立ち塞がったゾーラとジルの後ろ姿だった。



聞き慣れた剣戟の音が鼓膜を叩いた事でアレクシアは目を覚ます。


――……うっ、私は…………ッ!!気を失っていたのか!?一生の不覚!!


「戦いはどう……そ、そんな……」


「あら、ようやくお目覚めですか?アレクシア」


目を覚ましたアレクシアが目の当たりにした光景。


それは純白のローブを返り血で真っ赤に染め場違いな笑みを浮かべるセリシアと、無数の裂傷を負い流れ出した自らの血で全身を赤く染めグッタリとしているゾーラとジル、そして鎧を剥ぎ取られたゼノヴィアと瞳に涙を浮かべ助けを求めるイルミナがヒトクイウツボカヅラの触手に拘束され捕人器の中に押し込まれる瞬間だった。


「全く、貴女を捕らえようとしたらゾーラとジルが邪魔をするものですから困りましたよ。それに予想以上に粘られて5分程手こずりましたし」


「――せ」


「あと、途中でカズヤ様の事を侮辱するものですから、ちょっと手加減を間違えて瀕死にしてしまいました……まぁ、死んではいないので問題はないでしょう」


「――返せ」


「口を慎んで大人しく捕まれば、余計な傷を負うことも無かったのに……本当におつむの足りない人達です」


「皆を、私の友を――返せっ!!」


「グッ!!ふざけるな!!これまで神の名の下に異教徒を虐殺してきた貴女が!!“返せ”と言うのか!!負しかもたらさない飾りの神を盲信し罪を重ね、贖罪すらようとはせず、果てには罪の意識すらない貴女が!!」


一瞬で距離を詰め斬りかかって来たアレクシアの斬撃をウィッパーワンドで防いだセリシアが吠える。


「黙れ黙れ黙れ黙れ、だまれぇぇぇーーー!!異教徒は悪!!妖魔は穢れ!!獣人は罪!!殺して何が悪い!!滅して何が悪い!!すべては神の教えに従ったまで!!人々の救済者であるローウェン様を敬わぬ愚か者達が悪い!!高潔な教会に教えを乞わぬ不届き者が悪い!!」


「減らず口をッ!!数万の奴隷を生け贄に捧げて怪物を呼び出し、あまつさえ自らの信徒もろとも敵を滅ぼそうとした事を許容しておいて何が高潔な教会か!!」


「何の話だ!!それは!!」


「ッ!?まさか……先の怪物の事を知らない?いや、知らされていない?」


「ふん!!虚言で私を惑わすつもりだろうが、そうはいかん!!教会の言うことが全て、我らはただ従うのみ!!それが全てだ!!」


「なっ!?知る事を放棄した上に考える事すら放棄したのか貴女は!!なぜ、貴女は教会の闇を知ろうとしない!!私が憧れていた貴女が!!」


暴風のように次々と繰り出される斬撃を受け流しながら言葉を紡ぐセリシア。


「――は?私に……憧れた?いや、教会の闇とは何だ?聞き捨てならんぞ」


セリシアの言葉に呆気にとられたアレクシアは思わず攻撃の手を止める。


「……教えて上げましょう、教会の血に濡れた歴史と怨嗟にまみれた悪行を」


チッ、余計な事を言ってしまいましたね。


カッとなり、ついポロリと本音を漏らしてしまったセリシアは失言を誤魔化すように話を始めた。


「と言っても全てを語るには時間が足りないので、簡単に7聖女の末路を教えて差し上げます」


「7聖女の……末路だと?」


「えぇ、不慮の事故や戦での戦死が無い限り7聖女は一斉に世代交代を行う事は貴女も知っているはず、では本題です。世代交代で引退した前任者達はどうなると思いますか?」


セリシアの問いにアレクシアは何を分かりきった事をと言わんばかりの顔で口を開く。


「役目を終えた7聖女達はローウェン教を更に多くの者に知ってもらうため宣教師となって旅に出る」


「えぇ、表向きはそうなっています。ですが実際は聖地の地下にある牢獄に囚われ教会の神官共に延々と犯されていますよ」


「ハハッ、何をバカな。そんな事があるわけ無いだろう。嘘を付くにも、もう少し上手く――」


「では何故、前任者達の噂が一切聞こえて来ないのですか?」


「それは名を捨て1人の宣教師として活動を行っているから――」


「宣教師の活動の成果を聞いたことは?」


「……」


「文の一通も来ないのは何故――おっと。邪魔者が来ましたね」


アレクシアがまさかな……という小さな疑念を抱いた直後、話を続けるセリシアの元に短刀が飛来。


短刀を避けたセリシアは下手人を睨む。


「聖女アレクシア。異教徒の話には耳を傾けてはなりませんよ。根も葉もない嘘で我らを惑わそうとするのが異教徒のやり方なのですから」


「大司教様……」


セリシアに短刀を投げつけ話を遮ったのは大司教レベルクだった。


「ふん……根も葉もない嘘を口にしているのは貴方でしょう、レベルク。ローウェンを信仰していれば救われるなどと言って」


「……目的は果たしました。撤収しますよ。聖女アレクシア」


「――えっ?」


セリシアの言葉を無視し捕虜収用施設に視線を向けたレベルクがそう呟き、アレクシアがレベルクの言葉に呆けたのと同時に施設の中から教会の騎士達が飛び出して来る。


「ッ!!やはり別動隊がいましたか、皆!!道を開けなさい!!下手に手出しをしないように!!」


前後から挟撃を受けないようにセリシアは声を上げ、敵中を突破しようと目論む騎士達にわざと逃げ道を与える。


その結果、双方の間で繰り広げられていた戦闘が中断され、戦闘が始まる前のように睨み合いの状態に移行した。


あの人は……何か考えが?まぁ、放っておきましょうか。


施設から飛び出してきた騎士達の手により脱獄に成功した――脱獄を希望した極一部の囚人達(大半の囚人は脱獄を拒否)元は帝国軍の高級将校達のその中に最近何かと話題になっていた人物の姿を捉えたセリシアは、その人物に何か考えがあっての行動だろうと敢えて見てみぬフリをすることにした。


「大司教様!!撤収とは一体どういうことなのですか!!皆セリシアに囚われているのですよ、置いてはいけません!!助けねば!!」


施設内から飛び出してきた味方が次々と合流を果たす中、突如撤収の命を下されたアレクシアがレベルクに食って掛かかっていた。


「聖女アレクシア。残念ですが先程、敵本土に潜入した皇帝直轄部隊の方から連絡がありました。あちらは任務に失敗し既に撤収したと。ですから我らも撤収せねば、すぐにでもやって来る敵の増援に袋叩きにされてしまいます」


「しかし!!」


「聞き分けなさい、聖女アレクシアよ。彼女達は教義に殉じ尊い犠牲となってローウェン様の元へ召されたのです」


「そんな……」


「盛り上がっているところを失礼。逃げる逃げないで揉めているようですが、それ以前に私が貴方達を逃がすとお思いですか?……あとゾーラ達は皆生きていますから、勝手に殺さないであげなさい味方でしょう?」


レベルクの言葉にアレクシアが愕然としているとセリシアが2人の会話に介入し突っ込みを入れる。


「さぁ、皆。帰りますよ」


「無視……ですか、結構。では――死ね」


こちらの事をガン無視して悠々と帰り支度を始めたレベルクの態度にムカついたセリシアが召喚した魔物をけしかける。


「……セリシア、皆は一時的に貴様に預ける。だが、皆の命を奪ったり何か妙な事をしてみろ、私が貴様を八つ裂きにしてやるからな」


「負け犬の遠吠えなど――なっ!?消えた……?」


魔物がレベルク達に襲い掛からんとした直前、苦々しい顔でアレクシアが捨て台詞を吐いたかと思うとレベルク達の足元に巨大な魔方陣が浮かび上がる。


そして、その魔方陣から目映い閃光が迸ると同時に監獄島からレベルク達の姿が掻き消えてしまった。


「まさか……今のは転移魔法?いえ、でも、あれは遥か昔に失われたはずの魔法……」


「ふぅ……終わったな、セリシア」


敵の姿が一瞬で消え失せた理由について、セリシアが思考を巡らせていると戦塵にまみれ疲れた表情を浮かべたアデルが側にやって来た。


「アデル……ッ」


アデルが側に来た事で緊張の糸が切れてしまったのか、セリシアが不意に姿勢を崩す。


「おっと!!大丈夫か?セリシア」


「え、えぇ、大丈夫です。ごめんなさい、流石に魔力を使いすぎました」


はぁ……7聖女を1人残らず捕らえ他は皆殺しにするつもりでしたが、結果的にアレクシア達が退いてくれて助かったかもしれませんね。


あのまま戦闘を続けていたら決着がつく前に私の魔力が枯渇していたでしょうから……。


間一髪、倒れる前にアデルの腕に抱き止められたセリシアは乾いた笑みを浮かべながら考えを巡らし、そう溢す。


「まったく……何か手傷を負ったのかとヒヤヒヤしたよ」


「フフフッ、大丈夫ですよアデル。カズヤ様に楽しんで頂くこの体に傷はつけていません」


「そ、そうか……おっと、味方の増援が来たようだな」


セリシアの言動に若干引いたアデルは空を見上げ、ローターの回転音を響かせながら監獄島に近付いて来る数機のHH-60ペイブ・ホークの姿を視界に捉える。


「来るのが少しばかり遅かったですね……それにしても、この後の事後処理を考えると頭が痛いですが……7聖女の内6名を捕らえ、なおかつ被害を最低限に押さえた事を鑑みると――またカズヤ様の寵愛を受ける事が叶いそうです。ジュルリ、おっと涎が……」


「よ、良かったな。セリシア」


カズヤの寵愛を受ける妄想をして涎を溢しかけたセリシアの姿に頬を引き吊らせながらアデルは相づちを打つ。


「何を他人事のように言っているのですか、アデル。勿論、貴女も抱いて頂けるのですよ」


「うえっ!?お、俺はもういい。遠慮しておくよ……」


「あんなに激しく乱れておいて、そんな遠慮を――……いえ、違いますね。アデル、貴女はもしかしなくてもカズヤ様に抱かれる事が病み付きになってしまいそうで怖いのでしょう?」


「……」


「沈黙は肯定と取らさせてもらいますからね、ア・デ・ル?」


真意を見抜かれ真っ赤になってしまった隠れ類友を――アデルをセリシアがからかっていると本土から飛来したHH-60の内、1機が激しく砂塵を巻き上げながら目の前に着陸する。


そして着陸したHH-60の側面のスライドドアが開かれると中から親衛隊の隊員が慌てた様子で飛び出して来た。


ずいぶんと慌ていますが……何かあったのでしょうか?


HH-60から降りてきた親衛隊隊員の慌てぶりをセリシアが訝しんでいると目の前までやって来た、その隊員が口を開く。


「失礼します!!お二人はセリシア・フィットローク殿とアデル・ザクセン殿で間違いないですね!?」


「えぇ、そうです」


「あぁ、間違いない」


「では、直ちにヘリに乗って下さい!!さぁ、早く!!急いで!!」


「ちょ、ちょっとお待ちなさい。何があったというのですか?」


理由も説明せずに急かし立てる親衛隊の隊員にセリシアが困惑しながら急かす理由を問い掛ける。


だが、隊員から返ってきた返事は信じがたいものであった。


「情報が錯綜しているため詳細は分かりませんが、総統閣下が……総統閣下が敵の手にかかり意識不明の重体だと!!」


「えっ……?」


隊員がもたらした情報を聞いたセリシアが呆気にとられて目を見開き、手に握っていたウィッパーワンドを落とすとカンッという乾いた音がやけに大きく辺りに響いた。

ザ、急展開。


ちなみに次回か、その次くらいにカズヤが男を魅せます(多分)

(;´д`)


そして今回……時間がなく書ききれなかった・入れれなくなったシーンが幾つかあるのが悔やまれます。

(T-T)


監獄内の戦闘とかね……(意味深)

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