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ちょっと立て込んでいるため、更新が遅れてしまい申し訳ありません。

m(__)m

真っ白な朝日が輝く日の出と共に始まった帝都攻略戦も既に夕暮れ時となり。


太陽はオレンジ色の光を放ちながらレイテ湾の水平線へと没し始めていた。


「お前達は何故こんな所で道草を食っている?」


戦闘特化型の千代田30人や強化外骨格を装備している親衛隊の一個機動歩兵中隊、人型機動兵器であるアサルトアーマーで編成された第1AA大隊、そしてセリシア達と途中まで行動を共にしていたポプラフスキー大佐以下の混成連隊を引き連れてセリシア達の前に現れた千歳は最後の輝きを放つ儚げな夕日を背にしつつ肩に掛けただけの軍服の上着を風に靡かせながら、凛とした声で淡々と誰に言うでもなく自らが抱いた疑問を口にした。


「「「「……」」」」


返答は静寂。


その場にいる誰もが――敵であるミカエル達はもちろん、味方であるはずのセリシア達さえも千歳が放つ異次元のおどろおどろしいオーラに気圧され息を飲み無言を貫く。


「説明しろ、セリシア」


千歳の言葉1つで空気がビリビリと震えているような錯覚をその場に居合わせた全員が共感し、無意識の内に畏敬と畏怖の念を抱く中、指名を受けたセリシアが肩に受けた傷の痛みに時折顔をしかめながら口を開く。


「……先に1つ言わせて頂きますが我々は好き好んで道草を食っていた訳ではありません。カズヤ様のご命令通りに第21騎兵大隊の救援に駆け付けた後、態勢を立て直すべく後退を開始しようとして難敵と遭遇してしまい……結果、遺憾ながら足止めを受けていたのです」


マリーとの戦いによって失われ、今は黒い眼帯に隠されている左目の分まで剣呑な光を放つ千歳の右目の眼光に体を貫かれ、背筋が凍る思いを味わいながらセリシアは弁解を口にした。


「難敵?そんなものがどこにいる。私には塵芥の雑魚しか居ないように見えるが?」


空に浮かんでいるミカエル達をゴミを見るような目で見渡した千歳は、色々な意味でヒクヒクと頬を引き吊らせるセリシアに小首を傾げながら聞き返す。


「ッ!!人間風情が!!我々を――」


「安い挑発に乗るのは止めなさい、ウリエル」


「ラファエルの言う通りですよ、ウリエル。それに今は抹殺対象のナンバー2が我々の前にのこのこと現れた事を主に感謝する時です」


「……チッ、あのノロマ(ガブリエル)は何をしている!!指揮所にいるはずのこの女を殺しに行ったんじゃないのか!?あの仮面の男がもたらす情報があった上で事を仕損じたというのなら痛い目を見せてやる!!」


自分達をこき下ろす千歳の言葉に激昂しかけたウリエルだったがミカエルとラファエルの2人に制されたために踏み留まり、ブツブツと怒りの声を漏らしながら千歳を睨む。


「――まぁいい、もうすぐ日も暮れる。本日の作戦行動はここまでだ。話は後でじっくりと聞かせてもらう。さっさと後方へ下がって傷の手当てを受けろ。後は私が……片付ける」


頭上で言葉を交わすミカエル達の事など一切意に介さず千歳はセリシアに後退を命じる。


「後は私が片付ける?まさか1人で我らに挑むつもりですか?……これはまた舐められたモノですね。少々出来るようだからと言ってその物言い不遜が過ぎますよ」


「本当に。魔法も使えぬ脆弱な人の身でよくもそこまで大言壮語が吐けるものです」


「そうだ!!たまたまガブリエルと会わなかったからと言ってあまりいい気になるなよ!!」


そんな千歳の素振りや言動にいよいよ我慢の限界に達したミカエル達が殺気を放ちながら全身に魔力を漲らせる。


「……ガブリエル?あぁ、それはもしかしてこいつの事か?」


ウリエルの言葉の中に出てきた名前を耳にした途端に千歳は口元を吊り上げ加虐的な笑みを浮かべるとパッと振り返り、背後にいた千代田の1人に視線だけである事を命じる。


「了解しました、姉様」


千歳の視線の意味を理解した千代田はすぐさま行動に移り、手に持っていた“モノ”を双方の中間地点に向けて放り投げる。


「な!?」


「は?」


「……あ?」


綺麗な放物線を描いた後、ボトリと地面に落ちコロコロと転がってから停止したそれを見てミカエル達は絶句し言葉を失った。


「アポも取らずにラーテ(前線司令部)に押し掛けて来たのでな。丁重に出迎えておいたぞ」


「ガ、ガブリエル……?」


血を吐くような声で頭部だけになったそれの名を呼んだのは誰であったのか定かではないが、例え砂塵に汚れていようと例え恐怖と苦痛に染まった死に顔を晒していようとミカエル達がそれを見間違えるはずも無かった。


千代田によって放り投げられた頭の正体が四大守護天使の1人であるガブリエルのモノであるが故に。


「まさか……どうやってガブリエルを……我々には主の祝福である再生能力が――」


「あぁ、貴様らの心臓代わりの核を砕いてから一定以上のダメージを与えるか、切り刻んで分割した肉体を一定距離以上離してやれば甦る事は無かったぞ。しかし“解体”途中に散々泣き喚いてくれたのは耳障りで仕方なかったな」


白昼夢でも見ているかのような表情のラファエルの言葉を遮り、千歳はさながら悪役のような昏い笑みを浮かべる。


「貴様……貴様ァア!!ガブリエルをよくも!!殺してやる!!」


仲間が迎えた悲惨な死に様を聞かされ茫然自失の状態からようやく我に返ったウリエルが感情に突き動かされるまま千歳に魔法を放とうと腕を構える。


「ピーピーがなるな、三下」


しかし、ウリエルが魔法を放つよりも早く鬱陶しそうに目を細めた千歳がパチンっと指を鳴らした事でウリエルの行動が実を結ぶ事は終ぞ無く。


「ッ!?ガッ!!クソがァアアアア!!」


それどころか突如飛来したとあるミサイルによってウリエルは遥か彼方まで弾き飛ばされ悪態と共に千歳達の前からフェードアウトしていってしまう。


「ウリエル!?」


「そんな……ッ!!」


予想もしていなかった突然の出来事にミカエルとラファエルは唖然とし、他のアンヘル達は狼狽える。


「ふん……腐っても上位種。魔力障壁で耐えるか」


「貴様!!一体何をした!?」


「よそ見をしている暇があるのか?」


「ッ、魔力障壁を張りなさい!!」


ラファエルの言葉に千歳がくつくつと笑いながら答え、その返事に悪寒を感じたミカエルがハッとして命令を出す。


それによって他のアンヘル達が慌てて魔力障壁を展開するが、ミカエルの出した命令は遅く――いや、間違いであった。


「ガッ!?」


「ギャ!!」


ウリエルを弾き飛ばしたミサイルと同種のミサイルが次々に飛来し、防御に徹するため空中で静止していたアンヘル達に命中。


ミサイルの直撃を食らったアンヘルは受けたダメージが酷すぎたために再生する事も出来ず憐れにも空中で悲惨な死を遂げ、肉片となって地上へべちゃべちゃと降り注ぐ。


「これで多少なりとも間引けるな」


アンヘルが1人また1人とダンプに轢かれた小動物のようにぐちゃぐちゃに潰されていく様を眺めながら千歳は小さくそう呟いた。


「か、回避!!回避を!!」


出すべき命令の間違いに気が付いたミカエルが再度命令を出すが、この時点で既に半数近くのアンヘルが散ってしまっていた。


「クッ!!回避も厳しいとは!!……速すぎる!!」


「これは一体なんなのですか!?」


防御から回避へと方針を転換したミカエル達を現在進行形で襲っているその正体。


それはアメリカ陸軍が1980年代末に開発を開始していたものの、2004年に開発中止が決定されたため僅かな数しか生産されなかった自走対戦車ミサイルのMGM-166 LOSATであった。


3キロ程離れた地点に展開している複数の装甲強化型のハンヴィー――M1114のキャビン上に搭載された2基の連装発射機から発射されているLOSATは通常の対戦車ミサイルと違い成形炸薬弾頭によって生じる化学エネルギーの作用で装甲を貫徹するのではなく、自身が飛翔する際のマッハ4.5という驚異的な飛翔速度――運動エネルギーを攻撃に利用し戦車やバンカー等の強固な装甲を持つ対象をミサイルの先端にある高密度貫徹弾芯で強引に撃ち抜くことを目的に開発されたミサイル版の装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)の様な兵器である。


そのため今回ターゲットとされたアンヘル達は魔力障壁を易々と貫徹された後にミサイル本体との正面衝突という物理的なダメージを体に受け再生する間もなく弾け散っていく。


ちなみに上位種であるが故に他の個体よりも魔力障壁の強度があったウリエルはLOSATを防ぐ事には成功したものの、衝突の勢いを殺し切れず遥か彼方へと吹き飛ぶ事となったのである。


「各隊は被害報告を!!」


ようやくLOSATの嵐が収まり危機を脱したミカエルが辺りを警戒しつつ叫ぶ。


「熾天使隊以下3隊、被害15!!」


「主天使隊以下3隊、半数が殉教!!再生中5!!」


「権天使隊以下3隊、残存数2!!再生中3!!」


配下のアンヘルから返って来た無情な報告に歯を食いしばり、怒りに身を震わせながらミカエルは千歳を見据える。


「魔法も使えぬ蛮族以下の異教徒が……同胞をよくも……」


「楽しんでもらえたようで何より。さて、負傷兵の回収も終わった事だ。そろそろ貴様らには消えてもらおうか」


LOSATが飛来している間にウリエルの攻撃で負傷した一木支隊や第21騎兵大隊の兵士を親衛隊に回収させていた千歳は飄々としつつも言葉に明確な殺意を乗せてミカエル達に死刑宣告を告げた。


「その言葉、そっくりそのまま返してあげましょう!!」


異教徒、人間風情と見下す相手から度重なる屈辱を味合わされた事に耐えかねたミカエルが吼える。


「ハハハッ、その威勢がどこまでもつか見物だな」


そんなミカエルに対し千歳は不敵な笑みを浮かべながら腰のホルスターに差した2丁のS&W M500を抜き放つ。


「このッ!!」


「さて、では愚神へのお祈りは済んだか?戦場の片隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」


再び激昂するミカエルをよそに千歳は淡々と開戦の合図を口にするのであった。

1人はセリフも無く死亡。


さてはて残りの3人はどのような最期を遂げるのか(笑)

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