だがしかし。
まいったな……。
放課後、帰宅途中の駄菓子屋で、わたしという可憐かつ尊ぶべき女子高生は、ほほに手を当てて立ち尽くしていた。正面には、うまい棒の入ったケース。手元には、黒いガマ口。ひっくり返すと、コロンという悲しげな音と共に、十円玉が一枚転がり落ちた。
わたしはいま、猛烈に腹が減っている。そして目の前には、うまい棒マーボー味。わたしの近所ではお目にかかれない、レア種であった。
手中の十円玉を、しげしげと観察する。貴重なことに、ギザ十だ。一枚で三十円分の価値を所有する、ナイスな硬貨である。
ギザ十をとるか。マーボー味をとるか。
これはもはや、神々がわたしに与えた試練といってもよいだろう。くそう、いくらわたしがかわいいからといって、なんたる仕打ち。
夕暮れ時の店内で、レジのお爺ちゃんの冷ややかな視線を浴びながら、身じろぎもせずにたたずむ美人女子高生の姿が、そこにはあった。
終われ(短か!)