第12話「ヴァンパイア血めぐり競争」(後編)
何だか微妙な感じになってしまいました。
すみません。また直す所があるかもしれないので、保留で。
その瞬間、哀歌の目に沙夜の目が飛び込んできた。
「やばい! 急げ」
哀歌は忍者のように急いで逃げた。
しかも、風奈を残して。
目とあった沙夜は哀歌を追わずに、体育用具室の中に視線を向けた。
もう、探る場所は見つかったのだ。
迷わず、そこへと向かう。
そして。
「見つけたわよ、風奈」
「えっ! あっ!」
目と目が合った瞬間、風奈は終わったと思った。
このまま血を吸われるのか。
でも、血を吸われると激痛があるとこの前知ったばかりだ。
本当にするのか、そう、思っていた時、突然、体育用具室のドアが閉められた。
ガラガラガラララッ。
二人ともびっくりし、体育用具室のドアを見つめた。
そこには体育用具室に閉じ込められた二人の姿が残っていた。
「ちょっと、これはどういうことよ!」
急いで、入り口のドアへと向かい、開けようとする。
だが、閉まっていて、開けることなどできない。
隣に風奈も並ぶ。
「閉じ込められたんですか、私たち」
「そういうことになるみたいね。でも、一体、誰が」
沙夜が考えている間、風奈は辺りを見回した。
窓もない殺風景なこの場所。
あるのは、跳び箱、マット、カラーコーンなどがある。
気温は今、ほどよい感じだが、朝晩になると冷え込むだろう。
「分かりません。それより、これからどうすれば?」
「月都が気が付いてくれればいいけど、この様子じゃ気づきそうもないわね。今は血めぐり競争で夢中。開かないことは事実だから、冷静になるわよ」
横でそう言い、沙夜は近くのマットに腰かけた。
同じく風奈も隣に腰かける。
「ふぅ」
風奈は考えた。
この状況を。
そして、今までしていたことを。
「あ、あの、今言うことじゃないんですが、大会の続きは――?」
「血を吸うこと? それなら、続けてもいいけど、この状況じゃ吸う気も起きないわ」
「そ、そうですよね」
焦りつつ、沈黙状態に陥る。
今は四時半。
だんだんと夕方から夜になるので、気温が低くなるだろう。
今、二人の服装は体育着だ。
血めぐり競争が終わるのが六時。
その時間になると、肌寒くなる。
今、汗をかいた状態のまま六時になれば、当然、風邪を引くのは間違いなしだ。
「沙夜、携帯は持ってないの?」
「携帯? 何かしら、それは」
携帯を知らないのか。
そういえば、そうか。
ここは吸血鬼の国。
携帯という便利な道具もないのも当然か。
「ううん、何でもない」
「そう、それより考えてみたの。聞いてくれるかしら?」
「うん、いいよ」
二人は深刻な表情でお互いの話を聞いた。
「たぶん、ここを閉めたのは、この学院の生徒。何らかの恨みが私たちにあって、閉じ込めたんだと思うわ」
「恨み? 誰の?」
「恐らく私の。心当たりがあるから」
「そんな、恨みだなんて。でも、沙夜はこの学院で偉いんだから大丈夫だよ。私が傍にいるから」
「風奈――」
お互い見つめ合った。
沙夜の赤い瞳に風奈の黒い瞳。
それぞれがキラキラ輝いていた。
その頃、トイレの片隅で喜んでいる者がいた。
「やった! やったわ! これであの人と二人きりになれる。あんな子いなくなってしまえばいいんだわ!」
そう言ってると、トントンと肩を叩かれた。
後ろを振り返ってみると、あの人がいた。
午後六時。
肌寒い気温となり、二人は汗のかいた体育着で温度がどんどん低くなっていった。
「寒いわね」
「はい」
「風奈、もうちょっとこっちに来てくれないかしら?」
風奈と沙夜の間には一人分の空間が出来ている。
「えっ、でも、汗をかいてるしベタベタしますよ?」
「大丈夫よ、ただ、傍に来てくれればいいだけだから」
「そ、そうですか、分かりました」
風奈は沙夜の言う通り、一人分の空間を詰め傍に寄った。
そして、肌と肌がくっつかるほど、寄り添った。
「これで暖かいわ」
「同じく私もです」
今まで寒かった温度がだんだんと暖かくなっていく。
人の体温とは不思議だ。
寄りそうだけで暖かくなるのだから。
コクコク。
コク――コク―。
隣を見ると、沙夜はうたた寝をしそうになっていた。
恐らく、会議や今回の大会などで寝ないで、仕事をしていたのだろう。
気温も暖かくなり、眠くなるのも当然だ。
「沙夜、ここで寝てもいいよ」
「ね、眠くなんかないわ」
ツンとした表情で、断った。
実をいうと誘われた場所は、空いているマットじゃなく、風奈の太ももの上であった。
つまり、膝枕ということになる。
「そんな、無理しないで。沙夜は仕事で疲れてるんだから、寝ないと」
「でもいいわ。私は大丈夫だかr――ふぁわああ」
大きいあくびをした。
これでは誰でも寝かせたい、そう思うだろう。
風奈はそっと沙夜の肩を横に傾かせ、自分の太ももに頭を置いた。
いつの間にか風奈の太ももの上に頭を置かれた沙夜は、驚いて、恥ずかしがっていた。
「え、ちょっと」
「いいから。お願いだから、寝て」
「うっ」
顔を真っ赤に染め、沙夜は横を向いた。
そして、目を閉じ、沙夜は深い眠りについた。
同じく風奈も目をつむり、二人はより添った。
その頃、月都は体育館に向かっていた。
それも当然だろう、何にせよ、大会が終わる午後六時になっても姿を見かけないのだから。
そして、月都はあの現場を見てしまったのだ。
そう、遡ること数時間前。
カチャ。
体育館の倉庫のドアが閉められた音である。
鍵を閉めた少女は、一目散にその場を離れた。
そして、体育館のトイレに行き、片隅へと進んでいった。
『ふふふふははははあっ! やっと二人を閉じ込めたわ。これであの人と二人きりになれるチャンス! これは見逃せない、最高の大会になりそうね』
「やっぱり君だったんだね、薄々、気づいてたんだ」
「っ!」
少女は振り返った。
すると、そこにいたのは、月都だった。
少女は震えながら、涙目になり、驚いていた。
「ち、ちが、違う――」
「何が違うんだ? だって俺は沙夜たちを閉じ込めていたのを見ていたんだぞ」
「そ、それは――」
「君は風奈の一番の友達じゃなかったのか」
歯ぎしりをする少女。
「一番の友達だったわよ。最初の時はね。でも、途中で変わったの」
「どうして変わったんだ?」
「そ、それは――」
沈黙の状態が続いた。
そして。
少女は思い切って言った。
「つ、月都さんが好きだからよ!」
そう言って、少女はトイレから飛び出して行った。
そのようなことがあり、月都は少女を追いかけず、茫然と立ち尽くしていた。
そして、今、少女の気持ちが理解でき、体育館へと向かっていたのである。
体育館ではすやすやと眠っている沙夜と風奈がいた。
そして、カチャと音がし、体育館の扉が開いた。
「沙夜! 風奈!」
突然の声に驚き、二人は起きた。
「つ、月都」
「大丈夫か、結構寒かっただろ。ほれ、これをかぶれ」
そう言って、月都は上着を二人に投げた。
そして、それを受け取る、風奈と沙夜。
「助かったわ、月都。よく私の居場所が分かったわね」
上着を着ながら、沙夜は言う。
「まぁな、ちょっと気になることがあって」
「気になること?」
「それはもういい。それより、ほらいくぞ。風奈も大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫です」
「そうか、なら良かった」
三人は疲れた様子で、体育館を出た。
その途中、横にいる風奈に沙夜は。
「そういえば、あの続きしてなかったわね」
「続き? ですか?」
何の続きなんだろうと考える風奈。
その考えている間に、沙夜は、行動で示した。
「これよ」
首元に沙夜の気配を感じ、チクッと感じた。
それは沙夜が風奈の血を吸った印であった。
血が首元から少し垂れ、ドクドクと脈が打つのが分かる。
とても温かく、気持ちがいいと言っては変だろうか、ボッーとしたくなる気分だ。
「ごちそうさま」
「あふぅ」
ボッーとしながら、風奈は首元の血をハンカチで拭きながら浸っていた。
「ふふふっ、久しぶりの生の血でおいしかったわ。ありがとう、風奈」
「どういたしまして。それより、大会のほうはどうなったのかな?」
「それは『沙夜様の大勝利!』」
突然、暗闇の中からたくさんの生徒たちが出てきて、そう伝えた。
「うわっ」
「沙夜様、私、血を吸うことに慣れてなくてできませんでした」
「私も、ドキドキしちゃってできませんでした」
続々とこういった者たちが前に出てきた。
風奈は驚きでいっぱいで、あたふたし、沙夜は冷静な対応をしていた。
月都はいつもと同じかという表情で、終わるのを待っていた。
「じゃあ、血を吸ったのは私だけってことになるのかしら」
「そういうことになるな。良かったじゃないか、初めてで、しかも最初に吸えて」
月都は褒めて言ったつもりだったが、最後には沙夜にこういわれた。
「初めてで、最初――っ」
「ええと、その、私、恥ずかしいのでこれで失礼しますっ」
そう言って、風奈は慌ててその場を離れた。
「あっ」
沙夜は逃げていく風奈を見て声が出た。
そのまま、風奈は闇の中へと消えていき、時期に、姿が見えなくなった。
そして、残された月都と沙夜は生徒たちと会話をし、長い、ヴァンパイア血めぐり競争が終わった。
だが、その裏で怒りを持ち、様子を見ている者がいた。