smile again
龍神サンのブログの反響は驚きや意外性を遥かに超越する程なモノだった。
メールや着信がモーレツに来ていたのは序の口として、あらゆる媒体に尋常じゃない程のコメントが殺到していて。
メールの中にとんでもない名前があった。
“真壁サン”
驚きすぎて時が一瞬止まったかのように感じた。
“久しぶり。突然のメールゴメンね。どうしても言いたいコトがあって。”
久々過ぎるハズの真壁サンからのメールは久しぶりさを微塵も感じない程に自然だった。
“Vivienサンの独立の話を聞いてHP見てみてさ。龍神サンのブログも見させてもらった。しばらくぶりにあの会見の後のコトを思い出して。龍神サンにもメールして。ひーちゃんにもメールしたかった。いきなりで驚かせてホントごめん。迷惑だとは思ったけどどうしても伝えたくて。”
涙がじんわり浮かんでいた。
“龍神サンには適わないよ、やっぱり。龍神サンはスゴい。当たり前だけど。あの時のオレがくだらなすぎる程に。くだらなすぎて笑えてきた。懐の深さが露わになったね。あの頃オレもきっと根本は同じような感情だったハズなのにひーちゃんのコトも龍神サンのコトも考えず、自分の気持ちしか考えなくて結果いろんな人に迷惑かけて。龍神サンみたいな表現が出来てたらって、読んでて痛感しちゃって。ホントに申し訳なかった。”
涙はじんわりで収まっていた。
どことなく温かい気持ちになってきて。
“なんて、今さら言ったってどうしようもないけど。改めて言うよ。これからもワンワーとVivienサンと龍神サンとひーちゃんのファンでいさせて欲しい。”
あの頃の気持ちがぶぅわぁぁぁっと蘇ってくる。
“結局どこまでも自己中発言になってるけど、いつまでも陰ながらファンでいます。ありがとう。”
メールはそう締められていた。
少し考えて、返信した。
“メールありがとうございます。あれからの活躍を陰ながら見させて頂いていました。大活躍をとても羨ましく思っていました。私もこれからも真壁サンのご活躍とお幸せをお祈りさせて頂きます。ありがとうございました。”
あまり多くは触れず。
驚く程にスッキリしていた。
きっとこういうことなんだな、
龍神サンの言っていた“人を好きになるって気持ちには変わりない。”“コレも一種の恋愛”って。
何となく分かった気がする。
人を想う気持ちは1つなんだって。
loveなのかlikeなのかはどうでもよく、
“好き”はloveでもありlikeでもある。
今まで分からなかった全てが晴れやかに解明できた。
関の“龍神サン達と親しくさせてもらっておまえに対する感情が恋愛感情じゃなかったのかも知れないって思えてきた”発言や、ミヒロさんの結婚前の発言。
自分が発信してる想いも自分がいろんな方から受信しているたくさんの想いも全て改めて。
恋愛感情との境目は紙一重なんだろうなって。
コレはまだイマイチ上手く言えないけどぼんやりと思う。
やっぱりスゴいや、龍神サンは。
恋愛感情よりも尊敬の念が遥かに強い。
スゴすぎる。
さすが“すぐそばにいるのに手を伸ばしても届かない存在”だよ。
やっぱりアタシは宇宙イチの幸せ者だ。
それが全てだ。
アタシも龍神サンにメールしよう。
“ありがとうございます。龍神サンやVivienサン達の想いにお応え出来るよう頑張ります。よろしくお願い致します。”
ソレだけを。
だから関のコトももうグダグダ思わない。
お陰でスッキリした。
ホント、龍神サンにはアタマが上がらない。
いつもいつもアタシのココロのモヤモヤを取っ払ってくれるのは龍神サン。
感謝してもしきれない。
関にも真壁サンにも感謝だけど龍神サンには特に。
仕事や移動の合間を縫って、寄せられた全てのコメント・届いたメールを読み終えるのに軽く1週間は掛かった。
反響はその後もしばらく続いたけど、目立った表面化はなく割と穏やかな日々が過ぎていった。
関も龍神サンのブログの件は知っていたようで。
関もメチャクチャ興奮していた。
アタシの気持ちも伝えて。
真壁サンからのメールのコトも伝えたら納得してくれて、
“オレもまだまだ小僧だな。当たり前だけど。でも今は何となく分かるな。真壁サンの想い。”
早くも成長の兆しか?なんて反応をしつつも、
“龍神サンのお陰だけどな”
関自身にもあの告白の影響は大きかったようだ。
そんな人に“一緒に仕事がしたい”と思って頂けるなんて!!!
期待は結果で返さねば!!
関と共に言い合ってお互いの修業の成功を約束。
スケジュールの合間を縫ってテッちゃんと峰坂先生は挿入歌の打ち合わせを重ね、
アタシは事務所のスタジオでblue moonのレッスン。
龍神サンからはレッスンなんかいらないって言われてるんだけど、アタシ的にはいてもたってもいられなくて。
無謀にも自分でキーボードやっちゃってみちゃったり。
もちろんレッスンの為に程度だよ、残念ながら。
関も何とかわからないながらもコミュニケーション取って頑張ってるみたいで。
メールやテレビのオンエアで。
関を画面でしか見れないって、ヘンなカンジ。
電話も高いからあまり声を聞いてなくて、会話は声なしのメールばかりで。
近くにいるようでいない、どうも慣れない違和感を感じてる。
自分たちのレコーディングや取材とかにいないのには違和感はないんだけどね。
“関クンがいないのに慣れた?”
良くいろんなトコロで聞かれる。
決まって答える。
“ワンワーが5人なコトには違和感を感じないけど関の姿と声をテレビの画面でしか確認出来ないコトにはモーレツな違和感を感じてる”って。
不意に移動中に“あれ?関は??”って言いそうにさえなる。
関と出逢って4年。
関がワンワーのメンバーでいる時間より長いんだもんね。
さすが臓器。
こんなカタチでも影響があるなんて。
アイツはんな余裕ないだろうしそもそも1人だからそんなコト思いもしないだろうけど。
アタシもんなコト言ってる場合じゃないか!!
ワンワーのヴォーカルとしても、ソロのアーティストとしても前進せねばっっつ!!!
今日は龍神サン達の事務所開き。
搬入とか掃除とか色々みんなで手伝ってきた。
と言ってもまだこじんまりとしてる。
レーベルも兼ねてるから建物自体はかなり豪華なんだけどね。
フロアにはデスク数台と応接スペース。
オシャレなツールが壁一面にあるくらい。
至ってシンプル。
「個人事務所だからな」
苦笑いして龍神サンが言った。
個人事務所・・・かぁ。
「よろしくな、所属アーティスト第一号!!」
さり気なく言ったであろう雷神サンの一言にアタシは尋常じゃないほどにフリーズしていた。
所属アーティスト・・・かぁ。
イマイチ想像出来ない。
アタシ1人の絵ヅラが。
1人でblue moonを歌ってる絵ヅラが。。。
やっぱりもっともっとレッスンして自信持たないと。
「路上やる?」
ある日の午後。
仕事の合間に何の気なしにメンバーで雑談をしている最中だった。
おもむろに発したのはテッちゃん。
その場が一瞬静まり返った。
『路上?』
声が裏がえらないように慎重にゆっくり低音で聞き返す。
関と楽器店前でやってた路上ライブが蘇る。
「キーボード練習してたよね」
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ↑↑↑↑↑
「マジ?」
「さすがひよ。」
「やるねぇ。」
どどどどどーしてそれを・・・。
愕然とした表情になる。
「みんな言ってたよ」
笑顔のテッちゃん。
バレてたんかい!!!
防音だからバレてないと思ってたアタシが迂闊だった。
「みんな褒めてたよ。さすが努力家のひよちゃんだねって」
いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ恥ずかしいぃぃぃ。
恥ずかしさのあまりうつむいてしまう。
「にしたってblue moonダケってワケにはなぁぁぁ」
腕組みのなおクンが。
「確かにblue moonはソロとしてのだからなぁ」
センちゃんの一言に今度は血の気が引いた。
モーレツな速さで。
そうだ、ソロってコトは自分で曲を創らなきゃないんだ!!(今更?)
コトバが出なかった。
ワンワーのひよとして作る曲と感覚は何ら変わらないハズなのに。
ぅわぁぁぁ。
一気に肩が重くなった。
「blue moon以外に何曲かカヴァーさせてもらったら?せっかくだから」
あっっっ!!!!!
その場を一転させてくれる発言はまぁクンだった。
と言うことで・・・、
「あぁイイよ」
Vivienサン達に申し出たトコロ、即答だった。
呆気ない程に。
『それとですねぇ』
あの雑談の続きで出たある提案も切り出した。
Vivienサンの独立を祝って、Vivienサン達をリスペクトしてるミュージシャン達でVivienカヴァーコンピレーションアルバムを作ろうってコトになり。
もちろんノーギャラ・印税も版権も全てVivienさん側(事務所)にって条件で。
ウチらは演奏してレコーディングして仕上げるだけ。
あの雑談で出たダケに、軽いノリでミュージシャン仲間に呼び掛けたらみんなもノリで快諾してくれて。
あっという間に話が進み。
さすが天下のVivien。
参加ミュージシャンの各事務所の承諾書まで。
さすがの龍神サン達も絶句していた。
「オマエら最高だよ」
みんな最高の笑顔で承諾してくれた。
「その代わり演奏のクオリティには一切ノークレームでお願いします」
苦笑いして承諾書とは別に全員で書いた嘆願書も差し出した。
みんな高らかに笑ってくれた。
「何なのこの結託力」
確かに凱サンの言う通りだ。
正直アタシもココまでハナシが上手く進むとは驚きだった。
あの雑談中すぐにテッちゃんがメールし出したら他の男子メンバーもみんな次々に自分と親交のあるミュージシャンにメールして。
その夜のウチにメンツが固まり、曲まで固まり、
わずか数日のウチに話が固まり。
みんな決してヒマな方々じゃないハズなのに、勢いとノリとVivienサン達の為ならって想いでココまで来ちゃったって言う流れ。
すぐさまVivienサン達も参加アーティストにメールや電話して。
その隙間でアタシがカヴァーする曲のハナシになり。
グレイトロックのグランプリを獲った後の話し合いと言い卒業式の時のサプライズライブと言い代表答辞と言いアタシがソロでこの事務所からデビューする時と言い、
どうしてこうもあっという間に進んじゃうもんなんだろう。
スゴいなとしか言い様がない。
どの時にもアタシは1人ついて行けず。
「歌いたいの、ある?」
皆さんがそれぞれに電話をしながらも入れ替わり立ち替わり話を進める。
「オレ、ひーちゃんボーカルで“永遠”聴きたいなっ!」
可愛げすら感じてしまう、無邪気に言う流雅サン。
アタシにしてみればどの曲だっておこがましすぎてアタシからなんて言い出せないってのに。
「オレ“Adam”♪」
風雅サンまで超ノリ気。
「そもそも陽依の路上ライブ用ってのが基本なんだからあまりムチャ言わないでよ」
すかさずミヒロさんが割って入ってくれた。
「すみません副社長!」
したり顔で風雅サンがわざとらしく平謝り。
そーなのよ!!ミヒロさん、副社長なのよ。
半沢サンは専務兼現場マネージャー。(笑)
社長は、もちろんVivienサン達全員。
とは言え実質的な実権はミヒロさんになるだろうって専らのウワサだったりする。
「なぁんて言っといて何なんだけど」
ん?
急にミヒロさんの表情が変わった。
甘えてるっぽい。
んんん?
言いづらいコトなのかアタシにそそくさと近寄ってきた。
「曲、書いてくれない?」
『はぁ???』
何を言い出すの?ミヒロさん・・・。
思いっきり目が丸くなる。
「前にも話したけどウチらって高校の時からの付き合いでしょ?何だか陽依の“ありがとう”とか関クンの“愛してるぜ”がものすごく共感出来る点が多くて。あんなカンジの曲を書いてくれないかなぁ」
何と!!!!!
光栄極まりなさすぎだろ、オイ。
「アタシもリュウもあの曲大好きなの」
ミヒロさんの瞳がヤケにキラキラしている。
あまりの衝撃に何も言えなかった。
『ありがとうございます』
ただただ唖然。
そう思ってくれる人がこんなに身近にいたなんて。
恥ずかしい。
しかもアタシみたいな恋愛ビギナーの書く拙い詞がミヒロさんのような恋愛マスターに共感されてるなんて。
今更ながらに実感。
アタシなんかが書く曲が世代や環境を越えた誰かにも伝わってるなんて。
いつも反響があるのは大抵同世代だから新鮮と言うか衝撃的。
思わずその日の夜、帰宅してからブログに書いちゃった。
“自分が聴き手から伝える側になり、今まで自分が聴き手だった時に抱いていた想いを今度は誰かが、しかも実は世代も環境も越えてアタシの曲で同じ想いを抱いてくれている現実に、とっても今更ながら感謝感激衝撃的な気持ちです。みんなありがとう!!”
って。
こうも続けた。
“人に想いを伝えようと思って伝えるよりは、自分の素直な気持ちを隠さずに出した方がよっぽ自然に相手に伝わるんだなって実感しました。”
表現者としての自覚を、遅ればせながら。
“表現者として今更かも知れないケド。だけど、コレに気付かせてくれたのも、やっぱりVivienサン達です。”
“達”はミヒロさん達も含めて。
“アタシにとっての原点は、誰あろうVivienサンです。これからも常に原点回帰を心に留めて前進していきます。”
そう締めて。
ミヒロさんに贈る曲はワンワーからの結婚祝いと言うコトで、未発表として完全なまでにミヒロさんダケの為に贈ることにした。
おこがましい限りなんだけど。
Vivienリスペクトコンピレーションアルバムのレコーディング・編集作業もそれぞれの仕事の合間を縫って、着々と順調に進行中。
地味ぃぃぃに忙しい日々。
blue moonのレコーディングもあり映画の挿入歌のレコーディングもあり。
アタシはアタシでキーボードの練習もあり。
アルバムの曲にしろミヒロさんへの曲にしろその隙間での作業だから“地味に”忙しい。
まだワンワーはメジャーになってアルバムは1枚しか出してないけど、その時よりもこもっている時間が遥かに長い。
フルアルバムのレコーディングじゃないのに。
1週間のウチで、恐らく9割は室内にいると思う。
幸い他の仕事に影響は全くない。
決して余裕はナイのだけれど。
「ブリムンの挿入歌が終わったらそろそろまたアルバムからのツアーを視野に入れてね」
容赦ないモトさんからの指示にもメンバー全員やる気満々。
モチベーションが維持しっぱなし。
仲のイイミュージシャン達と同じスタジオには入らないにしても1枚のアルバムを作るって言うのが何よりのハイテンションのモトみたいで。
会話もハイテンション。
ソレを見てるとつくづくVivienサン達の凄さを痛感する。
それが“たまたま”Vivienサン達だったとしても、Vivienサン達がウチらに多大な影響を与えてくれているのは間違いない。
スゴいな、音楽って。
アタシもそんな存在になりたいな。




