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one way

その後そのまま記者会見をすべくVivienさんの事務所に向かった。


・・・のだが、


その移動中、アタシはとんでもないコトを聞いてしまう。




依然龍神サンの隣なんて神席とも言える助手席で心臓バックバクのイノセンスなテンションの中、何の気なしに2人とも流れてるラジオに聴き入っているとアタシにミヒロさんからの着信が。


『えっ?』


アタシが龍神サンと一緒なコトを知ってるハズなのにアタシに電話?


戸惑い、思わず龍神サンを見てしまう。


優しく黙って頷く龍神サン。


『お疲れ様です!』


破裂しそうな心臓を抑えて平静を装う。


「まだ移動中よね。2人きりのトコロゴメンね」


カラッとしたミヒロさんの言い方に反論出来ないでしまうアタシ。


「会見が始まる前にどうしても伝えたくて」


ん?


何かミヒロさんの声が、、、


弱いって言うか優しいって言うか、何だか今まで聴いたコトのないやわらかい声。


「会見でついでに発表するけど、」


何となく胸騒ぎ。


「独立を機に、結婚する事にしたわ」


・・・・・、


・・・・・???


前を見たまま固まるコト数秒。


心の中で“え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?”と叫びながら隣の龍神サンの表情を確認しつつ、


『おめでとうございます↑↑↑↑↑』


声が裏返る程に驚き、


とてつもないスピードでアタマに血が上った。


隣の龍神サン、声を上げて大笑いしてる…。


「ありがとう。陽依には自分で伝えたくて。さすがにさっきあの場では言えなくて」


今のアタシのイノセンスなテンションが更に増大した。


「報告遅くなっちゃったけど」


そりゃどおりで今まで聴いたコトのない声のハズだよ。


「2人の希望で、ファンクラブにはメルマガとホームページでさっき報告した」


そう話す隣の龍神サンはずっと穏やかな優しい笑顔だった。


不思議なテンションのまま、会見の会場へ。


ウチの社長、ミヒロさん・半沢さん、Vivienのメンバーさん全員も揃って。


ミヒロさんの姿を確認するなりアタシはミヒロさんに向かって猛ダッシュした。


『おめでとうございまぁぁぁっす♪』


そう叫びながら。


「ありがとう」


ミヒロさんの表情は今までに見たことがナイほどに穏やかで、幸せに満ち溢れていて、嬉しそうで、女らしくて、素敵だった。




会見が始まり、ミヒロさん達のコトをまだ知らない報道陣からは案の定お約束のような質問が飛び出た。


「彩沢サンのソロを引き受けると言うコトは将来的なモノをお考えと言うコトでしょうか龍神サン!」


「お二人の将来を見据えての引き抜きと言うことでしょうか!?」


モノの見事にお決まり過ぎて壇上のメンバー・スタッフ全員失笑。


「彩沢個人の将来性には十分期待していますがそこは彩沢の社長の前でどうこう言えるコトではありませんので」


さり気なく交わす龍神サンに会場全体にドッと笑いが起きた。


「冒頭にもお伝えしました通り、Vivienサンからお話を頂いた時点で、Vivienサンの方から“ワンワーまるごとと言うわけには行かないでしょうからせめて彩沢のソロを”と言うお話があっての経緯にあるだけです。そのような質問は上がるだろうと想定しておりました。手前どもの経緯はその質問が出たら話そうと待っておりました」


すかさずウチの社長が。


うっすらざわめく。


「ではワタクシから説明させて頂きます。もう一人のボーカルの関が海外単独修業へ行くコトがきっかけで、制作サイドが彩沢のソロのプランを立てていたところ、タイミング良くVivienさんからお話を頂きまして、そのあとリーダーの新藤と彩沢が今後について話し合い、彩沢本人からソロ活動をしたいと申し出がありまして、つい先程本人にVivienさんご本人たちからお話を頂きました」


とモトさん。


そしてそつのないオトナ達。


このテの質問はお見通しだった。


その上での展開を考えていた。


このくらいは戦略として当然なのかも知れないけど、報道陣の反応を見てもオトナってスゴいなと感心。


この会見の準メインであるハズのアタシがただただボー然としてしまっている現状。


「ひよ、大丈夫?」


隣のテッちゃんが。


表情そのままで小さく頷く。


アタシの脳内はグレイトロックの時のblue moonが。


あの時の感動と衝撃が蘇る。


「彩沢さん!純粋な今のお気持ちは?」


えっ?


コレだって十分予測出来る質問なのに、ちょっとボケッとしてたから不意をつかれた感じの反応になってしまうアタシ。


『何一つ取っても信じられない、ただそれだけです』


100%素直な気持ち。


半泣き。


「グレイトロックのステージで彩沢サンに上がって頂いた際のblue moonに関しまして、大変反響を頂いていまして」


すかさずミヒロさんが切り出す。


さっきの打ち合わせでの話した内容を最初に一気に話すのではなく、予め質問をある程度予測しておいてのそつのないコメント。


台本でもあるのかって思ってしまうかのような段取りの見事さ。


ただただ圧巻。





家に帰っても何だかふんわり気分だった。


モトさんが一斉送信したらしくテッちゃん以外の他のメンバーからメールが来てたけど、


それでもふんわりは収まらなかった。


“ブリムン主題歌やたぁぁぁぁぁ!!”


って言うセンちゃんからのメールも、


“ひよのblue moon音源化!しかもまさかのひよソロ?”


なんてまぁクンからのメールでさえも、


何だか現実感が全くなくて、まるで夢の中にでもいるみたいに。


それはアタシが龍神サンの車の助手席にいたからって言うコトと


アタシがblue moonをカヴァーするって言うとんでもない事実と


さっきまでのソツのない会見に圧倒されたコトと


何よりもミヒロさんと流雅サンの結婚て報告が重なったから。


“「ココでもう一つ、彩沢サンのソロよりは話題性には欠けると思いますが、」”


切り出したのは流雅サンだった。


“「ワタクシ流雅、この度兼ねてからお付き合いさせて頂いております、マネージャーの海崎ミヒロさんと結婚させて頂く運びとなりましたことを、この場をお借りいたしまして報告させて頂きます」”


会見でのあの時の雰囲気の余韻に浸っているとしばらくして関からメールが来た。


“オレが渡英しようって時にとんでもない爆弾落としやがって!!やっぱりお前はすげぇ。お互い頑張ろうな。益々修業に張り合いが出てたワ。”


嬉し泣きに近い涙が出て来た。


“お前もワンワーもグレイトだ!!”


少しの改行の後、そうメールを締めていた。


“アンタも十分グレイトだよ。”


アタシはただ、ソレだけ返信した。






翌朝、会ったみんながハイテンションだった。


「流雅サン、マジカッコ良すぎだろ!」


とセンちゃんは流雅サン達の結婚報告にコーフンし、


「ブリムン主題歌get!快挙だな」


ってブリムンの単行本を片手にキラキラしてるなおクンに、


「改めて自分らの曲聴きながらブリムン読んでみた!」


ってコーフン気味のまぁクン。


「オレらのファンだった峰坂先生もグレイトですけど、やっぱりワンワーってグレイトですね」


大きいスーツケースを持った関が冷静に言った。


それをフッと軽く笑い飛ばすテッちゃんとモトさん。


「流雅サン達の結婚報告にはオレらも驚いたけどな」


運転席からモトさんが言うと話題は一気にその話に。


いよいよ関の出発。


全員で空港に向かう。


昨夜の未明の重大発表のせいかあまり寝てないと思われ、みんな不自然なハイテンション。


ロビーでみんな立ち止まり、いよいよ出発の時が。


まずはテッちゃんが男子からのプレゼントを。


「防犯上、カバンは必要だからな。今までみたいにポケットインは危険だ。男子4人とモトさんから」


案の定スーツケース以外手ぶらだった関に、あえて裸の状態でメッセンジャーバックを差し出した。


テレながらも受け取る関。


「ありがとうございます」


すかさず背負う関の背中は、どことなく大きく見えた。


ちょっと感動的。


思わず見入ってしまう。


「ひーは?」


見入ってしまっていたアタシにセンちゃんが促してくれた。


『ついつい見入っちゃった』


と弁明しながら、


『気に入るかどうかわかんないけど』


と言いつつも紙袋ごと渡した。 


アタシの左手首にはしっかりブレスレットが。


「えっ?」


戸惑う関。


「アユナさんの御墨付きだ」


テッちゃんの一言に他のメンバー全員が食い付いた。


「アユナさん???」


ウチのメンバー全員も周知のアユナさん。


特にセンちゃんはアユナさんファンだそうで。


「オレも驚いたよ。ひよと合流したらアユナさんもいて。アユナさんの働いてる店で買った」


「マジで???今度行って見ようかな」


乗り気のセンちゃん。


そんなメンバーをよそに関はブレスレットにメチャクチャ驚いている。


「お前から???マジで!!」


驚きすぎて声が裏返っている関。


『要らないの?』


ワザとキレ気味に。


「開けてイイか?」


バカみたいに無邪気な表情。


『うっ』


アタシの返事を待たずに開ける。


「えっ?」


小さな箱に戸惑いを見せる。


『要らないの?』


固まる関にいい加減恥ずかしくなり裏腹なコトバを発してしまう。


アタシのセリフに無反応のまま関は箱を開けた。


周りに群がるテッちゃん以外の男子達の反応の方が大きかった。


「ぅおっ!!」←なおクン

「さすがアユナさん♪」←センちゃん

「かっけー↑」←まぁクン

「やるねぇ」←モトさん


テッちゃんはなぜかどや顔。


「ありが」


エッ?


言いかけてヤメた関の表情を確認する。


ん?


もしかしてアタシの手首のブレスレット見てる?


「マジ、大事にする」


まさか泣きそう?


関の声が震えてる気がする。


『多少石は違うけど一応お揃いだから好きな人が出来た時は気をつけてね』


言いながら胸が痛むのが分かった。


だけど関に対しての強がりなんだろうな。


「それでも外さねぇよ」


アタシが泣きそうになった。


関の言い方と表情があまりにもキラキラしてて嬉しくて。


ちょっとカッコ良くすら見えた。


「運命共同体だから」


そう言いながら関はブレスレットをつけてくれた。


アタシの涙のダム崩壊!!!!!


たちまち涙が溢れてきて関の顔を見れなかった。


「泣いてんじゃねぇよ!!」


ワザと強い口調。


「ありがとな」


関の声が殺人的に優しかった。


アタシはアタマを上げれずに、俯いたまま頷いた。


別れ際に1人1人グータッチをして関は旅立っていった。





「っしゃ!!ワンワー、リ・スタートだな」


離陸する飛行機を全員で見送りながら。


なおクンが言った。


「デビュー前に戻ったな」


モトさんが飛行機を見上げたままで。


「ブリムン主題歌だ!」


両手を突き上げながらセンちゃん。


「頑張れよ純也ぁ!!」


叫ぶまぁクン。


「よろしくな、ひよ」


ただ立ち尽くしてたアタシのアタマを軽く撫でながら優しく言ってくれたのはテッちゃん。


アタシは笑顔で大きく頷いた。


“行ってらっしゃい”


消え行く飛行機にそう心の中で言いながら。


帰りの車内はブリムンの主題歌の話し合いで盛り上がった。


アタシは1人助手席でスマホをいじっていた。


んんんんん?????


『あっっっ!!』


思わず声に出してしまった。


「どした?」


隣のモトさんが何事かと驚き気味に。


『コレ』


タイミング良く信号でクルマが停まり、アタシはモトさんにスマホを渡した。


更に驚くモトさん。


アタシと顔を見合わす。


後部座席の男子達は気付かず別のコトで盛り上がっている。


「あとで教えて」


クルマが発進し、モトさんからスマホを返されアタシは改めてスマホの画面を見始めた。


龍神サンのブログ。


タイトルに目を疑った。


“告白”


何なに???このタイミングで何を告白???


と思ってさっき声を上げてしまった。


“関が旅立った。”


書き出しはこうだった。


“実は、関に海外修業を持ち掛けたのはオレだった。”


心臓止まりそう↓


何を言い出すんだ?


心拍数、かなり速い。


“アイツなら必ず成長出来ると信じて疑わなかったから。”


心拍数が速いにも関わらず胸が熱くなる。


龍神サン・・・・・。


“ひよがオレのファンで、しかもひよが音楽を始めたきっかけがオレだってのはひよが常々公言してくれているし、オレも常々言っている”


心臓、痛い・・・・・。


心拍数が上がりすぎて。


“このコトに関して悪く言うヤツがいるって言う事実は残念だけど仕方ないコトなのかとも思う。”


何なの?突然。


“いろんなトコで言ってるケド、“オレがきっかけで音楽始めた”コがグレイトロックを獲ったなんて、オレからしたら光栄以外の何モノでもナイ。”


落ち着けアタシ!!


何度も何度も読みながら深呼吸。


「どした?ひよ」


アタシの異変に気付いたなおクン。


「龍神さんのブログ」


モトさんが答えてくれた。


どーしたんだろ龍神さん。


“だけど実際話したら想像を遥かに越えるほどに面白くてイイヤツで憎めなくて今まで逢ったことナイ程に純粋で真っ直ぐで人を惹きつける何かを持ってるヤツで、ひよだけじゃなくてテツをはじめワンワー全員がグレイトな連中だった。”


心臓止まるってばよ!!


アタシを殺す気ですか!?龍神サン↑↑↑


“話せば話すほどヤツらが近くに感じてきて、今となっちゃすっかりオレだけじゃなくメンバー全員ワンワーが一番身近だと思っている。”


酸素下さい、誰か。


後ろの男子がヤケに静かだ。


もしかしたらみんなも読んでんのかなぁ。


“今回オレらが独立する上でひよを引き抜いた経緯は会見で話した通りだ。アレは嘘偽りナイ真実だ。あれ以上でもあれ以下でもナイ。”


ちょっと読んでは深呼吸。


“決してひよのblue moonの宣伝ではない。ただ、ひよを引き抜いたコトをみんなに理解して欲しくてこの話をした。”


龍神サン・・・・・。


“常にブログでワンワーネタは出しているが、こんな真剣な話は初めてだな。”


心拍数は殺人的だけど目が離せない。


“初めはオレがひよと親交を持たせてもらっていたが気がつけばいつの間にかウチのメンバー全員がワンワー全員を好きになっていた。自然にだ。ひよと一緒に仕事がしたいってのも、オレが言い出したワケじゃなく自然と全員が思っていた。”


じんわり涙が。 


“ひよはそう言うヤツなんだ。理解出来ないヤツはしなくていい。したくないってヤツはしなくていい。ただひよを非難するコトだけはしないでくれ。オレを非難するのは構わない。ひよはガチでオレを慕ってくれている。それが全てだ。”


ぴ→→→→→→→→→→


放心状態。


しばらくフリーズしていた。


後ろから何を言われても。


何の感情も起きない。


ただただ放心。


「カッコ良すぎだろ、龍神サン」


「神だ」


後ろからの声が耳に入っては消える。


「やっぱりとんでもない人を味方につけたな」


龍神サン、、、、、。


泣けて来ちゃうよ。


逢いたくて。


「ホントに泣き虫になってきたなぁ。社長も言ってたケド」


モトさんのコトバがようやくマトモに入ってきた。


自分でも思うよ、最近ヤケに涙モロいなって。


きっとコレも龍神サン効果なんだろうなと思う。


「良かったな、ひよ」


テッちゃんの温かい手のひらがアタシのアタマに触れる。


温かみのある嬉し涙が加わって余計涙を誘発する。


泣きながらも、


“ありがとうございます。”


ただそれだけメールした。


逢いたい気持ちを押し殺して。。。。。




























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