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7/12

愛を込めて花束を

2人とも買い物を済ませそのままランチへ。


真壁事件の直後は外なんて歩けなかった。


痛い視線や冷ややかな声がスゴくて。


今は全然ラクに外を歩ける。


何だか不思議なカンジ。


お店を選んでウロウロしてる最中にふとある広告に目が行った。


映画か何かの告知ポスター。


でも書かれているのは主演とタイトルだけ。


『あれ?コレって』


そこに書かれていたのは今もの凄い人気のあるマンガのタイトルだった。


「主演決まったんだね」


テッちゃんがぽつりと。


青年誌に連載中の近未来青春&サクセスストーリー。


メンバーもみんな大ファンで連載している雑誌を毎号交代で買って読み回しているほど。


だから雑誌で実写化するのは告知してたけど主演とかは全く非公開だった。


結構人気があるわりには近未来って言うのとキャラ立ちし過ぎたストーリー独特の世界観が実写化するには難しいって言うかムリだろまで言われてて、なかなか実写化しないままアニメ化がやっとな程でしかも声を入れるっていうイメージ的な面もかなり問題になった程。


アニメはそれでももちろん高視聴率。


主演に上げられていたのは最近人気急上昇なアイドルグループのメンバーだった。


“新視聴率男”って言われてるみたいで最近の好感度関係のランキングも上位の常連さん。


「ちょっと前なら真壁サンだったんだろうけどね」


テッちゃんがポスターを見たままボソッと呟いた。


真壁サンか・・・。


あの事件以来真壁サンは音楽界とテレビ界から消えてしまった。


真壁サンの名前は特にNGコードになっているワケではなかったけど、あえて出てくるコトもなく。


真壁サンは今はモデル一本に切り替えて、ファッションブランドを立ち上げて成功している。


「主題歌、誰だろね」


主題歌かぁ。


『やりたいでしょ?』


ワクワクしてるテッちゃん。


「ぃやっ、世界観がなぁぁぁ」


素で受け止めてる。


確かにファンだからこそ構えすぎちゃうってのもある。


オールマイティーなワンワー(って言うかテッちゃん)は、恐らくこの独特の世界観も表現出来ると思う。


ちなみにワンワーは主題歌はまだ未経験。


もちろんやりたい。


ましてやそれがみんなが愛して止まないブリムンなら尚更。


「ココにしよっか」


テッちゃんが洋食のレストランの前で立ち止まった。


『うん』


店頭のショーケースの中に並んだ色とりどりのサンプルに目移りしながら中に入った。


もうとっくにピークタイムを過ぎ店内の客数はまばらだった。


2人で話す話題は自然と今後のワンワーの話へ。


「ひよは何かやりたいコトある?」


やりたいコト・・・ねぇ。


『とりあえず関に負けてられないからね。何か新しいコトやってみたいってのはあるけど、何がイイかは正直わかんない。真壁サンは凄いよね、大成功して』


テッちゃんはふんわりと優しい笑顔で頷いていた。


「そうだね。しかもコレからはイケメンイクメンの代表格になるだろうしね」


奥様はもう臨月。


「今はメンズファッション専門だけど、そのうちキッズとかまで始めたらまた爆発すんだろね」


人には向き不向きがある。


まさに真壁サンはそっち専門で行くべき人だったのかも知れない。


真壁サンみたいに“活かせる何か”が、アタシにもあればイイんだけどな。


「お芝居は?」


いきなり過ぎだった。


あまりの突然さに思わずきょとんとしてしまった。


「バラエティーとかテレビもイイけど、今もチョイチョイやってるしね」


“真壁事件”の後、アタシは1人でちらほらとバラエティーにお呼ばれした。


今もたまに呼ばれる。


でもさすがにお芝居のお呼ばれはない。


vivienさんのPVや、自分らのPVでお芝居とは言わないけど、カメラの前に立ったコトがある程度。


だから今のテッちゃんの発言には正直ビックリ。


「ソロやってみる?」


・・・、ソロかぁ。


ちょっと前なら尋常じゃなく過剰反応しただろうに、


今なら関が武者修業に行くコトもあって何となくちょっとずつぼんやりとはアタマの中に浮かんでいた。


だからあまり考えずにゆっくりと頷いた。


「多分モトさん的にもプランにはあると思うけどね」


そう言いながらテッちゃんはスマホを取り出した。


ソロか。


もちろん自信はないけど、関に負けてられないからね。


関は海外しかも1人。


アタシは関からしたら完全温室。


そんなんで弱音なんて吐いていられない。


「明日の渡英前に宣戦布告出来るね」


アタシは飛びっきりの笑顔で言った。


『ありがとうね』


どうやらテッちゃんはメールをしてるみたいでただ笑顔ダケでの返事だった。








その後お互いそれなりに荷物もあることなので一旦それぞれ自宅に帰り、別々に仕事へ向かった。


アタシが向かったのは自力で事務所。


18時に事務所で打ち合わせってコト以外何も聞いてなくて、何の気なしにいつものテンションで事務所へ。


『おはようございまぁす』


出迎えたのは気味が悪い程に笑顔満面な社長。


まるで恵比寿様でも憑いているかのように。


「聞いたぞひよ!」


へ?


アタシ、当然ポカン。


「ソロやりたいって?」


なぬ?


でこの恵比寿様?


理解出来ず、ポカンのまま返事。


『はい。情報、早い・・・ですね』


軽く引き気味アタシ。


「じゃあ話は早い」


そう言いながら恵比寿様のままの社長にデスク前のソファーに誘導された。


全くもって理解不能。


「実は今日の打ち合わせ、ソロの打診だったんだ」


やっと事態把握。


ちょっと拍子抜け。


『そうだったんですか』


でも、、、


『何で社長?』


が話してんの?


モトさんじゃなくて?


モトさんはテッちゃんのトコロかな。


「そりゃそーだろ。一大プロジェクトなんだから」


ヘ?


ポカン再び。


「ウチの事務所でソロで、しかもオファーが来たのなんて初だからな。どのみちモトも他に付かなきゃいけないんだ。じゃオレがひよに付くワってワケだ」


“ウチの事務所初”・・・。


そーなのか?しかも今“オファー”って?


で、


『オファーって?』


アタシが言い終わるか終わらないかのタイミングで、とんでもなさすぎな人の声がした。


「おはようございま~っす!」


まさかとは思うけど、まさかだよね?


『おはようございます!』


龍神サンと凱さんだった!!


しかもミヒロさんと半沢さんも。


どーゆーこと???


さっきの何万倍ものあんぐり。


アゴが外れんばかりに。


しかもまだアタシの爆弾低気圧は収まってないってのに!


「本人もその気でいてくれてたみたいだよ」


社長の笑顔が止まらない。


「あっ、そうですか。じゃ話は早いですね」


穏やかな雰囲気の龍神サン。


ミヒロさんも半沢さんも凱サンも。


事務のスタッフサンがコーヒーをもってきた。


自然な流れで全員着席。


「モトさんとテツには改めてこの後オレから話します」


切り出したのは龍神サンだった。


ワケがわからないままコーヒーを一口。


「実はこの度vivienが独立するコトになりまして、無事その準備が整いまして」


、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、





ぁあああああん??????????






今ミヒロさん、何て言った?


独立ぅぅぅ???


「レーベルも立ち上げられるコトになりまして」


龍神サンのコトバに


「おめでとさん」


恵比寿様社長が返す。


龍神サンと社長の言ってるコトがイマイチ理解出来ない。


ただ1つだけわかるのは、


『スゴいです!!さすがですね!!!おめでとうございます!』


中途半端に他人事感覚。


独立か。


しかも事務所もレーベルもなんて。


でも、


どうしてその報告にアタシも同席?


「つきましては、是非彩沢サンのソロ活動をウチで面倒を見させて頂きたくお伺い致しました」






んんんんんんんんんん






なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ??????????




アタシ、絶句。


フリーズすら出来ないくらい衝撃的。


どうしたらそうなんの?


「彩沢が成長するには勿体無いくらいの話だ。本宮もメンバーも喜ぶと思うよ」


社長?????


何あっさり快諾してんの!?


フリーズしてない代わりにアタマに血が昇っているのがわかる。


「ひよは?」


龍神サンが尋ねてきた。


何も返事出来ない。


ノド、からっから。


コーヒーを一口。


軽く深呼吸。


『何で?』


あろうことか出たコトバがコレだった。


「別にひよをプロデュースしたいとかそういうんじゃないんだ。ただ、お前と一緒に仕事がしたい、それだけだ」










彩沢陽依、


昇天・・・・・。









龍神サンから“ただお前と一緒に仕事がしたい、それだけだ”なんて言われたらどうしたらいいのアタシ。


「まさかお前らまるごと移籍されるのはさすがに無理だからな。せめてひよのソロ活動ならお前の為になるし、果てはワンワーの為、ひいてはウチの為になる」


社長・・・・・。


恵比寿様の理由はコレだったのね。。。


『イイんですか?アタシで』


声がかすれてる。


しかも半泣き。


龍神サン、凱サン、ミヒロさん、半沢サンの目を順番にじっと見ながら。


みんな菩薩かのような穏やかな笑みで頷いて。


「ココまで来たらもう龍神とひよのコトをどーこー言うヒマな輩はいなくなるでしょ」


ミヒロさん→→→→→。


昼間のアユナさんのコトバもシンクロしちゃう。


ダメだ、ギブアップ↑↑↑


思いきり泣いた。


声を上げて。


みんなの前で。


『ありがとうございます』


何度も繰り返しながら。


「何泣いてんだよ。お前いつからそんな泣き虫になったんだ?」


社長の大きな手がアタシのアタマに掛かる。


確かにそうだ。


最近やたらとみんなの前で泣いてる気がする。


今日は特にダメだ。


『すみません。何だかココのトコロ精神的に色々忙しくて。ホントにすみません、大丈夫です』


ミヒロさんやアユナさんが背中を押してくれてる。


メチャクチャ力強く。


そして温かく。


泣けないワケないじゃない。


でも泣いていられない。


泣きすぎだよアタシ。


「よろしくね」


半沢サンとミヒロさんの声が神憑り的に優しかった。


アタシは泣くのを堪えてゆっくり頷いた。


「覚悟しとけよ!」


龍神サンの表情も後光がさすかの如く輝きを放っているかのように見えた。


アタシはただ頷くしか出来なかった。


「じゃ、具体的な話は凱と海崎と半沢がします。オレはひよをお借りしてモトさんとテツに話に行ってもよろしいですか」


ん??????????


龍神サンが立ち上がり言った。


心臓が飛び出しそう。


「お願いするよ」


恵比寿様社長、二つ返事。


「じゃ、行くか」


おーまいがぁぁぁぁぁ☆☆☆☆☆


おう神よ!!


まだまだもっともっと頑張りますからコレでアタシの運を使い切るコトがありませんように↑↑↑↑↑


もっともっともっともっともっともっと頑張りますからぁ。


99%以上硬直したまま龍神サンについてくしか出来ないヘタレなアタシ。


下に降りるまでの移動中、龍神サンが切り出した。


「突然でごめんな」


『とんでもなさすぎなタイミングで、正直驚きました』


さすがに真隣にいられちゃ直視し辛い。


照れ隠しの為に話をそらした。


『今日、関に渡すプレゼントを買いに行ったんです。興味を持ったお店にアユナさんがいたんです』


「知ってて行ったの?」


話を勝手に反らしたにも関わらず龍神サンはさり気なさすぎに話に乗ってくれて。


ファン歴の長いアユナさんは龍神サン達も熟知している程。


『知りませんでした。だからお互い大騒ぎになって』


ハナで笑ってる?


・・・・・、


さすがに“あの話”は言えないよな。


だから


『やっぱりミュージシャン自身がステキだと、ついてくるファンの方もステキですよね』


言いながらアタマのなかではあの時のアユナさんの表情とコトバがよみがえる。


“vivienファンナメないでね!”


アユナさん・・・。


龍神サンはフッと照れ笑いで返した。


車内のカーステレオからはblue moonが流れていた。


いつ聴いてもステキな曲だわぁ。


龍神サンと歌ったコトはおこがましくもあるけど龍神サンの隣で聴くのは初めて。


緊張しつつも感動。


「コレ、カバーしてくんね?」


はぃぃぃぃぃぃ?????


何なんだ!


何だってんだこのミラクルの連続は。


おかしすぎる。


blue moonをアタシがカバー??????????


理解しがたいにも程がありすぎるだろ!!!


嬉しいよ?


でも恐れ多い。


「オレらの中で独立の話が進んでて、お前をソロで迎えたいって話もまとまりかけてて、そろそろ時期を見てお前に話をしようと思ってた矢先にある映画のプロデューサーから、お前のカバーのblue moonを主題歌に起用したいってオファーが来て」


『主題歌ぁぁぁぁぁ?』


アタシのカバーのblue moonを使いたいって、どんな奇特な方なんだ?


「で、間もなくしてプロデューサーさんがひよサイドにも話を通してくれてて、驚く程にスムーズに話が進んだってワケ」


順調過ぎて何が何だかわからない。


ついていけない。


「結構グレイトロックでの競演が話題になってたみたいで、事務所とかレーベルとか、版権とかオトナの事情があって、話は立ち消えてたけど独立してお前をソロで迎えようと思ってたウチらにはまさに棚ぼたなオファーだった」


夢か?コレは。。。


いくら夢でも出来上がり過ぎだろ。


ドラマみたい。


勝手に涙が出て来て止まらない。


『何でアタシなんかにみんなこんなにまで良くしてくれるんですか?』


グズグズに泣きながら。


車内にはblue moonが流れている。


車の外には夜景があって。 


何より隣にいるのは龍神サンで。


夢なら醒めないで。


永遠に醒めたくない。


「だから言ってんだろ、みんなひよが大好きだからだって」


ぁぅっつ!!だっっっ↑↑↑や゛っ↓↓

(意味不明、聞き取り・通訳不能)


照れすぎてコトバにならない。


アタシも大好きです。


いいえ、


愛してます。


今まで気付かなかったけど。


「何照れてんだよ、顔真っ赤っ赤だぞ」


えっ?


ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑


龍神サンの顔が目の前に☆※▲↓$♯@!!↑


「着いたぞ」





ち→→→→→ん。。。






ですよね、ですよね、そりゃそーですよね。


当たり前ですよね。


んなワケありゃしないですよねっっっ!!!!!

(どんなワケだよ)







・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


何勘違いしてんのよ、バカヤロー甚だしいワ!!!!!!!!





疲れた。


何してんだアタシ。


自分のバカヤローさに疲れた。


『はい』


涙を拭って。


龍神サンの後ろを黙ってついていく。


龍神サン→→→→→。


後ろ姿ダケでもドキドキしちゃう。


・・・、しかし、、、


デビューしてもう少しでやっと1年だってのにどんだけ騒がれてんだ、アタシ。


ちょっと暴走妄想モードに入り始めた。


“今度はソロデビュー!しかも独立vivien事務所所属!日本一話題に尽きないオンナ彩沢陽依”


ってトコか?


“話題性でしか勝負出来ないオンナ”


“さすが大型新人!!話題性まで大型!!!!!”


アタシ、新聞社で通用する?


って、そんな場合じゃないだろ!!


着いたのはとあるレストラン。


テッちゃんとモトさんがいた。


「お待たせ致しまして申し訳ないッス」


龍神サンが。


龍神サンのコトバに合わせて、座っていたテッちゃんとモトさんが立ち上がる。


「おはようございます」

「おはようございます」


2人ともきっちり90度におじぎ。


アタシにじゃないのをわかっていても、恐縮。


4人席に着いて間もなくすると、男性が2人現れた。


全員立ち上がる。


「今回の映画のプロデューサーの山崎サンと、原作者の峰坂弥生先生」


ん?・・・


聞き覚えのある名前。


固まるテッちゃん。


「お目に掛かれて光栄です!!オレっ、いやっ!!メンバー全員大ファンなんです!!」


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


てことはやっぱり?


さっきポスターを見て2人で話してたマンガの作者だっっっ↑↑↑↑↑


「ワタシもワンワーの大ファンなんです!」


峰坂先生はめちゃくちゃ嬉しそうにハイテンションでそう言ってくれた。


とりあえず座り、プロデューサーサンが話し始めた。


「今回、“brilliant moon”の映画化を実現させて頂くにあたり、作品の世界観を壊さないために、キャスティングと使用楽曲は全て峰坂先生にお任せ致しました」


ドキドキしっぱなしのアタシ。


必要以上に飲み物に手がいく。


手が震えている。


まさかbrilliant moonの主題歌をアタシが演るっての???


いやいやいやいや。


ノドがからっから。


他のみんなはニッコニコ。


テッちゃんなんか超キラキラしてる。


眼の中に☆が見えそうなくらい。


「そこで、主題歌を彩沢サンのカバーのblue moon、挿入歌にwonderful☆worldサンにお願いしたいということになりまして」


うそぉぉぉぉぉん→→。


「テツさんの描くワンワーの世界観がbrilliant moonの世界観にマッチすると思いまして。」


テッちゃ→→→→→→→→→→ん!!!!!!!!!!


たまらずテッちゃんの顔を見た。


・・・テッちゃんはやっぱりテッちゃんだった。


眉を微塵にも動かさず、


「光栄極まりなさすぎです!!たまたまさっき彩沢とポスターを見て話してたトコロだったんです。おこがましいにも程があると思っていたので、メチャクチャ光栄です。メンバーも大喜びすると思います」


至って冷静に言ってのけた。


何なんだ、一体この人は!!


何でこんなに冷静に言えんだ?


羨ましいわぁ。。。


アタシなんて親しくさせてもらってる龍神サンからの発言にだって未だに冷静に対応出来なくてこんなに困ってんのに!!


おお神よっ!!!


アタシもテッちゃんみたいな精神力が欲しいデスぅぅぅ。














































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