その先の向こうへ
全英語詞のアタシと関にとって一番苦労した曲“tomorrow”を終えて、関以外の全員が一旦ソデに引っ込む。
関が1人、客席のみんなに向かってメッセージを言う。
一応どこの会場でも“関の自由時間”って設定。
好きなだけ好きなように喋れって。
その土地土地の来た時の感想を織り交ぜながら大抵ドコの会場も同じような内容。
まぁそりゃあそうだ。
アタシの付き添いがきっかけでワンワーにスタッフとして押しかけ同然で加わってからグレイトロックで優勝しての打ち合わせで何故かメンバーとして加入するコトになった時の気持ちを。
ウチらはソデでジッと関の姿をただ見つめている。
ステージ中央にたった1人、スポットライトを浴びている関を。
両手をマイクに乗せ軽くマイクに寄りかかるカンジで、右足はつま先ダケ床に着き時折左右足を替えながらゆっくり話す関。
「今、この場を借りて」
ん!何??
こんな展開ドコの会場でもなかったぞ。
まぁ地元だからな。
「あの夜、ド深夜にも関わらず突然の外出を認めてくれたオレの両親と、」
え゛!!!まさか?
一気に血の気が引く。
「非常識な時間にも関わらず何も言わずに家に入れてくれた陽依のご両親と、」
かぁぁぁぁぁぁ。
思わず赤面。
客席がざわめく。
「スタッフで付いて行ったハズなのに何故か契約書を持って帰って来ても、」
やばっ!ウルウルしてきた。
関は終始笑顔。
「上京すると思っていたのに上京どころか渡英するコトになって帰省してきた馬鹿ドラ息子を愛情深く育ててくれた両親に、最上級の感謝を伝えたいです。本当に、ありがとうございます。こんなどうしようもない1人息子ですが、これからもよろしくお願いします」
関ぃぃぃ。
マイクから離れ、カラダを折り曲げるようにして関は客席のご両親に向かって数秒間アタマを下げていた。
客席からは嗚咽にも似た声とすすり泣く声と拍手と歓声とが入り交じって聞こえてくる。
舞台ソデのアタシも。
泣かないって決めてたのにガマン出来ないよ。
「ひー、行け!!!」
え゛!!!
必死で涙を堪えようとして顔が歪んでるなか、みんなに背中を強く押されアタシは軽くよろめきながらステージに出た。
歓声がさらに大きくなる。
気付いた関がアタシのもとに寄ってきた。
関の今までにない、“輝いた”表情を見ていたら、
アタシは無意識に、
関もアタシとほぼ同タイミングで、
2人、抱き合っていた。
悲鳴的なモノは一切なくみんな拍手してくれて。
歓声が大きくなったと思ったら他のメンバーも出て来た。
「ぉいぉいぅおい、友情だねぇ」
わざとらしさ爆裂でなおクンが茶化す。
いつの間にかみんなマイクを手にしている。
「また書かれちゃうんじゃないの?陽依ちゃ~ん」
イヤらしさ全開のセンちゃんの発言に会場全体爆笑。
でもそのお陰で涙がひいてきた。
「他のヤツとならいざ知らず、オレと抱き合ったくらいで記事にするようなヒマな記者さんなんているんスか?」
関のコトバにはみんな拍手で反応してくれて。
「確かにぃぃぃ」
「全くだぁぁぁぁぁ」
なんてコトバもステージに届きつつ。
完全にアタシ笑顔。
「じゃ、ヒヨが笑顔になったところで!」
テッちゃんが切り出した。
きたっっっ!
テッちゃんはイスを持って登場していた。
「みんな座っててよ。みんなも座って!」
他のメンバー、客席の人達にも座るよう促す。
何だか緊張してきた。
イイ意味の緊張。
みんなが座ったのを確認してアタシは中央右よりのアタシのポジションのマイクスタンド前に立った。
大きく深呼吸。
PAサンに目で合図。
『今から関に贈る曲を、2曲続けて演ります』
他のメンバー驚き、客席歓声。
『1曲目はアタシが作りました。ハタから見たら完璧ラブソングかと思われるでしょうが』
さっきの流れで言ってみた。
見事にドッと笑いが起きる。
『師匠に聴いてもらったらなんと師匠はストリングスバージョンにアレンジしてくれました。せっかくなのでそちらを演りたいと思います。アタシの素直な気持ちです。“ありがとう”お願いします』
PAサンを見て“お願いします”を言ったあと、目を閉じ壮大なイントロをカラダで感じる。
静まり返ったホールにストリングスバージョンの“ありがとう。”が響き渡る。
大きく深呼吸して歌い出す。
アタシは天井を見据えていた。
イントロのストリングスが終わりテッちゃんのギターとアタシの声だけが静かに響く。
『いつも一緒だった 気がつけば そばにいるのが当たり前になっていたね』
高校時代のコトが浮かんでくる。
『まるで相方だね いつの間にかカラダの一部みたいになっていたよ』
ヤバっっっ!!!!!!
関ママやサヨリが泣いてる。
もらいそう。
見なきゃ良かった。
『ちょっとだけでもいなくなるなんて 信じられないよ』
ちょっとずつ込み上げてくるよ。
頑張れアタシ!
龍神サンにもらったペンダントに手をかける。
『ありがとうそばにいてくれて ありがとう勇気をくれて』
泣かないように、天井を見上げる。
『ありがとう 何度言っても足りないよ』
“関に贈る歌”って言っても、
半分は、
“アタシ自身に言い聞かせる歌”
かも知れない。
“きっと強くなれるよ”
とか、
“きっと大丈夫”
なんて特に。
“1人じゃないよ、いつもみんながついてるよ”
とかも。
だからなのか、最後の方には自然と笑顔になっていた。
『ありがとう ずっとずっと』
歌い終わるとテッちゃん以外のメンバーが全員アタシの元に駆け寄ってきた。
多くの歓声のなかまぁクンがテッちゃんに何やら話してる。
歓声のせいもあり内容は聞こえない。
だけど2人ともものすごい笑顔。
テッちゃんはギターを置いてマイクを手にした。
何だろ‥。
綿密な計画ならこのまま“応援歌”なのに。
「まぁからの提案で、予定にはなかったコトなんだけど、会場全体でオレらが初めの頃から開演前にやってる、“円陣”を組みたいと思います」
えぇぇぇぇぇ?????
顔全体で驚きを表現してしまう。
会場全体で円陣なんて考えもしなかった。
なんてイキなアイデアなの!?
まさに地元ならではよね。
全員でステージを降りるとホールの照明が明るくなり、モトさんやスタッフサン達も出てきて手を重ねる代わりに全員で手を繋ぐ。
客席も自然と両隣の人と。
初対面の人もいるだろうにみんな笑顔。
なんてステキな光景なんだろう。
もちろん最前列の中央は関。
関の隣のまぁクンが関に何かを話してる。
「関がみんなの前で決意表明をするんで、オレが右手を挙げたら、全員で”ぞい”もしくは“ぜい”と叫びながら手を高々と挙げて下さい。イイ?」
「はぁ~い!」
ピッタリ合った返事。
関が大きく息を吸う。
マイクを使わずに言いだした。
「半年になるか1年になるか、それ以上になるか分かんないケド、自分が納得行くまで、今よりももっと、実力も自信も身に付けるまで、弱音を吐かずにロンドンで大暴れしてきてやるぅぅぅぅぅ」
ちょっと緊張。
前代未聞の千人越え円陣。
タイミング、大丈夫だろうか。
お願い神様仏様龍神様!!!
みんなの息を合わせて下さい!!
まぁクンの右手が挙がった。
緊張の一瞬。
「ぜぇぇぇぇぇい!!!!!!!!」
「ぞぉぉぉぉぉい!!!!!!!!」
全身を猛烈な勢いで鳥肌が駆け巡る。
こんな奇跡、あってイイんだろうか…。
ホール全員、恐らく2000人くらいになるはずの打ち合わせナシの円陣は、
ものの見事に大成功。
みんなの息がピッタリ1つになって。
忘れられない出来事になったよ。
たまらず客席から誰ともなく、大拍手が巻き起こった。
なかなか鳥肌が収まらない。
「最高ぉぉぉぉぉ!!」
関はマイクを通さずに叫んだ。
関の声は大きすぎる拍手の音量にも負けないくらい大きかった。
「次、行くよ」
呆然と立ち尽くすアタシにそっと含み笑いのテッちゃんが呼び掛けてきた。
いよいよだっ!!!!
自然と顔がにやける。
浮き足立ってしまう。
アタシとテッちゃんだけがステージに上がる。
「お前らもそこで座ってろ」
喜びを我慢しきれない様子のテッちゃんがマイクでまだ客席にいたメンバー達に告げる。
「何なに?」
みんな動揺。
「ちょうどイイからモトさんも座っててよ」
何だかテッちゃんの顔、とっても無邪気なコドモみたい。
見てるこっちまでもが嬉しくなるよ。
ってか今は何もしなくても否応なしにテンションが上がるけどね!
音響スタッフさんが移動を完了したのを確認してアタシはゆっくり話し始めた。
『2曲目は、何と!!この方達からです!!!!!!!!!!!!』
敢えて“vivienサンから”とは言わずに。
アタシとテッちゃんは関の反応が見えるようにドラムセット用の壇上の階段に座る。
会場内がざわめく。
曲が始まりあっというまにみんな気付く。
もちろん会場内は静まり返る。
関は驚きと喜びが上手く表現出来ずにいてまるでひょっとこみたいな顔になってる。
笑いが止まらない。
すかさずデジカメを関に向ける。
龍神サンに見せなきゃね。
他のメンバーやモトさんも表情はかなり驚いてるんだけど口元は歪んでいて。
“闘え!立ち止まらずに!!”
“果てしなく続く道は未来への道標”
“たった独りの闘い、だけど決して独りじゃない”
何回も聴いてるから自然と口ずさんでる。
ぅおっっっ!!
関の口元がプルプルし始めてる↑↑↑!
“負けるな!闘え!!諦めるな!!!道は必ず拓くハズ 己を信じて突き進め!”
“苦しくなったら空を見上げろ”
まっすぐで力強いメッセージが否応なしに胸に突き刺さる。
客席からも涙ぐんでる姿がチラホラ見えてくる。
関の肩が震えだしてきた。
って、アタシ性悪。
曲が終わると数秒間沈黙が流れた。
沈黙を破ったのは立ち上がって拍手をしたモトさんだった。
つられるかのようにまぁクンやナオくん、センちゃんが立ち上がって拍手。
関はかなり放心状態。
客席のみんなも拍手喝采。
アタシはその光景をすかさず動画で収めた。
鳥肌と少しのうるうるを堪えながら。
ステージ上から客席の関に接近する。
アタシが向けてるケータイに反応すら出来ない様子。
関の全身が小刻みに震えている。
「ひよは、さっきの“ありがとう”を誰よりも真っ先に師匠に聴いてもらったんだ」
テッちゃんが話し始めた。
「もちろん師匠は大絶賛。で、すかさずオレを呼び出してくれて、そこで師匠が“オレもオレなりの“ありがとう”を創る”って言ってくれて、この“応援歌”が出来た」
客席から大歓声と拍手。
まぁクンに肩を抱かれて関はゆっくり立ち上がり、そのままゆっくりと歩きだした。
関がステージに上がるまで拍手は鳴り止まなかった。
アタシは何とも言えない穏やかな表情でずっと関の姿を見ていた。
今この瞬間の関を、目に、記憶に、脳裏に焼き付けるように。
やっとステージ中央まで来た関がこっちに向かってくる。
拍手は関がステージに上がった辺りで収まっていた為、客席からはざわめきと無数の“関コール”が起きる。
またじわぁっと涙がゆっくり込み上げてくる。
みんなからのコールが影響してなのか関が尋常じゃなく男らしく見えて、不覚にも関を直視出来ない。
照れてうつむいてしまう。
まさかまた!?
この雰囲気はまさか!!!!!!!!
「ひよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
やっ、、、、、
ぱ、
りぃぃぃぃぃ。
アタシの名前を絶叫しながら、
関は全力でアタシに抱きついてきた。
カンペキなまでの場内冷やかしムード。
「離れろ関ぃぃぃ!!」
「調子に乗るなぁ!!」
なんて男子から、
「お似合いカップルぅぅぅ!!」
「ひゅ~ひゅ~!」
「今度こそ書かれんぞぉ!!」
なんて冷やかし全開なモノがホール内を埋め尽くした。
何なんだこの雰囲気は。
卒業式の時の代表答辞と言い今のこの雰囲気と言い。
こんなんが“アタシらしい”になっちゃうのかな。
何ともはやはや。
「ありがとう」
アタシから少し離れ、関は泣きたいのを堪えきれない様子で目を少し赤らめていた。
アタシも必死で涙を堪えながら頷いた。
再び拍手に包まれた。
『じゃ、関、アレやってイイよ』
学祭でパクられて以来、一応アタシの許可が必要になっていた、“アレ”。
このツアー中は全部やらせてあげてた。
今回ならではの新バージョンも含めつつ。
「ラストナンバー行ってもイイですかぁ?」
“ダメェェェェェ!!”
「イイですかぁ?」
“ダメェェェェェ”
「ロンドン修業、行ってもイイですかぁ?」
途中で言い換える性悪っ振り。
“ダメ”
“だっ、、、、、”
見事に引っかかってる人多数。
ドッとざわつく。
“イイよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!”
絶叫に近いコールが響く。
「じゃあ行っちゃいまぁぁぁぁぁっす!」
関の声は、完全に涙声になっていた。
関がサックスを構えて、力の限り叫んだ。
「みんなみんなみぃぃぃぃぃぃんな、」
曲の前振り。
今までで一番大人数のタイトルコール。
今日は特別に、
“「いつまでも」”
が加わって。
全員で、アタシも関もマイクを使わずに、
いつもは叫ばない他のメンバーも感極まってるらしく一緒に叫ぶ。
「愛してるぜぇぇぇぇぇいっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!」
“愛してるぜ”
この曲はアルバムにも入っている記念すべき関の初作詞作曲楽曲。
関の想いが凝縮し尽くされたとも言える曲。
なのにメインは何故かアタシ。
もちろん関に談判したよ。
ソッコーで。
そしたらアイツ、
今までに見たコトのない超真剣な表情で今にも土下座してくるんじゃないかって程の迫力で、
「だからこそ、お前に歌って欲しい」
って言われて。
他のメンバーには、
“純也のたっての願いなんだから。”
って。
必然的な(?)流れで龍神サンにも相談した。
返ってきた答えはみんなと同じだった。
加えて龍神サンは言った。
「気持ち、解る」
って。
当然アタシには解らなかったケド、誰1人として反対する人がいないのに、
アタシ1人でいつまでも反対してんのは筋違いだからって、仕方なく受けるコトにしたんだ。
今までテッちゃんや他のメンバーが創った作品は当然のごとく歌ってきた。
それはアタシが、
wonderful☆worldのボーカルだから。
だけど関の場合は、
自身もwonderful☆worldのボーカルなのに。
しかも自分が創った曲を他人に歌って欲しいなんて。
初めはワケが解らなかったよ。
自分に置き換えても。
しかもタイトルがタイトルだし。
動揺せずにはいられなかったよ。
いくら知ってんのはアタシと関と龍神サンだけとは言え。
いくらアタシ自身の気持ちの整理がついたとは言え。
“愛してるぜ”ってアンタ・・・
と思わずにはいられなかったよ。
でも何度か歌ううちに気付いたの。
“関がアタシに託した意味”が。
前に龍神サンがアタシに言ってくれたコトバ。
“「ソレはソレでヒヨなりの愛情」”
“「そう言うのも一種の恋愛」”
“「それでも人を想う気持ちには変わらない」”
ソレがこの曲のテーマなんだってコトに。
この曲の第一印象はタイトルの漠然としたイメージもあって、アタシに対しての曲かと思ったの。
まさに“桜の樹の下で関version”みたいな、(歌詞ちょいちょい転用してるけど)
まるで“ありがとう関version”かとも勘違いしてしまう程だった。
だからめちゃくちゃ拒否した。
だけどみんなに言われて何度も歌ってくウチに気付いたんだ。
アタシ自身のコトを言われてるみたいでものすごく恥ずかしかったけど。
でもその反面、自意識過剰かよって気もする。
“愛してるぜ”は、
関の家族はもちろん、
メンバー、
スタッフ、
大事な仲間達、
そしてかけがえのないファンの皆さん、
vivienサンを含め仕事で出会った全ての方々、
ひいては今まで出逢った全ての人々に対しての“愛してるぜ”なんだって。
関に談判した時に言われたの。
”「お前に出逢えたから、お前に惹かれられたから解った。だから、この曲は、お前に歌って欲しいんだ。じゃなかったら、この曲は世に出せない」”
って。
そこまで言われてんのにアタシは一発じゃ理解出来なかった。
理解できた時はメチャクチャ関に対して申し訳なさを感じたね。
なんてコト思い出したら泣けてきた。
まだ演奏の真っ最中なのに・・・。
レコーディングの時は”その意味”にまだ気づけなくて、
ツアー中は気付いたから“関に託された責任感”的なモノでいっぱいで、
感慨深く感じてるヒマなんてなかった。
今日と言う日だから余計に感慨深くなっちゃうのかも。
“出逢えた奇跡に感謝しよう 千年先まで”
“この果てしなく広大な宇宙の中で出逢えた きっと運命的な出逢い”
卒業式で歌った“桜の樹の下で 関version”から歌詞を転用した部分もあるからか、
卒業式の時のコトを思い出して更に泣けてくる。
ダメだ、、、、、
限界寸前だ×××××××××。
アタシはすかさず関にマイクを向けた。
客席に向かって歌うように促しつつ。
歌ってる最中に泣きたくなるのを我慢しきれなくなった時の秘技!
“関や客席に振る”
大音量で聴いたら尚更泣いちゃいそうなモノなんだけど、
みんなに歌ってもらえるコトが逆に力に変わるんだ。
、、、、、、、、、、ケド×××××
今日は違ったみたいだ。
“みんなが歌ってくれるコト”が、
力じゃなくて、
安堵感に変わっちゃって、
しかも関に振るコトがしばらく出来なくなる。
その気持ちがどうしても修正出来なくて、
龍神サンに貰ったペンダントを握り締めながら心の中で必死に泣くのを堪えても、
ずっと我慢してたせいなのか、
アタシの我慢の限界は、意外と呆気なかったようで。
アタシはその場に泣き崩れてしまっていた。
客席からのどよめきが一瞬大きく起きる。
ステージで泣いたの、久々だな。
「ひーちゃぁぁぁぁぁん!!」
「頑張ってぇぇぇ!!」
合唱の声と、応援の声。
見事なまでにアタシの涙を後押しする。
左手はペンダントに掛かっている。
耐えきれず階段の前に逃げた。
関が駆け寄る。
響く歌声は客席からの合唱だけ。
“あの日の夕陽が照らしてくれた 素直な気持ちに感謝するよ”
卒業前、久々に行った学校がまるで別世界かのような環境になり果ててた時、
拗ねる関に耐えきれず土手でアタシが打ち明けた時、水面に照らされた夕陽がとても眩しかったっけ。
“海より深く 大空よりも大きくアナタを愛してる“
龍神サンから受ける愛情。
龍神サンの懐。
歌えば歌う毎に龍神サンに重なる。
関がアタシに影響を受けて書いた曲が、
アタシには、
アタシの龍神サンに対する想いとして重なる。
割り切れたハズなのに、今はツラい。
アタシは曲の途中にも関わらず、
泣きじゃくりながら何度も何度も関に向かって言った。
『ごめんね』
って。
関は何も言い返さず、
最後までアタシの代わりに歌い切ってくれた。
歌い終わった後、関はグレイトロックの“あの時”みたいに、
アタシを強く抱きしめてくれた。
本日3回目。
にも関わらずまたしても起きる大歓声。
今度もみんな集まって来て。
コレが
”関とアタシの関係”
なんだね。
いくら関の渡英前ラストliveとは言え、数時間の間で3回も抱き合っても誰からも許される関係性。
こんなに身近にいるみんなが証明してくれる。
アタシと関は、唯一無二の“相方”なんだって。
アタシはいつまでも涙を止めるコトが出来ないままステージを後にした。




