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12/12

wonderful world

あっという間にフリーライブ当日の朝を迎えた。


昨夜はみんなからのお達しでさっさと寝たからかスッキリとした目覚めで起きれた。


気分もなぜだか清々しい。


昨夜はワンワーのみんなでパーティーをしたんだ。


アタシの部屋でカレーパーティーをした時にみんなで決めた“身内だけの定例会”をアタシの壮行会を兼ねて早速決行。


今回はテッちゃんちで鍋パー。


買い出しからみんなでワイワイしながら楽しかった。


あの時言い出した“定例会”の主旨が見事に果たされた気がした。


定例会はデビュー前のみんなに戻れる時間。


それがフリーライブの前日ってのがまた最高に意味がある。


そのお陰でのこのテンションなのかも。


「おはよーひよ」


ミヒロさんからのモーニングコール。


「アタシでゴメンね」


ぷぅぅぅぅぅぅぅ


ココロの中で思いっきり吹き出す。


『何言ってんですか!』


朝から突っ込む。


ミヒロさんからのモーニングコールはいつものコトだっての。


「でも御迎えはアタシじゃないから」


はぃ???


まさか?????


『へっ???』


間抜けな声になる。


「本番を見届けたいけどさすがにそれは野暮だからって、せめて見送りくらいさせろって言い出してね」


ま、、、さ、、、か、、、、、


ぅわっっっつ!


龍神さんからメール。


“用意出来たら降りてきて”


どぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!


あせあせあせあせ


あせあせあせあせ


用意はとっくに出来てるのにムダに焦る。


こんなとこ週刊誌とかに撮られたら・・・


、、、、、もうイイのか。


何言ってんのよアタシ!


アホかっての。


んがっ?


インターホンが鳴ってる?


誰?下に龍神さんがいるのに。


まさかモトさん?


テッちゃん?


テッちゃんとか有り得そう。


実は2人で来たとか。


なんて色々妄想しながらモニターへ。


うぎゃぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!


何でやねぇぇぇぇぇん↑↑↑


モトさんでもテッちゃんでもなかった。


紛れもなく龍神サンだった。


下に居るんじゃないのかぁぁぁぁぁい!!!!!


と心の中で叫びつつ。


震えながら解錠ボタンを押した。


『おはようございます!』


龍神サンに声を上げて笑われるくらいに声がひっくり返っていた。


コレでもかってくらいに。


「動揺しすぎ」


涙ぐむ程に笑ってる。


「オレからのサプライズ」


サプライズって・・・。


『心臓に悪いです』


小声で言った。


息を整えながら。


『迎えに来て頂く時点でサプライズなのに』


嬉しすぎて感情がコントロール出来ない。


泣き笑いになってる。


交際宣言後初の助手席は何だかいつもと様子が違っていた。


もちろん自分の中でだけだけど。


「good lack!」


車がリハのスタジオ前で止まり、ありがとうございましたって軽くアタマを下げたら龍神さんがグータッチを求めてきた。


龍神サンのお決まりの“good lack”と、アタシと関のお決まりのグータッチのコラボか。


夢の共演!!プラス関にも励まされてるみたいでちょっぴりうるっとしちゃった。


その隙に龍神サンの手がスッとアタシの背後に伸びた。


えっ?


同時に龍神サンが接近。


まさか?????


こんなとこで?


・・・・・違うみたいだ。


ですよね。


いくら交際宣言したとは言え。


またアホな妄想で勝手に疲れるアタシ。


こんなとこでキスなんてしてくるワケないじゃないのよ。


相変わらず大バカ野郎だワ。


えっ?


首筋に何かが触れた。


「成功の御守り」


龍神サンの笑顔が神懸かっていた。


バックミラーで確認する。


ネックレス?


あっっっ!!!


チェーンだけのシルバーのネックレスの先にシルバーの指輪が通されていた。


ゆびゆびゆびわ・・・・・


どーしよーーーーー。


恐悦至極。


アワアワするアタシに自分の首もとも見せてくれて龍神サンにも同じモノがあった。


『ありがとうございます』


恥ずかしくてつい視線を落としてしまう。


コンコンコン


ん?ガラスを叩く音。


もしかして。


「おはよー」


ミヒロさんだ。


『おはようございます』


「おす」


「ゴメンね邪魔して。路上でイチャイチャしないでくれる?いくら交際宣言してるからったってさぁ」


コトバとは真逆の笑顔のミヒロさんがいた。


「悪ぃな!」


明るく笑い飛ばす龍神サン。


照れまくるアタシ。


アタシは逃げるように車を降りた。


「じゃな。また夜」


『ありがとうございました!』


ドアを閉め、車が発車されると一気に気持ちがライブモードに切り替わった。


大きく深呼吸して大きく1歩を踏み出した。


ネックレスの先の指輪を握り締めてーーーーー









会場に着くとそこには信じられない光景があった。


泡を食った表情のアタシを満面の笑顔で見つめるミヒロさん。


満員とは言わないけど思ったよりも遥かに来てくれていた。


思わず涙が溢れる。


『やっぱりアーティストがステキだと付いてくるファンの方々もステキな方ばかりですね』


泣きながら。


“Vivienファンなめないでね”


アユナさんの笑顔とコトバが過る。


気付いた人達が手を振ってくれる。


アタシはたまらずアタマを下げた。


泣き顔がバレないように。


「泣きすぎ!そんなんじゃ歌えないよ?」


キツい口調ながらもミヒロさんがすかさずティッシュを差し出してくれた。


『すびばぜん今のうち泣きます!』


こんなん泣くなって方がムリ!


龍神さんがアタシじゃない人とのスクープを報じられアタシに同情票が来たかと思いきやまさかの交際宣言で、大多数の龍神さんファンを完全に敵に回したかと思っていた。


いくらアユナさんとかに励まされても不安で仕方なかった。


アユナさんの“Vivienファンなめないでね”も、そうは言ってもアユナさん達みたいな人はごく少数かと思っていた。


でもそれがアタシの思い過ごしだったってコトが今こうして証明された。


天使のような笑顔のミヒロさんやスタッフの方たちに見送られゆっくりステージに出た。


拍手や歓声やコールが上がる中、アタシは大きく深呼吸してマイクに向かった。


『Vivienさんは、来ませんよ?』


第一声。


どっと笑いが起こる。


「分かってるよぉぉぉ!」


アユナさん達が叫ぶ。


『ウチのメンバーも、来ませんよ?』


続けて笑いが。


「期待してないよぉぉぉ!」


遠くの方からも聞こえてくる。


笑いの中、やっぱり泣けてきた。


俯き、涙を堪えて空を見上げる。


指輪を握り締めて。


もう一度大きく深呼吸。


『まさか、こんなに来てくださるとは夢にも思いませんでした。本当にありがとうございます』


深々とアタマを下げた。


拍手が起こる。


『今回のスクープの件で、本当に1番みなさんにご迷惑をお掛け致しました。アタシが龍神さんに関わってるときっと皆さんを傷付けるんだとまで考えてしまい引退も考えました』


ざわつく客席。


『でも皆さんの温かいたくさんの励ましのお陰で逃げずに自分に正直に向き合おうと決められました。その上での龍神サンへの告白なんて、恩を仇で返すようなもので今度こそ許してもらえないだろうとは思いましたがそれでも言わずにはいられませんでした。自分の気持ちに正直に向き合うことを信じてくれていた人がいたからです』


半泣きを堪えながらアユナサンたちの姿を探す。


『とは言えやっぱり今日、ここにどれだけの人が来てくれるかすごく心配でした。本当に感謝に堪えません。今日のこの光景は一生忘れられない光景になると思います』


涙が流れるのを拭いながら。


さっき思いっきり泣いたのにぃ。


「待ってたよー!」


「大丈夫だよー」


あちこちからたくさんの声が聞こえてくる。


ダメだ、泣くなって方がムリだ。


顔が上げられなくなる。


肩を震わせて。


えっ!?


「見上げればblue moon きっと素直になれるさ」


客席からblue moonの合唱が。


ダメだ・・・


アタシはたまらず泣き崩れた。


あっっっ!!!


ふと閃いた。


アタシは涙を堪えて立ち上がりキーボードの前に立った。


何とか伴奏程度はフルで弾けるようになったキーボードを合唱に合わせて弾き始めた。


こんなんじゃアタシは歌えないから。


せめて落ち着くまで。


手も震えてちょっとテンポがズレかけるけど。


サビを一通り歌ってくれた辺りでアタシはイントロを弾き始めた。


歓声が起こってくれてる。


Vivienさん達のバージョンとはまた違う、キーボードだけのblue moon。


みんな聴き入ってくれている。


Vivienさんのファンの皆さんに認めてもらわなきゃ堂々と歌えないと思ってこのフリーライブを提案した。


とは言え認めて貰えるかどうかが不安で不安で仕方なかった。


ましてや交際宣言後なんて抜群のタイミングの悪さで。


でもその不安すら失礼に当たるんじゃないかってくらいの結果が今、ここに現れている。


嘘みたいな光景に感謝しか出てこない。


アタシがファンの皆さんの立場なら認められるだろうか。


もちろん全てのファンの皆さんに認めて貰えただなんて微塵も思っていない。


それでも嬉しい。


アタシの想像を遥かに越えていたから。




終了後、時間の許す限り1人1人に感謝したくてお見送りを急遽言い出してやらせてもらえた。


来てくれた方1人1人に“ありがとうございました”って直接伝えて握手とかハイタッチとか求めて来てくれる人もいて。


中にはご丁寧に気持ちを伝えてくれる人も。


「最初は正直イヤだったけど龍神の気持ちが分かったらアタシもファンになった」


とか


「ひーちゃんを良く知らないとひーちゃんを良く思わないかも知れないけど、ひーちゃんがどんなコかが分かればみんなひーちゃんのコトを好きになるよ」


なんて、また泣かずにはいられない温かいメッセージもあって。


「ここにいる人たちはみんなきっと交際宣言を待ってたんじゃないかな。だから祝福を込めて集まってきたんじゃないかな。声にはしなくても」


なんて声にはうずくまらずにはいられなかった。


そんなアタシの姿をちょっと離れた所からずっと見守りながらアユナさん達は最後の最後まで待ってくれていた。


満面の笑顔で。


アユナさん達の姿を見た途端にまだどこかで我慢していた部分があったみたいで感情が一気に爆発しちゃってアユナさん達に抱き着いてしまっていた。


「“分かってくれなくてもいい。ムリに分かってくれとは言わない。アイツはオレを慕ってくれているしオレもアイツがオレを慕ってくれているコトを誇りに思う。”その意味が分かった人達がたくさんいたって結果だよ」


以前インタビューで龍神サンが言っていたコトを引用してアユナさんが言ってくれた。


周りの皆さんも笑顔で頷いてくれる。


「やっぱりさぁ、自分がずっと追い続けてきた人がある日突然現れた自分より年下のコに盗られた的な嫉妬は誰でも初めは感じると思うよ。それは仕方ないと思う。でもそれを跳ね返したのは紛れもなくひーちゃんの人柄なんだからさぁ、自信持ちなよ。あの龍神を落としたってだけでとんでもない快挙なんだから」


“あの龍神を落としたってだけでとんでもない快挙”だなんて。


アユナさんの相方のヒノカさん。


2人でいつも来てくれている。


嫉妬を跳ね返したのはアタシの人柄・・・?


「オンナの嫉妬は質が悪いからさ。でもそれが逆の力になればとんでもないパワーに変わるのよ」


ヒノカさんが続けた。


「あの飲んだ相手がファンだったってのが逆にひよちゃんにプラスになったかもね」


えっ!?


逆じゃなくて?


ヒノカさんのコトバに耳を疑った。


「ひよちゃんがVivienのファンだってのはもうみんな周知の事実だったわけで、しかも筋金入りのファンだってのも有名な話だったトコロに“アタシもファンなんです!”なんて言われても薄っぺらにしか聞こえないわけよ」


へっ・・・?


そう、、、なの???


とんちんかんな表情になってるよ、アタシ。


「後だしジャンケンでしかないのよ。かなり遅すぎのね」


アユナさんが付け足した。


後だしジャンケン・・・・・か。


目からウロコだった。


お相手が同じファンの方だって知った時、いつかはこんなことが起きるだろう、だからアタシが悪いんだって思ってたのに。


それを2人に伝えるとすかさずアタシのアタマをポンポンと軽く触れながら2人とも同じことを言ってくれた。


「ったくアンタってコは・・・」


呆れながら。


「オンナ同士なんてね、そこまで複雑じゃないから。で、あのスキャンダルのあとの交際宣言なんて、まぁ妬みの対象になんかならないのよ」


アユナさんのコトバに恐ろしいほどの説得力を感じた。


アユナさん達くらいになると相当数のファン同士のトラブルを経験してきたと思う。


それをも含めての“Vivienファンをなめないでね”発言だと思う。


『本当にありがとうございました』


2人に改めて深々とアタマを下げて2人を見送った。


気が付くとワンワーのメンバーが来てくれていた。


メンバーを前にしたテンションは晴れやかだった。


そこにはもう涙はなかった。


とびきりの笑顔でみんなの元に向かった。


みんなも祝福の笑顔で迎えてくれて。


「お疲れ様」


「お疲れ!」


「やっぱりひーは宇宙イチのフロントマンだよ」


「さすがワンワーの裏リーダー!」


「オマエはホントにいろんな意味でグレイトだ」


モトさんまで。


最初からずっと見てくれていたウチの社長やミヒロさんも片付けを終えて集まってくれた。


そのままみんなで事務所の近くのお店に移動した。


これから打ち上げだ。


Vivienサン達も後から合流。


さっきまでの余韻がちっとも醒めない。


待つ間、関に電話してみた。


向こうは朝、かな。


寝てるかな、アイツ。


出ないかな?


「純也?」


なおクンが尋ねてきた。


頷く。


“「ぅ゛あ゛ぃ」”


うぅぅぅわっっっ!!思いっきり寝起き爆烈な声。


ですよね...


『ごめん!寝てたよネやっぱり』


思いっきり下手に出る。


“「お疲れ。イイよ別に。フリーライブ、終わったんだろ」”


目をこすりながら話してる様子が目に浮かぶよう。


大きなアクビをしている声もする。


『うん。いっぱい来てくれた』


心なしか涙が込み上げてくる。


“「マジかぁ。良かったな」”


寝起きだからなのかテンションはそれほど高くないモノの、コトバにとてつもなく優しさを感じる。


『うん。ありがとう』


ちょっとグズってる。


“「オマエのそういうニュースがオレの活力になるから。オレも頑張るよ」”


関!!!!!


何なのよアンタってば↑↑↑


そんな漢気あったっけ!?


武者修業の成果が出て来てるのか?


一段と泣けてきちゃうじゃないのよ。


“「泣いてんじゃねぇよ。んじゃねぇとオレだってこっちに来てる意味が無くなるだろ。オマエの頑張りはオレの頑張り。オレとオマエは運命共同体なんだからさ」”


止まらなかった。


溢れ出る感情が抑えられなかった。


普通なら異性にこんなコト言われたら確実に惚れちゃうんだろうな...なんて思いながら。


でもコレは、アタシに取ってみたら、“胸キュンメッセージ”じゃなくて、完全な“後押しメッセージ”になる。


アイツはそういうヤツだから。


アタシにとってー


寝起きの関との会話は簡潔に済ませ、国際電話なコトもあって数分足らずで終了した。




しばらくしてvivienサン達やウチのスタッフさん達も全員揃い、ウチの社長の乾杯で打ち上げがスタートした。


・・・直後だった。


「こんな無謀な賭けとも言えるライブを成功させて下さった全ての関係者の皆様のご協力とご尽力はもちろん感謝に堪えませんが、その無謀な挑戦を自ら言い出して無事演りきった彩沢陽依にご褒美をしたいと思います」


へっ?


何なんだ?一体...。


いきなり凱サンが前に出た。


ん?龍神サンも...


ざわつく周囲。


1人緊張。


ミヒロさんに背中を押されアタシも前へ。


「次の仕事です」


凱サンがそう言って差し出したのはタブレット端末だった。


思わず唖然としてしまうアタシ。


「デモ音源が入ってる。一応アルバム1枚分の曲数は余裕で入ってるけど、ひーちゃん自身の曲を入れるかどうかは完全に任せる」


と、き、さ・・・ん?????


は、、、、、いぃぃぃ??


正気ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?????


ウソでしょ?・・・。


何てあり得なさすぎなご褒美なのよ!!!!!


アタシのソロなのにvivienのみなさんから楽曲を頂けるなんて!


唖然とした顔が更に悪化。


周りのみんなは大歓声で応えてくれた。


「もちろんワンワーとしてのアルバム制作も入って来るだろうから無理するな。完成した暁にはツアーもしような」


言ってる龍神サンの顔が滲んで見える。


そんなぁぁぁ。


「泣き過ぎだよ、ひよ」


後ろからミヒロさんがそっと抱き寄せてくれた。


確かに泣き過ぎだ。


特に最近。


でも泣かずにはいられないよ。


アタシはどこまで幸せ者なんだよ。


龍神サンと親しくさせて頂けてる時点でもうこの先アタシにこれ以上の幸せは訪れないだろうって思ってたけど、、、


一向に留まるところを知らないようだ。


いつか凄まじくドデカいツケが来るな、間違いなく。


でもイイや!どんなのが来るかわかんないけど。


それが“彩沢陽依(アタシ)らしさ”であり続けるならー








End




















































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