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alive

ん?インターホンが鳴ってる!?


ぁたっっっ!!もうこんな時間!?


アタシは夕方までガッツリ眠ってしまっていたようだ。


誰だろう。


3割くらい寝ぼけモードでモニターをチェッ、、、、、


一気に目が醒めた。


眠気もぶっ飛んだ。


『おはっ!、、、』


思いっきり動揺して思いっきりカミカミ。


コトバが上手く出てこない。


とにかく慌てて解錠。


そのまま鏡で見た目チェック。


何せ寝起きだからな。


大きく深呼吸して気合を入れて。


『っしゃ!』


って言いきれない残念なまぶたはこの際スルーして...。


あっという間にドアホンが鳴る。


来たっ!


ドアを開ける寸前に深呼吸して笑顔を作って。


『おはよーございます!!』


玄関にいたのは龍神サンとミヒロさん、


だった。


「突然押し掛けてゴメンね。電話もメールも返ってこないから寝てるんだろうなとは思ったんだけど」


申し訳なさそうなミヒロさんのコトバに一気に冷や汗なアタシ。


え゛っっっっっ!!!


思わず頭を抱える。


『すみません』


何度も頭を下げて謝る。


「ぃやぃや、悪いのはこっちだから。本当にゴメンね」


ミヒロさんのコトバに龍神サンも一緒に深々と頭を下げる。


再びアワアワ。


『ヤメて下さい!!ってかどうぞ入ってください。明け方までメンバーとモトさんがいて中途半端に片付けたまま寝ちゃったんでちょっととっ散らかってますが』


取り急ぎ話を切り換える。


ミヒロさんはもちろん、龍神サンにも頭を下げられるなんて堪えられないよ!!


逃げるようにキッチンに移動。


『コーヒーでイイですか?』


玄関に向かって。


心臓はバックバク。


「御構い無く」


ミヒロさんの声が近づいている。


聞いといて既に手はコーヒーの準備をしてたりして。


黙ったままの龍神サン。


見るに耐えないよ。


龍神サンに目を向けられない。


ミヒロさんの少し後ろから龍神サンも中に入ってきた。


『テキトーに座って下さい』


ったって狭い部屋、ベッドか床かしかないのだけれど。


コーヒーの支度の合間にクローゼットからクッションを出す。


『こんなんしかないですけど』


床に座っている2人に差し出す。


「ゴメンね、ありがとう」


一応ラグは敷いてあるけどね。


「今日になって、誰かから何か連絡来た?」


鎮んでいる龍神サンとは対照的にいつも通りのミヒロさん。


あっ!!スマホ。


『スマホ見ないまま寝ちゃったんで』


言いながらスマホを確認。


ぅわっっっっっ!!!


着信もメールもいっぱい。


『いっぱい来てました』


苦笑いで言いながらメールをチェック。


あっっっっっ。


「スポーツ紙や週刊誌を見て連絡をしてきてるとは思うけど、相手の女性、コメントしてくれたわ」


!!!!!!!!!!


“相手の女性”・・・。


胸が痛い・・・・・。


急に手が震え出す。


大きく深呼吸して用意が出来たコーヒーを持っていく。


「ありがとう。あっ、コレ」


ミヒロさんが何やら紙袋を差し出してくれた。


『えっ、ありがとうございます!すみません』


プリズムダストの近くの洋菓子やさんの袋だった。


『みなさん寝れましたか?食事とかも摂れましたか?』


コーヒーを差し出しながら訊ねる。


「お陰さまで何とかね」


ミヒロさんの笑顔は疲れを感じさせなかった。


カラダは細いけどめちゃくちゃタフだからな、ミヒロさん。


「対応も何とか落ち着いてひよの社長にも本宮さんにも御挨拶をさせて頂けて。今その足で来たからもう大丈夫よ」


そこまでこなして、、、。


脱帽だよ。


『お疲れ様でした』


アタマが自然と下がる。


「ひよにアタマを下げられたらこっちがどうしたらイイのかわからなくなるからヤメてよ!!」


さっきのアタシ並みに慌てるミヒロさん。


『すみません』


笑い飛ばしてコーヒーに手をつける。


「お嫌いじゃなかったらどうぞ」


2人にも勧めつつ。


「頂きます」


ミヒロさんが取ってくれた。


「ありがとう」


つられて龍神サンも。


『じゃーこちらも遠慮なく頂きますね!』


買ってきてくれたお菓子に手を伸ばす。


「見たくはないと思うけど一応説明の為にも見て欲しいんだけど」


ミヒロさんが新聞紙や雑誌をテーブルに出した。


グサッ→→→→→


刃物が胸に突き刺さる想いになる。


“龍神今度こそ初スキャンダル”


目に入った瞬間に涙が込み上げてくる。


“今度こそ初スキャンダル”


その文字が何よりも苦しかった。


“ひーちゃんなら大賛成だな。龍神の初スキャンダルの相手”



あの時のアユナさんの笑顔が浮かぶ。


余計に胸を突き刺す。


目を反らす為に他の媒体にも手を伸ばす。


“龍神と美人女性の熱い一夜”


吐き気?みたいな感覚に襲われる。


スポーツ紙が3部、雑誌は1冊だった。


「雑誌は発売日の都合とかあるから恐らく今後もちょっとは取り上げられちゃうかも知れないけどスポーツ紙は多分今日だけでしょう」


ため息混じりのミヒロさん。


いまだ龍神サンは何も発せず。


「コレ」


重なった新聞紙の中から1部の新聞を取り出した。


ミヒロさんが指差した部分に目を通す。


“彼女に取材を申し込むと彼女はこう笑いながら話した。「龍神サンとは朝までずっと飲んでました。本当にただそれだけです」”


『えっ・・・・・』


思わず声に出してしまった。


やっと龍神サンを直視できた。


って言っても龍神サンはうつむいてるけど。


「アタシから彼女に確認しても同じコトを言ってたワ」


『だったら!』


言わずにはいられなかった。


涙が込み上げるのを抑えながら。


「誤解を招くようなコトをしたのも2ショットで撮られてしまったのも事実だ。それをどうこう言うつもりはなかった。言い訳にしかならないからな」


龍神サン・・・。


俯いたままいつもよりも低いトーンでやっと話し出してくれた。


「彼女が言ってくれるならそれが何よりだと思ったからな」


龍神サン・・・。


「本当のコト言わなきゃファンのコ達やひよ達までも傷つけるコトになるんだよって説得したんだけどね」


呆れてるミヒロさん。


「彼女じゃなく、オレじゃ何を言っても弁明にしかならないと思った。ただでさえすでに傷付けてるのにあまりムダな抵抗はしたくなかった」


龍神サン・・・。


ダメだ、涙が溢れる。


「“彩沢さんとはまだ飲めないでしょうから今のウチに飲み友達としてお付き合いしたいと思って”だって」


えっっっっっ?


顔を上げてボヤけて見えたミヒロさんの声色が優しかった。


慌てて涙を拭ってミヒロさんの表情を確認。


めちゃくちゃ穏やかな笑顔。


「何もなかったにせよこうして撮られたのは紛れもない事実だ。本当に迷惑をかけて申し訳なかった!!」


だっっっっっっっっっっっっっっっっっ


『ヤメて下さい!!』


龍神サンが土下座してる!!!!!!!!!!


慌てて立ち上がり龍神サンの肩に手をかける。


『お相手の方も何も無かったって言ってくれてるんですからそれでイイじゃないですか!』


あたふたしちゃうよ。


「彼女はオレらのファンらしく、ライブも何度も来てくれていたらしい」


えっっっっっ・・・・・


血の気が引いた。


恐れていたコト、だった。


いつかはこういうコトがあるとは思っていた。


アタシがVivienさんのファンだってコトがきっかけで龍神サンとこんなに親しくさせて頂けてるんだから、


“じゃあアタシも!!”


って言ってくるVivienファンのタレントさんとかミュージシャンの方が現れてもおかしくないって。


でもそれでアユナさん達を傷つけてしまった。


アタシのせいだ。


たまらず号泣してしまった。


「ひよ?」


慌てるミヒロさん。


『ごめんなさい。大丈夫です』


グズグズの涙声で答える。


「現地にはたまたまロケの仕事で来ていたらしく、プロモーター経由で打ち上げに参加してたんだ」


アユナさん・・・・・。


気になってスマホをチェック。


何度も何度も涙を拭う。


『アユナさんや龍神サンのファンの方々を傷付けてるのはアタシですね』


泣きじゃくりながら言った。


「ひよ?」


「ひよ」


2人の声がちょっと恐い。


『いつかはそういう人が現れるとは思っていました。だからアタシのせいです』


今度はアタシがうつむいたまま。


ずびずびの泣き声だけど。


手はスマホをいじったまま。


サイトのファンメールやブログにもものすごい反響が来ている。


あっ、、、、、


名前は変えてるけどアユナさんからのコメントを発見!


涙を拭いて気合を入れて読む。


“ひーちゃん大丈夫?ひーちゃんのコトだからきっと自分のコトよりウチらのコトを気に掛けてくれてるんだろうけど大丈夫だよ!!前にも言ったでしょ、Vivienファンをナメないでねって!!少なくともアタシらはこんなんじゃ離れないから大丈夫だよ。”


涙が止まらなかった。


笑いも止まらなかった。


アタシは笑い泣きしていた。


「どーした?ひよ。壊れた!?」


きょとんとしているミヒロさん。


アタシは笑いながら首を横に振り否定。


画面をそのままにミヒロさんにスマホを渡した。


身を乗りだして覗き込む龍神サン。


『アユナさんです』


涙声で。


「えっ?」


2人とも驚く。


「ファンに恵まれてるね、龍神」


ミヒロさんもほんのり涙ぐんでいた。


「アイツらはもはやファンの域を越えてるから」


照れ笑いの龍神さん。


『ミュージシャンさんがステキだと付いているファンの方々もステキなんですね。見習わなきゃです』


アタシのコトバに2人とも照れていた。


「昨日今日と入っていた仕事のツケは明日以降ガッツリ回って来ちゃうけど宜しくね」


んげっっっ!


そう来たか。


まぁ仕方無いっちゃー仕方無いか。


不可抗力とは言えども昨日今日と休んじゃったしね。


頑張るか!応援してくれてるアユナさん達の為にも!!






その夜、アタシは1人事務所に行ってスタジオでblue moonをひたすら練習していた。


改めて自分にとってのblue moonを認識するためにも。


「ステージ、立ってみる?」


んっ?


『テッちゃん!』


驚いた。


スタジオのドアが開いたと思ったらテッちゃんが現れた。


不思議な発言と共に。


「真夜中の誰もいないステージ、立ってみる?」


何言ってんの?テッちゃん。


理解できずに反応も出来ない。


「野音のステージ。2人で予行練習しよっか」


いつもの笑顔のテッちゃん。


唖然としたままのアタシ。


『そんなコト』


「大丈夫。オレがうかつにそんなコト言い出さないよ」


この自信もいつもの通りだ。


テッちゃんに手を引かれ事務所の外に連れて行かれた。


「モトさん!」


事務所の前に横付けされていた車の運転手がモトさんだった。


もうすっかり夜が更けていた。


「テツが言い出したんだよ、ひよを元気にさせるのはコレしかないって」


運転席のモトさんが信号待ちのタイミングでバックミラー越しにアタシを見ながら教えてくれた。


自然と涙が出て来ていた。


『ありがとう、テッちゃん』


テッちゃんはいつものようにただ微笑んでいた。






夜中の野外音楽堂。


街灯の灯りだけが照らされる薄暗い空間。


月明かりが少しだけ手伝っていて。


何だかblue moonにマッチした雰囲気だ。


モトさん以外誰もいない客席。


テッちゃんのギターがblue moonを奏で始めた。


歌いながらいろんな想いが浮かぶ。


静寂の中、アタシの声とテッちゃんのアコギの音だけが響く。


真夜中のblue moon。


月夜の下でのblue moon。


あの時のblue moonもそうだったっけ。


あの時はたくさんの数え切れないオーディエンスの中でのblue moonだった。


ステージ上もテッちゃんとじゃなく、龍神サン達とで。


環境はまるっきり違う。


アタシの想いも、


あの時とは全然違う。


何万倍も強くなった音楽(ワンワー)への想いと、


龍神サンへの想いー


でも所詮独りよがりでしかなかったのかも知れない。


アユナさんやミヒロさん、テッちゃんやモトさんにまで迷惑を掛けてまでのコトじゃないハズ。


関にだって散々小僧とかガンガン言っといていざ自分は何?


関よりグダグダじゃないのよ。


自分こそblue moonに対してハッキリさせなきゃって言うだけで全然いつまでもハッキリさせてないじゃないのよ。


自分自身にケリを付けなきゃいけないのはアタシだ。


真壁さんでも関でもなく、その2人に威勢良く啖呵を切ったこのアタシだ。


歌い終わり、アタシはじっとカメラを見据えて言った。


大きく深呼吸して。


『龍神サンが、、、』


モトさんの表情とか横のテッちゃんの表情とか、てんで気にせず。


『好きです。1人の男性として。誰よりも』


何やってんだろ、アタシ。


よりによってカメラに向かってなんて。


テッちゃんもモトさんも微塵も慌てる様子が見られなかった。


むしろ微笑ましさすら感じた。


録ってるってコトは何かしらで使うつもりなんだってのはわかってるハズなのに、


だからこそ言わずにはいられなかった。


嘘偽りない、今のアタシの気持ちをー


カメラを止めたモトさんが客席の一番前まで近寄ってきた。


テッちゃんもすぐ隣まで来て。


『ごめんなさい』


テッちゃんとモトさんに謝る。


「何で謝るの?」


モトさんのコトバが殺人的に優しい。


「ずっと、辛かったんでしょ?」


テッちゃんの大きな手がアタシの頭を包む。


一気に涙が溢れた。


「ひよがひよらしくいることがワンワーの何よりの活力だから」


なんて涙腺のダムが決壊するコトバまで。


「事務所はぜぇぇぇんぜん大丈夫だよ、プリズムダストもね」


へっ?


プリズムダストもって?、?、?何?モトさん。


ウソ、、、


でしょ?


客席の一番後ろの方からとんでもない人達が歩いて来た。


アタシはその場に泣き崩れてしまった。


腰が抜けた。


前を向けなかった。


「何で泣くんだよ」


テッちゃんがアタシを抱えてくれる。


テッちゃんに支えられてゆっくり立ち上がる。


「まさかこんな展開になるとは思わずに連絡したけどね」


苦笑いのモトさんの声。


えっ?


モトさんとテッちゃんが遠ざかっていく。


『テッちゃん』


遠くなっていくテッちゃん。


その先からゆっくり歩いてくる、その姿は


龍神サンだった。


どんどん近くなってくる。


どうしよう・・・、


どうしようもないのだけれど。


テッちゃんやモトさんが向かう先には他のメンバーさん達が。


心臓が、、、


ものすごい速さ。


動けない...。


正直、逃げ出したい。


うろたえる状態で龍神サンの足元だけが見える。


「スゲェ良かったよ、blue moon」


ぁわわわわわ...。


とうとう至近距離に来た。


うわぁ...後ずさりすら出来ないぃぃぃ。


ぅ゛あ゛っっっっっしぃぃぃだぁぁぁぁぁ。


更に固まった。


龍神サンに、抱きつかれてる、アタシ...。


ますます身動きが取れない。


でもとてつもなく落ち着く。


そしてものすごく柔らかくて温かい。


「モトさんから今から野外ステージでテツと2人でblue moonやりますって連絡が来て。たまらず駆け付けた」


この心臓の音、聴こえてるよね、きっと。


メッチャ密着してんもん。


「オレも今回の件で改めてオマエの存在を強く意識した」


ピーっていう警報音?アラーム?と同時に龍神サンのコトバが耳に入る。


反応は、出来ない。


「HPでも発信したけど、ホントに今回の件でオマエの存在が強くなった。改めて彩沢陽依って人間を考えた」


「オマエが、、、」


龍神サンの心音も伝わって来そう...。


龍神サンの一言一言も振動と共に伝わってくる。


「大事だ」


・・・・・・・、、、


ぬぬぬ?


何と?


「オレの全てを掛けても彩沢陽依を護りたい」


んがっ!?


ものすごいスピードで脳内をアタシが駆け回っている。


困惑し過ぎて。


どぅわっっっっっつ!!


龍神サンのどアップが!!


ちょっ・・・・・・!


あきゃうひょえぁぁぁぁぁ。


もう思考回路停止!!!!!


何も考えられない。


ダメだアタシ。


アタシの中で警報音が鳴り響いていたー










“先日、自身のHPにて今回の件に関しての自分の想いを発信させて頂きました通り、今回の件で自身の彩沢陽依さんに対しての想いを改めて認識させて頂きました。相手の女性とは本当に夜通しでお酒を酌み交わしただけで何も無かったとは言え、時期尚早なのは重々承知の上であえて報告させて頂く事をご理解下さい。尚、彩沢さんはまだ未成年ですしまだまだこれからどんどん成長していく超有望株でもあります。私も彩沢さんも音楽活動を生業とするイチミュージシャンですのでお互いのファンや音楽を最優先にしていくと言う想いは強くありますので下世話な報道などはご遠慮頂きますようお願い申し上げます。向坂龍二”


“この度の龍神サンの件で、皆様に多大なご迷惑と温かいご心配を頂きまして申し訳ない程に感謝に堪えない想いです。本当にありがとうございます。その件の収まりもままならない状態でこのような事をご報告するのはいささか不謹慎かとは思いますが、まさに災い転じて福となす。今回の件で自分の想いを改めて確認させて頂きまして、このような発表とさせて頂く事となりました事をご理解頂きたいと思います。彩沢陽依”


翌日の仕事の一発目は2人別々のコメント付きの連名での発表だった。


そう、“交際宣言”ってやつ。


結婚発表じゃないんだからわざわざする必要があるのか?って言う批判を覚悟で。


正直、あの後の事はさっっっっっぱり覚えていない。


家に帰ってきた事は覚えている程度。


何がなんだかわからなすぎてフワフワすらしていない。


今日も、プリズムダストにいるけど至って普通通り。


すぐそばに龍神サンがいるにも関わらず普段通り。


人間、感情が高ぶりすぎると一周して冷静になれたりしちゃうものなんだな。


そう痛感した。


アタシが鈍感なだけか?とも言うけど。


でもあえての交際宣言のお陰もあるんだと思う。


あえて自分らから発信するコトで変に浮き足立たずにしっかりと地についていられる。


さすがそつのない大人達だわぁ。


こういう点にも改めて感心。


「フリーライブ、決定したわよ」


ミヒロさんからの報告。


ミヒロさんに限らず、他のメンバーさん達の反応も変わらず。


これも浮き足立たずに済んでる要因かも。


でもさすがに怯んだ。


フリーライブ、、、


自分が言い出したとは言え交際宣言の後に来てくれる人なんているんだろうか。


「例え誰も来てくれなくても演るんでしょ?」


痛っ!


肩を落とすアタシの肩を力強く叩いて喝を入れてくれた。


「場所は代々木公園。日にちは1ヶ月後の10日の日曜、17時から。イイ?」


1ヶ月後ぉぉぉぉぉ!?!?!?


急すぎだろ。


返事が出来ない。


「最短で調整してたら直近になっちゃった」


“「なっちゃった」”って、ミヒロさぁぁぁん!!!


1ヶ月後って。


「もうHPで発信したからね」


あちゃぁぁぁぁぁ。


「随分と強行突破だな、副社長。コレでblue moonの日とかだったら最高にドラマティックなのにな」


凱サンが乱入してきた。


「満月の日にしたかったんだけどね、鉄は熱いウチに打つ方を優先したわ。ソレなりに満ちてはいる日にはなってるけど」


はぁぁぁ。


ウチの鬼社長といいミヒロさんといいマネジメントを仕切る人って、鬼だ。


ため息が出ちゃうよ。



昨日の宣言通り、今日明日とプリズムダストでの仕事が目白押しだった。


仕事は深夜まで掛かって。


交際宣言の反響で埋め尽くされたスマホをチェックする間もない程に。


でもアユナさんとサヨリや家族からのメールだけはしっかりと読んだよ。


フリーライブの反応も知りたくて。


ドキドキしながらまずはアユナさんのメールを開けた。


“やったねぇぇぇぇぇひーちゃん!!良くやった!!待ってたよこの時を!!!”


メールの冒頭でアタシは泣きそうになった。


“おめでとう。昨夜の動画も見たよ!メチャクチャ良かった。自信持ってね!あれ見たら筋の通ったVivienファンはみんなひーちゃんのファンになるから大丈夫。”


えっ!?動画???


何?動画って。


はっっっ!!!!!まさか昨夜の野音?


えっっっ!!!どこにあんの?


慌てて探す。


えぇぇぇぇぇ!!!!!


あったのはプリズムダストのサイト。


アタシのフリーライブの告知として使われていた。


改めて自分の歌っている姿をチェック。


何故か見いってしまった。


“自分の姿”と言うよりは、客観的に見れていた。


“コレを龍神サンのファンの皆さんはどう見るんだろう”って考えながら。


でも不思議だ。


グレイトロックの時とは全然違って見えた。


アタシ自身の気持ちが全く違うとは言え、こんなにも違うものなんだな。


自分自身を見ているのに、出ている“自信”が全然違って見える。


意味もなく何度も何度もリピートしてしまっていた。


ひとしきり見たあと、アタシはアユナさんにメールをした。


今回のコトで感じたコトを全て。


傷付いたのはアタシじゃなく、龍神サン本人と今まで付いてきたファンの皆さんだったんだって想いも。


でもあえてソレをアタシからは公表はしないってコトも。今度のフリーライブについてはたぶんもうわかってくれていると思うから触れずに、龍神サンに対しての想いも。


いつも応援してくれてきたアユナさんにだからこそ。


“いつまでもハッキリしないのは関なんかじゃなくアタシでした。アタシのせいで掛けなくていいハズのアユナさん達にまで迷惑を掛けちゃってたんですよね。なのにアユナさんはいつも見守って下さっていました。”


メールしながら今までのいろんなアユナさんが浮かんできた。


“何とか休み取って行くからね。大丈夫だからね。”


アユナさん・・・。


アンチの方々も当然いる中で、アユナさん達は初めから応援団だった。


普通なら考えられないよね。


アタシの龍神サンに対する気持ちがハッキリする前から。


有り難いとしか言い様のない存在。


感謝してもしきれないよ、ホント。


最大級の感謝を表してメールを終えた。


家族には、改めて報告した。


カンタンにだけど。


“そうゆーことで、またしても迷惑掛けるけどゴメンね”


って。


ホントにホントに申し訳ない。


沙依やパパママからはおめでとうってメールが来たけど、


真壁サンの時とか、色々心労を伴わせちゃってただろうな。


その分頑張らなきゃね、色々と。





翌朝の新聞、メディアは見事に昨日の交際宣言のコトが取り上げられていた。


自分らからの発表なだけに大した混乱はなく、ウチの事務所もプリズムダストも彩沢家周りも静からしい。


コレも大人達の当然なまでの戦略だったらしく、


ホントに大人達のやることはそつがなさすぎて脱帽です。


まぁ交際宣言についてのメディア対応はなくても仕事で入れていた取材や撮影はあって、その件について聞かれないかとか自爆しないですむかどうかなんてヒヤヒヤしながら受けてみたり。


勝手にスリリングな気持ちになってみてる。


「楽しんでる?」


なんて一番付き合いの長いグレイトロックTVのスタッフさんに突っ込まれて。


『何か楽しくなってきちゃった!』


なんて答えて。


「ホントにひーちゃんらしいね」


そのスタッフさんが笑顔で言った。


“ひーちゃんらしい”か。


これもアタシらしいのか。。。


「今回のコトについて関くんの反応は?」


ぐぅあっっっっっ!!!


関!!!!!


関ぃぃぃ!!!!!


アタシは一瞬にして全身の血の気が引いた。


もちろん、


“えっ?やっぱりそっち方面のコト聞く?”


って動揺じゃなく、


関の名前に動揺してしまった。


言ってない、


関からも何も来てない、、、


「ひーちゃん?」


無言のままのアタシにスタッフさんが声を掛ける。


『わかんない・・・、です』


慌ててスマホをチェックした。


「昨日の今日だもんね。時差もあるのにゴメンね」


悪びれたようすもなく、さらりと交わしてくれた。


コレは取材とか仕事上の質問じゃなく、今まで付き合ってきた間柄としての個人的な質問っぽかった。


確かに昨日の今日だ。


そんなヒマも無かったし。


でも連絡しなきゃいけなかった。


ん?


メール。


『はっっっ!!!』


何てタイミングなのよ!!!


とんでもないタイミングで関からメールが来た。


「ひーちゃん?」


『関からメールです』


「えっ!?」


スタッフさんの声も驚いている。


“おはよーひよ。起きてビックリしたわぁ。一気に目が覚めたよ。龍神サンからメール来てたよ、おめでとう。やっと言えたんだな。”


関。


そっか、時差のせいで反応が遅くなってたってのもあったのね。


「関くん、何て?」


気になるスタッフさんにそのままメールを見せた。


“やっと言えたんだな。”なんて、危険極まりない部分があるにも関わらず、気心が知れているスタッフさんなだけにそのまま見せてしまった。


グレイトロックのブロック予選からの付き合いだもの。


もうワンワーのスタッフも同然。


アタシと関の絆も十二分に理解している。


だから見せた。


スタッフさんは何も言わず優しく微笑んでスマホを戻してくれた。


「ホントにせきひよコンビってスゴいよね」


“せきひよコンビ”?


初めて言われた。


ぽかんとするアタシ。


「表立って言ったり使ったりしたことはなかったけど結構みんな会話の中では使ってたよ、“せきひよ”って」


せきひよ・・・。


なぜだか嬉しくなってしまっていた。


考えてみればごくごくフツーにくっつけて言ってるだけだけど、そんな言い方もあるんだねって、


今更ながら目からウロコ。


「せきひよコンビは唯一無二だからね」


唯一無二・・・。


不意にブレスレットに目を向けてみた。


運命共同体。


ココしばらく会ってないのに関が居ないって感覚が全くなかった、


不思議なくらい。。。























































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