Ever free
イイんだろうか、
こんなにいっぺんに仕事が重なってしまって。
グレイトロックの全国大会が決まってからデビューまでの期間よりもはるかに詰め込み状態。
関の様子をオンエアでチェックするヒマすらなく。
いくらウチの社長が容赦しない鬼社長とは言え詰めすぎだろ。
でもみんな楽しんでる。
詰め込まれ過ぎてもしかしてナチュラルハイ?ランナーズハイ?みたいな状態なのか、
記念すべき初映画挿入歌がみんなが愛して止まないブリムン、
しかも峰坂先生の直々のご指名だってコトに加えて
自分らで言い出したこれまた愛して止まないVivienさんのトリビュートアルバムの制作もプラスって言うプライスレスなコトばかりだからなのかは定かではないけど。
アタシはそれにblue moonのレコーディングやミヒロさん達へのプレゼント曲の制作も加わり。
“もちろん落ち着いてからでイイからね。ムリしないでね。”
ってミヒロさんから厳命されてはいるけど隙間隙間でちょいちょい進めてて。
ミヒロさんや流雅さんからお二人のエピソードを入手してみたり。
かなり楽しんでさせてもらってるからやっぱりプライスレスな部分が大きいんだろうね。
しかも決定的なコトが舞い込んできた。(ものすごく今更なんだけどね。)
ウチらは全員毎週連載されている雑誌を欠かさず買っていた為、今まで誰一人としてブリムンの単行本を持っていなかった。
まぁその時点でツッコまれても仕方ないのだけれど、
今回ウチらが楽曲担当ってコトをきっかけに全員単行本を全巻大人買いした。
そこで久々に天地を揺るがす大事件が起きたのだ。
今まで気付かなかったのがスゴすぎて峰坂先生に言うに言えなかったくらいの大事件。
単行本の巻末のコメントにちょいちょい出てくる衝撃の事実!!
峰坂先生はワンワーのファンなだけじゃなく、
ブリムンの世界観は実はワンワーから影響を受けたモノだったー
さすがのテッちゃんも感極まってたよ。
たまたま峰坂先生が軽く煮詰まってた時に、付けてたTVからウチらのグレイトロックの予選の様子やオフショットとかが流れてて、
それでイメージが一気に出来上がったらしい。
それを機にウチらのファンになって下さったそうで。
全員いろんな意味で絶句だった。
“(今更知ったコトに対して)何かそう言うトコロもワンワーさんらしくてステキです”
なんて恥ずかしすぎる御言葉を笑顔で言って頂き。
今回のタッグ(?)を記念して多忙な中峰坂先生が直筆のメンバー1人1人のイラストを色紙に色付きで描いて下さり。
しかも6人でのショットでも描いて下さって。
もう全員大興奮。
今まで見たコトの無かったテッちゃんの昇天ぶりまで見れて。
峰坂先生様様なのだ。
中でも決定的だったのがアタシのblue moonだったってのがイマイチ理解しがたいけど、
“アタシにとってのblue moon”をより深く考えさせられるきっかけになった。
どんだけアタシの中で大きな存在なんだろう、この曲は。
自分達の曲じゃないのにこの大きさ・・・。
アタシがVivienさんを知るきっかけになっただけでなく、
アタシと龍神さんやVivienさんを繋げて、
アタシと関の関係にも関わり、
アタシの龍神さんへ対しての気持ちをはっきりさせて、
自分達が大好きなマンガにも実は影響してて。
とてつもなく大きい存在だ。
大きすぎて潰れそうになってもおかしくないよ。
でもアタシはそんな状態にも関わらず思い付いてしまった。
ハタから見たら驚かれるようなコトを。
躊躇うことなくテッちゃんと龍神サンに相談してみた。
2人の返事は同じだった。
“「ひよらしいね」”
微笑んでただ一言。
モトさんや社長には笑われて。
“「ウチでだったら多分やらせられねぇな」”
って。
“「まぁ前代未聞なのはワンワーの専売特許だからイイんじゃねぇの?」”
Vivienさんはじめミヒロさんや半沢さんの意見は満場一致だったらしい。
“アタシのblue moonの御披露目はワンワーファンより先にVivienさんのファンの皆さんの前でしたい。出来るならフリーライブで。”
アタシのたってのお願いだった。
アタシがblue moonを歌った記念すべき初のステージに観客でいたのは誰あろう大勢のVivienさんのファンの皆さん。
批判や嫌悪感があった中で受け入れてくれたのは誰でもなくVivienさんのファンの皆さん。
あの時受け入れてくれた御礼をしていなかった。
だからこそ御披露目を改めてしたい。
来てもらうんだからフリーで。
“「ソロでのギャラはそれ相応分要りませんから」”
って言って。
みんな失笑気味だった。
その後には必ず“「さすがひよ」”って一言付きで。
“「どこで演りたい?」”
ミヒロさんにそう聞かれアタシは答えられなかった。
言い出したはイイけどどれだけの人が集まってくれるかが不安だったから。
独立記念で行われるVivienさんの全国ツアーに乗っかるつもりは無かった。
それじゃあ意味がナイかなって。
要はblue moonの御披露目イコールアタシのソロの御披露目。
すなわちプリズムダストからのデビューの御披露目だから。
乗っかるのが筋なのかも知れないけど“おまけ”にはなりたくなかったから。
いくらフリーライブとは言え交通費をかけて来ていただくコトを考えたら尚更Vivienさんのツアーに乗っかるべきだったんだと思う。
でも、実はみんなに言い出した後にこっそりアユナさんに聞きに行っちゃったんだ。
レコーディングの合間を縫ってアユナさんのお店に行って。
“「Vivienさんのファンの皆さんに感謝の気持ちを込めてワンワーファンより先にVivienさんのファンの皆さん限定でフリーライブで御披露目したいんです。Vivienさんのツアーに乗っかるのと交通費をかけて来ていただいてまで完全にアタシのソロのイベントとしてやるのとどちらがイイと思いますか?」”
ってどストレートに。
アユナさんの答えがアタシの決意を固めてくれた。
“「乗っかったら意味なくない?」”
って即答で。
“「否応なしに認めさせるにはツアーに乗っかるのが一番だろうけど、それでイイの?」”
アユナさんに聞いて良かったって心の底から感じた瞬間だった。
“「ひよちゃんの想いはソコじゃないでしょ」”
って言われた時は店頭にも関わらず泣いちゃった。
“Vivienファンなめないでね”
またそう言われた気がして。
アタシを慰めるかのような優しい口振りでこう締めてくれた。
“「アタシとかにわざわざ意見を求めに来るあたりがやっぱりひよちゃんだよね」”
って。
アユナさんの言う通りわざわざお店に行かなくてもアユナさんと連絡を取る方法はいくらでもある。
でもあえてお店に押し掛けた。
アタシの気分転換も兼ねて。
仕事場に邪魔しに行くなよって言われそうな気もするけど、
“Vivienさんのファンの意見をVivienさんのファンとしてのアユナさんにじゃなく、素の普段のアユナさん”
に聞きたかったから。
関へのプレゼントを買いに行った時の何とも言えない“温かい”カンジが忘れられなくて。
“「わざわざ交通費をかけてまで行ってこそ認めたコトになるんだから。行かないヤツは行かないでイイんだよ。龍神の言わんとしてるコトもそう言うコトでしょ」”
このコトバにアタシはハッとした。
《“ひよはそう言うヤツなんだ。理解出来ないヤツはしなくていい。したくないってヤツはしなくていい。ただひよを非難するのだけはしないでくれ。オレを非難するのは構わない。ひよはガチでオレを慕ってくれている。それが全てだ。”》
アタシをプリズムダストに引き抜いてくれた時のブログー
“『ありがとうございます』”
危なく龍神サンの想いをも裏切るトコロだった。
“「大丈夫だよ!自信持って!!」”
菩薩のような?オーラすら感じるアユナさんだった。
ミヒロさんとアユナさん。
タイプは全く違うけど2人ともかけがえのないお姉ちゃん。
この2人とアタシを繋げてくれたのもVivienさん。
デカ過ぎる。
宇宙みたいだ。
ぅおっっっっっ!!!また閃いたぞっっっ。
ソロの曲に使おう!!!
今日はプリズムダストに出勤。
自宅から1人タクシーで出勤、
だったのだが。
「ちょっと自宅待機してて」
鬼気迫るミヒロさんからの電話にアタシはワケがわからないまま返事した。
言われるがまま自宅待機。
何だろう、一体。
とりあえずモトさんにメールしとくか。
“よくわかんないけど自宅待機になった。”
すかさずモトさんから返信が。
“申し訳ないけどちょっと自宅待機しといてくれ。出来る限り家から出ないでくれ。人との連絡もオレらとご家族以外とりあえず取らないでおいてくれ。理由は落ち着いたら話す。”
何なんだ?この物々しさは。
良くわかんないけど言う通りにしとこう。
・・・、さて。
どうしようねぇ。
コーヒーでも飲むか。
関のHPやオンエアを見ながら。
あっっっ!!ミヒロさんへのプレゼントの追い込みもしなきゃね。
まぁこのハードさの中で急に時間が空いたからってやることがなくなるワケもないのだけれど。
とりあえず一息。
ふぅぅぅぅぅ。
10時前か。
何時まで自宅待機かわからないけどとりあえず制作するか。
しかし・・・・・、
何だろう。
何かトラブルでもあった?
“家から出るな”なんて。
気になるのはさらに“人と連絡取るな”ってコトバ。
間違いなく良からぬコトがあったコトを物語ってるよね。
何だろう。
とりあえず連絡を待つしかナイのだけれど。
ん?龍神サンから電話だ。
今まではドキドキしてたけど今は“社長”だからね。
『おはようございます』
いつも通りに元気にアイサツ。
ん?????
無言だ・・・。
反応を待ってみる。
「オマエに、」
ん?
すっごく声が沈んでる。
龍神サンの背後は静かそうだった。
事務所・・・・・?じゃあないのかなぁ。
「すっげぇ迷惑を掛けるコト、しちまった」
なに何?
『龍神サンから掛けられる迷惑なんて迷惑じゃないですよぉ!!』
なんて笑い飛ばせる空気じゃないのは重々承知なんだけど、
「オマエに対しての責任はオレが取るから」
むむむむむ?????
ホントなら昇天してもおかしくないセリフだけどきっとこの場合は違うよね。
「オマエを全力で護るコトしか出来ないけど」
何だか、、、
泣けてきた。
聞いたことのない失意の龍神さんの声に。
「これは紛れもなく完全にオレの責任だから」
何があったっての?マジで!!
「ホントに申し訳ない」
そのコトバを最後に電話が切れた。
茫然とするしかなく。
通話終了を押せないままアタシはただフリーズしていた。
何だぁぁぁ?
パニックぱにっく。
と、今度はモトさんから着信。
「たぶん大丈夫だと思うけど事務所来るか?」
だから何が起きてんだよぉぉぉぉぉ!!!!!
「龍神サンのスキャンダルが撮られた」
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何と?????
すきゃんだるとな???
すきゃんだるって何だっけ。
そんなバンドとか曲名とかあったよね。
ブランドとかもあったよね。
「対応はウチらとプリズムダストで責任持ってやる。彩沢には取材するなって通達してるけどオマエは落ち着くまで動くな。事務所か自宅にいろ」
なぁぁぁんか前にもあったぞ!?こんなん。
“スキャンダル”
モーレツに泣けてきた。
スキャンダルって何?
何でスキャンダルになるの???
普通に一般人ならスキャンダルなんて言わないのに・・・。
今まで1度も感じなかった悲愴感を今初めて感じてる。
龍神サンと親しくさせてもらっているツケなのかなぁ。
一生分の幸運を一気に使いきっちゃったツケなのかなぁ。
真壁サンの時と言い今回と言いアタシの知らないところでアタシが関わっている。
何だか絶望すら感じてくる。
高校時代に戻りたい。
ただみんなでワンワーを演っていたあの頃に。
みんなで言い合ったり笑ってばかりいられたあの頃に。
初めてそう思った。
次の瞬間アタシは大声を上げて泣いていた。
泣くだけ泣いて、そのあとはまたただひたすらボーッとすることしか出来ないでいた。
何も考えられず、TVをつけてみた。
ただただボーッとしてるよりはつけてるだけでもまだイイかなと思って。
音楽は正直なトコロ聴きたくなかった。
だからTV。
とにかく音が欲しかった。
えっ?インターホンが鳴ってる!?
モトさんだ。
泣き腫らした顔で出る。
「食料、大丈夫か?」
どっさり買い込んで現れてくれた。
『ありがとうございます』
「プリズムダストが厳重に警告してくれたからココには取材は来てないみたいだな」
その確認も兼ねてたのね。
「電話とかは?大丈夫か?」
小さく頷く。
眉間にシワが寄りまくりのモトさん。
『何か飲みますか?』
冷蔵庫に向かう。
「あぁわりぃな。何でもイイよ」
冷蔵庫に入っていたアイスコーヒーを2つグラスに入れた。
『テキトーに座って下さいね』
アタシも思えばずっと何にも飲んでなかったよ。
そう言えば食事もしてなかったな。
お腹空いた・・・。
モトさんの登場にやっと落ち着いたのかな。
モトさんにコーヒーを差し出した。
「ありがとう」
笑顔のモトさん。
モトさんの向かいに座る。
「明日発売の週刊誌に、龍神サンとあるタレントの2ショットが写真付きで掲載される」
2度目の告白なのにまたしても胸が激しく貫かれてる気分。
「プリズムダストはまだこの件で色々対応しているからオレが代わりに話す」
龍神サンのスキャンダル。
相手は・・・?
全くの知らない女性だった。
2人でホテルから出てきたトコロを撮られてしまったらしい。
龍神サン達は現在ツアー中。
2人が出てきたホテルは龍神サンの滞在先だったらしい。
「龍神サンから何かあったか?」
ゆっくり頷く。
『内容には一切触れてなかったけど“オマエに迷惑かけることになる”って謝られた』
「言い訳はしないってコトだな」
深くため息をつきながら。
『“オマエを全力で護るコトしか出来ない”って』
「あの龍神サンが酔った勢いで、とは思えないからな」
モトさんは怒りと言うよりむしろ龍神サンを心配しているようだった。
「オマエも聞いたコトあるかも知れないケド、無名のタレントが有名どころとスキャンダルって結構あることなんだよな。恐らくプリズムダストは相手の事務所にそこを確認してると思うけど」
売名行為・・・。
良く聞く話だ。
龍神サンがターゲットに。
だとしたら龍神サンだって立派な被害者じゃないのよ!!
また泣けてきた。
見かねたモトさんが切り出した。
「少し休むか?」
ほとぼりが冷めるまで。
真壁さんの時は仕事を入れて気を紛らしたっけ。
頷いた。
「のんびり旅行にでも行かせてやりたいけど、今は動かない方がイイからな」
旅行、イイねぇ。
今は無理か。
『デビュー前に戻りたい』
泣きながら呟いた。
「こんなコト今言うのも酷かも知れないケド、オマエのお披露目フリーライヴ、意外なコトになるかもよ?」
えっ?????
ちょっとだけ微笑んでるモトさん。
「ごめんな」
苦笑いで。
真壁さんの事件の時もそうだった。
あれの影響で“桜の樹の下で”が驚くコトになり。
でも、
『出来るのかなぁ』
一段と心配になってきた。
「少なくともコレで恐らくハッキリ分かれると思うぞ」
えっ?
どーゆーこと?
アタシが鈍感過ぎるのかなさどうかはさておき。
「オマエの擁護派とアンチ派に」
・・・・・・・・・・。
しばらく放心状態に陥った。
あまりの大人達のそつのなさにお手上げだった。
今更だけど。
「この仕事って、普通じゃあり得ないトコロであり得ないように転がるからさ。常に発想の転換が求められるんだよ。オマエには酷なコトばかりかも知れないケド」
“アタシには酷”
酷も何も正直わかってない。
今までのコトが一気に甦ってきた。
ワンワーに加入して以来、みんなのハイレベルについていくのに無我夢中で必死に付いてきて、怒涛の日々の中グレイトロックで優勝して。
優勝してからメジャーになるまでも全力でためらう暇もなく駆け抜けて。
メジャーになってすぐにスキャンダルに見舞われて。
スキャンダルじゃないことまでスキャンダル扱いされて。
でも思えば龍神サンとのテッちゃん同伴ドライブの時って、相当龍神サンファンの皆さんを哀しませたんだろうな。
それを考えたら今回のはもっと哀しいハズ。
哀しいのはアタシだけじゃない。
アユナさん達、、、
“「龍神の記念すべき初ロマンスの相手。アタシは大賛成だな」”
あの時のアユナさんの表情が浮かぶ。
また泣けてきた。
んんん!?!?!?
およっ???
いつの間にかモトさんがキッチンに立っていた。
「勝手にやってんぞ」
ご機嫌なモトさん。
いつの間に!?
「ウチに招待するのがホントはイイんだろうけど何せウチはチビ怪獣2匹に占拠されてるからさ」
“チビ怪獣”。
ついつい笑っちゃった。
いつも事務所のデスクや移動車のフロントに家族の写真をモトさんは飾っている。
すっごく可愛らしい“チビ怪獣2匹”と、ものすごくおキレイで品の良さそうな奥様。
直接お会いしたコトは無いけど何度か電話でお話させて頂いたことはある。
“パパをヨロシク”なんてお兄ちゃんに言われて。
「メンバー呼ぶか?」
モトさんの優しさが嬉しかった。
『そうだね』
出来る限りの笑顔で答えた。
モトさんのお陰でだいぶラクになれたアタシは龍神サンにメールをしてみた。
“アタシが言うのもおこがましすぎる話ですが”
って前置きして。
“アタシのコトはどうかお気になさらないで下さい。アタシは大丈夫です。それよりアユナさんをはじめ龍神サンファンの皆さんを安心させてあげて下さい。一番傷付いているのは龍神サンファンの方々のハズです。”
もちろん過るのはアユナさん達のコト。
その後モトさんを手伝いながら話した。
『今回のコトで傷付いているのはアタシじゃなくて龍神サンとアユナさん達龍神サンファンの皆さんなんだよね。アタシがくたばってる場合じゃないんだよね』
するとモトさんは優しく
「ホントにオマエは」
って苦笑いしながらアタシのアタマを優しく撫でてくれた。
しばらくして他のメンバーが全員やってきた。
「龍神サンからメールが来てた」
テッちゃんが入室するなり言い出した。
「オレにも!」
「オレもぉ!」
「オレも来た」
まぁクンもなおクンもセンちゃんも口々に。
「さすが龍神サンだな」
モトさんが半ば呆れ気味に。
そのせいで話題は龍神サンのコトのみになってしまった。
「でもさっ、泣かすのよウチのひよりちゃん」
出来上がったカレーを盛り付けながらモトさんが言った。
「何?まさか“アタシのコトより龍神サンファンの皆さんの方が心配です”とか言い出した?」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
テッちゃん恐るべし・・・。
「ビンゴぉぉぉぉぉ!!さすがリーダー!!!」
一気にモトさんのテンションが上がる。
アタシを含め他の3人絶句。
「オマエはどこまでバカヤローなんだよ」
絶句の沈黙を破ったのはなおクンだった。
他の4人も苦笑いで頷く。
アタシは打ち明けた。
『そりゃ物凄くショックでしばらく放心状態だったよ。泣き腫らしもしたよ。みんなとただ地元でワンワーやってた頃に戻りたいってトコまで行ったよ?スキャンダルって呼ばれなくてイイことまでスキャンダルって言われるコトにもうんざりだよ!?』
ちょっと半泣きになってきた。
みんなカレーを待ちながら黙って聴いてくれてる。
『でもさぁ、モトさんに“これで完璧にアタシのアンチ派か擁護派かに分かれる”って言われた時に、アユナさん達のコトを思い出して、思えば龍神サンファンの皆さんにはアタシのコトで今まで何度となくショックを受けさせてたんだなって気付いたの』
「ひよらしいね」
お決まり化してきた感すら感じるテッちゃんのこのコトバ。
「お待たせ!」
カレーがみんなの目の前に登場した。
「頂きます!!」
なおクンが先陣を切ってカレーに手を付けた。
『頂きます』
みんなが続く中アタシも一口。
「うまっ!!」
みんな絶賛。
「だろぉ?モトさん特製カレー」
かなりのどや顔。
「金取れるって!!」
なおクンの一言にみんな大きく頷く。
「少なくともオレは毎日喰えるな」
モグモグしながらまぁクンが呟く。
「いつでも作ってやるよ」
「ってか出し惜しみしすぎ!!」
みんな愉しそう。
こんなんがワンワーなんだよね。
ほっこりしてきてまた涙が出てきちゃうよ。
『コレがイイ』
涙声で呟いた。
みんなの視線を集めてしまった。
「オマエらには今まで散々突っ走らせちゃったからな」
苦笑いのモトさん。
「たまにはこういうのも必要だったな」
しんみりした空気になってしまっていた。
「じゃあコレからは定期的に誰かしらの家でパーティーだな。このメンバーだけで」
テッちゃんが言い出した。
「賛成!!」
まぁクンのコトバにカレーを食べながらのセンちゃんやモトさんも手を上げて同意。
「コレがワンワーらしさだよ。今も昔もこれからも。周りが変わってもオレらは地元で演っててモトさんが正式なマネージャーじゃなかった頃から何も変わらないよ」
テッちゃんの一言に、アタシはソッコー撃沈した。
「泣くなよぉぉぉ」
茶化すセンちゃんもちょっともらい気味な雰囲気。
「ぃや、こんなん言われたら泣かないワケねぇよ。オレでもちょっともらうワ」
苦笑いのなおクン。
「さすがリーダー。ビシッと決めてくれるね」
モトさんのわざとらしいコトバにみんな声を上げて笑っていた。
アタシもつられて泣き笑いになって。
そうだよね、うっかり見失うトコロだったよ。
どんなに周りが変わっても、ワンワーのみんなは何も変わってなかった。
出逢った頃の、音楽にまっすぐでいつでも全開でパワフルで優しくて温かくて包んでくれるお兄ちゃん達だ。
モトさんもセンちゃんもなおクンもまぁクンもテッちゃんも。
『ありがとう』
涙でグシャグシャの顔と声で言った。
朝までみんなで盛り上がり、日の出と共にみんな帰っていった。
まさに嵐のあとの静けさな部屋で独り、今までの自分らの音源を聴き漁った。
切り集めたグレイトロックの頃からの自分らの記事のスクラップブックを見ながら。
懐かしさに涙ぐんだり笑ったり。
たったの1年ちょっと。
突っ走り過ぎだよな、どこからどうみても。
あっ!!スマホ。
モトさんが来てからずっとチェックしてなかった。
もう店頭に並んじゃってるんだね。
龍神サン達、対応落ち着いたかなぁ。
ん?
龍神サンからメールが来てるよ。
URLが添付されてる。
VivienさんのHPだった。
あっっっ。
トップに龍神サンからのメッセージが載っていた。
“全てのVivienを応援してくれている・くれていたみんなへ”
タイトルはこうだった。
“くれていた”・・・って。
今回のコトで離れた(かも知れない)人にもってコトね。
“今回のコトでとんでもなく心配・衝撃・迷惑を掛けた。本当に申し訳なく思う。オレとしたコトが本当に情けなく、猛省に尽きない。”
どんな想いでいるかを想像してしまう。
“流雅と海崎の結婚はある程度予測出来たコトかも知れないが、オレに関してのそう言うネタは本当にいつも突然でかなりショックを受けさせているコトと思う。”
ドライブデートのコトも含まれているんだろうな。
“あーだこーだととやかく言い訳をするつもりはない。真実がどうであれみんなに多大な迷惑を掛けたコトには変わらないから。”
龍神さんらしいね。
“本当に申し訳無いコトをしたと思っている。許してもらえるなんて思っていない。だけど完全にじゃなくてもほんのわずかでも許してもらえるようにこれからも突っ走って行くコトを誓う。それだけはわかって欲しい。”
泣けてくるよ。
“彩沢をはじめワンワーのメンバーやスタッフにも多大なご迷惑とご心配を掛けてしまった。ワンワーのファンにも。”
アタシらのコトまで。
胸が締め付けられそう。
“彩沢をはじめマネージャーさんや社長には直接電話で謝罪させてもらった。みんな一様にオレの心配をしてくれた。申し訳無いほどに優しかった。”
モトさんや社長にまで。
“彩沢に至っては《自分は大丈夫だからそれよりファンの皆さんを安心させて。》とまで気遣ってくれた。全身を何かで貫かれた気がした。”
えっ!?そんな・・・。
ちょっとコっ恥ずかしいぞ?
“その時に無性に自分の起こしたコトの重大さを痛感した。”
龍神さん・・・。
ん?
何???
その後からしばらくものすごくスペースがある。
終わり?じゃあないよね。
ずっと下にスクロール。
あっ!現れた。
!!!!!!!!!!
アタシは全身の血の気が一気に吹っ飛んだ。
“と同時に彩沢の大きさも痛感した”
はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?????
アタシの大きさぁぁぁぁぁ?????
なぁぁぁに言っちゃってんのぉぉぉ?
唖然、茫然・・・・・。
でもこんなもんで茫然としている場合じゃなかった。
“今までもそうだったが今回のコトで一層人間としての彩沢の大きさを感じた。とてもオレの半分しか生きてないと思えない程に。”
アタシ、
昇天。
その後のコトは覚えていない。
昇天と同時に一気に眠気が来たのか気が付いたらアタシはベッドで眠っていた。




