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さすがに第二、第三の魔王が早すぎるだろ!

作者: 夕明
掲載日:2025/11/19

初めて短編を書きます!どのキャラにも魅力を感じていただけたら幸いです!

「ーーーーこれでとどめだ!!さっさと消えろ、魔王!!」


「ーーーー最後ノ足掻キ、見セテミヨ……勇者!」


 崩れかけた王の間、そこで二つの光が交差する。


 一つはまばゆく輝く白い光。剣から湧き出るその光は多くの魔族を打ち滅ぼしてきた魔滅の光だ。

 相対するは黒い光。本来存在しないはずの黒い光は様々な光を取り込んだことによって生じた現象だ。

 その禍々しさは一般人なら当てられただけで卒倒してしまうほどだ。


 ほとばしる光を剣と、数多の攻撃でボロボロになった身にまといながら魔王へと肉薄し、至高の一撃を叩き込もうとする勇者と、決して矮小な存在に滅ぼされてなるものかとすべての力を込めた魔法で迎撃しようとする魔王。長きにわたって続いてきた人族と魔族、勇者と魔王の戦いがここで、決着するのだ。


 最後に立っていたのはーー


「俺の勝ちだ。魔王」


 勇者が勝利した。つらく苦しかった人族の歴史はここで終わり、今後は魔族という天敵におびえることのない繁栄を、人族は獲得したのだ。


「……私ヲ倒シタゴトキデ図二乗ルナ。必ズヤ第二、第三ノ魔王ガ現レ、貴様タチ人間ヲ滅亡二追イ込ムダロウ」


「その時が来たら、また俺が何度でも滅ぼしてやるだけだ」


 勇者は崩れ行く魔王の姿を見届けたのち、振り返って魔王城を後にする。


 20年。旅に出てから魔王を打ち滅ぼすまでにかかった時間だ。これまでに失った仲間、救えなかった村、突如襲撃された街と泣きわめく人の声。今まで様々なものを見てきた。もうそんなものを見なくてもいいのだと思うと、勇者は疲労感と、しかし達成感に包まれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ちょっと待ちなさいよ!あんた、わたしたちのパパなんだから早く家に連れて行きなさいよ!」


 後ろから声がかかる。振り返るとそこには、光をそのまま映したかのような金髪を持つ赤い目の女の子と、光が透き通って、まるで白髪のようにも見える美しい銀髪を持つ青い目の女の子がいた。金髪の女の子は仁王立ちでこちらに向かって指さしており、銀髪の女の子は床にぺたりと座り込みながら、長い前髪の隙間からこちらをうかがっている。


「ぱ、ぱぱぁ??」


 呼ばれなじみのない言葉に勇者は混乱する。それもそのはず、この勇者、実は魔族を撃つために聖剣は何度も抜いたことがあるものの、大事にしまい込んだ下半身の聖剣はついぞ抜くことがないまま三十台になってしまった悲しき童貞なのだ


 だが惑わされてはいけない、大昔に剣術の師範に教わった、まずは相手のことをよく観察しろ、という言葉通り、まずは観察してみることにする。冒険の最も重要な目的を果たせたのはこの教えのおかげもあっただろうから。


 年齢は9歳ほどだろうか。服は着ておらず、長い髪によって体が隠されているが、それでも足などを見ると二人ともやせ細っているように見える。しかし何よりも気になったのは……


「角だ……」


 角といえば魔族の象徴であり、魔法を人間よりもうまく扱えるようになる外部装置だ。自由自在の魔力によって身体能力も強化されるため、勇者はその角に何度も苦しめられた。もちろん弱点にもなるわけだが。


 その角が金髪の方には小さく二本、銀髪の方には額に一本、生えているのだ。


 つまりその事象があらわすのは、この娘たちが幼い見た目だがれっきとした()()だ、ということだ。


「魔王の魔力が濃すぎて、魔物じゃなく魔族が生まれた……そう考えるのが妥当か。」


 勇者は小声で自分の中の考察をまとめる。


「パパだか何だか知らないが、魔族なら滅ぼさないとな。胸糞悪いが」


 勇者は背中に一度は預けた聖剣を再び取り出そうとする。


「ちょ、ちょーーっと待って、おねがい!戦う意思はないからすこしだけわたしの話を聞いて!」


 さっきから待て待てと言われているが、慌てて命乞いをしたり、その隣でプルプル震えているところを見るあたり本当に戦う意思はなさそうなので少しだけ話を聞いてあげることにした。当然警戒は緩めないが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……なるほどな。一応お前たちのいうことは分かった」


 金髪の方曰く、魔王の能力は吸収と融合、そして放出なのだという。そして勇者の魔力を吸収してそこから作ったのが自分たちらしい。人格は本人が言うのもなんだけど、以前吸収された人間の人格が宿ったのではないか、という風に話した。しかし過去の記憶などはないらしい。


「……わたしたちは、パパの魔力から生まれた。だから……娘」


 話の途中で銀髪の方も少しづつ話し始めた。どうやら金髪の方は活発なタイプで銀髪の方はおとなしいタイプのようだ。しかし金髪の方は言葉のうちにポンコツを感じるし、銀髪の方は言葉に有無を言わせない妙な力強さを感じる。


 勇者が説明の事実確認のために魔力感知をしてみると、自分と同じ魔力を確かにこの子たちの中から感じることに気づく。そのほかにも金髪の方の金色の髪は旅に出る前、まだくすんでいなかった頃の自分の髪色と似ており、銀髪の方の透き通るような眼の色も、まだ素晴らしい未来だけを見ていたあの頃の自分と重って見えた。


「どうやら嘘はいってないみたいだな……」


「ほら、言ったでしょ!だからわたしたちはあなたの娘なの!」


 娘……かどうかは判断に困るところだが、金髪の方はない胸をそりながら自慢するように言う。


 もろもろの説明を聞き、勇者は果たして自分にこの子たちが殺せるか、と考える。答えは否だ。()()()()()、と表現している時点で自分はもう魔族として、敵としてみていないことが勇者にはわかった。


「……だからお願い、わたしたちを連れていってほしい。パパに見捨てられたらわたしたちは魔族でも人間でもないから、きっと魔族の残党に襲われる」


 銀髪の方が感情が少ない声で言う。真偽は定かでないがもし事実であるとしたら、勇者はもう見捨てることはできないだろう。


「しょうがない、か……。お前たち、名前はなんていう」


 勇者が名前を聞くと二人はお互いを見あって、その後同時に首をかしげる。


「名前なんてないわ!今生み出された存在だもの!」


「わたしも、よければパパにつけてほしい」


 自分がまさか娘の名前を、しかも同時に二人も考えることのになるとは思っていなかった勇者は10分ほどうんうんとうなって結果を出した。


「金髪の方がリエル、で銀髪の方がノアだ。こうなったからには俺も覚悟を決める。これからよろしくな」


 家族として、という言葉が思い浮かんだが、気恥ずかしくてさすがに言えなかった。


「「うん」!」


 先ほどまで決死の戦いをしていた王の間に、二人の娘の良い返事が響く。


 これからどうなっていくかわからないが、とりあえずこれからはこの子たちと一緒にいてみよう。と勇者は思った。パーティメンバーを全員失い、魔王という目標も倒した勇者には、これくらいの目的がないと沈んでしまいそうだから。


 勇者たち三人は王の間、そして魔王城を後にする。その途中、ふと勇者は魔王の「必ズヤ第二、第三ノ魔王ガ現レ、貴様タチ人間ヲ滅亡二追イ込ムダロウ」という言葉を思い出したが、これから先、どう生活していくかという思考にすぐ塗り替えられ、消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 父親と娘二人は、道中小さな問題はいくつかあれど、無事に勇者が旅に出た王国へとたどり着いた。その途中で娘たちが父親の名前を聞き、ヴァルセインという名前のカッコよさにキャッキャしていていたりしたが、勇者はそうか?などあきれながらその様子を見ていたりもした。ちなみに姉妹はリエルの方が姉でノアの方が妹ということで決まったようだ。


「ようやく戻ってきたな。ここまで長かった……」


 勇者が王城を目の前で見上げ、感傷に浸る。それも当然だろう。ここに至るまで多くの出会いと別れがあったのだから。そのどれもが強く印象に残っている。


「にしてもリエルとノアもすんなりついてこれてよかった。二人だけで宿においてきたら何か問題を起こすんじゃないかと気が気じゃないからな」


「もう、わたしたちだってさすがにそんなことはしないわよ!ここに来るまでだってずっとおとなしくしてたじゃない!」


「でもパパと離れたら確かに問題起こすかも……なんて」


 魔族領から人族の領まではそこそこの距離がある。その旅の中で勇者と娘たちの関係はまるで本当の親子のようになっていた。ちなみに二人は頭がすっぽり覆えるフード付きマントをかぶっている。そのおかげもあってまだ正体がばれるような状況には至っていない。


「ノア、怖いことはあんまり言わないでくれ。これからこのラディアン王国の王様に謁見するんだから二人ともおとなしくしといてくれよ」


 はーい、という娘たちの声を聴きながら、勇者は案内のものに連れられて謁見の間へと向かう。長い間人族全体の目の上のたん瘤であった魔族の首謀が打ち取られたのだ。その英雄である勇者ヴァルセインを待たせるわけにはいかないという気づかいだろう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「面を上げよ」


 ラディウス王国の国王、ルミアス・レイディアスの声がかかり、勇者たちはゆっくりと顔を上げる。娘たちには前々からしっかりと謁見の際のマナーを教えておいた。勇者もあまり上手な方ではないが、その目から見て、ぎりぎり人前に出せる程度には仕上がっている。


「よくぞ戻った。勇者ヴァルセインよ」


 ーーその後、国王から多くの感謝の言葉と仲間はどうした、魔王の姿かたちはどうであった、などの話が出るがそれよりも重要な質問がついに放たれる。


「して、そこのフードをかぶった者たちは何ものだ?見たところかなり小さい女のように見えるが」


 きた!勇者と娘たちはそう思った。リエルとノアは喋らず、父の言葉を待つだけの手はずだがそんな二人にも緊張の汗が出る。


「こちらの者たちはリエルとノアといい、私の娘です。旅先で作り、安全な場所でそれ以来育ててまいりましたが、旅の途中で顔に傷を負ってしまい、今は療養中なのです」


 勇者は謁見の前に考えてきた内容をつらつらと話す。王は娘たちの傷を気遣いながら、20年も旅に出ていれば当然これぐらいの娘がいても当然か、と納得した。王はその後も興味本位で質問を続ける。


「そうか子供が!しかし女性の顔は大事にしなくてはな。顔の傷が治ったらぜひまた城に訪れてくれ。人族を救った英雄の子ともなればたいそうかわいがられるだろう。して相手はどうしたのだ?」


 子供がいれば当然相手がいるだろうというものだ。勇者を将来的に娘と結婚、などと以前考えたことのある王は気になった。


「この子たちは、私のパーティの一員であった魔法使いとの間に作った子です」


 しかしそんな質問も想定内。勇者はさも事実のように語り、言葉を続ける。


「しかし、その魔法使いは魔王城での魔王の側近との戦いの際に……」


 そういって勇者は上げた顔を若干俯かせて顔を隠す。完璧な演技である。生前、結婚や子供が欲しいなどの話を目を輝かせながらしていた魔法使いも、さすがに死後に娘ができるとは思わなかっただろう、などと不埒なことを考えているのだが。


「そうか……それは残念だ。悪いことを聞いた。娘たちにも済まない」


 王はそう言って本当に申し訳なさそうに謝り、話を変えるように褒美の話をし始めた。


 何はともあれこれで娘たちの身分はこの国で保たれそうだ、と親子は顔には出さずほっと一息ついた。


「ーー長い間付き合わせてしまって済まない。今夜はこの城で宴を開く。娘と一緒にぜひ来るといい、勇者ヴァルセインよ」


「は、かしこまりました」


 報酬のおかげで娘たちも苦しい生活をせずに済みそうだ、というようなことを考えていた勇者は王の言葉を受け取る。


 そうして謁見は無事終わった、かに見えた。



「あっ」



 リエルがノアのマントの裾を踏んだ。


 マントが落ち、フードの中に隠されていたきれいな銀髪がその場にあらわになる。しかし何よりも目を引いたのは、額に生えた()だった。



 謁見の間は一瞬静まり返り、直後、喧騒に包まれる。



「勇者が連れてきた娘は魔族だ!!捕まえろ!!」


 近衛騎士長がそう叫んだのをきっかけに謁見の間の守護についていた近衛騎士たちが一斉に勇者たちに迫りくる。


「くそっ!だから言っただろくれぐれも問題は起こすなって!」


 娘たちを抱えながら勇者は言う。


「だ、だって深くかぶってたからよく前が見えなかったんだもん……」


 リエルは涙目になりながら勇者にくっつく。


「ぱ、パパ……」


 ノアは自分の角がみられ、一斉に視線が集まったからかおびえた様子で勇者の服をつかんだ。


 最初は好奇に満ちたものだった視線が一斉に敵意に変わったのだ。人格が宿ったとはいえ生まれたばかりの子供には刺激が強すぎたのだろう。


「二人とも大丈夫だ。ちゃんと俺につかまってろ」


 そういってリエルとノアを抱き寄せると娘たちは男の胸元でコクっとうなずく。その姿に急激に父性が掻き立てられる。そうか、これが世の父親の気分か、と勇者は思った。


「こうなったらヤケだ、報酬なんていらない!王城を脱出するぞ!」


 叫ぶや否や、勇者は娘たち二人を抱きかかえたまま走り出す。その速度は素早く、いくら常日頃から訓練している近衛兵とはいえ追いつくことはかなわない。


「は、はや!」「パパ、すごい……」


 いくつもの槍の猛攻をかいくぐり、勇者は階段を駆け下りていく。


 そうしてあっという間に勇者は城の外へと抜けだし、城下町の屋根を伝ってそのまま走る。時折聞こえる娘たちの感嘆の声が気恥ずかしい。


「ここらへんでいいか」


 そういって王城から遠く離れた人気のない下町で止まると、ようやくリエルとノアを降ろした。


「きゅう……」


 目が回ったのか倒れそうになるリエルを支えると、ノアも勇者に寄ってきた。


「パパ、すごい。私もいつかそうなれるかな……」


 ついさっきの怖かった出来事はもう忘れたのかフードが微妙にずれているノアはキラキラした目で見上げてくる。


「ノアもリエルも、俺の娘なんだからすぐにあれくらいできるようになるさ」


 勇者はそう言ってノアの頭をわしゃわしゃ撫でるついでにフードを直してあげる。


「ありがとう、パパ!」


 お礼を言ったノアの顔はとてもかわいく、あの時一緒に過ごす判断をしてよかった、と思いながら勇者も微笑んだ。


「ちょっと!わたしを忘れないでよ!」


 いつの間にか復活したのか、リエルも頭をなでてほしかったらしく勇者の手をつかんで頭にのせる。


「よーしよーし、甘えん坊だなぁリエルは」


「甘えっ、ち、ちがうし!」


 長い間戦いばかりに身を置いてきて人間らしい生活ができなかった勇者だ。しかしそんな自分にはもったいないくらい可愛い娘が二人もできた。この先も、ずっとこの二人を守っていこう、勇者はそっと心に決めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『フム、大分イイ調子ダ。後ハ私ガコノ娘ノ人格ヲ奪イ、勇者ノ寝込ミヲ襲イ吸収スレバ……』


 ーーーー魔王は少しづつ、ほんの少しづつ、娘の中で存在を大きくしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございました!もしよければ評価、感想お願いします!また、何本か短編を書いている最中なので興味を持っていただけたら嬉しいです!今後は長編にも挑戦します!


ここではストーリー内で語られることのなかった後日のやり取りをほんの少しだけ載せときます……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『私ガ力ヲ貸シテヤル。ダカラ勇者ノ寝込ミヲ襲エ』


「……うるさい、寝込みはいつか襲う。でも力はいらない」


『オ前ッテ、一応モウ片方ノ親ダゾ、私ハ!』


「……そろそろ静かにして、私の親は勇者ヴァルセインだけ」


『ムゥ……』


魔王が力を取り戻す日は長そうである。


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