第2話 彼女の人生 2
確かに死んだと思ったのに、
――――あぁ、暖かい
と目を覚ますと、王子の婚約者になったと告げられた日の朝に戻っていた。
初めて、巻き戻った時は、夢だと思った。
あれは現実ではなく、やけに生々しい夢を見たのだと、そう思った。
だって、自分があんな風に死ぬなんて信じられない。
夢の中の私がしたことと言えば、忠告くらいだ。
他の女子たちのように徒党を組んで呼び出し、怒鳴ったりしたこともない。
手を上げたりもしなかった。
わざと足を引っ掛けた事もない。
飲み物をかけたこともないし、
食べ物に異物を入れないし、
ましてや、階段から突き落としたなんて、ありえなかった。
堂々と淑女としての決まりを注意しただけだ。
「婚約者のいる男性に近付くものではない」と。
学園のマナーの授業で、毎時間教師が言うような事を。
それは、貴族であれば当たり前の事だ。
皆が集まる中庭―――たくさんの目がある場所で言ったのは悪かったかもしれないけれど。
言った事は間違ってないはずだ。
だけど、女には理解できないらしかった。
私がそう言えば、女は
「私が悪いの……」
と、涙を流した。
それだけで、女を取り巻く男たちは私を責めた。
こんなに優しい女になんて事を言うのだと。
そこには、私の婚約者もいた。
私を直接責めることはしないが、女を慰めながら面白そうにも、諦めたようにも見える、意味ありげな眼で私を見るのだ。
女と同じように泣くわけにもいかず、私は習った社交術で必死に対抗した。
それがまた彼らには気にくわなかったのだろう。
いつしか私は、運命の恋人たちの邪魔をする悪役になっていた。
夢の中では皆が私を悪いと言ったけれど、本当に私が悪かったのか。
私は、私が悪いとは思えなかった。
だから、夢を信じず私の思うがままに行動した。
現実は夢とまったく同じように進み、私は夢で見た通りの人生を送り、やっぱり死んでしまった。
そしてまた、あの日に戻った。




