0-3 呼び出し……これネズミ講じゃね?
はぁ、憂鬱だ。実に憂鬱だ。憂鬱極まりない。なぜかって?あの恐ろしいほどストーキングが上手い星崎先輩が正面に座っているからだ。
あの平穏な休暇が破壊された瞬間からの経緯を詳らかに話そう。あれから僕は,先輩から何度も逃げようと試みた。Twitterもブロックした。一時的に鍵垢にもした。けど、星崎先輩は一体いくつアカウントを持っているのだろうか。しかも鍵垢に忍び込むのもうますぎる。埒が開かなくなった僕は、本垢をとりあえずログアウトし,裏垢に引っ込むことにした。しかし,また即バレた。河野太◯ですか?ただただ怖いんだが?
その後、Twitter自体もログアウトしようとしたが,その前にインスタのDMが来た。もはや行動も読まれた。今振り返ったら星崎先輩が立っているんじゃないかと思うぐらい行動が読まれた。こんな調子じゃどうせ住所もバレているだろう。内容証明とかで入部届を送ってきそうだ。流石にそれは親に対して恥ずかしすぎる。もう無理だ。僕は無条件降伏した。
案の定住所はバレていた(は?)僕が三重県にいるということが知られ、また塾の春季講習で名古屋に通っていることもバレていた。運の悪いことに星崎先輩の家は名古屋だった。そのため塾のコマの間にしっかり呼び出されたというわけだ。
これは営業妨害ではないだろうか。名駅の地下街,ユニモールのスタバのとある机の周りだけ、禍々しい空気を纏っていた。
「ほんっとうにごめんなさい!」
開口一番に謝られて、脳内の処理が追いつかなくなった。いや、星崎先輩にされたことは謝られて当然のことばかりであったが、そんなことをした人が謝るなんて思っても見なかったからだ。しかも頭が机につきそうなぐらい頭を下げている。周りからの視線が痛い。え、俺悪くないよねぇ?
「大丈夫ですから、頭を上げてください。こっちが居た堪れません。」
「え、バレた?」
「確信犯かよ」
杞憂だったようだ。てかこの人策士だな。
「いや、悪いとは思ってるんだよ?思ってるんだけどさ、こっちも部員が足りなくて。」
「それは薬師川先輩から聞きました。」
「じゃあ話が早い!早速ここにサインしてくれたまえ。」
そう言いながら星崎先輩はおもむろにかばんから入部届を取り出した。ん?なんか注意事項のところがめちゃくちゃ小さくて読みにくい・・・
「ほら、早く早く!」
「そんなにせかされたら消費者保護法でクーリングオフして契約破棄しますけど大丈夫ですか?」
「何を返品するんじゃい!」
はぁ、やはりこの人はよくわからない。とりあえずスマホのズーム機能で注意事項を拡大して読んだ。こんなに小さく字を書いて字が潰れないプリンターすげー。注意事項は全く怪しいことも不利なことも書いてなかった。紛らわしいな。そういえば、さっきから星崎先輩の横に座っている女子は誰なんだ・・・?
「とりあえず入部はしますよ。幽霊になっても知りませんよ。」
「大丈夫大丈夫!まぁ君のタイプだとどうせ部活来ると思うけど」
何を言っているんだこの人は。薬師川先輩ならまだしも星崎先輩はほとんど面識ないぞ。
「そうそう、こっちも紹介しとかなきゃね!この子は君と同じ春から高校一年生の白南風美月ちゃん!ほら、挨拶して!」
「…」
あれ、何も喋んない。
「ええと、こんにちは?B組の亘理智哉です…」
「ねぇ」
「は、はい?」
同級生なのに敬語になってしまった。白南風さんの容姿がいいからとかではない。(いや容姿は申し分ない)何かものすごい殺気を感じるのだ。
「星崎先輩の厚意を無碍にするなんて、失礼じゃなくって?」
「へっ?はい?」
「そもそもねぇ、星崎先輩のLINE無視するなんて何様のつもり?わざわざ声かけてもらったのよ?それにアポイントのためにリスケまでしたのよ?」
「白南風、最後の言わないで!」
この人…多分星崎先輩の信奉者だ。簡単に言えばファンだ。確かにうちの学校は良家が多いため、一部の生徒が親の権威を傘に取り巻きを形成することも珍しくない、特に女子は。しかし、取り巻きを形成できるのは結局のところ大企業の社長とか大臣とかの家であるため、その生徒の名前ぐらい他学年は知っている。星崎先輩についてそんな噂微塵も聞いたことはない。つまり、ただのファンだ。正直こっちの方が嫌味はないが厄介だ。
かくいう僕も薬師川先輩のファンである。
そうしてクセが強い2人に圧迫され、僕は競技科学に入部し、週に2回以上行くこととなった。(数学部はって?薬師川先輩もグルだったのだよ!)
え、星崎先輩リスケしたってマ?




