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プルシアンブルー~競技科学に青春を~  作者: 李徴
1章 競技科学入門(4月編)
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1-6 バンドのお誘い②

 「どうしたものか・・・」

 そのままの食堂に3人+瀬戸島で食事をとることにしたが、まさかバンドあるあるを二連発するとは思ってもみなかった。

 「ギターが3人・・・」

 「現実でも起こるんだね」

 「マジかぁ・・・」

 難しい顔で向かい合うギター衆3人・・・

 「ねぇねぇ、やっぱうちの弟使っても」

 「いや、それは流石に悪い」

 「それにギターどっちにしろ余っちゃうし」

 「そっか・・・」

 ベースの確保よりも、ギターが余る方が問題だ。流石に1人を仲間を仲間はずれにすることなんてできないし、僕と江河はもともと竹津とかなり仲が良く、断るつもりなんてさらさらない。

 「3年とかは?」

 「それもちょっときついと思うけど・・・」

 「それにベースやってるやついる?」

 「男子しかしらんけどいないんじゃないか?知らんけど」

 「瀬戸島、ベースやってる子知ってる?」

 「え、たぶん女子でもいないよ。というかベースは女子の方が少ないでしょ。うちの音楽部でもベースやってるのうちの弟ぐらいだし」

 今このバンドの紅一点であり、次期音楽部部長候補ともいわれている瀬戸島だが、彼女も知らないというのだから、手詰まりだ。そうなると・・・

 「この中のギターから、1人ベースに」

 「転向するってことか」

 「やっぱ俺が」

 「いやいやもったいないって」

 比較的陰キャしか集まっていないから、譲り合い祭りが発生している。モテたいからバンドをする、というのはあるあるな話だが、幸いこのバンドは、みんな「音楽がやりたい」で集まったバンドだ。そういざこざが少ないのはありがたいのだが・・・それゆえにみんな一定以上の楽器経験者で、誰が譲ってももったいない。けど、僕は分かっていた。一番ベースに転向すべきなのは、僕自身だと。

 なぜならば、僕は「アコースティック」ギターだからだ。ライブでバンドがアコギを使って演奏しているという例も多くあるが、普通音響をうまく設定しないと、ライブでハウリングを起こしてしまう。ライブには本来使いにくい楽器なのだ。

 それに比べ、江河はギターソロ、竹津はバッキングを中心にエレキギターを練習している。竹津も、実はギターを買ってまだ1、2か月しか経っていないし、ここからベースを買えって言うのも酷だ。それならば、親のお古のギターで練習している僕が楽器を買えって話になる。

 だけど、言い出せない、言い出せないのだ。やはり、楽器を買うというのは大きな出費になる。他の上流家庭ばかりの皐月生と違い、中流家庭であるがゆえに、親にも相談なしに楽器を買うなんてできない。親も僕がギターをやるとばかり思いこんでいるだろうから、余計に言い出せない。

 「あのさ、この話、保留にしない?」

 「う~ん、まぁそうか」

 「この3人のうち誰かがベースに転向するって話しでいいんでしょ」

 「そうしないと誰か余っちゃうからね」

 「じゃぁ楽器隊のメンバーは確定じゃない?」

 「キーボード採用しないならね」

 「それはどの曲やるかとかにも関係するじゃん」

 「まぁそうか」

 問題を先送りにした。よくないことだし、自分勝手だなと思うが、自分の決心がぐらついている今、本心がまだ定まらない状態でこの話を決めるのはよくないと思った。形上バンドのメンバーを決めて、後で楽器を決める方が気が楽だ。文化祭は9月なんだし、練習も6月後半からとかだから、余裕はある。

 「じゃ、まぁバンド発足ってことで」

 「まだバンド名ないけどw」

 「いいじゃん」

 何か忘れているような・・・あ

 「ボーカル・・・」

 「「「あ」」」


 つくづく僕たちは音楽バカである。


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