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プルシアンブルー~競技科学に青春を~  作者: 李徴
1章 競技科学入門(4月編)
11/13

1-5 バンドのお誘い①

 「あち~」

 4限目が終わり、食堂に向かって歩きながら、恨みがましくぼやいた。

 4月下旬、今年の冬は厳冬で長かったから桜もまだ散り切ってないというのに、もう夏かと言いたくなるような暑さだ。あいにく、うちの学校は4月まで冬服着用で、ブレザーを着なければいけないので気温に比べ体感温度はかなり高い。いい加減気候変動とかあるんだからちゃんとそこらへんに対応してくれないかな、時代錯誤も甚だしい。ついでに夏服になってもネクタイ締めなきゃいけないのも辞めてくれ。

 「それな~」

 相槌を打ってきたのは江河悠嗣(えがわゆうじ)、僕の友達だ。僕は中学2年生の頃から好きなアーティストに憧れてアコースティックギターを始め、練習のために昼休み音楽室に出入りしていた。江河はもともとエレキギターをやっていて、音楽室でたびたび合うようになっていた僕らは次第に仲良くなっていき、気づいたら長期休み中に時々一緒に遊ぶ中になっていた。と言っても、江河が住んでいるのは一宮で、よく遊ぶ場所は名古屋だから、長期休みに1回あるかないかだが。

 「そういやさぁ~」

 「ん?」

 「バンドの話、どうする?」

 江河がバンドについての話を切り出してきた。実は、去年の文化祭の時、「来年バンドを一緒にやらないか」と誘われていたのだ。もともとそういう物に興味はなかったが、江河に連れられて文化祭のバンドを見に行った時、すごく胸が高鳴る感情がした。問題は、僕がやっているのはアコースティック、それもソロギターという一人でベースもメロディラインもドラムもやってしまうというものである。

 「え、結局僕は何をするの」

 「え、バッキングとかどうよ?コード弾き得意でしょ」

 確かに、憧れているアーティストが弾き語りなのもあって、コード弾きは得意だ。どんな理不尽なコード進行でもできるぐらいには練習した。

 「うーん」

 「問題はね・・・」

 「そうだね・・・」

 問題は・・・そう、バンドあるある、「ベースがいない」事件である。幸い、共通の友人で音楽部の瀬戸島(せとじま)が、ドラムができると聞いてバンドには誘っている。本人からも快諾を得ている。えているのだが・・・

 「うちの学年、ギターやってるやつはいっぱいいるけど、ベースやってるのは誰もいないんだよな・・・」

 「俺がベースやろうか?俺できるし」

 「いやいや、それはもったいないって」

 江河は大抵の楽器は弾けるタイプの人間だ。ピアノだけは苦手らしく、「鍵盤押すだけで音はなるんだが、それが逆に苦手。ピアノを弾けるようになるイメージができない」と言っていた。小さいころにピアノを習っていた身からすると、ピアノが楽器の中でもある程度弾けるようになるのは簡単な気がするものだが、そういうわけにもいかないらしい。とりあえず、江河はベースが弾ける。弾けるが、すでに5年間もエレキギターをやっており、そのうまさは学年でも群を抜いている。リードギターでギターソロをせず、ベースに回るというのは非常にもったいない。

 「瀬戸島弟は?」

 「いや~中2を4年生のバンドにぶち込んでステージに立たせるのは流石にかわいそうだろ」

 瀬戸島の弟はベースを既にメインでやっており、ベーシストとして起用するのはもってこいだが、確かにさすがに気が引ける。

 「何の話してるの~?」

 「おぉ竹さん、いや~バンドのベースをどうしようかなって話よ」

 純粋無垢な竹さんこと竹津の登場だ。先ほど僕らの学年にはギターをやっている人が多いと言ったが、それは音楽の時間でギターをやったことにより、ギターがミニブームになっているからだ。竹津もそこでギターを始めた一人で、最初の方は教えていたが、いかんせん覚えがいい。1週間程度でFコードを弾けるようになってしまった。本人はアコギはあまり好きでなく、エレキをやりたいと自分でギターを買って独学で練習するようになっていた。

 しかし、僕は、思わぬ闖入者がいると思ってなかった。

 「あのさ~」

 「ん?」

 「僕も、バンドやってみたいんだけど・・・」

 「「え?」」


 「入れてもらうことって・・・出来る?」

 ギターが3人になってしまうとは・・・

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