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テスト直前は大荒れだ

 「爽太さんはいらっしゃいますか」


 休日のお昼過ぎ、爽太の家に一方的な来客者がやってきた。

 監視カメラで確認するとふんわりとした白スカートに青色のデニムジャケットを身にまとった少女がインターフォンを鳴らして立っていた。

 その容姿からは普段は見ない故の新鮮味と夏が近づいてきているという焦燥感を感じる。

 来訪者は昨日の弁当箱にメモを残した張本人の小樽繭。

 『明日、空いてますか?』とだけ書かれたメモ用紙は明日の予定は空けておいてほしいです。という一方的な願いだと受け取っていつもより早起きをして待っていたのだ。


 「何用ですか?」


 扉を開ける前にメモ用紙ではわからなかったことを訊いておく。


「料理の配給と、後は勉強を少々教えていただきたくて……」

「気を使わなくてもいいのに」

「貸しを作るのは嫌なので」


 確かに彼女は貸しを作るのが嫌そうだった。

 初めて家に入れた時も、看病した時も、弁当箱を渡した時も快く爽太の善意を受け取ろうとはしなかった。

 恐らく過去に貸しを作ったことで災難に巻き込まれたことがあったのかもしれない。

 

 そんなところかと一人納得し、チェーンを外して家に入れる。

 「はい」と手渡された風呂敷をとりあえず冷蔵庫にしまって彼女に呼びかける。

 一つさっきの会話で引っかかっていたところだ。

 

「勉強教えて欲しいとは言うものの、小樽さんは賢いだろ。俺が教える意味はあるのかな」


 いつも高順位を取っている彼女が中の上(ちゅうのじょう)を走っている爽太に何を聞くというのだろうか。

 少なくとも、去年のことはほとんど覚えていないし、応用なんて3年にやればいいと思っているので全く復習をしていない。

 教えることができるとすれば得意教科の社会だけ。

 とはいえど、ただの暗記科目だから教える必要は無いのだが……

 

「恋治さんに訊いたらとりあえず勉強面は爽太さんが適任だって言ってたので」

「あいつそんなこと言ってたのか……」

「でも、私の勉強は基礎からの復習なので教えられる範囲だと思いますよ」

「はぇ~」

 

 素っ気ない返事を返しておいたが、内心はとても焦っている。

 いや、最低限のことはできるとは思うけれども、それでも高校に入ってからはまともに勉強をしてきてないので基礎固めという言葉に安堵よりも不安の方が感情として大きいのだ。

 戸惑いと焦りの混じった表情を浮かべていると繭の口がちいさく開いた。

 

「あと、部屋だとうるさいので……」


 目をそらしながら言う繭を見て、爽太は「あぁ」と思い当たる節を思い出す。

 そして深い納得ができた。

 先ほどのは縦まで本音はこっち、きっと恋治のことなのだろう。

 あの馬鹿のことだからきっとテスト期間も関係なく彼女とデートをしているのだ。

 しかもよりによってお家デートを。

 昔そのことに関しては一度注意した。

 恋治の交際相手は進学校で一位をとるほどには賢いのだが、恋治はドがつくほどの馬鹿だから、一度ガチで留年の危機に追いやられたのだ。

 てっきりその一件で反省したと思っていたのだが……

 あのバカップルめ……と心中で深い溜息を吐く。

 

「留年しても知らねえぞ。ほんとに」

「はは……」

「うん。なら全然頼ってくれ。アイツの尻拭いは俺の仕事だからな」

「助かります!!」


 そう言うと繭は目を輝かせて喜んでいた。

 普段はそこまで表情が豊かでは無いのに感情をあらわに喜んでいるあたり本当に迷惑だったのだろう。

 自分のことでは無いにしろ、爽太はいたたまれない気持ちになった。



 テスト勉強を始めて数時間、繭からの質問は初歩的なもので特に困ることは無かった。

 開いていた参考書類から時計に視線を移すと丁度18時を指していた。

 

 隣に視線を向けると、うんと伸びをする繭を見て少し昔を思い出して微笑する。


「うん? なんですか?」

「いや、妹もこんな感じだったなぁと思ってな」

「妹さん居るんですか?」

「2つ下の妹が一人。今は親と一緒に本島に行ってるけどな」


 あいつもこんな奴だった。

 しっかりしていて集中するときはコレくらいやってたと思う。

 いつも全身全霊の少女。その腕白さは遊びに留まらず勉強も家事も全て背負ってくれた凄い少女だ。

 ふと元気にしているのか気になったが、きっと向こうでも人生を満喫しているのだろう。

 どこでも順応できそうなのがアイツの取り柄なのだから。

 

「へぇ。いい妹さんですね」


 素っ気ない返事が返ってくる。


「まぁな」


 別に自慢をしたい訳じゃないのでコチラも淡泊な返事を返して話しを終わらせた。

 

 麦茶をついで持って行き、休息を促して一息ついて再度また参考書を開く。

 


「いい時間ですね。今日は切り上げます」


 繭が開いていた参考書類を閉じて机でトントンと整える。

 時計に視線を向けると時計の針は18時を回っていた。

 恋治との勉強会よりも時の進む速さが違いすぎて気づかなかった。


「もうそんなに経っていたのか……」

「夏至が過ぎてまだ少しですからね。私も時計を見なかったから一昨日は困りました」

 

 一昨日。たしかその日はなぜか繭が21時頃にスーパーにいた時間。

 夜遅くに買い物するのかとは思っていたが故意ではないのか。

 

「一昨日?」

「惣菜コーナーで爽太さんを見つけた時ですね」

「アレって時計を確認してなかったんだ」

「我ながら情けないと思います。完全に補導時間でしたし」

 

 繭は頬をポリポリと掻いて苦笑している。

 そんな、おっちょこちょいをするような人間では無いとばかり決めつけいたので、人間らしいところもあってちょっと親近感が湧く。

 帰る支度をして繭がドアノブに手をかけた時に振り向いてモジモジとしながら口を開いた。

 

「あの、明日も来ても大丈夫ですか?」

「もちろん」


 爽太には断る理由が無かったので快く承諾するとニコッと柔和な笑みを残して繭は部屋を後にした。

めっちゃ遅れてすいません!!!昨日のPVで張り切ったものの書けなくて発狂してました!

ブックマーク等はめっちゃ励みになってます。本当にありがとうございます。

今日こそは今日中に出します(当たり前)

モチベと能力が比例してくれないかな。


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