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幸い(さきはひ)  作者: 白木 春織
第九章
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第九章 ③ ※流血表現注意

 どうしたのだろうと千鶴が桐秋の顔を見る前に、視線の先の積もった雪に赤黒(あかぐろ)い血の花がぱっと咲いた。


 千鶴はすぐさま顔を上げる。


 桐秋は口元を手で押さえており、指の合間からは、どろりとした赤い液体が漏れ出ていた。


 千鶴は今にも膝をついて倒れそうな桐秋の体を支えるようにして寝室に戻る。


 枕を高くしたベッドに血や(たん)が吐きやすいよう、桐秋を側臥位(そくがい)にして寝せ、口元に桶を置く。


 桐秋の背中をさすり続け、喀血(かっけつ)が少し落ち着いたのを見計らい千鶴は台所に行く。


 台所にはちょうど女中頭(じょちゅうがしら)がいて、千鶴は彼女に桐秋が血を吐いたことを告げる。


 母屋に行き、至急医者を呼ぶようにと頼んだ。


 千鶴自身は氷嚢袋(ひょうのうぶくろ)粗製食塩液(そせいしょくえんえき)を作ると、寝室に戻る。


 再度部屋に入った時には荒い気息ではあるが、桐秋は血を吐いてはいなかった。


 桐秋の上半身を慎重に起こし、ゆっくりと口元に食塩液を流し込んで、血まみれの口の中を消毒する。


 それが済むと再び桐秋を寝かせ、心臓部付近に今しがた作った氷嚢袋を置く。


 枕元にあった桶を覗いてみると、かなりの血を吐いた跡が残っていた。


 千鶴の顔は真っ青になる。もしかしたら・・・。


 ほどなくして母屋から南山が駆けつけてきた。


 ちょうど家にいたらしい。


 ぐったりとした桐秋の体を一通り診察し、千鶴に喀血にいたった状況などを聞く。


 診察の後、神妙な面持ちで南山は告げる。


「今は呼吸も落ち着いてきているが、血を吐き始めたということは・・・」


 後の言葉は続かない。


 体調が(かんば)しくなかったとはいえ、今まで血を吐いたことなどなかった。


 喀血は、桜病の末期の症状。桐秋に残された時間の儚さを物語っていた。


 初めからその可能性があることはわかっていたのに、今の千鶴は現実を受け止めることが出来ない。


 冬になり、桐秋が大きく体調を崩し始めたときに感じた恐怖がより大きなものとなり、千鶴の足下からじわじわと如実(にょじつ)に這い上がってくる。


 千鶴は目の前にある桐秋の真白い顔を見ていられず、南山と一緒に戻ってきていた女中頭にその場を頼み、ふらふらと自室に戻った。


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