「小説家になろう」サイトで知り合った夫との馴れ初めエッセイ
「小説家になろう」サイトで知り合った私と夫との馴れ初めエッセイになります。
執筆前に「小説家になろう」運営に確認したところ、私個人の体験を作品として投稿する行為は大丈夫だということですが、個人の特定が可能な描写は控えてくださいというお返事をいただきました。
個人に対するプライバシーの侵害や、誹謗中傷につながる恐れがあるということですので、工夫して特定できないように努めます。
もしかしたら、読み手の方が「この人のことかな?」と想像されることもあるかもしれませんが、規約違反や運営対応の対象となる可能性もございますので、感想やコメントなどで個人名を記載しないようにお願い申し上げます。
「小説家になろう」利用規約 第14条 禁止事項にも抵触しないように確認をしておりますが、何か不備がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。
また、結婚の際に運営に伺いまして、夫と感想やレビューなどポイントに関係のない行為は了承をいただいておりますが、ブックマークや評価などポイントに関する行為は同居以降行っておりません。
※実際に関わりのあったなろう作家さん方には、その節はご迷惑をおかけしたことも多々ありました。この場をお借りして、改めてお詫びを申し上げます。
※基本的に私は夫が大好きなので、誇張表現はご容赦くださいませ。なお、投稿前に夫が目を通しており、掲載の許可をもらっています。
母親が読書好きで自宅にはいろんなジャンルのたくさんの本があったため、私も物心ついたときにはすっかり読書が好きになっていた。
基本的に乱読でジャンルを問わずなんでも楽しく読んでいたが、私はそこまで感情が表に出る性質ではないので、小説を読んでいて泣いたことは今までで二回だけである。
初めて泣いたのは、中学生のときにヘルマン・ヘッセの詩と小説を読んで。多感な思春期に読むヘルマン・ヘッセの文学は心に鋭く突き刺さり、涙を流さずにはいられなかった。
二回目に泣いたのは、今の私の夫の小説を読んで。夫はまだ書籍化作家ではないけれど、非常に読み手の心を揺さぶり、情感豊かな一人称小説を得意としている。
ジャンルはまったく違うし、かなり贔屓目で見ていることは自覚しているが、私個人的に夫にはノーベル文学賞作家に匹敵するほどの力量があると感じている。そしてそんな夫は全然本を読まないので、ヘルマン・ヘッセを知らない。
私は「小説家になろう」のエッセイを読むことが好きなので、たまにジャンル別ランキングから読みにいくことがある。
エッセイジャンルはすべてのジャンルを通過した場所にあるため、別ジャンルの上位ランキングのタイトルも目に入ってくる。
夫の小説は、当時の日間ヒューマンドラマジャンルで一位にいつもランクインしていたので、なんとなく気になって読み始めたことがきっかけだった。
そこから夫の小説の虜になるまでに時間はほとんどかからなかった。
何十万文字もある長編の最新話まであっという間に追いつき、矢も盾もたまらずレビューと感想を書いた。第一部完では感動のあまり泣きながら震える手で誤字を報告した。
夫の小説は素晴らしいが、誤字が多いため興醒めになることが玉に瑕である。
こまめにレビューや感想、活動報告コメントや誤字報告を送る私のことが気になったという夫は、初めて夫の小説に出会ってから三か月後に、恐る恐る私の短編を読みにきてくれて、感想を書いてくれた。
憧れの推し作家さんが、まさか私の小説を読んでくれるとは!
私は興奮して感想返信をしてから、お礼の個人メッセージを送信した。
夫は私の大興奮メッセージに丁寧に返信してくれて、そこから少しずつ交流が始まったのである。
彼は情報に疎いことや恥ずかしがりやの性格も相まって、他のなろう作家さんとほとんど交流をしていなかった。そのため、活動報告タグやイラスト掲載のやり方などは、私が全部メッセージで教えていた。
夫がわからないことなどメッセージで送るうちに、私のなろうでの経験や近況なども書くようになった。
私はなろうで長く活動しているが、それはいつか叶えたい夢があるため。
なろうで活動し始めたときに出会った、尊敬する男性作家さんに言ってもらいたいことがあるのだ。
会ったこともない男性作家さんのことを、私はたまに冗談で「騎士様」と呼んでいたので、ここでも「騎士様」と書くことにする。
騎士様との詳細は『再会の約束』というエッセイで書いたことがある。騎士様はとても優しく律儀なのだが、頑固で融通が利かないところがあった。
私が騎士様に言ってほしい「合い言葉」は、騎士様と同じ日間総合一位にならないと絶対に言ってもらえないのだ。
日間総合一位になりたいと焦ったこともあったが、そう簡単になれるものでもない。あれこれ悩んだ末に、マイペースに楽しく書くことが一番だと思えたけれど、夢は夢としていつか叶えたい。
今、メッセージでやりとりしている憧れの推し作家さんに励ましてもらえれば。いつか騎士様に合い言葉を言ってもらえるような小説が書けるかもしれない。
そんな勝手な感情でいきさつを夫に書いてみたら、それはそれは素敵なメッセージを私に送ってくれた。私は夫からの優しさ溢れるメッセージを前に、しばらく絶句してしまった。
そのとき、ずっとなろうの中で一番だった騎士様よりも、夫がなろうの中で私の大切な存在になったのだ。
私はこの昂ぶる思いを形にできないかと、一生懸命慣れない詩を書いてみた。
詩を書いたのは、騎士様を思って書いた詩(削除済み)以来で、この機会に削除した詩と一緒に大切な思いを綴った詩を投稿した。
未だに私が詩を投稿したのはこの二作品のみだが、自分としては驚くことに、詩のジャンル別で日間、週間の一位と二位になることができた。それは本当に嬉しく感謝すべき出来事だった。
騎士様、見ていてくれましたか? あとから見たら月間の一位と二位にもなっていましたよ。
なろうの中のことだけ書くと充実しているように見えるかもしれないが、騎士様と出会ったときも、夫と出会ったときも、私の私生活は波乱に富んでいた。言い訳になるが、活動年数のわりに投稿数が少なく、日間総合一位に縁遠いのは私生活も影響している。
騎士様と出会った頃は、当時結婚していた夫との離婚調停が難航していた。当時の私のぐちゃぐちゃな感情を騎士様にぶつけてしまったこともあり、心から申し訳なく、いくら謝っても足りないくらいである。
ただ、それも弁護士さんに依頼したことにより、無事に離婚することができた。それはそれで貴重な体験ができたので、いずれ私小説として書いてみたい。
今の夫と知り合ったのは、二番目に結婚した夫と険悪な時期だった。「二番目の夫」という言葉は一般的に使用頻度が低いと知り合いに言われてしまったが、他に彼を表現する言葉が思いつかないので仕方がない。
最初の夫も、二番目の夫も、結婚するまではまともだと感じていた。ただ、少し性格に引っかかりを覚えたことはあったので、これから結婚する方にはその「引っかかり」の感覚を見極めていただければと思う。
最初の夫から直接の暴力はなかったが、精神的な暴力を相当振るわれた。やっと逃げ出すことができたのに、うっかりまたひどいモラハラ夫に出会ってしまった。
二番目の夫は、私がやっているSNSで知り合った。野球が好きなことと、小説を書いていること。その二つの趣味が同じだった。
はじめは公募挑戦ばかりだった二番目の夫は、やがてなろうにも投稿するようになっていった。
別に最初から仲が悪かったわけではない。ほんのちょっとしたボタンの掛け違いから、やがて不和が生じていった。
二番目の夫との悩みを、なろうではない他の小説サイトに投稿したことがある。なろうだと知り合いが多いこと、また本人に読まれる恐れがあったため、他のサイトで助言を募ってみたのだ。そのサイトでは削除済みだが、多少改稿してここに掲載してみることにする。
『誰か教えてください』
SNSで知り合った旦那は、どうしても自分の小説を書籍にしたいらしい。私個人は趣味で書いているから、そんな大それた夢は抱かないが、作品を本にしたいという思いはわからなくもないので素直に応援したいと思った。
「小説を書いたから、読んで意見をくれ」
旦那がワードで書いた小説を私のパソコンに送ってきたので、さっそく読んでみた。
読んでみての私の感想。まったく面白くない。表現が稚拙。到底書籍になるとは思えないし、たとえ小説サイトに投稿しても評価は得られないだろう。
その旨をなるべく遠回しに述べたつもりだったが、相当旦那は傷ついた様子だった。ひどく怒ってしまい、数日間私と口をきかなかった挙げ句、絶対自分の小説を否定することは許さないと告げた。
確かに旦那の言うことにも一理ある。私だけの意見では偏りがあるだろうし、何より男性向け小説と女性向け小説の違いというものもある。考えてみて、私は交流ある方々に旦那の小説を読んでもらい、感想をもらうことにした。
いろいろな年齢や立場、男性と女性視点からの感想をもらい、旦那は立ち直った。感想をもとに新たな小説を書き、再度私に読んでくれと頼んできた。
今度は決して旦那の小説を否定しないスタンスでいよう。そう思いつつ旦那の小説を読んだのだが、どう読んでも高い評価になると想像できなかった。仕方がないので、傷つけないよう細心の注意を払いながら、改善点を伝えるに留めた。
そうして満を持して、旦那は小説サイトに新しい作品を投稿した。流行りの題材を扱っているため、それなりにアクセスがあり、感想もブックマーク登録も増えた。ただ予想通りというか、感想欄では否定的な意見の嵐。あえて私が口にしなかった欠点を、読み手は遠慮なく書きこんでくる。注目度が上がれば当たり前の話だが、厳しい感想は必然だ。感想を読むことに対し、旦那は恐怖感を覚えた。私に感想を読んで、ソフトに意見を教えてほしいと言う。なんというメンタルの弱さだろうと呆れながらも、その言葉に従って旦那に柔らかく読者からの感想を伝えた。
感想を参考に軌道修正しつつ、旦那は投稿を続けたが、やがてどう書いても否定的な意見しかこなくなった。嫌気が差した旦那は、無理矢理小説を打ち切りにして、完結表示にした。そのときのブックマーク登録は千件弱。皮肉なことに旦那の書いた小説の中では、最もブックマーク件数が多い作品だった。もちろん打ち切りエンドに読者からは非難ごうごう。しかし旦那は続きを書く気力を失っていた。
もともと誰とも交流のない旦那が当たり散らすのは当然私ということになる。それでも千件弱のブックマーク登録に自信がついたのだろう、以前否定的な意見を述べた私に罵りを交えながら、ひたすら文句を言い続けた。
「お前が俺の小説を『受けない』と言ったのに、結局千件近くは行ったんだ。見る目がないのはお前だ。俺に対して生意気な口をきくな!」
そういった内容を何時間か口にした旦那は、少しは気が晴れたのか、ゲームをするために自室にこもった。私はふと、旦那に聞こえないように呟いた。
「あなたが決して認めない否定的な意見の私の小説は、ブックマーク登録が千七百件超えている事実をどう受け取ったらいいでしょうね……」
別に旦那と張り合うつもりではないが、彼が千件弱で自慢するなら、私の千七百件ブックマーク小説について、否定的な意見を言ってほしくないという気持ちは間違っているのだろうか。誰か私に答えを教えてほしい。
ゲームをやり続けて寝不足の旦那は、睡眠障害のある私にさまざまな行動を求めてきた。ゲームのやりすぎで何もやりたくないから、代わりに私にいろいろなことをやってほしいとのことである。申し訳ないのだが、私に物事を押しつけすぎないでほしかったので、つい謝りつつ行動を拒否してしまった。私に睡眠障害があることを知りながら結婚した旦那だから、理解してもらえると思ったのである。
少しばかり薬の影響でぼうっとしていた私も悪かったのだろう。旦那は非常に私の睡眠障害を重く受け止め、突然離婚を切り出したかと思えば、深夜に自殺を図ろうとした。遺書のような書き置きを発見した私は驚いて、市役所や警察署、病院の精神科に問い合わせ、なんとか旦那を見つけ出し、精神科に引きずっていった。
しかし、精神的に追い詰められた旦那は奇行を繰り返し、罵声を浴びせ、気が狂いそうだと再び私に離婚を迫る。旦那がどうしても離婚したいというのなら、そして気持ちが落ち着くのであれば、私も真剣に向き合わないといけない。突きつけられた離婚届を目の前に私は考え続ける。
あいにく私は実家の父親と折り合いがあまり良くなく、実家には長期間いることができない。そうなると、新しく一人暮らしの住居を探し、引っ越し業者を手配し、なおかつかかりつけの病院に紹介状を書いてもらわないといけないのである。そういった煩雑な行動は、いかに旦那が精神的に弱っていても、少し待ってもらわなくてはいけない。旦那を宥めすかして、とりあえずの猶予期間を得て、しばらく離婚は待ってもらうことにした。
しばしの自由時間にこの文章を書いているのだが、果たして間違った行いをしたのは私か旦那か、誰か答えてくれないだろうか。私が正しいとは言わないが、理不尽さも感じてしまうのである。猶予期間に旦那が少しでも冷静な思考を取り戻してほしいと願いつつ、私は離婚を視野に、しばらく旦那の機嫌を損ねないよう気をつけて行動したい。
最後に。もしここまでお読みになった方がいましたら、どの行動が間違いだったかを教えてほしいです。
上記の『誰か教えてください』には、ありがたいことにいくつか感想や助言をいただいた。そして猶予期間中に実家に帰った折に、『誰か教えてください』を読んだ今の夫とやりとりをする機会もあった。
「旦那さん、悪い意味で作品をリアルに持ち込んでいるように見えてしまいます。作品は自分の子という考えなら批判に対してショックを受けるのはわかります。でも自分自身というわけでもないんですよね。私もそれなりの感想数があるので、やっぱりというかその中にはけっこうな批判があったりします。でもどんな大作だろうが批判はありますからね。このへんも良い批判と悪い批判があるとも思ってますし、それを見極めていくのも作者としての能力アップになるのだと思います。
うーん……、これは最善の行動を(あるのかはわかりませんが)とったとしても良い方向に向かっていたとは断言できない感じですね。言えるのは自分を責めることなんて一つもないということだけです」
という非常に冷静な分析と慰めをもらって、二番目の夫と険悪だった私は大変励まされた。
猶予期間を終えて戻ると、二番目の夫は恐慌状態に陥っており、私を殴ろうと思い切り手を振り上げた。
咄嗟に私はスマホを握りしめ、堪えきれずにボロボロと涙を流しながら
「もう我慢できない! 警察に電話して、夫に殴られるって通報する!」
と泣き叫んだら、そこでようやく二番目の夫は我に返ったようだった。
どうやら、ずっと平静を保っていた私が取り乱したことが意外だったようだ。私が自分以上に不安定になったことで、心のバランスを取り戻すというのが皮肉な話である。
ひたすら泣き叫ぶ私はそのまま精神科に一晩入院し、翌日、二番目の夫との離婚届を提出した。
そうして、私は今の夫に無理を承知でプロポーズした。離婚歴二回の私は、自分でも条件が最悪だと思う。しかし、そんな私は受け容れてもらえた。
「大好きな君を守りたいです。こんな自分でよければ結婚を前提にお付き合いしてください」
素敵なお返事をくれた三番目の──最後の夫は、私の最愛の推し作家さん。
今までの夫たちは悪いところばかり目立つが、それでも私は結婚生活の経験を積んだ。最初はお味噌汁すら作れなかった私は、もういろんな料理を作ることができる。洗濯も掃除もなんでも家事全般できるようになっている。今の夫のために彼らが踏み台になってくれたことは感謝しよう。
ついでに弁護士依頼や裁判などもできるようになったので、いつか小説のネタになるだろう。アマチュアでも物書きは経験がすべてネタになる。
無事に結婚した私たちは、空いている時間に机を並べて小説を書いたりおしゃべりしたりしている。誤字が多い夫に口頭で誤字報告をしているので、R18小説では卑猥な言葉ばかり言わされているような愉快な気持ちになる。
滅多に誤字報告が来なくなった夫は、別のサイトでも小説を投稿するようになった。同じ小説を複数サイトで投稿している方ならわかるかもしれないが、一つの誤字報告で複数サイトの小説を直すのは大変労力を要する。
別のサイトでは誤字報告機能がないところもあるので、コメントでの誤字報告になる。誰も褒めてくれないけれど、夫のとある小説に八百近くコメントをいただき、一つも誤字報告がないことがちょっとした私の自慢だ。
そんな私の誕生日には、夫が小説で得た広告収入で毎年フランス料理をご馳走してくれる。昨年のクリスマスプレゼントは、広告収入でロボット掃除機を買ってくれた。
いつか夫が書籍化作家さんになったら。そうして私がなろうの日間総合一位になったら。仲良く乾杯をしてお祝いしたい。
私の最愛の夫であり、大好きな推し作家さん。いつも一番に小説を読ませてくれてありがとう。励ましてくれてありがとう。笑い合いながらおしゃべりしてくれてありがとう。家事を分担してくれてありがとう。私の小説を楽しんでくれてありがとう。
なろうで夫と出会えた奇跡を永遠に感謝いたします。