池田理代子大先生ごめんなさい、ワタシ、ベルばらの世界に転生してしまいました
読めばわかりますが、二次創作作品ではありません。
★ 2人劇舞台
プロローグ
ピンクのフリルと薔薇の花で飾られたベッド一台ベビーピンクとホワイトを基調とした部屋の中で主人公の修仁戸は目覚める
配役◎◎ 修仁戸 (修が苗字、仁戸が名前)ベルばらと宝塚好きの独身女性。休日に昼寝をして起きたら、ベルサイユのばらの作品中で生まれ変わっていた
◎◎ マリーアントワネットン 髪型も衣裳もすべてベルばらの世界から来たような姿なのに、中身は大阪弁を話すただの女
※※登場人物二人とも宝塚版ベルばらのような豪華な衣装&ヘアスタイル。顔だけ普段通りの見慣れた自分です。
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舞台には修仁戸ひとり。少女漫画に出てくるような豪華なベッドで横になっている。大あくびをして、目をこする。寝ぼけていて、まくらのフリルを手でなぞっている。くるくる巻き毛の髪の端っこも寝ぼけ眼で触る。そのうちに覚醒してびっくり。起き上がる。ベッドの上で仁王立ち。部屋が見慣れた自室でないので再度びっくり。
修:あ、なんやのここ。えらいまた、かわいい、いや、きれいというか、ゴージャスというか……この部屋なんやぁ
修は起き上がって自分の来ている服もホワイトのフリルだらけのゴージャスなものになっているのに気付いて三度びっくり
修:まだ夢の中かな。いや、これ夢やないよね、マジでどないなってんのや。(ベッドから降りて)こんな服、着たことないわ。誰が私をここに連れて来て着替えさせたんか。あ、もしかしたら転生でもしたのかな。ゲームの世界の中のお姫様とか! まさかなあ
(歩き回る)
修:鏡はないかな。転生したら大体鏡を見て若返っていたり、すごい美人になっていたりするのがお約束やけど
(コンコン)
修:(緊張しながら)どぞぉ~(ベルばらのマリーアントワネットのような豪華な衣装を着た人が入ってきて頭を下げる。この時点ではまだ顔は暗くてわからない)
マリー:女王陛下、おはようございます
修:えっ、女王陛下ぁ? あたしがぁ?
マリー:はいぃ
修:あんたが女王陛下やないの?
マリー:女王陛下、ご冗談がすぎます
修:(半信半疑ながら威張る)おもてをあげィ
マリー:はいぃ
(明るい所に出てマリーは顔をあげるが、衣裳負けした日本人女性にすぎないことがわかる)
修:あっえ……え~とえ~と。あんた、名前は
マリー:はい。マリーアントワネットンです
修:えっ、マリーアントワネット。まじ? もしかしたらここ、ベルばら?
マリー;女王陛下、ベルばらとはなんでしょうか
修:あっそうか、物語の中の人はタイトル知らんかもな。でもここはフランスじゃないよな、だってあんた、がっつり日本語しゃべってるやん
マリー:あの…女王陛下
修:ふむ、私が女王陛下ならあんたはなんやろ
マリー;マリーでございます
修:マリーね。ほんで私が女王陛下。やっぱしベルばらやな。やった~。で、オスカル、おる?
マリー;オスカルとはオスカルフランソワンのことですか
修仁戸:せや、それっ。オスカル、ほんまにおる?
マリー:はい
修:よしゃああああ~! オスカルほんまにおるんやああああ
マリー:近衛兵連隊長の…
修:間違いない。ワタシ、オスカルに会いたい。なあ、今すぐ会いたいから呼んできて
マリー:かしこまりました
修:あっ、ちょっと待った。まだオスカル呼ばんといて。オスカル呼ぶ前にな、鏡見せて
マリー:かしこまりました
(鏡を渡す)
修:(あきらかにがっかり)なんや、絶世の美女やない…前の顔のまんまやがな。あああ、自分でいうのもくやしけどな、こんな衣裳と髪型、におうてへんがな
マリー:あのぅ、女王陛下はさきほどからヘンでございます
修:悪かったな。私かて、なんでこうなったのか、知らんがな。でもオスカルに会えるんやったら異世界転生でもかまへんわ。あの人は私の初恋の人やし
(マリーは心配そうにしている)
修:でもどうせ転生するなら、フランス人形みたいなものすごい美人の顔になりたかったなあ、しょうもなあ…あっ、あんた、マリーアントワネットというたな。あんたはフランス女王やなくて私の小間使いなんやろ
マリー:あの、恐れながら女王陛下、私はマリーアントワネットではございません
修:えっ、だってさっき言うたやん。マリーアントワネットて
マリー:マリーアントワネットンでございます
修:は? マリーアントワネット ン??
マリー:はい。マイネーム イズ アントワネット ン でございます
修:なんで、英語と日本語がごっちゃんこやねん
マリー:申し訳おまへんっ
修:あんたの顔も池田理代子大先生の描くマリーアントワネットに程遠いし、もしかしたらオスカル呼んでも全然違うじじいが来るかもしれへんな。髪型だけオスカルで中身じじい…気色わるい…う、うそやああ、やめてくれやああ
マリー:女王陛下、ほんまに大丈夫ですか
修:あんなぁ。ここベルサイユやろ?
マリー:いえ、恐れながら少し違います
修:違うゥ? ほな、ここは一体どこやねん
マリー:ベルナイルです
修:ベルサイユでのうて、ベルナイル? なんやそれ
マリー:あの、ここは昔からベルナイルですけど
修:ベルサイユとバルナイユとは全然違う。国王はルイ16世やないんかっ
マリー:イズミル王子です
修:な、なんと。イズミル王子とな(頭ピコーン)もしかしてここ、王家の紋章とごっちゃになってないか
マリー:我が王家の紋章は薔薇ですが
修:やっぱ、ごっちゃやん! イズミル王子がここにおるなら、ここヒッタイトか? まさかな? ほならメンフィスは今どこや?
マリー:ヒッタイトはしりませんがメンフィスさまならお隣の国に……あの…オスカルどうしましょうか
修:ああ、ああ。ここはベルナイルでイズミル王子で、隣の国にメンフィスがおる。ここの王家の紋章が薔薇で。もしかしてキャロルもこのあたりのどっかにおるんか、ああっ私の頭もごっちゃんこ
マリー:女王陛下、落ち着いてください、私はこれで失礼してオスカルを呼んでまいります
修:(マリーにずかずかと近寄る)待ちィな
マリー:あ、あの?
修:そもそも、あんた、なんでその服やのん? まるきり変身舞妓のベルばら版やん、全然似合ってへんで
マリー:(涙ぐんで) …ちょっとひどいですぅ
修:ひどないで。聞いてるだけやがな。あんたなんで日本語でしゃべってんのん? その顔、日本人やろ、フランス人やないし。あのな、基本的な話を言うけどな、オスカルもマリーアントワネットも全員フランス人やねんで? 日本人とちゃうんやで?
マリー:(泣きだす)しくしく
修:(我にかえって)いや、ごめん。マリーちゃんを責めてるわけやないねん。私はな、四畳半の自分の部屋で昼寝して起きたらここにおってん。服も髪型も違うけど、顔だけは同じや。こんなんそりゃびっくりするで
マリー:女王陛下
修:ワタシって昔からここにおったか? つまり寝る前から、いや、昨日、いやもっと以前から女王陛下としていたわけ? きのうもおとついも、ワタシここにいた?
マリー:女王陛下
修:(舞台を歩き回る)私はベルばらが好きや。テレビで宝塚の舞台を見ていっぺんでファンになった。それで小遣いためて原作も買って読んだ。もうほんまに繰り返し読んだ。映画も宝塚も観た。池田理代子先生の原画展も行った。ベルばらの世界がほんまに大好き。コロナが終わったらフランスへ行ってベルサイユ宮殿に入ってくる。ああ、ベルばら。特にオスカル様が好き。ああ、オスカル様。私の初恋…(我に返る) まてや。いくらベルナイルでも、アンドレもロザリーもフェルゼンもベルナールもこの世界にいるな。それからイズミル王子もメンフィスも、ついでにキャロルもおるやろな、ははっ(もっと我にかえって)私て、いったい何者や、ほんで、どうなるんや?
マリー:(心配そうにしている)女王陛下
修:(冷静になる)あんたがマリーアントワネットンやったら、本物のフランス女王はどこにおるんや。つまり普通のマリーアントワネットさん。ネットン、ちゃうで、ネット。ネットッ!
マリー:女王陛下は私の名前を間違えたうえに偽物扱いでひどうございます(泣く)
修:私かて、泣きたいわ。いや、楽しみたいわ…どないしよ
マリー:女王陛下…しっかりなさいませ
修:ほい。しっかりしたで
マリー:ああ、よかった
修:やっぱしオスカル呼んできて。じじいオスカルやったらすぐ追い返すけどな
マリー:はい(いったん、舞台から消える)
修:ああ、ドキドキやわ。オスカルさま…どきどき、どきどき
(コンコン、とノックの音。修仁戸は飛び上がる。髪の毛を余計に手櫛でくるくるにして、かわいこぶりっこの仕草、声も裏声でかわいくしようと精一杯の努力をする)
修:はぁ~いぃ~
(舞台の暗がりから近衛兵が宮廷風のお辞儀をする)
修:ああっ、あなたがオスカルさま? さあ、早く顔を見せて
(顔をあげさせるとオスカル風に男装したマリーだった)
修:えっ、あんたさっきのマリーアントワネットンやがな、せやろ? な?
オスカルマリー:(キリッとして)いえ、私はオスカルフランソワン、近衛兵連隊長でございますっ
修:オスカルフランソワやのうて、オスカルフランソワンか…気ィ抜けてきた…
オスカルマリー:(キリッとして)女王陛下、いかがなされましたか
修(介抱してくれるが嬉しくない、力なく質問をする):いや、もしかしてあんた、アンドレ知ってるか?
オスカルマリー:アンドレンのことですか
修:アンドレやのうて、ここではアンドレンか…目ン玉まだ二個ある?
オスカルマリー:一個ですけど
修:ふーん
オスカルマリーアンドレンを呼んできましょうか
修:それもあんたが黒いカツラかぶって片目隠して来るんやろ、もうええわ別に
オスカルマリー:(急に顔つきも態度も変わる)やれやれこっちこそ、もうええわ。やっとパウダーの効果が切れてきたか、もうつかれたわ
修:は? パウダーってなんやのん? なんのことやねん?
オスカルマリー:さっさとベッドに帰ってもっかい寝るわ。別の場所と人のところに行くわ
(オスカルマリーはベッドに向かう、修は驚いて制止する)
修:はぁ? どういうことやねん
オスカルマリー:(横になる)ワタシ魔法使いから魔法パウダーベルばら編を買ったけど、どうやら配合ミスらしい。多分間違えられたと思うわ
修:待って。まだわけがわからへん。あんた、最初に私のこと、女王陛下と呼んだがな、それがなんでや
(ベッドカバーをかけて寝ようとするオスカルマリーを制止する)
オスカルマリー:だから間違えられたんや。私がマリーアントワネットになってフェルゼンに会ってみたいと願ったのに、変な小間使い役やらされてるあ~よう考えたらベルナイユもな、元々その魔法使いがベルサイユのばらの原作自体読んだことなかったと思うわ。王家の紋章もな、題名だけ知ってたんとちゃうか
修:魔法使いてどこにおるん? なんでアタシがここ。あっあんた、まだ寝たらあかん、
(寝ようとするオスカルマリーとまだ事情が呑み込めない修仁戸とベッドの上で取っ組み合う)
オスカルマリー:お~ね~む~り~
修:ちゃんと説明せえやぁ。なんでワタシがここにおるんやあ
オスカルマリー:知らんがなあ。私かて、ベルばらと王家の紋章を枕元に積んでいたら魔法使いが現れてここに連れられたんやああああ
修:そういや、枕元のすぐ手の届くところにワタシもベルばらと王家の紋章の本を置いてるわ。いつでも読めるようにな
オスカルマリー:あ、それ私も一緒や。偶然やが異世界ルールで何か知らんけど引き合ったのかもしれんな
修:でも、あんたのいう魔法使いなんやねん。それに私はそんなんに会ってへん
オスカルマリー:不思議ねぇ。仲間がいたら面白そうとは思ったけどそれで波長があったのかも。でも起きたらなんやいつの間にか、小間使い役で名前もセリフもすらすら出てくるねん
修:その衣裳は
オスカルマリー:そこの、ろう下にあるよ。着替えよ、って思うだけでぱっと変わるねん
修:あんたちょっとウシロ向いてみ
(オスカルマリーは後ろを向く。ちゃんとベルばらの近衛兵ぽくなっている)修:うん、ちょっと背が低いけどわりとカッコええで。まあよう考えたらめったにでけへん経験やなあ
オスカルマリー:だんだんと頭が冷静になってきた。それに過去の話も思い出してきた……ということは、目が覚めてきたのかも。いや、逆やこれ。眠くなってきた
修:そういうことやったら、もう一回寝ると直るのかも。だったら
オスカルマリー:だったら
修:もうちょい正しいベルばらの世界に浸れるかもよ
オスカルマリー:……よっしゃ。一緒に寝ぇへん?
2人がっちりと手を取り合いベッドを見る
修仁戸&オスカルマリー:魔法使いでもなんでもいいや。異世界でもなんでも。正しいベルばらの世界で華々しく暮らしてみたい。フランス革命前の豪華な世界を探検したい
オスカルマリー:ロザリー役がいいな。オスカルに甘えられるもん
修:あ、そうか、じゃあ私はオスカルのお母さん役にしよう。オスカルの髪を撫でたいな
オスカルマリー:それやったらアンドレなんかどお? オスカルとキスをしてそれから
2人とも恥ずかしくなってきゃあきゃあいう。それからも急に眠気が出る
修仁戸&オスカルマリー:ああ眠い…寝るか
2人笑いあってベッドに並ぶ
ベルばらの歌を歌いあう
♪ 愛それは甘く
愛それは強く
愛それは尊く
愛それは気高く
愛、
愛、
愛
終幕