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どこへ行くのだろう、と思っていると、その近くに会社の会議で使うような、大きなホワイトボードがあるのが見えた。
藍は、それをうんしょうんしょと言いながら引っ張って来て、皆を見回した。
「じゃあ、ここに情報が出たら書いて行くね。最初に、オレに対抗しようって人、居ないね?」皆が黙って顔を見回している。藍は頷いてから、続けた。「オレとしては、最初に役職を出した方がいいと思うんだけど、どう思う?占い師と霊媒師、狩人と猫又が居るよね。何を出したらいいとかある?オレはねえ、とりあえず占い師かなあ。確かこの村、狩人の連続ガード有りだからめちゃ有利なんだよね。」
「はい。」久司が、手を挙げた。「オレが占い師だ。」
すると、慌てたように美沙子が言った。
「え、もう出るの?私が占い師よ。確か、二人居たのよね?」
すると、充希も手を挙げた。
「はいはい!こんなに早く出るとは思ってなかったから驚いたよ。オレが占い師。結果言う?」
「ちょっと待ってよ、今名前書いてるから。」と、藍はホワイトボードに向き合いながら言った。「他に居ない?」
「はい。」落ち着いた声が言った。「私よ。私が占い師。」
美久だ。
結構キャリアウーマンタイプの二人と、落ち着いた様子の男性二人が出た。
出方だけでは、誰が真なのか分からない。
志乃は、思った。
例えば久司は真っ先に言ったので真っぽいと言う人も居るかもしれないが、出ると決めていた人外の可能性もある。
最後に出た美久が怪しいという人も居るかもしれないが、人外のCOを待っていただけの、真占い師かもしれないのだ。
藍は、出て来た四人の占い師候補たちの名前を順に書き終えて、言った。
「じゃあ、一番最初に…いや、最後にCOした美久さんから結果をお願い。」
美久が、頷いた。
「私は、将也さん白。」
藍は、頷いた。
「次、充希さん。」
「充希でいいぞ。」と、充希は続けた。「オレは、正俊が白。」
藍は、また頷いて続けた。
「次、美沙子さん。」
美沙子は、答えた。
「私は、冬也さん白。」
冬也が、少し驚いた顔をした。
自分に結果が出ているとは思っていなかったのだろう。
藍は、最後に言った。
「じゃ、最後は久司さん。」
久司は、言った。
「オレは、涼次が白。」
藍は、それを全部書き終えて、言った。
「ってことは、この四人と白が出た四人、それにオレ以外の11人が今、グレーってことだよね。で、その中にはオレの相方の共有者一人と、狩人と猫又の三人と、霊媒師二人が混じってる。実質、完全グレーはこの中には5人になるけど、全部役職を出すわけにはいかないからなあ。偽の二人の占い師に囲われてる可能性もあるしね。」
相良が、言った。
「だが、今日の投票先はグレーが妥当ではないか?狐が二匹も居るので、占い先は指定になるだろうし、お互いの白先を入れて対策しながら、グレー精査を勧めていくしかない。呪殺が出たら、その真占い師を残して残りを全て吊り切るのも良いかもしれないな。」
京太が、驚いた顔をした。
「え、占い師は二人真が居るのに?」
相良は、頷いた。
「残りの三分の二で人外が吊れるからな。真は一人居たらとりあえず何とかなる。連続ガードがあるから、その占い師を守り切って行けば勝てるだろう。もちろん、二人真が分かればそれに越したことはないが…狐が二匹だからと、二人共呪殺は難しいかもしれないしな。何しろ、猫又も居るので後半になるほど判断が難しくなる。」
言われてみたらそうだ。
今なら、まだ呪殺が出たら分かりやすいかもしれないが、猫又も居る中で猫又噛みと呪殺が分からりづらくなってしまいそうだった。
藍が、言った。
「霊媒師はどうする?もうさ、二人ずつ居るんだし、狩人は連続ガード有りなんだし、この際出て良いと思うんだよね。占い先も狭まるし。どう?」
皆が、顔を見合わせる。
涼次が、言った。
「…オレ、霊媒師。相方は誰だ?」
「え、オレ。」京太が、言った。「オレが霊媒師だ。出るんだなあ。でも、ローラーされると思ってたけど、大丈夫みたいだな。二人だけだし。良かった。」
藍は、回りを見た。
誰も、出る様子はなかった。
「…そうか、確定かあ。」と、京太と涼次を見た。「二人で確定したよな。どっちか鉄板守りだな。」
「言い切らない方がいいぞ。他を噛み放題になるからな。」
久司が言う。
藍は、頷いた。
「そうだね。守り先は狩人に任せるけど。で、霊能が複数でたら霊能ローラーできたのに、できないなあ。減った完全グレーの中から、やっぱり吊る事になりそうだ。今、役職にオレを含めて七人、白先が四人で…でも役職と白先が重なってるところがあるから10人が今日はとりあえず弾かれるから、残りの10人の話を聞こうか。」と、相良を見た。「じゃあ、相良さんから順番に行こう。これまでで、何かある?」
相良は、言った。
「20人で人外が7人、吊り縄が9つの村だな。今の完全グレーは…この際、敬称は省略させて頂くが、私、睦美、隼人、志乃、拓三、鈴音、寧々、健太、篤史、あゆみとなるな。この中に、猫又、狩人、共有の相方が居るので、実質完全グレーは7人だ。その中に、二人の偽の占い師によって二人囲われていたとしても人外は最低でも3人居る。囲いが発生していない場合はもっと居る可能性もある。ということで、グレーから吊るのが妥当だな。白役職はそれを踏まえて頑張って欲しいと言っておく。で、誰が怪しいと言われても、まだ誰の話を聞いていないので分からない。占い師も、出方だけでは真贋は付けられないし、後から時間があったら話を聞いておきたいと思うかな。今言えるのは、潜伏を選んだ人外が多いなということだ。普通、確定を嫌がって霊媒師に誰か出そうなのに、それがなかった。なので、囲われている人外が多そうな印象だ。もしかしたら、真占い師に占われた中に狂信者も居て、霊媒に出なかったのかなと考えてもいる。まだ分からないがな。もしかしたら、まだ狼と狂信者が繋がってなくて、どうしたらいいのか分からない狂信者が居るのかもしれないな。ま、皆の話が終わったら、また私に振ってもらえばもっと話せるかもしれない。以上だ。」
藍は、頷いた。
「綺麗に整理してくれたから分かりやすい。後で狩人の人はオレにソッと言いに来てね。公表しないから。共有者だけで狩人を把握しておくよ。」
皆が、驚いた顔をした。
そんなやり方があるのだ。
だが、そうしておいたら狩人の守り先も、投票先も狩人を避けることができるので、問題なくなるのだ。
リアル人狼では、時間が多いのでそれができるのだ。
志乃は、藍は頼りになるなあ、と思って聞いていた。
藍は、ドヤ顔で言った。
「えへへ。良い考えでしょ?じゃあ次、睦美さん。」
睦美は、緊張気味に言った。
「ええっと、私はそんなに話が上手くなくて。思ったのは、相良さんは最初から積極的だし人外を探してそうだから白かなって思った。始めの位置なのにすごく考えてる感じがしたわ。そうよね、普通は霊媒師に狂信者が出そうなものだけど、この感じだと出てないのかな?それとも占い師に出てるのかな。そんな風に思います。」
藍は、頷いた。
「じゃあ、美久さんは占い師に出てるし将也さんはその白だから隼人さん。」
隼人は、言った。
「正直分からないから、相良さんはよくそんなに初っぱなから言うことあったなって驚いた。この感じだと占い師に狂信者が出てて狼は全潜伏なのかなとか思ったりしてたよ。霊媒はローラーされるから、狼しか居なかったら出にくいもんな。狐は潜伏は厳しいし、一匹は占い師に出てると考えてるから、もう一匹を探すしかないか。」
相良は、言った。
「それは今夜は君は狐を探して吊りたいと?」
隼人は、うーんと顔をしかめた。
「いや、どっちでもグレーに居るなら吊りたいけど。囲われてたら狐は無理かもだし。」
藍は、頷いた。
「だね。でも、初日から囲うのはとてもハイリスクなんだよね。」
相良が、頷く。
「そうだな。私なら一日何とか堪えてもらって二日目にするな。」
それには、睦美が首を傾げた。
「どうしてですか?」
藍が、答えた。
「だって囲いを考えて初日は特に指定先に入る確率が高いからさ。二分の一で真占い師が居るのに、指定先に入ってそっちを占ったら呪殺されて一発アウトだもんね。二日目からなら結果が出てる先も増えて来て、余程疑われてない限り確率が下がって来るから。オレも、多分二日目から囲うかなあ。」
相良が、頷いた。
「占い師は狐が残っていると思ったら占い先を基本二つ提示されてそこを占う事になるが、初日は大体他の占い師の白先と、完全グレーになることが多いから。囲いを考えてね。それを見越して騙りは二日目以降に囲う事が多いのだよ。」
勉強になるなあ。
志乃は、感心して聞いていた。
拓三が、言った。
「じゃ、次はオレの番だから発言するな。」と、皆が自分を見たので、続けた。「正直、オレはあんまり人狼ゲームをしてこなかったから、今の話は初耳だったよ。でも、確かに初日から囲うのはよっぽど上手い人外でないと次の日の対処が難しいなと今思った。だって、黒が出たり呪殺が出たりするわけだろ?黒なら覆すために何とか話せるだろうが、狐は溶けるから一目瞭然でまずい。最悪、次の日破綻で白を打った方も吊られて終わりだろ。確かに初日は生き残れるけど、ヤバいもんな。だったら、初日は頑張ってもらうって考え方が正しいなって思った。でも、今の状況って霊媒は確定してるし、囲われてる人外が多いんじゃとかさっき言ってなかったか?」
志乃が、慌てて言った。
「ええっと、次は7番の私だったんだけど。」え、と拓三は志乃を見て、あ、という顔をした。志乃は苦笑した。「役職達に囲まれてたから気付かなかったんだね。あの、私もそう思ったんです。囲われたから出て来ていないんじゃないかって。だから、もしかしたら占い師に出ている人外って、今相良さんや藍くんが言ったことを知らなかったんじゃないかな。私もそんなにこのゲームに詳しくないので、初めて聞いたことだったし。」
それには、鈴音が言った。
「え、だとしたらほら、一便で来たからいろいろ話していたでしょ?船の中で。その時あんまり人狼はしないなあって美沙子さん、言ってたよね。そしたら、仕事が忙しいとそんな時間ないよねって美久さんも同意してたの。単純にこの二人が人外だったら、その白先は囲われてるってことになるの?」
隣りの、冬也が言った。
「オレは美沙子さんの白先だが人外じゃないぞ。単純に推測でしかないし、メタ発言だ。それに、露出が少ないからって囲われてるとは限らない。それも推測だろ?逆手に取って全員グレーに潜伏してるかもしれないのに。単純に占い師に狂信者が出てしまったから、狼が潜伏するしかなかっただけじゃないのか?霊媒はローラーされるからな。」
志乃は、うーんと考えながら冬也を見つめた。
五年一緒に居たのに、その嘘を見抜けなかった自分なので、全く分からない。
すると、寧々が言った。
「次は私ね。私が思うに、そういう意見が出て来るのは良いことだわ。これでラインが見え始めたのよ。鈴音さんと、美沙子さん、美久さんは仮に人外でも同陣営ではない。何も知らない村人同士の線はある。志乃さんの意見は、もし先々で囲いが発覚した時に白くなる意見だし。こういうの、覚えておくと後々役に立つと思うわ。冬也さんは…人外置きされるのを恐れた人外とも、腹を立てた村人とも取れるから、今のを美沙子さんを庇ったとは見ないわ。話の流れで、同意してしまうと自分が人外だと言っていることになるから、反論せざるを得なかったと思うし。私の意見は、そうね、志乃さんに同意かな。誰かは分からないけれど、囲われている可能性が高いと思うわ。占い師の真贋は、まだ情報が少なすぎて分からないわ。でも囲いを追うというのなら、白先が確定霊媒の久司さんは限りなく真になるなとは思った。」
物静かそうな人で品の良い言葉だが、結構ハッキリ言っている。
芯の強そうな人だなと志乃は思った。
健太が、言った。
「えっと、僕はあまり分からないんですけど、話を聞いていると、占い師の偽者が、仲間を囲っているのか居ないのかっていう議論になってるんですね?僕は、単純だから、仲間は最初に囲ってしまいそう。このゲームに慣れていたら、相良さんや藍くんみたいに考えられるんだろうけど、あんまり深くしたことが無いから…。だから、僕の意見は囲ってるんじゃないかなって思います。役職に出たら、結構頑張って話せないと後で偽者だって言われそうだし、偽者で出ている人って自信のある人だと思うけどなあ。」
隣りの、篤史が言った。
「だとしたら、ゲームをよく知ってる人って事になるから、鈴音さんの言っている事は通らないか。でも、元々気が強い人ならそういう自信もありそうだし、そう考えたらバリバリ働いてそうな二人は、騙ってるってなるんだけど…外から見てると分からないな。でも、オレもそんなに詳しいわけでないから、ほんとに単純に仲間は囲って吊られないようにしようって考えそうだ。ここのみんなが、どれぐらいこのゲームに通じてるかで変わって来るのかな。」
あゆみが、言った。
「私の番ね。私は、囲ってるとは思ってないかな。もしかしたら、占い師に狂信者が出ていて、霊媒師に狼は出られないしで、仕方なく潜伏しているだけじゃないかって思う。だから、グレー吊りは良いと思ったわ。今の感じだと、メタで占い師を安易に怪しんでる鈴音さんが怪しいなって思った。ちゃんとした理由があったらいいけど。」
鈴音が、え、とあゆみを見た。
「安易にって、そう思ったから言っただけよ。絶対だとは言ってないわ。あなたこそ、安易に囲われてないなんて言ってるけど、理由は何?今話した中に、狼4人と狐二人が居るってこと?だとしたら、ほとんどが人外って事になるけど。」
あゆみは、少しむっとした顔をした。
「だからグレーから吊るのに賛成だって言ったのよ。ほとんど人外に当たるってことでしょ?」
寧々が、言った。
「いえ、だから鈴音さんが言いたいのは、これまで話した中に怪しい人がそれだけの数、あゆみさん目線居たって事なのかという事ではないかと思うわ。私から見ても、そんなに怪しい人は居なかったけれど、あゆみさんがそう判断した理由を聞きたいわ。」
あゆみが、え、と言葉に詰まる。
正俊が、言った。
「ちょっと片白だけど意見言うよ。オレには怪しい所って見えなかったけどなあ。強いて言うなら、今のあゆみさんの意見かな。ここまで囲われてそうだって意見が多かったのに、敢えてそれを否定して鈴音さんを怪しんでるところ。というか、確かに鈴音さんはメタで発言したけど、そこから話を膨らませたのは他の人達だからね。そうなって来ると、他の人も怪しいからあゆみさん目線では人外だらけって事なのかな?」
あゆみは、正俊を軽く睨んだ。
「だから、私も意見を言っただけなの。だって、皆が皆、囲われてるんじゃって言うから、それって人外達が含まれてるって事でしょ?だから、囲われてないって思ったのよ。だって全員が人外のわけないし、人外達がそう言ってるように見えたの。」
藍が、じっとそれを聞いていて、相良を見た。
「うーん、相良さん…もうめんどくさいから相良、は、どう思う?」
相良は、それを受けて口を開いた。




