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そうして、5日間は瞬く間に過ぎて行った。

鈴音と冬也は相変わらず目も合わせることもなく、話し合うこともないようだ。

時々もの問いたげな視線を感じた志乃だったが、いつも藍と正俊と一緒だったので、話し掛けて来ることはなかった。

志乃は、いろいろあったが、来て良かった、と思っていた。

冬也が本物のクズなのだと分かったこと、鈴音が同じクズだったこと、そんなことはもう、別に志乃はどうでも良かった。

こうして、また笑って楽しむことができるのだと分かっただけでも、志乃にとっては収穫だったのだ。

最終日、迎えの船が波止場に止まっているのが見えた時、もう終わるのかととても残念な気持ちになった。

藍とも、もうすぐお別れだ。

よく考えたら、ここではネットも繋がらないので、藍のSNSのフォローもできていなかった。

帰りの船の中で、電波が復活したら言ってみようと思って、メイド達に促されるまま正俊と一緒に船へと移動して、皆が乗り込むのを待っていた。

皆が乗り込んで来て、満員の状態で藍を待っていた志乃だったが、いつまで経っても藍は来ない。

どうしたんだろう、と思っていると、船が桟橋から離れ始めた。

「え…?」志乃は、回りを見回した。「藍くんがまだよ?!」

正俊が、え、と驚いた顔をした。

「え、志乃さん聞いてないの?藍は、相良さんから仕事を頼まれたから、もう後数日ここに残って手伝うって言ってたよ。二人共医者だからさ、何かできることがあるんだろう。」

ウソ…?!聞いてない!

志乃は、藍の連絡先も、よく考えたらフルネームすら聞いていなかった。

正俊は、まあまあ、と志乃をなだめた。

「そういえば、藍が志乃さんに資格取得頑張ってねって伝えてって言ってたな。一緒に帰らないこと、言ってあると思ってたのに。」

話している間にも、どんどんと船は進んで、島が遠く離れて行く。

回りの皆は、それは楽しげにあちこち写真を撮ったりして、日焼けした顔で笑って志乃と正俊がそんな話をしているのにも気付いていなかった。

「…藍くんの連絡先は?知ってる?」

正俊は、首を振った。

「いや、ここじゃ電波が届かないし、アカウントも忘れたって言うし。あっちから連絡するから待っててってさ。オレのアカウントは知らせて来たから、連絡来たら志乃さんにも知らせようか?」

志乃は、何度も頷いた。

「お願い。私、まだちゃんとお礼も言えてないの。あれだけお世話になったのに…。」

島は、もうほとんど見えなくなった。

志乃は、もう会えないわけではないと正俊と連絡先を交換しながら、それでももう会えないのだと、どこか絶望した気持ちも沸き上がって来て、涙が溢れてくるのを我慢するのに苦労したのだった。


「…良かったのか?」相良が、建物の窓から船を見送りながら、言った。「君はこうやって見送るばかりだ。あの子が気の毒だから連れて行ってやりたいって言ったのは君だろう。」

藍は、肩を竦めた。

「いいんだよ。別に好きなわけでもなかったし。ただ、あんな男に引っ掛かって悲しんでたのがかわいそうだなって思っただけなんだ。君こそ、見送ってばかりじゃないか。それで良かったの?」

相良は、笑った。

「あの中の何人が私とまともに話せたのだ。そもそも、これは別に実験のためではなくて、お母さんがもう一度リアル人狼ゲームを死ぬまでにやりたいと言ったからだ。あれで、もう78になるのだ…私が不甲斐ないから、見た目だけで中身まで若返らせることができないせいで。体力がない。」

藍は、ため息をついた。

「そうだね。」と、相良を見た。「…君は、いつまでこんなことを続けるの?(あらた)。君のお母さんは、今回のゲームを通してもっとお友達ができたらって言ってたよ?でも、またこうしてこの島でゲームするだけして、結局返してしまうんじゃないか。あの薬も、使ったんでしょ?」

新は、フッとため息をついた。

「…章夫。私は、それでいいと思っているのだ。真に理解し合える友など、一人でも居たら良い方だと思っている。ここは、あちらという下界と、私達の居るこちらの世界の、狭間の場所なのだよ。ここで一時、共に夢を見ることはできるが、結局は違う世界の住人だ。私がわざわざこんな島まで連れて来るのは、下界から彼らを引き離して私達の場所に近い所で共に楽しめればと思っているから。だが、結局はあれらは、自分達の場所へと帰って行くのだ。君のように、薬に抗ってまで覚えていて、私に追いつこうと医学部にまで転向して通うほどの、気概などない。本気で理解しようとしない、できない者達との交流など無意味だ。それとも君は、あちらとこちらを行き来して生きようとでも思っているのかね?それが、可能だとでも?」

章夫は、言われてう、と唸った。

確かに考え方も、考える速度も違う者同士、新にとってはストレスも多い場所だろう。

だが、章夫には生まれ育って来た場所でもあるし、多くの仲間がまだあちらで生きている。

新の事は好きだったが、完全にあちらと切ってしまおうとは、今は思えなかった。

「…僕には、まだ友達も居るし。確かに、新と接するようになってから、ちょっと話が合わなくなっては来てるけど…でも、紫貴さんは元々向こうの人じゃないか。君のお父さんだって、君よりずっとこちら側の人間だったって聞いてるよ。それなのに、君はあちらと関わらないでおこうと思うの?お母さんが心配してても?」

新は、苦笑した。

「お母さんは特殊な例だ。もちろん、私の異父兄姉たちだって、あちらの人間。それでも、あの人達は私を理解しようと努めてくれるし、今も傍に居て支えてくれる。だから、同じにしないで欲しい。君だってそうだろう。あの時共にゲームに興じた者達が、誰か私を覚えているのかね?」

章夫は、それでは寂しいだろう、と思った。

新の父の友だという要に聞いたことがある。

彰も、こんな風で誰の事も寄せ付けない様子だったと。

だが、要がしつこいほど話をして傍に居たら、いつの間にか分かり合えるようになっていて、気が付くと彰は、下界の住人達とも時々プライベートで会う事もするようになったと。

頑なな新のことは心配だが、それでも章夫は希望を持った。

自分が、新のために下界との架け橋になろうと。

「…分かったよ。君の気持ちはね。でも、僕は相変わらず下界の住人だし、煩く言うかもしれないよ?あっちとこっちを行き来してみせるよ。君があちらへ気が向いて行こうとした時のためにね。」

新は、あからさまに嫌な顔をした。

「私が?無いと思うがね。ま、君がそう言うのなら、好きにするがいい。それより、帰る準備をしよう。メイド達が片付けを終える頃だ。私達はここから最寄りの港へ行って、そこから飛行機で帰ろう。」

新が、窓に背を向けて歩き出した。

章夫はそれについて行きかけて、もう一度窓の方を振り返ったが、そこにはもう何もない、ただ大海原が広がっているだけだった。



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人狼  将也、美久、健太、篤史

狂信者 睦美

狐   久司、涼次

共有者 藍、志乃

占い師 充希、美沙子

霊媒師 京太、あゆみ

狩人  拓三

猫又  相良

村人  隼人、冬也、鈴音、寧々、正俊

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。

他の物語の方も書いていたので、駆け足になってしまいましたが、明日からは新しいお話、「囚われた獣に心はあるか」https://ncode.syosetu.com/n0822ht/が始まります。

ダイスを振りながら考えたり、あまりにあっさり終わりそうだと少し変えたりと進めるので、簡単に終わってしまう事もありまして、人狼ゲームの展開には毎回苦慮しておりますが、次もがんばります。

よろしくお願い致します。

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