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五日目の朝だ。
どちらにしろ人外が、狐一匹、狼二匹、狂信者一人が必ず処理されたことが分かったので、残りは狐一匹、狼二匹の三人外ということになる。
初日から村目線で狼を探していた久司を、真置きしていた相良にとって、昨日からの思考の変更は難しかったが、しかし気付いてしまったのだ。
もし、狐が初日に囲って相手を役職に出してしまえば、占われることがなくなる。
基本、役職を精査するのはどうしても後になるし、占われさえしなければ、どちらかが生き残れる可能性がある。
白くなっていれば、言い逃れができる可能性が生まれるのだ。
人狼ゲームでの、狐は不利だ。
何しろ、占われたら有無を言わせず消えるしかなく、グレーに潜伏していても、毎日占いに怯えていなければならない。
いくら白い発言をしていても、占い一発でもう、終わってしまうのだ。
だが、役職に出ていれば、露出はするが発言次第では生き残れる可能性がある。
久司が狐なら、それを考えてやった可能性は、確かにあった。
それに思い至って、もし久司が真だった時のために久司本人を占わせるのではなく、確定したら楽になる霊媒師の方の涼次を占わせてみた。
自分の考えが合っているなら、絶対に呪殺が出ると思ったからだ。
呪殺が出たら、久司は破綻するので偽が確定する。
そうであって欲しくはないと思う反面、それしかないだろうと思われた。
涼次と京太の二人を指定したのは、久司を油断させるためだ。
その二人なら、久司を相方だと思っている充希なら、白先ではなくグレーの霊媒である京太を占うと信じていただろうからだ。
そうしておけば、久司は呪殺が起きた時の対応を真剣に考えなくてもいい。
もし、涼次を占えと目の前で言ってしまえば、必ず呪殺が出るのが久司目線で分かるので、何とか誤魔化せないかといろいろ対策を考えるだろう。
それをさせないために、こうしたのだ。
お蔭で、久司は事態が発覚してから、恐らく何となく考えていた対策を、事前準備もなくいきなり出して来たので、苦しい言い訳になっていた。
真占い師が、指定先以外を占うなど、狐の居るこの村で、あり得ないことなのだ。
それとも、確白である相良が信頼しているので、少々大丈夫だと侮っていたのだろうか。
…久司の性格だと、侮っていたように思う。
あんな発言をして、相良が飲むとでも思ったのだろうか。
占い指定先を無視しても、少々大丈夫だろうと。
だが、いくら古くからの知り合いとはいえ、ゲームに関して妥協する気はなかった。
村勝ちが目指して決めたことを、勝手に違えるのはそもそも間違っている。
相良は、そう思いながら話し合いの場へと向かった。
朝食は、摂らなかった。
降りて来ていなかったのを知っている寧々は、椅子に座りながら心配そうに相良を見たが、相良はあいにく、そんな気持ちではなかった。
なので寧々とは視線を合わせず、ホワイトボードに向き合って、皆を見た。
「…五日目、11人生存。後5縄だ。今朝の犠牲者は涼次と正俊の二人。充希が涼次白、久司が正俊白で、霊媒結果は黒。将也は本人が言った通り、また充希が言った通り狼だった。どちらかで呪殺が発生しているので狐も一処理できた。今朝までに人外は狼2、狂信者1、狐1の合計4処理できている。残りは狼2、狐1の3人外となる。狩人は充希守り。では、今日の議論を始めよう。」
拓三が、真っ先に言った。
「久司さんがおかしい!呪殺が起きた時のためにわざわざ毎晩指定しているのに、それ以外の所を占ったなんて信じられるはずがない!普通に考えて、狼が狩人狙いで正俊を噛んで、充希が涼次さんを呪殺したんだ!それしか考えられない!涼次さんが狐だ、初日に囲われて霊媒ローラーされないことに掛けて騙ってたんだよ!」
充希も、頷いた。
「なんなら今夜久司を占ってもいい!絶対また呪殺が出るはずだよ!」
久司が、言った。
「仕方がない。何を言われてもオレが指定を無視したのは確かだからな。真だと自分目線じゃ分かってるから、少々大丈夫だろうと思ってしまった。充希が狐でも、狼をも騙して黒出しを連発できるとふと、思ったんだ。美沙子さんは死んでいるし、オレみたいに間が差して別の所を占っていてももう、わからないしな。だから正俊を占った。」
相良が、険しい顔で言った。
「それなら、なぜその思考を議論の場で落とさなかったんだ。そうしたら、指定先を考慮しただろう。勝手に何の前触れもなく占い先を変えるのは、人外利しかない。私は拓三の意見に賛成だ。充希に占わせるまでもない。充希には黒を探してもらわねはならない。今夜は君を吊るつもりだ、久司。」
寧々が、言った。
「では、今夜は久司さんで決まりなのね?なら、狼の話をしましょう。普通に考えて久司さんが涼次さんを囲っていたのだから、涼次さんが狐だと判断した今、久司さんは狐。美久さんが狼だから、占い師は美沙子さん、充希さんだったと分かったわ。霊媒師は残っているあゆみさん、京太さんが真確定。となると、充希さん、美沙子さんのグレーの中に二狼ということよ。充希さんのグレーは現在、私、拓三さん、冬也さん、健太さん、篤史さん、隼人さんの6人だけど、その中で美沙子さんの白は冬也さん、隼人さんの2人。残り私、拓三さん、健太さん、篤史さんの4人だから、全員吊りきれば勝ちよ。仮に充希さんが襲撃されても縄は足りるわ。ギリギリだったけどね。」
拓三が、ホッとしたような顔をした。
「…良かった。もう村勝ちだな。」え、と皆が拓三を見ると、拓三は言った。「オレが狩人だ。多分今夜噛まれるが、充希もオレも居なくても村は勝てる。縄は充分だ。オレが除外されて、残り3人4縄だからな。狼は残念だったな。」
相良が、ため息をついた。
「なんだ、出るのか。今夜冬也を噛ませて護衛成功させようと細工し始めていたのに。皆の前で声を掛けたりしてな。」
冬也は、驚いた顔をした。
「え、朝のあれか?」
疑われているのかと勘繰っていた。
相良は、苦笑した。
「君は寡黙位置だしそれでもここまで疑われて来なかったので、絶好の狩人位置だと思ったからな。もちろん、真狩人拓三だと私は知っていたが、狼は知らない。だからだ。」
寧々が、ふうと肩の力を抜いた。
「だったら私目線では狼は健太さんと篤史さんで確定よ。明日は私から吊ってくださってもいいわ。疲れたし、少し休みたいの。そうだ、だったら今夜は充希さんに久司さんを占わせてもいいんじゃないかしら?今夜私を吊って、呪殺で処理するのよ。確実に狐だと分かるでしょ?そうしましょう。明日明後日で健太さんと篤史さん。それで終わりよ。」
それを聞いて、久司がうんざりしたように両手を上げた。
「あーあ、投了だ。オレが狐だ。もう勝ち筋はねぇ。もう狐だった時にゃ無理だから奇策に出ようと思ってな。涼次と話し合って、賭けに出た。霊媒が3人だったらローラーされないだろうし、吊られるにしてもオレが真目をとってたら白が出てるから遅れるだろうと。まさか占わせるとは思わなかったよ。占うにしても、もっと後だと思ってたし、気付いた時には間に合わねぇかと。狼が運良くオレの占い先の美沙子さんを噛んでくれたから、上手く行くかと思ったのになあ。しくじった。相良はいつまで経ってもまだ信じてないとか言うし。最初は上手く行ってたのによー。」
相良は、チラと久司を見た。
「盲信はしないのだよ。充希のようにあからさまに真でないとな。とはいえ、霊媒に狐は盲点だった。もう少しでヤバいことになるところだった。その点では、将也に感謝だ。」
健太が、肩で息をついて、言った。
「だからまだ早いって言ったのに。」と、篤史を見た。「将也が出ることなかったじゃないか。僕言ったよね?気付いてないんだからもう一日遅らせたらって。将也吊りは仕方ないけど、僕吊りは一日猶予あるだろうから、その時にCOして狐を処理させようって。縄が足りなくなるかもだったのにさあ。」
篤史は、顔をしかめた。
「仕方がない、こうなってしまったんだ。もうどう足掻いても勝てない。せっかくお前と対立姿勢とか反対意見出してやってみたのにな。」
やはり二人が人狼だ。
相良は、言った。
「…投了するのか?」
篤史が、頷いた。
「仕方ない。もう縄が足りてるからな。今夜オレ、久司呪殺、明日健太で。それが最速だ。」
すると、モニターがいきなりパッと着いた。
皆が驚いて見上げると、声が響いて来た。
『狼、狐は投了しますか?』
篤史は、思わず健太を抱き締める。
久司が、頷いた。
「ああ、投了だ。もしかして時短処理できるのか?」
声は答えた。
『はい。狼は投了しますか?』
殺される。
健太は震えていたが、篤史は抱き締める腕に力を入れて、頷いた。
「する。もう勝てない。」
すると、しばらくモニターは黙り、そして言った。
『…狼、狐が居なくなりました。村人陣営の勝利です。』
…何も、起こらない。
篤史は、健太を抱き締めたまま、呆然と言った。
「え…?オレ達は、どうなる?」
久司が、面倒そうに言った。
「だーかーらーほんとに死ぬと思ったのか?犯罪だぞ?死なねぇっての。みんなちょっと死んだみたいに寝てるだけ。」
拓三が、呆然と久司を見る。
「え、なんで知ってるんだ?」
「私達が運営側だからだ。」相良が答えた。「こうでもしないと本気にならないだろうが。君達は参加確認書にサインしたのではないのか。内容を読まなかったのか?滞在中は健康管理を万全にし、医師のもとで薬品を使うこともあると。私がその医師だ。誰一人死んでなどいなかった。ちょっと死んだように眠っていただけだ。」
相良もか。
そこに居る皆が茫然としている中で、モニターの声が続けた。




