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結局、昼からは充希のグレーの話を聞く、と相良は宣言し、それまでに考えをまとめておくように言って、朝の会議は早めに終えた。
一人になって考えたかったのだ。
相良は、一人居間の窓辺のソファに陣取って、考えに沈んでいた。
充希の占い結果は、初日正俊白、二日目睦美白、三日目美久黒、四日目の今日、将也黒だ。
その結果が正しいことは、霊媒師達と将也本人が証明してくれた。
そして、充希のグレーは隼人、拓三、冬也、健太、寧々、篤史の6人で、拓三が狩人なのは相良は知っている。
相良の考察で隼人は昨日、目立つ票を入れているので白く見え、寧々は何よりよく知っている人なので、メタではあるがあの考察の仕方は白く見える。恐らく、村にもそう見えているはずだった。
そうなると、冬也、健太、篤史の三人の中に二狼、もしくは一狼一狐。霊媒に一狼か一狐。
問題は、これまで村目線で行動しているように見えた、久司の真贋だった。
ここで久司も真だということが証明されれば、一気に久司の白である、涼次、美沙子の白が見え、健太の黒が確定して残り一狼、そして狐を探すために二人で占うことができる。
だが、まだそれを信じ切る事はできなかった。
何より、狼である将也がわざわざCOしてまで言いたかった事は、美沙子を襲撃したということだった。
狼目線でも、まだ真占い師の一人が分からない状態なのだ。
美久が狼だった以上、久司は狼ではあり得ない。
もしも人外なら、狐だろうと思われた。
そして、霊媒師は一度ローラーを免れたら強い、占われないと将也は言った。
もちろん、仲間が出ていてということも考えられたが、狐が居るからとしたら…?
もしも、それが涼次だとしたら。
久司が狐で相方を囲い、霊媒に出させて相互占いになっても対象に上がらないようにしたとも考えられた。
ローラーされたら一巻の終わりだが、そこは二霊媒居るので安易に吊らないのに賭けたのだろう。
実際、霊媒は三人残っている。
そう、三人残っているのだ。
狼には、狐が分からない。
安易に噛んで、護衛とあわせて三分の一でしか襲撃が成功しない上縄が増えるのを、恐れたからではないだろうか。
そうだ、どうして気付かなかった。
相良は、思った。
だから霊媒は誰も噛まれず残っているのだ。
そう考えたら、スッキリする。
…では、久司は一気に怪しくなる。
相良は、美沙子が真だった時の事を考えた。
美沙子が真ならば、冬也、隼人は白。
美沙子と充希を合わせたグレーは、寧々、健太、篤史だ。
この三人を占えば、色が見えて来るはずだった。
だが、実際に皆に話す時には、拓三も入れて話さねばならないので、忘れないようにしなければならない。
相良は、とにかく慎重に進めよう、と思っていた。
皆、昼食を終えてわらわらと居間へと集まって来るが、その表情はぎこちない。
どうやら、疑心暗鬼になってしまっているようで、お互いに人外ではないか、と滅多な事は言えないと、警戒しているようだった。
相良は、じっと皆を観察しているふりをして、健太、篤史、そして念のため寧々も見ていた。
健太と篤史は、二日目から少し、違う意見を出していて、篤史が健太を咎めるように思考ロックを注意したりしていたが、あれももしかしたら同じ陣営ではないという印象を与えるための伏線だったのかもしれない。
もっと注意してみておかねばと、相良は集まった皆に向かって、口を開いた。
「…では、今夜の吊り縄は、狼COした将也にする。これから、狐の呪殺などが出て縄が一気に減ったりした時に、対処が遅れる可能性があるからだ。では、先ほども言ったように、充希のグレーである隼人、拓三、冬也、寧々さん、健太、篤史から話を聞こう。久司のことは、一旦保留にしようと思っている。では、隼人から。」
よく考えたら、昨日あれだけ反抗していた隼人が、今日は静かだ。
良く見ると、隼人はガックリと項垂れていて、顔は一回り老け込んだような顔をしていた。
「…オレは、もう自信がなくなったんだ。今朝、美久さんが黒だと確定して、志乃さんが死んでた時点で。睦美さんが、真共有者だと心底信じていたんだ。何しろ、あの子は泣きながらずっとオレに訴えて来てて、だから…。」
隣りの席の将也が、気の毒そうに隼人を見た。
「お前、騙されやすいんだな。あの子は、オレ達が言う通りに動いていただけだ。美久さんが黒い志乃さんに黒を打つと決めた時、もしも潜伏共有だったらと悩んだ。だったら、吊られても色が白しか出ない睦美さんなら問題ないと、夜に話し合ってな。藍が狩人に相方の事を話していたら終わりだったが、賭けに勝ったよ。で、あの子は議論がからっきしだったから、とにかく情に訴えろって言ったんだ。そしたら、お前が引っ掛かって来たってことさ。」
隼人は、言われてまたガックリと肩を落とした。
相良は、言った。
「…という事は、隼人は白だな。」え、と将也がこちらを向いたので、相良は淡々と続けた。「そう、今君が言ったのではないか。演技でない限り、隼人は何も知らなかった村人なのだろう。どちらにしろ、この様子ではまともな意見を言えそうにないし、次、拓三。」
拓三は、頷いた。
「オレは、初日から結構村のために発言してたと思うんだ。意見を求められなくても、折々に割り込んで話してた。」
相良は、頷いた。
「それはそうだ。印象は白いが、今の状況を見てどう思うか聞きたいのだ。」
拓三は、続けた。
「そうだな。オレは、充希の真が分かってホッとしたが、まだ久司が真だとは思い切れてなくて。というのも、この状況で将也が出て来て、わざわざ美沙子さんを噛んだと言うメリットは何だ?狼だって、露出は避けたかったはずだ。確かに、占われて黒が出たんだから、どうせなら出てしまおうってやけくそなのかもしれないが、それでも抗おうと思ったら薄い線でも言えたはず。でも、出て来て話したということは、狼にも狐の位置が分からなくて、探して欲しいという意思じゃないかって思ってるんだ。霊媒師の事についても何か思わせぶりな事を言ってた。ハッキリ言えないのは、多分狼仲間の位置が透けるかもしれないから言えないんだろう。なんか、根本から考え直さないと、狐が処理できない状況になってるんじゃないかって、ちょっと怖くなって来たんだよな。」
相良は、それに頷いた。
「君の言う通り、私も考えている。確かに、狼である将也の言葉は狐を探せと言っているように聞こえた。その位置の事についてもな。なので、将也の事は吊るしかないが、感謝しているのだよ。スッキリしなかった何かが、また流れ始めたような気がしているからな。」
将也が、クックと笑った。
「ま、君は何事にもそつがないから。最後の仲間だけは、見つけさせない自信があるけどな。」
それには、寧々が言った。
「それは、充希さんを噛もうと思ってるってこと?」将也が、驚いたように寧々を見た。寧々は続けた。「狩人を噛み抜いて?難しいわね。でも、狼も頑張っているのだと今回のことで思ったわ。たまたま人外を引いただけなのに。狐なんてたった二人ですもの。では、私が思っている事を話してもいい?」
相良は、少し元気そうな寧々にホッとしながらも、頷いた。
「どうぞ。」
寧々は、頷いて続けた。
「私が思うに、もう狼からは狩人位置が透けて来ているのだと今の将也さんの発言でも思ったわ。だから何としてもラストウルフだけは逃げ切らせようと、狩人らしい所を噛んで来るんじゃないかしら。そう考えたら、明日の占い先は重要よね。最悪あと、一結果しか見られないことになるから。今14人6縄残りで狐はわからないけど、狼陣営は二人処理できた。今夜一縄使って将也さんを吊って、狼2人、狐最大2人に5縄。充希さんのグレーは私、拓三さん、健太さん、篤史さん、冬也さん、隼人さん。将也さんの発言から隼人さんは白っぽいので外したとして5人。明日誰かを占って…と考えたら、霊媒を決め打ちするしかないわね。せめてもう一人の占い師が確定できたら、もっと楽になるのに。」
相良は、頷く。
「その通りです。とにかく、今夜はどうにかして充希には生き残ってもらわねばならないし、生き残れば生き残るほど、村に有利になる。狩人を探して噛むにしても、失敗したかどうかは私は何も公表しないので狼にはわからないでしょう。充希を噛むタイミングを間違えたら、またGJが出るので狼には嫌でしょうし。何度も噛み変えしていられるほど、狼には余裕がない。」
これで、プレッシャーになればいいが。
相良は思ってチラと将也を見る。
将也は、ただ黙っていた。
これ以上村に情報を落としてはと警戒しているのだろう。
相良は、明日の夜は賭けに出るしかない、と思っていた。
恐らく、狼は狩人を探して噛むよりなくなる。
充希は、もし拓三が明日噛み抜かれたら明日までの命だ。
黒を見ても、噛まれたら知らせることはできないが、狐の呪殺だけは分かる。
二死体出るからだ。
なので狐らしい所を今夜占わせるのか、それとも明日占わせるのかで変わって来る。
狼の将也を信じていいのか。
霊媒に出ている狼を保護してあんなことを言っているのではないか?
頭の中はいろいろなことが渦巻いて、珍しく整理がつかなかった。




