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結局、その後の昼の会議は会議にならなかった。
志乃はもう、吊られないことになったので皆の意見を黙って聞いていたのだが、睦美が感情的になって泣きじゃくり、隼人が怒って議論を潰してしまい、話にならなかったのだ。
なので、昼の会議は早々に終えて、もう夜は投票前に集合することになった。
それまで、各自集まって話すのは良いとの事だったので、志乃は、情報を集めないとと思い、相良や久司、拓三、寧々など、自分を真置きしてくれている人たちと、そして正俊と、集まって話した。
拓三はまだ複雑そうだったが、それでも話は聞いてくれていた。
志乃は、言った。
「…最後に話したのは、藍くんが部屋に来た時なの。」志乃は、その時の事を思い出して、言った。「きちんと意見を言わないといけないって。私がここへ来たのは、みんな知っていると思うけれど、その、元彼に騙されていたのが悔しくて、何か一言言ってやらないと気が済まなかったから。藍くんは、ゲームか復讐か、どっちでも良いからとにかく行動しないといけない、って私を諫めたの。だから、私は鈴音さんに話に行って…あのね、鈴音さんが、私と二股されていたのを知らないと思っていたからなの。でも、あの子は知っていた。私が気に入らなかったから、そんなに好きでもない冬也と付き合って、私をあざ笑っていたって聞かされた。とてもショックだったし、腹も立ったわ。それで…感情もあったと思う。鈴音さんに怪しいと言われたら、腹が立ってしまって。つい、あんな風になってしまったの。」
久司が、ため息をついた。
「まあ、分かる。オレと相良は、その時キッチンに居たから聞いちまって。酷いもんだった。罵詈雑言って言ったらあれだろうな。さすがに同情したよ。だから、ああして応酬になっても、仕方ないなって感じ。」
正俊は、驚いた顔をした。
「知らなかったよ。藍は、志乃さんがやっとやる気になったみたいだって聞いてたから。でも、ゲームじゃなくて、そっちの方の事だったんだね。よく考えたら、あれから藍は志乃さんに接しないようにしてたんだ。それが、今思うと不自然だし、もしもの時のトラップのために離れてたんなら分かるなって思った。どっちか頑張れって言ってたんなら、志乃さんがそっちを頑張ろうとしたのを見て、だったらゲームでは吊り対象になるかもしれないなって考えたとしたらああして離れてたのも分かる。そうなんだよ、どうしてそこを考えなかったのかってことだよ。あれだけ一緒に居たのに、最後の半日はずっと離れていたんだからね。」
志乃は、そう思うと藍が自分に気を遣ってくれていたのだと、悲しくなった。
藍に、お礼も言えていないのだ。
「…藍くんには、最初から気を遣ってもらっていたのに。」志乃は、浮かんで来る涙をこぼさないようにしながら、言った。「お礼も言えてない。このまま、帰って来ないなんて嫌だよ。まさか初日に居なくなるなんて、思ってもいなかったから…甘え過ぎてた…。勝って、お礼を言いたいの。」
寧々は、ため息をついた。
「困ったわね。志乃さんの言っていることに、嘘が見当たらないのよ。聞けば聞くほど辻褄が合って来るような感じ。対して睦美さんは全く話さないのが、怯えたふりをして出来るだけボロを出すなって仲間に言われている人外に見えて来て仕方がない。あんなに言われても、結局意見を出さなかったでしょう。狂信者なのかしら…あの感じ。指示通りにしか、動けないように見えるの。」
相良も、頷いた。
「私もそのように。口を開くのが怖いような怯え方でしたね。吊ると言われたら、さすがに何か言いそうなものなのに、結局あの程度で。だとしても、隼人の庇い方はあからさま過ぎて、あれは個人的な感情から言っているように見えました。私としては、疑っているところがありますが、寧々さんはどうですか。」
寧々は、頷く。
「私からは健太さんの偏り方が気になったわ。拓三さんには臨機応変さが見えたので、同じように庇っているのが怪しいとは思ったけれど、今は疑っていない。今残っている完全グレーは、もう私と拓三さん、健太さん、篤史さんの四人でしょう。篤史さんも、最後には意見を聞いて、考えを変えようとしていたわ。迷っている村人のようだった。健太さんだけ、今は気になるところかしらね。白先では、全く話を聞けていない冬也さん、将也さん、辺りかしら。霊媒師は…今は、言わないでおくわ。ややこしいから。」
相良は、言った。
「…やはり寧々さんとは視点が同じかもしれない。私も同じように考えています。」と、久司を見た。「久司、君にはとりあえず、今夜呪殺を狙ってもらうぞ。」
久司は、肩をすくめた。
「へえへえ、お前の指定先だろ?いいぞ、占う。お前さえ狐をオレに指定してくれたらな。だが、単独指定になると噛み合わせて来るかもしれないぞ?大丈夫なのか。」
相良は、フッと不敵に微笑んだ。
「私は当たりをつけているのだ。これまでの発言から、少し考えるところがあった。というか、美沙子さんは完全に聞き役に徹している。まるで、志乃さんと睦美さんのことなど、どっちがどっちでも構わないような風情だ。今回の共有者の争いは、村人と狼陣営の戦いだとしたら…私は、必然的に色が見えて来ると思うのだよ。」
志乃は、びっくりして相良を見た。
言われてみたらそうだからだ。
美沙子は、全く意見を落としていなかった。
久司も、美久も充希も意見を割り込ませていたのに、ひたすら黙って聞いているだけだったのだ。
そう、まるでどっちでも関係ないかのように。
思えば、狐なら狼だろうが村人だろうが、勝手に争って数を減らしてくれたらいいと考えているだろう。
だが、充希と美久が同じ意見で統一されているように見えていたのだが…。
「…でも、そうなって来ると、充希さんと美久さんの連携っぽく見えているんですけど、それは?それなら久司さんだけ、私から見たら白く見えているんです。美久さんは完全に人外で、狐ならこんな敵を作ることはしないと思うから、狼か狂信者だと思っています。でも、美沙子さんが狐だったとしたら、残っている充希さんと久司さんが真だという事になって…睦美さんは狂信者で、美久さんが狼って構図に見えるんですけど…でも、充希さんのあの、融通が利かない感じは、人外っぽいなって。」
拓三は、それを聞いてため息をついた。
「あれはな、多分性格だろう。あいつが真だとしたら、見えてる白が睦美さんだから、人外じゃないって思い込んで、そこへ上手く美久さんが対抗の志乃さんに黒を出したから、どうあっても黒だって思い込んでるわけだ。もちろん、オレ目線からはまだ、君が真なのか分からないぞ?多分君の方が真だろうって予想だけなんだけどな。」
相良が、言った。
「そこも、今夜分かるように占わせようと思っている。上手く指定する。安心してくれ。」と、志乃を見た。「君も、藍に言われたようだが、しっかりした方がいい。あの男は確かに面倒なヤツだ。私は現場を見ているから分かっているが、今はそちらよりゲームに専念してもらえないか。君が確かに真なら、村が滅ぶのを助けていることになるのだ。君がしっかりしてくれていれば、今日共有の真贋で悩むことも無かったし、敵陣営になめられて共有対抗などという奇策に打って出て来る事も無かっただろう。藍は間違っていた。どっちかをやれではなく、今はゲームに専念してくれ、が正しかったと思うぞ。君が真実を言っているのなら、だがね。まだ完全に君を信じたわけではない。状況を見て来て思っているだけだから、全ては明日の結果だからな。」
志乃は、気を引き締めて頷いた。
何しろ、自分は真なのだ。
今日だけでも、信じてもらえたのは、しっかり見ていてくれた相良と、どんな理由であれ自分を監視していた冬也のお蔭かもしれない。
それには感謝して、志乃は明日からどうなるのだろう、全て上手く行ってもらえたら、と願っていた。




