20
きっちり13時に、全員が居間に揃った。
相良が、皆を見回して、言った。
「…今夜の吊り先は、睦美さんにする。」皆が、驚いた顔をした。睦美が震えて来る。相良は構わず続けた。「私自身が初日に拾っていた事と同じことを、拾っていた村人が複数居る事が分かったからだ。藍の相方は恐らく志乃さん。だが、確信がない。それでも、私は自分を信じているので、皆には私を信じて今日は睦美さんに入れてくれ。」
「納得いかない!」隼人が、叫んだ。「初日に何も発言してなかったのは志乃さんも睦美さんも同じだろう!白だった鈴音さんと対抗してたんだぞ?黒も出てる!志乃さん吊りの方が明日分かりやすいのに!」
相良は、言った。
「どうせ志乃さんが白だったら共有はローラーされることになるのだ。そして、美久さんは吊られることになる。だが、今日はもう待っていられないので、占い師同士の相互占いで真占い師を確定させる。その占い師に私が黒だと思う所を徹底的に占わせて、黒を探して吊って行く。必ず今夜呪殺を出させる。だから、今夜は睦美さんを吊ってくれ。」
睦美は、もう涙を流してただ震えていた。
隼人は、そんな睦美を気遣うように見てから、同じ意見だった拓三を見た。
だが、拓三も横を向いてむっつりと黙っていた。
「…そんな乱暴な!猫又の主観で吊ってもいいのか!黒が出ている所を吊った方が先が見えるのに!」
拓三が、言った。
「…初日からのことを考えてみろ。確かに、オレは相良さんから話を聞いたが、藍はずっと志乃さんと一緒にいた。部屋にも来てたし、普通に迎えてたのはオレも見てる。言われてみたら、藍は全く睦美さんには話題も出さずに、視線もくれてなかったからな。共有が出て来る時にもそうだった。しかも、自分を吊ってもいい発言。考えたら、確かに志乃さんの方が共有だと言われたらそうなんだ。睦美さんには、藍との繋がりが全くない。無さ過ぎるんだ。」
睦美は、言った。
「そんなの…!志乃さんは藍くんと一緒に来てたんだから、一緒に居てもおかしくない!それを逆手に取って隠れてた狼なのに!」
隼人は、加勢した。
「そうだよ!そんなの可哀そうだ、大して怪しい所が変わらない二人なのに!」
相良が、ため息をついた。
「…初日のことだ。」皆が、ゴクリと唾を飲む。相良は続けた。「気付いたのは私だけかと思っていたし、共有者の相方は隠すのがセオリーなので何も言わなかったが、共有者に出てくれと久司が言った時、他の皆は共有者を探すような素振りをしていたが、志乃さんは真っ直ぐ斜め下を見て、物凄く緊張した顔をした。そして、藍が出た瞬間ホッとした顔をした。あの時、私は志乃さんが相方だな、と思って黙っていた。だが、それから藍は何も言わないし、投票対象になった時も、敢えて志乃さんをそこに入れていたので、違ったのかとも考えたが、しかし大っぴらに庇うとバレて襲撃対象になる。私でも、ああして自然に対象に入れて、そこへ投票しない選択をしたと思う。なので、私は鈴音さんに入れた。睦美さんからは何も発言がもらえず情報が少なかったし、私目線では共有者と対抗している人に見えたので、鈴音さんがあの中では最黒だったからだ。結果はただの知らない村人だったと思うが、それでも、そう思っていたので今朝は志乃さんが真だろうなと思って聞いていたのだ。だが、主観でしかないし誰もそれを言わないので、皆の意思に任せるかと悩んでいたところに、同じことを見て思っていた人が数人居た。そうなると私だけではないので、信憑性も増したと判断して今日は全く発言に内容が無い睦美さんを吊り対象にした。必然的に、私は今現在、美久さんを疑っている。占い師同士の相互占いで、どう結果が出るのか見たいと思っている。もちろん、美久さんが呪殺を出したらすまなかったと言うしかないが、恐らく当たっているのではないかと思う。どちらにしろ、霊媒師だって噛まれる可能性があるし、賭けなのには変わりない。私は同じ賭けなら、こちらに賭けようと思う。」
美久が、顔色を変えた。
「私が偽だって言うの?間違いなく黒を見たのよ?志乃さんが怪しいのは昨日から変わらないわ。あれだけ白の鈴音さんとやり合っていたのに!」
寧々が、言った。
「あれはお互いに、攻撃されたから攻撃するという応酬だったのだと思うわ。だったら、私からの提案としては、今日は黒を出された志乃さんと、黒を打った美久さんのランでもいいわよ?占い師の数が減った方が精査が楽になるでしょう。誰がどちらに入れるのか見て、明日の霊媒結果で一気に人外が透けるわよ。まあ、美久さんが偽だとして、狼だったらの話だけれど。狐や狂信者だったら、この限りではないけれどね。」
健太が、言った。
「さっきから思うんだけど、寧々さんがとても怪しい。志乃さんを庇い続けてるんだ。相良さんと寧々さんが親しいから、相良さんは上手く踊らされているんじゃない?僕は今夜、占い師同士ではなくて各占い師のグレーを占って黒を見つけて欲しいよ。」
隼人は、頷いた。
「それがいい。順当に黒が出てる所を吊って色を見て、グレーを占わせて黒を見つけて吊って行くのがいいと思う。でないと、村が負けてしまうぞ。」
涼次が、言った。
「待てって。」と、隼人を睨んだ。「どうしてそんなに睦美さんを庇うんだ。まさか美沙子さんが偽で、お前、黒なんじゃないのか。となると、美久さんと美沙子さんが偽で、充希が分かってない真とか。でないと、見えてない村人のはずのお前が、そこまで睦美さんを庇って執拗に志乃さんを吊りたがる意味が分からない。どっちでもいいじゃないか。村人目線じゃ、どっちが真なんか分かってないんだ。美久さんが偽だったら、真共有者を吊り押してる事になるんだぞ。その自覚あるのか?それとも、志乃さんが偽物だって言う、決定的な証拠でもあるのか?お前目線で。」
隼人は、ぐ、と黙った。
恐らく、印象でしかない。
村人目線では、どっちがどっちか分からないはずなのだ。
何しろ、昨日は睦美も志乃も投票対象に挙がっていて、藍はそれを止めなかった。
志乃にはその理由があって、トラップだと言った。
睦美からは、何も意見がない。しかも、共有者であったのに、あれだけ疑われて自分を吊れと言った。
それを、藍は咎めなかった。
感情ではなく普通に考えたら、今の時点では志乃の方が優位かもしれない。
それでも、弱々しい睦美を庇いたいという、感情ぐらいしかない。
何も証拠などないのだ。
相良が、ため息をついた。
「…何度も言うが、これは覆すつもりはない。」と、寧々を見た。「寧々さんも、確かに黒打ちした占い師と、黒打ちされた人とのランはあり得ますが、今回はしません。」
寧々は、頷く。
「あなたに任せるわ。」
相良は、頷き返した。
「今夜は睦美さんを吊る。そして、占い師の相互占いを進める。占い先は私が指定する。狩人にも、護衛先を指定する。後は私が責任を取る。どうせ、私は噛まれないのだ。狼が追い詰められて一人を犠牲にしようと言うのならあり得るがね。その場合、私が間違っていなかったのだと判断して、皆は私が言った事を粛々と遂行して行って欲しい。」
久司が、言った。
「じゃあ、吊り先も決まったしここから先はどうする?もう議論することもねぇんじゃないのか。全部お前が指定するんだろ?」
相良は、頷いた。
「その通りだ。ここからは、グレー精査をしたいと思っていたが、それらしい所が私には見えて来ている。村が真っ二つになって来ているので、明日の結果次第でそこは恐らくピンポイントに指定して行けるだろう。一番の課題は、霊媒師だったが、それも少し見えて来たのだ。」
皆がびっくりした顔をした。
あゆみが、言った。
「もしかして、私が偽だと?」
相良は、苦笑して首を振った。
「君が偽だとは、実は最初に出た時以降、思ってはいない。直後は吊り逃れかと思った。だが、他の二人の行動などを見ていて、少し疑わしくなって来た。私は、藍の事もあるので狩人には私の考察を話しておこうと思っている。明日以降は、確定させた真占い師に話しておく。仮に噛まれても、私の意見は残る。そういう仕組みにしておくつもりだ。ま、明日には狼は、私を噛む余裕などなくなって来るだろうがね。全てが白日の下に晒される事になるのを願っている。」
そんなに分かるものなの。
志乃は、信じてもらっていてなんだが、そう思った。
だが、相良は自分がそう思っていても、確実になるまで会議で口にしない。
それは、志乃の事でも分かった。志乃を何となく庇っていたのも、恐らく初日の事があったからだ。
だが、自分だけが気付いていた事では説得力がないので、言わなかった。
それが、冬也が口にしたのを聞いて、自分だけではなく複数がそう見ていたのを知り、確信をもって志乃の方を信じようとしてくれているのだ。
今も、恐らく思っていることがたくさんあるのだろうが、自分だけの思考なので言わないのだろう。
それでも、もしもの事を考えて、藍の二の舞にならないように、狩人には言っておくと言っているのだ。
志乃は、このまま皆が、間違えずに居てくれたらと、心底願っていた。




