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相良が、言った。
「…まず、あと縄は8。恐らく人外は一匹も処理できていないので後7。今日吊り間違ったら後がなくなる。とはいえ、こうなって来ると占い師の真贋は重要で、黒を出して来た美久さんが真なのか偽なのかを判断するには志乃さん吊りが安定だ。霊媒師がいくら噛まれても真は二人居るので、一人は残る。問題は、霊媒が噛み抜かれた場合、もう一人と偽物が別の結果を出した時、どちらが偽なのか判断しなければならないということだ。仮に残ったのが京太とあゆみさんだった場合、村人が京太を信じてしまいがちだということだ。涼次とあゆみさんが残ってもそう。あゆみさんが真であった場合、面倒な事になる。そう考えると、安易に志乃さんを吊って混乱を招くのは避けたいところだし、やはり呪殺を出してもらわないと信用ができないので、黒だからと吊るのは危険だ。それでも勝負に出るかどうか、村の意見を聞きたい。私は、今の状況では意見の薄さから睦美さんの方が怪しいと考える。なので、できたら睦美さんを吊りたいと思っている。」
隼人が、顔をしかめた。
「どうしてそんなに睦美さんなんだよ?スキル差があるんだ。昨日、一言であんなに責められたんだしトラウマにもなるよ。」
拓三も、頷く。
「オレもそう思う。志乃さんが狼なら、昨日外の狼達にアドバイスをもらってるかも知れないしな。」
寧々が、言った。
「だとしても、昨日失言を責めていたのは藍さんも同じだったわよ?共有の相方なのに、わざわざそこを責めて吊る話になるのを促すかしら?よく考えないとって言い出したのは議論が進んでからだったわ。逆に、藍さんはそんなに志乃さんのことに言及しなかった。そこが志乃さん相方の線を強くすると私は思うの。自分吊り発言はただの村人なら少しは理解するけど、共有者がすることではないと思う。確定村人に縄を使わせる行為は、村利が無さすぎるから。」
拓三は、黙る。
涼次が、言った。
「…まあ、こうなって来ると共有より占い師だよな。見たところ美久さんと充希がなんとなくラインが見える。例え志乃さんが真だとしても、吊って白黒ハッキリしたらこの二人が怪しいと吊る事ができるから、面倒もないと思わないか。」
京太が、言った。
「それは真霊媒目線じゃそうだけど、相良さんが言ったように狼には霊媒が誰が真なのか見えてるから、恐らく真を噛んで来るだろ?明日は結果が白黒になって、面倒な事にならないかと言ってるんだよ。」
涼次は、言った。
「だが、霊媒が噛まれたら残りを全部吊る勢いで行くしかないじゃないか。狼が居るなら、それでアウトだろ?」
「縄が足りなくなる。」相良が言う。「昨日ならそれができたが、鈴音さんが白だった以上、志乃さんが白であったらまずいのだ。とはいえ…役職を残してグレーとなると、狼が残っているのか疑問だ。囲われていたらまた村人を吊る事になる。なので今日は、どう考えても役職の中からになるのだが、どの役職から行くか、ということなのだよ。普通に考えたら二分の一で人外に当たる占い師か共有。だが、三分の一の霊媒師の精査の方が村のダメージは少ない。もう一日、狩人の能力に賭けて霊媒師から手を掛けて、明日の結果までお茶を濁すか。それとも志乃さんを吊って同じように狩人の能力に賭けて正確な霊媒結果が見られるように祈るか。」
拓三が、言った。
「志乃さんを吊って狩人の能力に賭けよう!明日も三人生き残っていたら、いくら偽物が結果を出しても二つは揃うから分からなくなることはないから。それで美久さんと充希の偽が透ける。そうしよう!」
志乃は、慌てて言った。
「私は真共有なのに!私を吊ったら縄に余裕がなくなるわ!人外の思うツボなのよ?!」
相良が、ため息を付いた。
「…少し考えさせてくれないか。それが一番良いのは分かっているのだが、縄に余裕がなくなるのは痛いからな。とはいえ…ここで志乃さん吊りを強く推しているのは、隼人、拓三、健太。そして自分の黒ではないのに確定しているように推す充希。明日志乃さんに白が出たら、芋づる式にこれらの色も分かる。縄は無駄にはならないかも知れない。一度解散してまた昼13時にここで。以上だ。」
相良は、言うだけ言うと、ペンを置いてさっさとその場を離れて行った。
志乃は、もう吊られる未来しかないようにも思えて来たが、何か睦美が黒い要素はなかったか、少しでも情報が欲しくて、その後を急いで追ったのだった。
階段を上がっていると、後ろから追い付いて来た冬也が言った。
「志乃!」志乃は、それが冬也だと分かって面倒そうな顔をしたが、冬也はお構い無しに近付いて来た。「おい、もう信じてくれてもいいだろうが。昨日は鈴音に入れたんだぞ?オレは美久さんの白でも充希の白でもない、美沙子さんの白だ。お前とは敵対陣営じゃないだろ?」
志乃は、ため息をついた。
「だから?確かに昨日は接戦だったし、あなたの票は大きかったわ。ありがとうって言っとく。村人なら、正しい判断だったわ。鈴音さんは、白だったけど…。睦美さんに入れておけば良かった。」
冬也は、頷いた。
「だな。オレはグレーじゃないし意見を聞かれる事もないから言ってないけど、お前が真だと思ってる。何しろお前は、藍ばっか見てて言う通りにしようとしてたじゃないか。藍も、お前を気にしてるみたいだった。知り合いだからかと思ってたけど、よく考えたら陣営も分からないのにあんなに側に置いて話してるのもおかしい。睦美さんは、目もくれてなかった。いくらバレたらって言っても、あそこまで無関心なのはおかしいからな。多分、睦美さんが偽物なんだろう。」
志乃は、え、と冬也を見た。
そんなにこっちを見ていたのか。
「…そんなに観察していたの?」
冬也は、頷く。
「そりゃお前とオレの仲だからな。気になるに決まってるだろ。」
「その話を聞かせてくれないか。」階段を上がったはずの、相良が上からこちらを覗き込んで割り込んだ。「君が志乃さんと関係があったのは知っている。今のは本当か?」
冬也は、相良が聞いていると思わなかったのか、渋い顔をしたが、頷く。
「…本当だ。嘘を言っても仕方ない。みんな分かってるはずだけどな。そもそも最初に共有に出て欲しいって話が出た時、志乃は緊張した顔をした。出るのかと見てたら、出たのは藍だった。藍が出なかったら自分が出なきゃならないと緊張してるんじゃないかってその時思った。」
相良は、言った。
「その話、誰かに言ったか?」
冬也は、首を振った。
「いいや。誰にも聞かれてないからな。あ、いや、涼次は知ってるか。京太もだ。昨日はオレ、弁護士の涼次に話をしてたじゃないか。その時、ゲームの話になって、確定霊媒だから良いかと多分共有の相方は志乃だって理由も含めて話した。涼次もなんとなく気取ってたみたいだった。京太は驚いていたところを見ると気付いてなかったんだろう。その後、鈴音が乱入して来て大騒ぎになったから、それからあの二人とは話してないが。」
そういえば、今日、涼次は志乃を吊るのに消極的な意見を出していた。
恐らく、初日に気取っていたので、やっぱり、という気持ちもあったからではないだろうか。
だが、村の意見が志乃吊りになりそうなので、ああして意見を出したのだ。
「…だから涼次は志乃さんを庇う意見を出していたのか。だが、京太はそこまで志乃さんを庇う様子はないな。やはり自分で気取ったわけではないので、半信半疑だからか。」
冬也は、頷いた。
「多分。だが、村人に分かりやすくするには、黒を打たれているから吊るのが順当なのはオレにも分かる。それでも、縄を志乃に消費してしまって良いのかとは思うし、オレは黙って志乃には入れないつもりだった。」
相良は、考え込む顔をした。
「…参考になった。」と、踵を返した。「あ、君でも役に立つのは分かったが、志乃さんは今面倒に巻き込まれてそれどころではない。だから、個人的な話し合いはゲームが終わるまで待てないか。ゲーム以外に煩わされて、いろいろ濁るのを避けたいのだ。協力して欲しい。」
冬也は、面と向かって正当に頼んで来る相良に、感情的になるわけにも行かなくて、頷いた。
「…まあ…分かった。」
志乃は、ホッとして冬也に軽く会釈してから、その場に冬也を残して階段を上がって行った。
あんな男でも、役に立つ事があるのだと、志乃は少し冬也に感謝したのだった。




