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…誰に入れたら票が集まるの…?!睦美さん…?それとも、鈴音さん…?!
志乃は、カバーを開いて迷った。
誰も、口を利かない。
タイマーは、容赦なくどんどんと時間を減らして行っていた。
藍を見たが、藍はこちらを見ようともしなかった。
隣りの席なので、その冷たさが志乃には堪えた。
…このままじゃ、藍くんに見捨てられてしまう…!
志乃は思ったが、それでもCOしてしまったら、もっと失望した顔をされるだろう。
志乃を占い対象に入れるということは、志乃が共有の相方だと知らない人外が、志乃に黒を打って来た時に、それが偽だと分かるからだと思われた。
だが、これを生き残れないと、とてもそれを実行できなかった。
『投票、1分前です。』
モニターが告げる。
志乃は、極度に緊張して手が白くなって来ていた。
みんな、私に入れないで…!!
志乃は、祈った。
だが、これで生き残ったら、藍がきっと思っているだろう、共有者に黒打ちの未来が見えて来る。
これは、賭けなのだ。
役に立たない志乃を役立てるには、それしかないと藍は思ったのかもしれない。
でも、これで本当に私が吊られてしまったらどうするの…?!
志乃は、藍を恨みたい気持ちになって来て、共有者だと立ち上がって言いたい衝動にかられた。
『投票してください。』
全員が、必死に腕輪に向かった。
志乃も、悩んでいたが鈴音が自分にあれだけ投票したいと言っていたのを思い出し、どう考えても朝の事も思い出すと腹が立って来て、思い言って鈴音の番号、14を入力して、0を三回押した。
すると、腕輪から声がした。
『投票を受け付けました。』
こんな感じに投票されるのだ。
志乃が思っていると、モニターから声がした。
『投票が終了しました。』
そして、モニターに結果がパッと現れた。
1相良→2(睦美)
2睦美→7(志乃)
3美久→7(志乃)
4将也→14(鈴音)
5隼人→7(志乃)
6藍→14(鈴音)
7志乃→14(鈴音)
8美沙子→14(鈴音)
9京太→7(志乃)
10久司→2(睦美)
11涼次→2(睦美)
12拓三→14(鈴音)
13冬也→14(鈴音)
14鈴音→7(志乃)
15寧々→14(鈴音)
16充希→2(睦美)
17健太→7(志乃)
18篤史→7(志乃)
19あゆみ→7(志乃)
20正俊→14(鈴音)
ああ…!!
志乃は、思ったより多くの票が自分に入っているのを見て、一気に血の気が引くのを感じた。
もしかしたら、私なんじゃ…!!
すると、モニターが、言った。
『№14が追放されます』
「嘘!」と、皆を見回した。「私は白なのに!明日、後悔するわよ。」
絶望しているというよりも、憤慨している、という感じだ。
皆がバツが悪そうな顔をしていると、急に鈴音は、ぐったりとその場に倒れて、動かなくなった。
「え…?」志乃は、驚いて鈴音を見つめた。「なに…?」
気を失ったの?
緊張が解けて、一気に来たのかもしれない。
だが、隣りの冬也が怪訝な顔で鈴音を覗き込んだ。
「おい。大丈夫か?」と、鈴音の体が、ぐらりと傾いて床へと突っ伏した。「え!」
反対側の隣りの、寧々が言う。
「大変、頭を打ってしまうわ。床は絨毯だから、大丈夫だろうけど。」と、顔を覗き込んだ。「あら…?相良さん、お医者様でしたわね。みて下さいません?」
モニターから、声がした。
『№14は追放されました。夜時間に備えてください。』
そして、投票結果だけを残して声は消えた。
相良は、それには構わず鈴音に歩み寄ると、おかしな格好に倒れている、鈴音を仰向けに寝かせた。
そして、脈を取ったりあちこち調べていたが、グッと眉を寄せた。
「…死んでいる。」
「ええ?!」
皆が、一斉に叫んだ。
美久は険しい顔をしており、美沙子は口を押えている。
睦美は、ガクガクと震えて涙目になっていた。
志乃も、まさかと思いながら確認するように言った。
「死んで、いるの…?今、そこに座っていただけなのに?」
相良は、頷いて皆を見回した。
「死んでいる。心拍は無いし呼吸も止まって瞳孔も開いている。」と、開いたままの目を閉じてやった。「一瞬だったのだろう。本人は、自分が死んだことにも気付いていないのではないか。」
寧々が、険しい顔で言った。
「…特に、何も感じませんでしたわ。一瞬で、目を開いたまま気を失うように凍り付いてしまったので、まさかと思いましたけれど。追放とは、本当に死んでしまうのですわ。どうやったのか分かりませんけど。」
「そんな!!」あゆみが、叫んだ。「そんな事聞いてないわ!!嫌よ、死にたくない!私は真霊媒師なのよ!こんなことだったら、奇策に出ようとしないで、さっさと出ておけば良かった!!吊られたくないわ!!」
睦美が、ボロボロと涙を流している。
美久も、青い顔をして鈴音をガン見していた。
美沙子は、緊張した面持ちで言った。
「…これって…襲撃も、呪殺も、死ぬってことじゃない…?今夜、また誰かが死ぬってこと?」
あゆみが、ヒステリーを起こしそうになっていて、今にも失神するのではないかというほど真っ赤な顔をしている。
相良が、言った。
「落ち着け!慌てて暴れても、それがルール違反とみなされたらその時点で同じ事になるぞ!」ピタリと、睦美の嗚咽が止まり、あゆみも叫び出そうとしていたのを口をつぐんだ。相良は続けた。「…どちらにしろ、ここから出る方法はない。私は、昼間に念のため外を調べて来た。中庭には出られるが、その庭を取り囲む壁が上まで5メートルはあるし、侵入者避けの鉄柵があって外へ出ることもできない。出られたとしても、回りは海だ。結局は、私達はここへ来てしまった以上、運営が望む通りにゲームを進めないと、皆鈴音さんと同じ状態になってしまうということだ。恐らく、これが栞に書いてあった『勝利陣営は帰って来ることができる』の意味なのではないのか。藍が、今朝言っていただろう。」
藍は、茫然としていたのだが、ハッと我に返ったように、頷いた。
「そうだ。そういう事なんだ!気になってたんだけど、そういう意味だったんだよ!じゃあ、何としても村は勝たないと!帰って来られなくなるんだ、13人も居る村人が!」と、鈴音を見た。「鈴音さんも、一見死んでるけど、村なら戻って来るのかもしれない!だって、今相良は手作業で見ただけでしょ?正確には分からないよね?」
相良は、怪訝な顔をした。
「それはそうだが…。正確には計器に掛けないと分からないのは確か。だが、外で死亡診断しろと言われたら、私はこの状態ならそう判断するだろうというだけだ。」
つまりは、普通なら死んだと見るしかないのだろう。
本当に戻って来るのかどうかは、運営側にしか分からない。
志乃は、自分が吊られていたのかもしれない、とゾッとした。
確かに鈴音の事は恨んでいたが、殺してしまうほどではなかったのだ。
それを、初日にこんな風に殺してしまった。だが、そうしなければ自分が死んでいた…。
ふと、冬也を見ると、冬也は特に感慨もなく、鈴音を見下ろしていた。
曲がりなりにも一度は結婚した女に、どうしてあんなに冷たい顔ができるのだろう。
志乃は、本当に冬也と結婚しなくて良かったと思った。
あんな人と一緒になっていたら、絶対に近い将来、後悔することになっていたはずだ。
だが、それを知るために、こんなに大きな代償を払うことになるとは思ってもいなかった。
「…部屋に運んでおくよ。」冬也は、落ち着いた様子で言った。「占い指定をしなければならないんだろう。やっておいてくれ。」
藍は、頷く。
冬也は、動かない鈴音を抱き上げると、居間を出て鈴音を運んで行ったのだった。




