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「オレから話す。」篤史が言った。「オレ達は、意見を求められた時にはしっかり答えていたし、皆の意見を聞いて考えていた。村人に、情報は少ない。安易に意見を口にして、怪しまれるのも村のためにならないから、しっかり理由が伴って怪しむ先が見つかったら言おうと思っていただけだ。それを、寡黙位置だとわざわざ怪しむ位置に持って来た美沙子さんは、自分や相方から目を反らせたい人外に見えた。寧々さんが言うように、やたらと言い訳染みて聴こえたしな。他の占い師は、よく分からなかった。だが、美久さんは久司さんの受け売りって意見はその通りだと思うし、充希は頑張って自分の言葉で意見を言っている感じがしたから、オレとしては順位をつけるなら、久司さん、充希、美久さん、美沙子さんの順に真だと思っていると言っておく。ちなみにグレーだが、志乃さんと鈴音さんもあまり意見を口にしていない。睦美さんも聞かれているのに発言量が少な過ぎるし内容があまりない。なので、改めて志乃さんと鈴音さん、睦美さんの意見をしっかり聞いておきたいと思っているところだ。」

なるほど、篤史はしっかり見ている。

そういう風な印象だった。

それよりも、志乃は自分が怪しまれてしまった、と慌てて言った。

「私も皆の意見を聞いて理解しようと努めていたので、思考のスピードが追い付いていなくて発言できていなかっただけなの。さっきは、占い師の意見を聞き終えた時には何も考えずに久司さんと美沙子さんが真っぽいなあと思っていたけれど、寧々さんの指摘で今のところ久司さんが真ではないかと思っているところよ。なぜなら久司さんは、番号が若いし最初にCOしたので意見を最初に言わなければならないのに、とても落ち着いて内容の濃い話をしていたわ。人外だったら、回りに合わせたいと思うだろうし、あんなに積極的にはできないだろうなって思ったから。他の三人の事は、決定的なことが無くてまだ判断がつかないなあと思ってる。グレーの中では、今の今まで意見を持っていたのに黙っていたのは私と同じだから、私は篤史さんは疑っていないけど、彼が挙げた睦美さんと鈴音さんは確かに怪しいなと思った。鈴音さんは意見を求められた時、メタな意見しか落としてないのよ。人狼に詳しくないって言ってたから、美沙子さんと美久さんが人外なんじゃって。本当にこの二人が偽なら白い発言だけど、今の時点で占い師を吊るわけにはいかないから、鈴音さんを吊って色を見て、もし黒ならこの二人が白くなるし、それもいいんじゃないかって思うかな。」

鈴音が、志乃を睨んだ。

「あなたも、今の今まで黙っていたのに、今更そんな意見を出して私を黒塗りするのはおかしいわ。自分が疑われ始めたので、他に注意を向けたい人外に見える。私は志乃さんが、共有者の藍さんとか、占い師に出ている久司さん、相良さんと仲良く話してるから、疑われないし大丈夫だと思っている人外じゃないかって思ってる。発言が強い人の影に隠れて残ろうとしているように見えるもの。占い師の真贋は、まだ全く分からないわ。みんながあまりに久司さんが真っぽいと言うから、私もそうかなと思っていたのに逆に怪しく思えて来たの。人外に、上手く誘導されてるんじゃないかって。だって、私が疑わしいと思っている、志乃さんが真だとか言うんだもんね。」

志乃は、鈴音を睨み返した。

だが、言い返す言葉はなかった。

何を言っても、多分言い訳にしか聴こえない。

何しろ、自分は言われた通り、藍や他の強弁な者達に囲まれて、大丈夫だと気軽にしていたところがあるのだ。

藍に、それでは露出しないといけなくなると、注意されてそれで目が覚めたぐらいだ。

健太が、言った。

「そうだね、鈴音さんの意見は的を射てると思うな。それなら納得できるもの。志乃さんは、確かに藍さんの友達だから、一緒に居るし少々の事なら知り合いバイアスが掛かって白く見えちゃうんじゃないかなって思っちゃった。違ったらごめんねだけど。」

篤史も、隣りで頷いている。

志乃は、もしかしたら私吊りの流れに持って行かれようとしているんじゃ、と反論しなければと口を開いた。

「え、そんなに疑われるとは思っていなかったわ。だって、あなた達も黙っていたのは同じなのに、どうして私ばかりを黒く言うのかしら。鈴音さんも、睦美さんだって大した意見は言っていないのに、あちらでなくて私を疑うのは、自分が疑われて困った人外なんじゃって思ったけど。篤史さんと健太さんだって、自分が吊られなければ良いって鈴音さんに意見を合わせて来てるようにも見える。なんだか、今話してる人達みんな怪しく見えて来たわ。他のグレーの人達は、みんなよく話していて怪しい所がないから余計に。」

他のグレーというのは、相良、隼人、拓三、寧々の四人だ。

今争っているのは、志乃、鈴音、健太、篤史で、睦美が話題に挙がっていることで巻き込まれている形だった。

拓三が、言った。

「うーん、どうだろう。オレとしては、隼人だって意見を求められなきゃ言わないし、同じだと思うけどな。でも、求められたらしっかり意見を言ってるように見えるのは、確かに隼人と、そして篤史だ。そうなって来ると、どうなる?」

正俊が、言った。

「片白だけど黙ってられないから言うけど、グレーの中で浮いて来たのは志乃さん、鈴音さん、睦美さん、健太さんだよね。みんな、確かに発言はしてるんだけど、内容は聞いたことあるみたいなことで、ここまで話を聞いてたんなら言えるだろうことばっかだ。隼人さんも微妙だけど…。あんまり範囲を広げると、票が割れるからまずいしな。」

藍は、頷いた。

「そうだね。じゃあ、この4人から投票することにする?オレも隼人は内容薄いし微妙だけど、正俊の言う通り広げ過ぎると人外票が村人に流れて吊られるかもしれない。霊媒師は狂信者が出ているというのが村の総意だから、今日は吊らない。で、占い師が全員推してるグレー吊りにする。この4人の中から、今夜は投票先を決めて。」

志乃は、目を見開いた。

私を、投票対象に入れるの?!

だが、ここで口を開いても焦った人外にも見えるだろうし、何も言わなかった。

…大丈夫、少なくとも藍の票は自分には入らないんだから。

志乃は自分にそう言い聞かせて、落ち着こうとした。

相良が、言った。

「では、とりあえずこの辺りで休憩しよう。次は投票前だな。何時に集まる?」

藍は、うーんと時計を見て、言った。

「夜8時から投票だから、じゃあ7時で。対象に上がった人はしっかり弁明考えて来てね。それじゃあ、解散。」

皆が、伸びをするもの、ぐったり力を抜くものと分かれて立ち上がって思い思いの方向へと向かって行く。

志乃も、このままではまずい、と、急いで立ち上がり、部屋へ帰ってメモして考えをまとめて来ようと居間の扉へと急いだのだった。


藍と一緒に行動しないのは初めてだったが、志乃はそんなことも忘れていた。

何しろ、藍にはあれだけしっかりしろと言われていたのに、自分が本気になっていなかったからこうなってしまったのだ。

まだ4人の中に入っただけで、ヤバい空気ではない。

ここは、とにかく相方だと知られないために投票対象に入れただろう、藍の気持ちも汲んで、志乃は頑張らねばと思ったのだ。

二階の廊下に着いて、部屋へと足を向けると、後ろから声を掛けられた。

すっかり回りが見えていなかった志乃が驚いて振り返ると、冬也が一人で立っていた。

…冬也!

志乃は、不意打ちに驚いた。

思わず二歩三歩と後ろへ足を進めると、冬也は慌てて言った。

「いや、その、話がしたくて。謝りたいんだ、君を騙してたことになってしまったから。」

志乃は、怪訝な顔をした。

「今さら何?鈴音さんから聞いたわ。あの子、知ってたんですってね。私は知らなかったわ。三年も騙してた癖に、謝ってもらったって遅いわ。」

冬也は、頷いた。

「そうだよな。分かってる。」と、疲れたように頭を抱えた。「オレ、どうかしてた。あいつが、あんな女だと知らなかったんだ。オレの前ではつい最近までおとなしいか弱い女だったのに、ちょっと新婚旅行の経費をけちっただけで騙されたから慰謝料もらうとか、涼次に話して相談し始めてるんだよ。まるで別人だ。オレの方こそ騙された慰謝料欲しいぐらいだ。」

志乃にとっては、そんなことはどうでもいいことだった。

自業自得だからだ。

「私には関係ないわ。あなただって嘘つきじゃないの。今回の旅行だって、あの子から20万もせしめたんでしょ?タダなのに。見栄はって結婚式を盛大にやったんだって聞いたわ。あの子は二人きりの式でいいって言ったらしいじゃない?私にしたら、どっちもどっちよ。勝手にすれば?」

もう部屋へ帰ろうとする、志乃の腕を冬也は掴んだ。

「待てよ、オレは目が覚めたんだ。やっぱりお前の方がオレのために尽くしてくれたって。まだ籍は入れてないって言ったろ?オレたちやり直せると思うんだ。一からまた二人でやり直そう。あいつとは別れる。」

志乃は、その手を振り払った。

「いい加減にして!私はもうあなたなんか何とも思ってないわ!どうせ、慰謝料請求されたらお金に困るから、私に養ってもらおうとか思ってるんじゃないの?おあいにくさま、私はまだ新しい仕事もないし、これが終わったら実家に戻って資格の勉強でもしようと思ってるわ。藍くんだっていろいろ教えてくれるって言ってた。誰かと付き合うにしても、あなただけはないわ!」

冬也は、フッと余裕ありげに笑った。

「なんだよ、まだ怒ってるのか?お前がまだオレを好きなのは知ってる。チラチラこっちを見てたじゃないか。鈴音も鬱陶しいって言ってたぐらいだ。どうせこれに参加したのも、オレを諦められなかったからだろ?こんな偶然あるはずないもんな。謝るから、やり直そう。」

志乃は、腹が立って思い切り冬也の頬を叩いた。

冬也は、いきなりのことだったのでびっくりしてよろめく。

「あんたなんかもうとっくに大嫌いだって言ってるでしょ!近寄るな!」

すると、向かい側の1号室の扉を開いて、相良が出て来た。

冬也が驚くと、相良は蔑むような視線を冬也に向けた。

「…何をしている?」

冬也は、まだこちらを睨んでいる志乃の顔をチラと見たが、フンと鼻を鳴らして、言った。

「…痴話喧嘩だと思ってくれたら。」

相良は、間髪入れずに言った。

「結婚したとか言っているのに?」と、志乃を見た。「相手は選んだ方が良いかと思うがね。」

志乃は、ブンブン首を振った。

「こんなやつ知りません!」

冬也は、またフンと鼻を鳴らすと、相良の鋭い目に見据えられて何も言えず、そのままそこを去って行った。

志乃がお礼を言おうと相良を見ると、相良はさっと踵を返した。

「…君は議論に集中した方がいい。ではな。」

そして、さっさと部屋へと引き揚げてしまった。

志乃は、取り残されて困ったが、仕方なく自分の部屋へと入った。

だが、何やらスッキリとした気持ちだった。

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