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居間には、皆がぞろぞろと集まって来ていた。
もう13時なのだ。
居間で話していた数人も、円形に並べられた椅子へと移動して、定位置についた。
藍が、一人立ち上がってホワイトボードの横に陣取って、ペンを片手に、言った。
「じゃあ、昼の会議を始めるよ。最初に、オレ栞を熟読したから、その話をするね。みんな読んだ?」
京太が、言った。
「まあ、ざっと読んだけど。知ってることが多かったし、重要な所は説明してくれてただろ?」
藍は、答えた。
「うん、そうなんだけど、気になるところがあってさ。」と、栞を自分のポケットから出した。「ルールは、見たよね?ゲームをきちんとしないと、追放になる。で、その追放なんだけど…何も説明がないんだよね。多分、どっか別の場所に移されるんだと思うんだけど…そんな事も書いてない。でも、真剣に読んでたら、勝利陣営は帰って来られる、と書いてあるんだ。勝利陣営ってことは、負けたらリゾートできないってことなんじゃない?ゲームが終わっても。」
皆が、え、と驚いた顔をした。
つまり、勝たないとゲームが終わってからも、自由な時間がないということだ。
このゲームは20人で、縄数は9縄だが、早めに終われば数日は余裕ができる。
最速なら今日狼を吊り、今夜真占い師二人が二人の狐を呪殺して、明日二日目また狼を吊り、明日の夜真占い師二人が残りの二人の狼を見つけ、三日目に一人吊り、四日目に一人吊って終わり。
つまり、一番速かったら四日で終わってしまう。
残りの六日は遊び放題ということだ。
もちろん、最終日までもつれ込めばガッツリと十日掛かるかもしれないが、狐が呪殺できたら、恐らくその縄も一気に減る可能性があって、もう少し早く終わるはずなのだ。
「え、ということは、負けたらどっかで、もしかしたら掃除とかしなきゃならないのかもしれないの?」
藍は、頷いた。
「そう。分からないけどね。だから、気を入れて頑張るしかないよ。せっかくこんな綺麗な所に来たんだから、早く終わらせて遊びたいしさ。まだ水は冷たいかもしれないけど、海だって近くで見に行きたいし。」
皆は、顔を見合わせた。
そんな事は、考えてもなかったらしい。
志乃もそうだったので、気持ちは分かった。
だが、志乃は最初からこれに来られるとは思ってもなかったので、遊べないならそれでもいいのだ。
タダで、こんな場所に滞在できることからラッキーだったと思っていた。
藍は、皆が分かったようなので、続けた。
「じゃ、話し合いをしようか。さっき言ったように、あの時挙げた三人、ええっと、睦美さん、隼人さん、あゆみさんだね。そこから話を聞こう。」
隼人が、言った。
「じゃあ、オレから話すか。偶然少数派の意見になったばっかりに投票対象にされて、正直戸惑ってるけどな。でも、朝の議論の後に、いろいろ話したんだ。居間とかキッチンで行き会った美久さんとか、充希とか健太、篤史と。話を聞いてると、確かになって思った。オレは、人狼はやってるけど、そこまでガチな人達とやってるわけじゃないから、初日囲いが良いとか悪いとか、分からなかったんだけどな。今の状況だと、確かに霊媒師が確定してるから、騙りに出てるのか少ないとなると、囲われた人外が露出を避けようとしたんだと言われたらそうな気がして来て。だったら、囲われてるって考えた方が自然だ。だから、オレも今は囲われてるんじゃないかって思い始めてるんだけどな。」
藍は、ウンウン、と隼人の話を聞いた。
「別に、どっちでもいいんだよ。ただ、皆と違う意見になるってことは、村目線と違う何かが見えてるのかもって考えるのが普通なんだ。だから、オレ達はそう判断しただけで、君達が全部人外だとは思ってない。初日だからね、情報が少ないから、どうしても上げ足を取るような事になるんだけど。」
すると、あゆみが、おずおずと言った。
「あの…ごめんなさい。」何の事だろう、と皆があゆみを見ると、あゆみは続けた。「私…霊媒師なの。」
皆が、え、とあゆみを見る。
藍が、眉を寄せた。
「どうして出て来なかったの?確定だって村は思ってしまったんだよ?」
あゆみは、本当に反省しているのか、下を向いた。
「本当にごめんなさい。私目線、霊媒師には必ず人外が一人出てるの。そして、人狼や狐はローラーを恐れて出るはずがないし、必ず片方は狂信者だろうと思ったの。だから、潜伏して噛ませようと思った。両方噛まれても私が残るから、いいかなって…。でも、その話を皆で…あの、隼人さんとか、健太さんとか篤史さんとかが集まってた時にしたのよ、もし霊媒師が潜伏してたらどう思う?って。そしたら、狂人だったら噛むかもしれないけど、このゲームじゃ狂信者だから狼は知ってるし噛まないだろうから潜伏は村利がないからないんじゃないか?って言われてしまって。言われてみたらそうだった、って。出て来る事にしたの。怪しいのは分かるわ。でも、今言わないと明日以降だともっとまずいと思って…。」
今言ってもまずいかも。
志乃は、思って眉を寄せた。
何しろ、こうなって来るとこれまでの推理が覆されることになるからだ。
占い師に2人、霊媒師に1人の人外が出ていることになりそれで3人、囲われていたら更に2人がグレーに居ない事になり、人外7人のうち、最悪5人が安全圏に居て、残りのグレー9人の中に、たった2人しか人外が混じっていないという事になる。
となると、霊媒師の三分の一に賭けて吊るという選択肢も出て来るのだ。
拓三が、ハアとため息をついた。
「…これまでの議論が無駄になった。無駄な時間を使わせた、あゆみさんの罪は重い。こうなって来ると、霊媒師のローラーから始まることになるだろうが、どちらにしろ京太と涼次の中に必ず一人は真霊媒師が居ると分かっているのだから、今夜はあゆみさん吊りになりそうだな。」
皆が、黙って頷く。
あゆみは、目を丸くして顔を上げた。
「え、どうして?誰が真なのか、分からないでしょ?私が、朝出なかっただけで吊ろうって言うの?」
藍が、ため息をついて頷いた。
「信じたいけど、無理なんだよね。三分の二で真霊媒師が居るわけで、他の二人には今のところ全く怪しい所はないんだ。でも、君は怪しまれてから出て来たしね。一応、グレーの意見は保留にして霊媒師たちの話を聞くことにするけど、みんなの感情からもどうしても今夜は君吊りになるんじゃないかなあ。」
あゆみは、首をブンブン振った。
「ちょっと狼を引っ掛けようと思っただけなのに!ただ出て来ただけで村に何もしてない人達と比べて、私ってことなの?そんなの不公平だわ!」
あゆみ目線ではそうなのだろうが、村目線では無駄に時間を使わされたと思ってしまう。
相良が、言った。
「…君は狂信者だな?」皆が、え、と相良を見る。相良は続けた。「狼を守ろうと疑われるのを承知で出て来たのではないか?つまり、隼人、睦美さんの中に一人、もしくは二人とも狼なのか?…私にはそう見えるが。」
そう見えるの?!
志乃は、驚いて藍を見た。
藍は、うーんとペンを振り回しながら、頷いた。
「…そう見えるよねえ。これは、今夜は霊媒師から投票することになると思うけど、占い先はこの二人は鉄板かな。どう思う?」
相良は、頷いた。
「それでも良いかもしれないが、私としては狼よりも狐が先だと思っているがな。狼が激減して行くと、焦ることになるからな。何やら不穏な…あっさり終わるのではないのか。」
相良は、終わるのが嬉しいはずなのに、うんざりしたような顔をした。
久司が、言った。
「まだ決まったわけじゃねぇだろ。とにかく、今夜は霊媒師だな?霊媒師たちの話を聞こう。」
藍は頷いて、京太を見た。
「じゃ、京太さんから。」
京太は、頷いて口を開いた。




