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急いで自分の部屋へと帰ったが、そこには藍は居なかった。

なので、またすぐに部屋を出て、6号室の藍の部屋へと向かった。

ベルを鳴らして待っていると、扉が開いて、中が見えた。

「志乃さん。」と、後ろを見た。「拓三と寧々さんが来てるよ。入って。」

鈴音は居ない。

志乃は、息を整えながら、部屋へと入った。

扉を閉める藍に、急いで言った。

「あの、鈴音さんは来なかった?」

藍は、首を振った。

「ううん。来てないけど。」と、閉じた扉の向こうから、またベルが鳴った。「はいはい、忙しいな。」

まさか鈴音が、と思ったが、扉を開くと、そこには久司と相良が立っていた。

「あれ、二人も来たの?」

藍が言うと、久司が頷いた。

「ちょっと退屈になって来たからってな。」と、部屋へと入って来ながら、言った。「またいっぱい居るな。拓三、寧々さん、志乃さんか。」

「私は今来たばっかりで。」志乃は言った。「一人で居ても退屈だし。」

久司は、頷いた。

「うーん、ま、オレと相良はキッチンに居たんだけどな。」

志乃は、え、と思わず久司の顔を見る。

久司は、困ったように微笑しながら、頷いた。

「鈴音さんと話してたよなあ。ゲームの事を話してたんじゃないし、個人的なことだから別に割り込んで行かなかったけどよ。出にくくて、今の今まで缶詰になってたんだ。」

居間に居なくても、キッチンに人が居る可能性もあったんだ。

志乃は、浅はかだった、と反省した。

だが、自分だけがあの鈴音の暴言を聞いたわけでは無かったわけなので、もし鈴音が志乃を陥れようとして来ても、この二人は志乃を信じてくれそうだった。

「その…ごめんなさい。誰かが居るとは、思わなくて。」

拓三が、顔をしかめた。

「なんだよ、確か鈴音さんとは知り合いなんだよな?仲悪いのか?」

藍は、そっちへ歩いて行きながら、言った。

「いろいろあるんだって。」

志乃は、頷いた。

「その…あの子に、騙されていたのが分かっただけ。でも、人狼ゲームでのことじゃないわ。私生活で、男の人のことで、なの。また帰ってからの事になるだろうけど、私は二度とあの子とは関わりたくないから…帰ったら地元に帰ろうかなってちょっと思ってるけど。」

寧々が、心配そうに志乃を見た。

「…いろいろありますものね。わかるわ。私の経験上思うに、忘れてしまうのが一番いいのよ。仕返ししてやろうとか思わないで、すっかり忘れて誠実に生活していたら、幸せって急に降って来るわ。私がそうだったから。」

志乃は、寧々を見て、言った。

「え、寧々さんも何かあったんですか。」

寧々は、苦笑した。

「それはもう、たくさん。あなたの場合はどうなのか、私は知らないけれど…嘘をつく男の人って最悪よ。一度きりならって思っても、そういう人はずっと嘘をつくの。だから、一度でもそういうの見つけたら、見限るべきだったなって今は思うわ。今の旦那様に出逢ってから、信じられないくらい幸せだから、そんな事も忘れていたけれどね。あなたも、何があったのか知らないけれど、忘れてしまうのが一番よ。」

今は、あの嘘つき男より、あの女の方が腹が立つんです。

志乃は思ったが、寧々と二人きりの時ならいざ知らず、こんなに男性が居るところで言い出すのは憚られて、言えなかった。

なので、ただ頷いた。

相良が、言った。

「また、後で話を聞いてやってはどうですか。」

敬語だ。

寧々は、おっとりと微笑みながら、頷いた。

「そうね。もし志乃さんが私と話したいのなら、いつでも来てね。私で良ければいくらでもお話を聞くわ。」

志乃は、やっぱりこんな風に年上で落ち着いた人には、相良でも敬語になるんだなあと思いながら見ていたが、頷いた。

「はい。寧々さんになら、何でも話してしまいそうです。また、聞いてください。」

寧々は、頷いてくれた。

拓三が、言った。

「でもさ、そろそろ飯の準備でもして、早めに昼飯食っといたほうがいいんじゃないか。全員が一斉に降りてったら混むだろう。電子レンジがいっぱいになる。」

言われて、志乃は時計を見た。

まだ、11時前だ。

「…でも、まだ早くない?確かにここでは、早寝早起きだけど…。」

相良が、言った。

「私はもう、自分が食べたい物は確保して置いて来た。皆もしっかり先に避けておかないと、早い者勝ちだからな。冷凍食品ばかりになってしまう。」

寧々が、困ったように眉を寄せた。

「あら。困ったわ、お刺身が食べたいと思っていたのに。夜にしようと考えていたけれど、それだとお昼には無くなりそうかしら。」

相良が、言った。

「では、私が今から行って避けておきましょうか。名前を書いておけば取られることもありませんよ。」

寧々は、頷いた。

「お願いできる?ありがとう。」

相良は、頷いてそこを出て行った。

…そんな、使いっ走りのようなことを。

しかも、今そのキッチンから上がって来たばかりだったのではなかったか。

久司が、肩をすくめた。

「オレも見て来るわ。寧々さん、他に何か要るなら避けておくがどうする?」

寧々は、うーんと首を傾げた。

「そうね、白和えとかあったらいいなと思うわ。赤だしのお味噌汁もお願いしていい?」

久司は、頷いた。

「分かった。じゃあ行って来る。」

拓三と志乃が不思議そうに見ている中で、藍が言った。

「あの、寧々さんと相良さんと久司さんは、ここで話して仲良くなったみたいだよ。寧々さんも結構思考が切れる方でしょ?気が合うみたい。」

寧々は、頷いた。

「ええ、そうなの。歳も近いし、一人で来たので仲良くしてもらえてうれしいわ。」

寧々さんなら、誰にでも馴染みそうだけどなあ。

志乃は、思っていた。

それから、拓三が飯が無くなるとうるさいので、結局藍と志乃は、拓三と寧々を連れて、下へと降りて行くことにしたのだった。


そうやって話をしながら昼食を確保し、そしてしばらく、居間で話をした。

そのうちに、皆が昼飯だと言いながら降りてきたので、志乃達も急いで食事をして、昼の会議に備えた。

途中、冬也が一人で降りて来て、志乃に何か言いたそうにしていたが、皆が回りを囲んでいたので話をすることもなかった。

驚いたことに、自分の白先だからか美沙子が冬也に話し掛けていたが、それほど長く話していたわけでもなく、離れて行った。

美沙子は、居間を出て行く冬也を見送りながら、こちらへやって来て、ソファに座った。

「…あの人、白人外かしら。私から見たら唯一村人だって知ってる相手だから、話を聞きたいと思ったのにそれどころじゃないって。初日のお告げが狂信者とかに当たってたら最悪だわ。」

だから話し掛けたのか。

志乃が思っていると、藍が言った。

「そうだよね、その可能性もあるよな。真占い師でも狂信者がお告げ先に当たってたら、知らずに囲ってしまってたりするもんね。」

美沙子は、息をついた。

「それでも、少なくとも狐ではないって分かってるだけマシよ。狂信者ならしばらくはほっといてもいいもの。それで、黒っぽい人は居た?みんな話してたわよね。私は、二階の廊下をぶらぶらしてて、睦美ちゃんと会ったの。だから少し話したわ。でも、目立って怪しい所は見つからなかったわね。」

美沙子は、黒を探してうろうろしていたようだ。

久司が、言った。

「まあ、簡単には分からないよな。議論の場でポカするのを待つしかねぇと思うぞ。人外なら、慌てたらどうしても本音が出ちまう時がある。それを拾うしかねぇ。」

寧々が、頷いた。

「少し強めに意見したら、慌ててボロが出るかたが結構多いものね。私も、よく使う戦法だわ。」

志乃は、寧々を見た。

「寧々さんは、よく人狼ゲームをされるんですか?」

寧々は、苦笑した。

「最近ではあまり。でも、昔はとても好きでよくやっていたの。あまり変わらないわ…いつの時代も、騙ると余程きっちり道筋を頭に入れておかないと、ボロが出ちゃうの。私は騙りに出たらさっさと吊られたかった方ね。混乱しておかしな結果を言ってしまいそうで怖くて。」

寧々は、フフと笑った。

昔と言うが、きっといくらなんでも10年ほど前以上ではないだろう。

何しろ、寧々はまだ35なのだ。

美沙子は、ため息をついた。

「私ももっと学生時代にやっておけば良かったって後悔してるわ。いろいろ誘われたけど、無駄な気がしてあまりサークルなんかには参加してなくてね。気が付いたら社会的には成功していたけど、中身が薄いなって思って。今回、もしお金がかかっていても参加したと思う。SNSで募集を見た時、これだ、って思って。本当は、職業も偽ろうと思ってたの。みんなと対等に遊びたくてね。でも、ダメね、つい。ここまで成功した自分には、誇りを持っているから。後は、娯楽とか、遊び心なのよ。もっと余裕を持った成功者になりたいの。」

志乃は、気になって言った。

「美沙子さんは、恋人は?ええっと、彼氏さんか彼女さん居ます?」

さっき覚えた文言だ。

美沙子は、苦笑した。

「ああ、今はそうなのね?驚いたわ。私は一人よ。対象は男性だけど。普通の会社員の人には遠巻きにされるし、同じ経営者だとなんか俺様な感じで好きじゃなくて。肩書きでなく、私自身を見てくれる人を探してるんだけどなあ。だから、今回期待してたのに、言わなきゃ良かったって後悔ばっかよ。」

綺麗な人だし、頭もいいのになあ。

久司が、言った。

「外国人とかは?結構そういうの気にせず、家事だってやれる方がやる感じで専業主夫になるのも抵抗ないって聞いてるけどな。研究職の奴なんか、家に滅多に帰らないから、勝手にやっててくれる嫁のが良いとか言ってるのを聞いたことある。」

美沙子は、久司を見た。

「あら。じゃあ相良さんはどう?」

相良は、驚いた顔をしてから、眉を寄せた。

「…私は、それどころではないから。まず君に興味がない。」と、回りがポカンとしているのを見て、慌てて付け足した。「すまないが。」

寧々が、困ったような顔をして言った。

「まあ、そんな言い方は失礼よ。研究もよろしいけれど、人としての幸せも探すのは良いことだと私は思うわ。」

相良は、居心地悪げに答えた。

「はい。ですが今はそんなつもりはありませんので。」

志乃は、困っている相良に、寧々さんみたいなタイプが良いのかなあと、ふと思った。

なので、言った。

「…相良さんは、見ているときっと寧々さんみたいな落ち着いていて物静かな女性が良いのかなと思いますけど。」

相良がそれこそ驚いた顔をしたので、志乃も驚いた。

久司が、あーと呆れたように言った。

「確かにな。寧々さんは、こいつの母親に似てるからな。マザコンなんだよ多分。だからやめとけ、美沙子さん。」

美沙子は、がっかりしたような顔をした。

「寧々さんタイプならダメね。私は正反対だもの。諦めるわ。」

相良は黙っていたが、相良の母親がこんな感じなら、きっとそこそこ良い家柄の生まれなんだろうなあと、志乃は思って見ていた。

もう、時間は13時に近付いていた。

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