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第83話 山を舐めるな

「さて、魔王城へのルートなのですが、みなさん地図を見てください」


 地図を広げる鈴音のもとに、みなで密集する。ぎゅうぎゅうになり、暑苦しそうにする鈴音。


「ちょ、もうちょっと離れて……ふぅ。で、見てください。ここが現在地です」


 地図の端にはロスチュの地名があり、そこから長い一本道が伸びていた。


 その道はまっすぐと山脈の麓に続く。


「え、これ山じゃないですか。魔王城どこですか?」


 地図に目を凝らすランパ。しかしどこにも城らしき絵が見つからない。


「うん、魔王城はこの山を登った先にあるんだよ」


「ん?山を越えた向こうに魔王城の街があるってことか?」


 スバルの言葉に、鈴音は首を振る。


「いえ、そうではなく。この山の頂上付近に魔王城があるんですよ」


「ああ、そういうことなんだ。へぇー魔王って山の上にいるんだ…」


 ユウジは、サンワロックの王都のように魔王城を中心に形成された魔物の城下町があるものを想像していた。


 鈴音やオウズの話から、魔王城の周りには酒場など歓楽街があると聞いていたからである。


「でも山の上でもけっこう栄えてるんだよ。お水も美味しいし」


 鈴音は楽しそうに語っていたので、ユウジは期待しておくことにした。


 ただし山登りは険しい道になるということで、一同は装備を整えることにした。


 鈴音の案内で、道なりにあった登山グッズを販売してるショップに連れて行ってもらう。


『Mr.Mt (ミスターマウント)』


 巨大なウッドハウスに掲げられた看板にはそう書かれていた。


「ここは商品が豊富なんだよ」


「へぇ登山靴とか買えばいいのかな」


 なかへ入ると、エプロンを着たオークが出迎えてくれた。巨体にみちみちとエプロンが張り付いてる


「ふひぃ。いらっしゃいませ……あっ!四天王の鈴音さまですか!?どうしてこんなところに」


 オークは豚鼻をひくひくと動かす。魔王の幹部を目の前に緊張しているらしい。


「ちょっといまから登山しようかと思って。彼らは人間だけど私の仲間だから手出し厳禁ね」


「は、はぁ」


 鈴音はユウジたちにウィンクをする。魔王の元へ近づくほどに彼女の顔は効くようになるのだった。


「というわけで登山グッズ4人分見繕ってほしいの」


「かしこまりました。ザックなどもご所望ですか?」


「あーどうします?」


 鈴音に意見を求められるが、スバルは首を捻った。


「ザックってなんだ?」


「リュックサックみたいなものです。たっぷり入りますよ」


「なるほどな。金を袋に入れたまま登るのも持ち歩きにくいしせっかくだし買うか」


 60リットルのザックを3つと、ランパ用に小さな30リットルのザックをひとつ選んだ。


「力持ちなんで重いのも持てますよ?」


「いざという時軽装なやつもひとりくらいいた方がいいだろ。温存しとけ」


 背伸びするランパをなだめるスバル。


「あのー僕も体力ないんで大きい荷物持てないんですけどぉ」


 ユウジが手を上げると、スバルはやれやれと提案した。


「じゃあお前は軽いけどかさばるものを主に持てばいいんじゃないか」


「いいですねそれ、非常食や簡単な医療セットとかはみんな持つものとして、荷物は役割分担しましょう」


 鈴音もそれに賛同した。


 オークに登山装備を選んでもらっている間、ランパとユウジは店内を眺めていた。


「見てくださいユウジさん。ハイドレーションですって」


 ランパが指差す棚には、透明な袋と、そこから伸びるチューブがあった。


「なにこれどう使うんだろ」


「この袋の中に水を入れて、ザックの中にしまい、チューブだけ外に出しておくそうです。そうすればいつでもこのチューブから水を飲めるということです」


「え、いいねそれ買おうよ」


「歩きながら水分補給できるのは便利ですもんね」



 一方スバルは、ガラスケースのなかに目を奪われていた。


 そこには様々なかっこいいナイフが並んでいた。


「かっけぇ……登山ショップになんでナイフがあるんだ?」


「遭難したときとかにナイフが一本あると便利なので。あとほら、十徳ナイフになってるので缶切りとかワインオープナー、スプーンとかにもなるんですよ」


 鈴音は展示されていた十徳ナイフを持ち上げ、収納されているツールをひとつひとつ広げていく。


「ほしい!買おうぜ!」


「んーまぁあったら便利ですし買いますか……お酒飲む時とか使いそうですし」


 ついでに鈴音は、店内にいくつか販売していた強めのお酒も購入した。


「ほ、ほら遭難した時にからだ熱くした方いいでしょうし」


「それってむしろ朝方冷えてあぶねーんじゃねぇの?」


「水分ですし!」


 オークは倉庫の奥から在庫を引っ張り出してきて、ユウジたちに渡した。


 目の前に積まれた大量のアイテムに、オーズは申し訳なさそうに尋ねる。


「ふひぃ。売った側が言うのもなんですが荷物多くないですか?」


「そうですか?」


 買った商品を分担して詰めたところ、ユウジたちのザックは全員パンパンになった。


 寝袋やテントを入れたのもあるが、各自、余計なものをちょくちょくと購入していたのだ。


「でもこの水を入れるだけで食べれる非常食とか良さそうだし……」


「このランタンも必要ですよね。すぐ乾くタオルも」


「A級モンスターの尿香水も寝床に魔物が寄ってこないらしいし必要だよな」


「お酒とお水でパンパンになっちゃった……瓶はかさばるなぁ」


 4人とも決して荷物を減らそうとはしなかった。


「は、はぁ毎度あり。旅の幸運を祈ります」


 オークは馬鹿を見るような目で見送ってくれた。


 ユウジたちは、ウッドハウスから出て、足を一本踏み出す。


 それは魔王の元へ向かう勇敢なる一歩である。


「足重っ!」


 ユウジが叫んだ。


 ぬかるんだ土に深い深い、登山靴の足跡が刻まれた。

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