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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第六章 ロスチュ編
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第81話 無理を通す

 スバルはこれまでの旅で気づいていた。


 自分では勝てない敵には、自分以外に戦ってもらえばいいのだ、と。


 幼少の頃からミルコの化け物じみたちからを見てきたスバルは、夢の中だろうと彼女を倒す想像をすることが、できなかった。


 だから、自分以外がミルコを倒す想像をした。


 そうして思いついたのが、スバルに変身したぬいぐるみに、かわりに戦ってもらう方法である。


 スバルは昔から夜はぬいぐるみと添い寝をしていた。彼女にとってぬいぐるみは半身ともいえるから、ぬいぐるみがスバルに変身する想像は容易かった。


 また、ぬいぐるみというのは人間の念がこもるとよく言われているため、怨念こもったミルコと戦える強いぬいぐるみ、というのもイメージしやすかった。


 そうして、ぬいぐるみをミルコと戦わせている間、スバルは身を隠して気を伺っていた。


 隙ができたところで、弱者の一太刀を浴びせるために。



 


 背中に一撃を受けたミルコは、崩れそうになる体を、鍛えられた足腰で支えて踏ん張る。

 

「……らぁっ!」


 そしてミルコは、ギリっと歯軋りを鳴らして、振り向き様剣を振るった。


 ぶんっ!


 スバルは、たったいま全力で剣を振るったばかりで、ミルコの剣を避けられる態勢ではなかった。


 それゆえに、不完全な姿勢で、なんとか逃れようと空に飛んだが、間に合わなかった。


 ザシュッ!


 ミルコの大剣が、スバルの左足首から先を、跳ね飛ばす。


「………っ!」


 スバルは目を大きく開いた。激痛に苦しんで転げる……ことはなかった。


 すぐに剣を持ち直し、スバルはそのまままた宙に浮いた状態で、もう一撃、今度はミルコの胸から喉にかけてを切り裂いた。


 ミルコの胸から血が噴き出す。


「……やるのぉ。スバルちゃん。じゃが若い女子が捨て身になるのは感心せんぞ?」


「……あいにく、いまさらなんだよ」


 バランスを崩したスバルは、そのまま地面に倒れ伏した。


 同時にミルコも、膝をついた。出血する胸を押さえながら、スバルの左足を見る。そして、その秘密に気がつく。


「ふむ、なるほど。元からそこに痛覚はなかったというわけかぇ。上手な駆け引きじゃのお」


「ちぇ、師匠にバレるのダセーなぁ…」


 スバルは恥ずかしそうにしながら、剣を杖のようにして、立ち上がった。



 ランパは、困惑したようにスバルの左足を指差す。


「な、なんで左足がなくなってなんともないんですかスバルさんは!」


 一方で、鈴音は納得がいったように頷いていた。


「やっぱりあの時かな……様子がおかしかったし。ユウジくんは知ってた?」


 ユウジは、小さく頷いた。


「本人は隠してたんだけどね。……リズマリーさんも、千里眼でスバルさんのあれを知っていたから連れ戻しにきたんですよね」


 リズマリーは、扇で口元を隠した。


「ええ……。だって『義足』の姉を魔王の元に行かせるなんて危険なこと、いくらなんでも見過ごせるわけないですもの」


 

 吹き飛ばされたスバルの切断された左足首から先が、地面に転がっていた。


 それは足の形をしていたものの、茶色の金属で構成されており、歯車が組み込まれ、ネジによって固定された人工的なものだった。


 宝籠省でクラーケンに街中足を引き摺られた際、スバルはその左の足の機能を完全に停止していた。


 そのときから、彼女の左足は義足になっていたのだ。


 彼女はユウジたちにそれを隠してこれまで旅を続けていたのだった。


「スバルさん……」


 ランパは失われた左足を、物悲しそうに見つめていた。


 一方、スバルはニヒルに笑う。

 

「ちぇ、もっとかわいいの作ってもらえばよかったぜ。それで、まだやれるのか?」


 片膝をついたミルコは、胸を押さえて苦笑いをしていた。


「竜人には弱点があってのお。逆鱗というんじゃが。そこを攻撃されると、暴れるほど痛いのじゃ。まだやれるかといえば、いま精神力で抑え込んでいるこの痛みに癇癪を起こして、暴走すれば続けられるじゃろうが……」


 ちらりとリズマリーの方を見るミルコ。


 リズマリーはため息をついたのち、扇をパタンと閉じて頷いた。


 ミルコはそれを確認して、ニッと笑う。


「ワシに膝をつかせる実力のある者の旅路を、止める理由がどこにある?」


 こうして、勝敗は決した。


 師弟対決ミルコvsスバルの勝敗は、ひとまずスバルの勝ちということになったのだった。


 スバルは剣を杖代わりにからだを支えて立っていた。空を見上げ、薄氷の勝利を噛み締める。


 ユウジはベンチから立ち上がって、そんなスバルに呼びかけた。


「スバルさん!」


「……ユウジ」


 スバルは照れ臭く、ほおをかきながら、ユウジの方を向いた。


「あのよー、つーわけで……これからもよろしくな?」


「あ、はい。それはいいんですけど」


 ユウジは、スバルの言葉を軽く受け取り、続ける。


「スバルさんにあげたぬいぐるみを身代わりにされるの、フツーに気分悪かったです」


「……っえぇ……?」


 今この場で言うには、信じられないことを口にするユウジに、ランパが絶句する。


「ユ、ユウジくん。いまは素直に勝ったことも褒めてあげた方がいいんじゃない……?」


 鈴音も嗜めるが、ユウジは仏頂面でスバルを見つめていた。


「……ユウジ」


 スバルはしばらく表情を固めていたが、すぐに悪友に向けるようなニヤケ顔を作った。


「やっぱお前は私がついてねーとダメだな!」


「はい、よろしくお願いしますね」


 スバルは片足でぴょんぴょん跳ねながら、ユウジたちの方に駆け寄って行った。


 リズマリーはつぶやく。


「ほんとにいい仲間を持ちましたね、お姉さまは……」


「おっとと」


 崩れそうになるスバルのからだを、ユウジとランパ、鈴音は3人で支えた。

 



「大判狂わせかーこれは荒れるなぁ♡」


 その爽やかな光景のはじで、オウズはそろばんを弾いていた。


 こっそりと裏で行っていた、スバルvsミルコ戦の賭けの配当金を計算していたのだ。


 ふたりの戦いが決まってすぐ、オウズは、ロスチュのカジノに訪れていた客たちに呼びかけ、賭けを行わせたのだ。


 ロスチュの王、オウズは抜け目なく稼ぎ、スバルに渡すジャックポット分の赤字をしっかりと補填したのだった。

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