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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第六章 ロスチュ編
70/100

第70話 フリータイムで

 夢の国ロスチュへの来訪者はまず、受付でコースを選択する。


 1番人気なのは一日フリータイム。24時間の間、夢の国に滞在できる。


 コースを選択したら、テント内の空席に座る。この際ブランケット、枕、アイマスク、ミニ電球などは無料サービスで利用できる。また、貴重品は暗証番号つきのロッカーに入れておくのが安全。


 椅子に座ると、オウズの部下のサキュバスたちが、耳元で子守唄を囁いてくれる。催眠効果のある唄である。よほど気を張っていない限り、1分以内にほとんどのひとの意識は落ちる。


 そうして現実世界に別れを告げたあなたが辿り着くのが、夢の国ロスチュである。



「あーつまりあれか?ロスチュって国はこいつらがいま見てる夢の世界ってことか?」


 スバルが確認すると、オウズは頷く。


「私たちサキュバスは、お客さんたちからお金と精気をお代にもらうかわりに、夢の中で理想の世界を見せてあげているの」


 ランパは懐疑的だった。


「でも夢なんてみんなそれぞれ違うもの見ますよね。国って言えるんですか?」


「このテント内には魔術が仕込まれててね、ここで眠った時にみんな同じ世界を夢見るようにできてるんだ」


「じゃあもし僕たちがここで一斉に眠ったら、夢の中で待ち合わせして会えるってことですか?」


「その通り!恋人同士でこのテントに来て、ロスチュの中でデートしてるひととかもいるよ」


 面白い話だった。夢の国ロスチュとは、ほんとうに夢の中にある国だったのだ。


 興味を抱いたユウジは、さっそく夢の中に入ってロスチュを観光しようと提案した。


「おすすめはフリータイムだよ〜。1日以上の滞在だと、現実世界で点滴や下のお世話を私たちに任せることになるから追加料金がかかるからね♡」


 ほかに1年間のサブスク加入もあると聞いたが、やはり定期的に夢から覚めて、からだのメインテナンスを取ることを強く推奨しているとのことだった。


「離れたところに天然温泉が沸いてるから、そこでからだ洗ってから近隣の村に帰る人が多いよ。シャワーだけなら20分無料、入浴料金もロスチュ入国者なら半額でお得」


 オウズは、ぺらぺらと料金システムを説明する。集金方法がしっかり整っていた。


 ユウジたちは相談して、とりあえず1日フリータイムで入国することにした。


「鈴音さんはいいの?久々に友達会ったんならもうすこし現実(こっち)で話したら……」


 ユウジが鈴音に気を使うと、オウズはウィンクした。


「私もすぐ眠るから向こうで会えるよ♡」


「そっか!じゃあ向こうでいっしょに飲もう!」


 こうしてユウジ、スバル、ランパ、鈴音は、4人横並びで椅子に座った。


 それぞれにオウズの部下のサキュバスが担当としてついた。


「はぁい♡よろしくね」


「あっはい」


 露出の多いサキュバスが、ユウジの肩に手を置いた。香水の匂いが鼻に届く。ユウジはドキドキして眠れるか心配になった。

 

 横を見ると、毛布をかけられたスバルは、サキュバスに耳元で囁かれていた。


「……♡……っ♡……♡」


 小さな囁きで、隣にいてもなんと言っているか聞こえない。しかし、その催眠効果はたしかなようで、スバルは途端にカクンと、頭を下げて、眠ってしまった。


「……zzz」


 口を開けてよだれを垂らすスバル。気持ちいい眠りのようだった。

 

 いつのまにか、ランパと鈴音も寝息を立てていた。


 オウズが手を振る。


「ユウジくんもいってらっしゃ〜い♡」


 ユウジの担当サキュバスが、耳元にくちびるを近づける。


「失礼しまーす♡」


 スゥ、と息を吸い込む音の後に、サキュバスの囁きが、ユウジの耳を通して、脳に響く。


「トゥンク…♡トゥンク…♡トゥンク…♡」


「……!?」


 サキュバスがしていたのは、心音の声帯模写であった。


 心拍音が、眠りを誘うとは聞いたことがあるが、まさか子守唄の正体が声帯模写とは……。


 ユウジは意外性に驚きながら、だんだんと、意識が薄れていき、瞼が世界を遮断して……。


 気がつけば、ユウジはあたり一面真っ白な世界にいた。


「ここが……夢の国ロスチュ……?」


 ユウジは、だだっ広い雲の上にふわりと浮かんでいた。

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