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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第五章 ウィッチ・ド・サン編
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第67話 黄金の雨

 ベコの操るゴーレム、砂城の宴は、ゴゴゴゴゴと存在感のある一挙手をもって、鈴音の氷の巨人をつまみ上げた。


 ファンの子どもを抱き抱えるプロレスラーのように、軽々と。


 氷の巨人は、なすすべもなく、空中に浮かんでいった。


「うわー無理だったか……」


「さすがに体格差が」


 鈴音とユウジは諦めの境地にいた。変に意地を張らず、最初からベコを煽てて、説得する道をとったほうがよかったかもしれないと後悔していた。


 喧嘩を売ってしまったいまでは、もうベコに話を聞いてもらえる状態ではなかった。


「ふふふふ……コケにしてくれましたからねぇ。太陽に近づけて、溶かしてあげますぅ」


 ベコは、ゴーレムを操作して、氷の巨人を掲げて太陽の光にあてていた。


 ジリジリ、ジリジリと熱されて、氷の巨人はだんだん小さくなっていく。


「なんて残酷な……」


「あー氷が溶けてなかのミントが剥き出しになっていく〜」


 氷の隙間から、ピロンと出てくるミントの束。まるで臓器が出てきているよう。


「あっはっはっは!」


 ベコは高らかに笑った。


 

 花火の打ち上げ台で、ランパは微調整をした。


「よし、無様なユウジさんのゴーレムに狙いを定めました!」


「よくやったランパ!」


 スバルは導火線をのぞく。チリチリと火花を散らして、ついに、花火が発射される。


 ドン!!!


 煙と共に、花火が飛んでいった。


「ひゅう〜!すっげ!」


「わー!飛んでいきましたね!」


 きゃっきゃっとはしゃぐふたり。


 飛んでいった花火は、一直線に、氷の巨人へ向かっていく……!



 ウィッチ・ド・サンは、晴れの日が多い街だった。陽気な人も多く、こんな街に陰気な学者が集まっていたことが異常だったのかもしれない。


 もう少し、適度に雨が降るような街だったら、晴耕雨読とばかりに、学者にもっと優しい街になっていたかもしれない。


 そんなことを考えながら、ソドムは、最後の一行を読んだ。


「その膨大な魔力を持って、大樹よ、黄金へと姿を変えよ!!!」


 街に張り巡らせられた魔法陣が、ついに発動する!


 


 テロリストの男二人組は、時計を見て、青ざめる。


「おい!もうすぐ爆発するぞ!」


「お前らも早く逃げろ!!!……いやこんな爆心地にいたらもう終わりか……」


 巨大な100メートルのゴーレム。これが爆発したら。


 街のどこにも逃げる場所などありそうもなかった。


「……………よいしょっと」


「座るか……」


 男二人組は、覚悟を決めて、地面に座り込んだ。



 


 そして。


 各々の仕掛けた、ギミックが。


 ひとつひとつ発動する。


 

 まず発動したのは、ソドムの魔法陣。


 巨大ゴーレム、砂城の(サンド・クラブ・ハウス)に込められた魔力が、しゅううううと抜けていく。


 抜けた魔力は輝く光球となり、ゴーレムの頭部に集まっていく。

 

 まるでもうひとつの太陽が生まれたかのよう。


 光り輝くその球体に、窓からことの顛末を伺っていたひとたちはつぶやく。


「奇跡、か……?」「神がきたのか……?」


 

 パラパラと、上から砂埃が落ちてきたことで、ゴーレムの所有者のベコも、頭上で起こっている異変に気がつく。


「なんなのぉ……?あなたたちなにかしたぁ?」


 ユウジと鈴音に尋ねるが、ふたりは揃って首をふる。


 砂城の(サンド・クラブ・ハウス)は、その後もパラパラと砂埃を落としていく。そして、そのうち、落ちてくる砂は塊となっていき、至る所に亀裂が走るようになる。


「なにぃ?なんなのぉ?」


 予想外の事態に焦るベコ。もしいまゴーレムが壊れるようなことがあったら、足元にいる彼女は、大量の砂山の下敷きになってしまう。


 ユウジは、うーんと頭をかいた。


「あの、僕たちもよくわからないですけど……避難しません?」


「……っ!」


 ベコは口をぱくぱくとしたが、危機を感じ取ったので、唇を噛み締めながら、ユウジと共に安全そうな屋内へ向かっていくことにした。


「ほら!あなたたちも生きるの諦めないで!」


「爆発の前兆かもしれねぇな」「もう死にたい…」


「生き埋めは辛いですよ!さあ立って!」


 鈴音も、無気力な男たちを無理やり立たせて、避難させた。



 ゴーレムから吸い取った魔力により、天には、巨大な光の球が浮かんでいた。


 ソドムは、遠くの丘からそれを眺める。


「あとはあの光の球が、BLTに入り込めば計画は成功……」


 まさか街中のゴーレムが一塊になって、100メートルの一体から魔力を搾り取ることになるとは想像もしていなかったが、魔法発動の結果を視認しやすいあたり、運がよかった。


 ソドムは、フワフワと浮く光球の行く末を、息を呑んで待った。


 光の球が、BLTに入り込んだ瞬間、巨大な樹木は一瞬で、黄金の樹に姿を変えるのだ……。



 ここでふたつ目の仕掛けが発動する。


 二人組のテロリストが仕掛けた魔石の爆発ギミックである。


 いまや、その魔石のすべては、ベコの巨人ゴーレムの体内に埋め込まれている。


 タイムリミットが訪れた時限爆弾は、個体によっていくつかのタイムラグをはさみながら、爆発し始める。


 ボンっ、ボンっ、ボンっ!ボンっ!


 それに伴い、魔力を抜かれて、形を保つのに苦労していた巨人ゴーレムは、瓦解しはじめる。


 再生の術式が組み込まれた魔石は、爆発されているので、もう元には戻らない。


 無様にゴーレムは膝をつき、ボロボロと崩壊を進めていく。


「ああああ」


 窓からその光景を見て嘆くベコ。ユウジは彼女の背中をポンポンと叩いた。


 そうして、ゴーレムがボロボロになっていく過程で、体内に土石流のような流れが発生した。いくつかの魔石が流れに沿って、1箇所に集まる。


 ぼんっぼぼぼぼ、ぼがーーーん!


 ひとつひとつは小さな爆発しか起こさない魔石だったが、集まれば大きな爆発をよぶ。この勢いで、砂城の宴は、完全に倒壊し、大きな爆風を起こす。


 どおおおーーーん!!!


 街中に巻き起こる砂の風。ユウジは急いで窓を閉めた。


 爆風の勢いは凄まじかった。


 持ち上げられていた、鈴音の氷の巨人など、わずかに空を舞ったほどだった。


 そして、その爆風は、ソドムの魔法陣によってゴーレムから集められた魔力の塊、光の球をも、わずかに上方向に吹き飛ばす。


 ブワァァ!


 天に持ち上げられた、光球と氷の巨人。氷の巨人のほうは、ほとんど溶けていたので、もはやミントの塊だった。


 光球に組み込まれた術式は、近くにある巨大な自然物に入り込み、それを金に変えること。


 本来ならば、この対象となるのはもちろんBLTになるはずだった。


 しかし。


 光球は、目の前に現れたミントの束を、対象と認識してしまった。


 いわゆる魔法の誤作動が起こったのである。


 光球は、ミントの束に入り込む。メキメキメキメキ、と、植物からは発せられないはずの音が響く。


 光の球は、無常に生命を犯していく。ミントは端からだんだんと金色に姿を変えていった。


 そうして、やがて空に黄金へと姿を変えた、金色に輝くミントの束が浮かんだ。


 重い質量を得た、黄金ミントは、地上に向かって落下をはじめる。


 ヒューーー。


 そこへ、第3のギミック……。ギミックと言うのも大袈裟だが、スバルとランパのいたずらが発動する。


 高台から発射された花火。盛大な祭りのフィナーレを飾るはずだったそれは、天を目一杯キャンパスに使うほどの大玉花火だった。


 テロリスト二人組が仕掛けていた爆弾なんかの、比ではないほどの火薬量である。


 火のついた花火は、勢いよく筒を飛び出て、空を舞っており……。


 黄金のミントの束にぶち当たった!!!


 どおおおおーーーん!!!



 花火が爆発する!!!



 黄金のミントもまた!爆心地にいたためその火力を一身に受ける!!!


 

 花火の高音の熱は、黄金を溶かした。そして、それは、町中に飛び散った……。


 ウィッチ・ド・サン中に、溶けた黄金が、飛び散る!!!


 

 パラパラパパラパラパラパラ。



 土煙の収まりとともに、「黄金の雨」が、シャワーのように、ウィッチ・ド・サンに降り注ぐ。


「…………!」



 みな、思いがけない奇跡的な光景に、ポカーンと開いた口が塞がらなかった。



 遠くの丘で、一部始終を見ていたソドムは、腰が抜けて、へたりとその場に座り込んだ。


「あ、あはは…な、なにこれ……」


 そして、いまだ立派に緑色で聳え立つBLTに話しかける。


「……そういえば、あなたもたまに降る雨を喜んでいたわよね……」


 街に聳える大木と、ひとりのしがない魔法研究者は、空から降ってくる黄金の雨を、ロマンチックに受け止めたのだった……。


「い〜やっ!あっつつつつ!!!!」


 ソドムは転げ回ってバタバタともがいた。


 高温の純金は、いくら美しかろうとも、体に触れれば大惨事である。



 この世にも珍しい天災を機に、ウィッチ・ド・サンは、観光業が斜陽になっていくのだが、それはまた別の話……。

 

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